紫波町図書館は、その展開する事業についても特色があり、地域活性化に資する図書館として も昨今話題となっている。その事業展開の根底にあるものが、平成 21 年3月に策定した図書館基 本構想及び基本計画である。
悲願であった図書館建設を実現するにあたって、特にオガールプロジェクトと一体で進めるこ とで、紫波町に必要な図書館は何かということを、基本構想の中で検討を重ね一定の方向性を導 いている。
基本構想では、特に紫波町が現在置かれている状況を分析し、地域課題に対処していくための 重要な視点として以下の7つを挙げている。
表 2 図書館を取り巻く背景から導き出される重要な視点
これらの視点を見ていくと、図書館を生涯学習意識の向上や読書推進の基点としての環境整備 という観点にとどまらず、広く地域の活性化や産業振興、さらにはまちづくり、ひとづくりに貢 献していくような機能を備えた拠点となることが期待されていることがよくわかる。このような 視点に基づき、基本構想で明示する図書館が実現させていこうとする理念は、以下の7つの目的 として表れている。
表 3 図書館の7つの目的
このうち、①~④はいわゆる図書館的分野であり、④~⑦はどちらかというと交流を重視した 交流館的分野と整理される。これらの目的を全て達成していくためには、新たな図書館は一般的
出典: 紫波町図書館基本構想・基本計画(平成 21 年3月 紫波町教育委員会)p.1
出典: 紫波町図書館基本構想・基本計画(平成 21 年3月 紫波町教育委員会)p.2
な図書館機能のみを備えるだけでは足りず、交流の機能も併せて備えていく必要があった。この ため、紫波町図書館は、これらの機能の双方が含まれた施設である「情報交流館」とする形にな った。つまり、図書館という様々な情報を兼ね備えた施設に加え、時代の要請に応じて柔軟に対 応できるような交流の「場」を交流館として整備しているのが紫波町の情報交流館である。目指 しているのは、図書館機能と交流館機能の相乗効果により、協働のまちづくりを具現化できる政 策的施設である
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紫波町情報交流館がこれらの理念・目的にかなった施設になり得るかは、どのように当該施設 において事業を展開していくかというソフトの部分にかかっている。紫波町図書館では、図書館 内における企画展示をただ実施していくのみならず、必ず他の機関と連携したイベントを実施し ていくことによって、図書館での企画展示からさらに地域に広がる取組みに発展させている。例 えば、次の表は平成 26 年度の毎月の企画展示の一覧であるが、右欄に掲げる連携・協力機関とと もに様々なイベントを打ち出している。これらの連携先は、オガールエリアの他の機関やテナン ト等と連携するというエリア内の企画のみならず、紫波町で活躍する他の団体、さらには地域を 越えて外部からの人を呼び込んで連携イベントを実施しているものもある。表4の右欄における A~Cの表記は、それぞれAはオガールエリア内、Bは紫波町の町民や地域の団体、Cは地域を 超えて外部からの連携先という区分になっている。半数程度が外部からの連携先を呼び込んだも のであるという点も特筆すべき事項である。
表 4 企画展示と連携・協力先(平成 26 年度)
お話をうかがった紫波町図書館の工藤館長は、「当館の司書たちは、館内での仕事よりも外に出 て行き、いろいろな連携先を探してくる「営業」のような仕事が中心」だと話す。毎月の企画展 示と連携企画を図書館の職員自らが手がけ、売り込んでいくという意味では、まさに「地域に飛
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紫波町図書館提供資料び出す」図書館職員であるとの印象を受けた。
これらの取組みは、この図書館がオガールプロジェクトの中で誕生したということに起因する ものである。公民連携の理念を実現していくための図書館の役割として、図書館を基点としなが ら、様々な情報に触れ、交流が生まれ、そうした中で、新たなライフスタイルの提案や産業振興 の芽が生まれ、それらを図書館の外の世界に情報発信していくということまでが求められている。
これを紫波町では、地域に「ひろがる図書館」と呼んでいるが、「ひろがる図書館」によるまちづ くりを実践していこうというのが、紫波町図書館の取組みの基本になっている。
「ひろがる図書館」のイメージを、毎年夏に行っているビアフェストの例で見てみることとす る。
ビアフェストとは、地ビール会社がオガールエリアの中心部にあるオガール広場を借り切って 行うビール飲み放題のイベントであり、多くの地域住民の参加がある。ただ特徴的なのは、この イベントに合わせ、紫波町図書館では、館内にビールの製造や楽しみ方、またドイツに関連する 各種書籍の展示を行い、またイベント中には広場で司書の方々が読み聞かせを行い家族連れで楽 しむ方々にも好評であるなど、単なるビールを飲むだけではない仕掛けを図書館が主体的に行っ ている。さらに、このイベントの参加費(ビール飲み放題分のみ)は 2,000 円であるが、このう ちの100円が図書購入費として図書館へ寄付されることとなっている。この地ビール会社は盛岡 市にある岩手県に根差した会社であるが、こうしたつながりを経て、オガールエリアで実施され る他のお祭り等にもたびたび出店するなどの連携関係を築いている。また、行政内でも図書館の みならず企画課の公民連携室とも密に協力しながら、市民参加を呼び掛けていただくなど、オガ ールエリアに立地していることで、こうした庁内の意思疎通もスムーズに運んでいるとのことで あった。
このイベントへの関わりを紫波町図書館では「マーケットと文化と暮らしの醸成につながるラ イフスタイルの提供」であるとしており、紫波町図書館のミッションを達成するための有意義な イベントと考え継続されている。
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このように、ビアフェストの例を見ても、図書館の取組がオガールエリア内だけにとどまるも のではなく、行政内でも連携することで町・地域全体への呼びかけを行い、さらには、地域外か らの民間事業者との連携関係も出来上がっていくことで、他の地域の取組にもつなげていくこと ができるものとなる。これが紫波町の「ひろがる図書館」の目指す姿である。
図 14 「ひろがる図書館」のまちづくりイメージ
連携企画はこの他にも農業支援サービスや児童サービスを重視したものがある。例えば、隣接 する産直市場「紫波マルシェ」との連携により、マルシェで売られている野菜等に、それを活用 したレシピを掲載している図書館所蔵の料理本をPOP広告によって紹介し、売り場に置くなどし て売上と図書館利用拡大の相乗効果を期待している。
また、子育て世代に対しては、絵本に出てくる食べ物を、地元の食材を使って親子で料理する 食育イベント等を、情報交流館内のキッチンスタジオで実施している。これは図書館と紫波町の 農林課が連携しながらキッチンスタジオがあることで実現できたイベントであり、児童向けサー ビスの充実のみならず、農業支援サービスにもなっている。
この他、夜間に開催する交流イベント「夜のとしょかん」では日中忙しい方々をターゲットに、
ビジネス支援につながるような講師を招いた少人数の飲み物持ち込みでの交流会を不定期に開催 している。紫波町では、図書館の蔵書においても特に農業支援サービスを充実させているが、こ のようなイベントにおいても、農業関係の専門家等を多く呼ぶことによって、地域の事業者の方々 にも有意義な情報を得られる場として機能することを期待している。
これらの事業は財源も含めて全て企画する担当者(司書)の方々が調整している。企画し、実 際に連携先と交渉をし、さらには財源の工面、広報まですべて取り仕切っていくのが紫波町図書 館職員であり、これらのスタッフがアンテナ高く、自ら外に飛び出し行動していくことが、「ひろ がる図書館」を実現する要になっていると考えられる。
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