B) 図書館の建設によって期待される他の政策効果も併せて説明することによって、住 民や議会の理解を得る工夫を行った。
6. 合築の方針決定にあたっての課題
合築の方向性を議論している当時、県立図書館と市立図書館を合築により整備を行っている団 体は全国に存在せず、検討されている団体もない状況の中、合築を進めるに当たって、どのよう な課題を認識していたかを聴取した。
当時の主な議論のテーマとして挙げられたものは以下のとおりである。
・ 県立図書館と市立図書館それぞれに求められる機能や役割が異なる中で、合築整備をする ことにより双方の機能を同時に果たすことのできる図書館を創造することがそもそも可能 か。
・ 新図書館における県立図書館と市立図書館それぞれの役割や機能をどのように整理してい
くか。
・ 合築による新図書館に必要な役割や機能はどうあるべきか(目指すべき姿)
・ 新たな組織、運営等の在り方
・ 建設場所、施設の面積や駐車場設備等の施設整備に関すること
・ 単独で整備した場合と比べて合築で整備した場合に、コスト及びサービス面でそれぞれど のようなメリットがあるか。
これらのテーマについては、主に新図書館基本構想検討委員会で議論がなされ、最終的に取り まとめた基本構想の中にそれぞれ方向性が示されている。議論の経過については、参考資料2に 掲載しているが、この中でも特に、単独と合築の比較検討は初回から後半の回に至るまで複数回 議論しており、大きな論点であったことがわかる。
単独で整備した場合と合築で整備した場合の比較検討については、単純に公共施設として、2 つの施設を有するべきか一体化したほうが良いかといった観点のみならず、立地場所の議論と不 可分の論点であったため、様々な意見があり議論が混迷した。
前述のとおり、高知市の有する土地である追手前小学校の敷地は、小学校の統廃合に伴い新た な有効活用策が求められており、市では、同地に老朽化・狭隘といった課題を抱える市立図書館 を移転させる方針がもともと決まっていた。一方、県立図書館については、高知城の敷地内に現 存するため、現地での建替えは文化財の管理上難しく、現地以外の場所への移転が前提となって いるものの、移転先については、様々な選択肢があり得た。したがって、合築による図書館建設 を行う場合には、市立図書館側から見れば、追手前小学校跡地に単独で建設するか、県立図書館 と一体型の図書館とするかといった比較であったが、県立図書館としては、県立図書館を市立図 書館の移転予定地である中心市街地の敷地に併せて建設するか、あるいは単独でどこか別の土地 を探し建設するかといった比較検討であった。その上、県立図書館を単独で建設する場合の適地 については具体的な候補案に乏しく、以前の検討の中でも候補地となり未だ活用方針が定まって いなかった秦南団地(シキボウ跡地)ぐらいしか仮の立地場所としても想定できない状況であっ た。この泰南団地は、いわゆる中心市街地のエリア内には入っておらず、中心部からは車で 15 分 程度の大型ショッピングモールが立地する地区にある。このため、前章で紹介した東西軸エリア 活性化という中心市街地活性化政策にはやや相反する側面もあった。
このようにいくつかの複雑な事情が関係し、合築による図書館とすべきか単独整備とすべきか については、新図書館基本構想検討委員会の検討の最終局面まで意見が分かれていた。基本構想 検討委員会の最終取りまとめを行った第8回(平成22年3月26日開催)の議論では、新図書館 基本構想の最終案が提示されたが、その局面においても、特に「新図書館の建設場所」を記述し た箇所について、賛否両論の意見が交わされた
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反対する主な意見は、立地場所の敷地面積が狭いことや、周辺道路との導線が悪いこと、周辺 の飲食店や日曜市等の騒音との関係など、そもそも追手前小学校敷地が建設場所として望ましく ないといったものであった。一方で、賛成する者は、様々な条件に照らして百点満点という土地 ではないという前提の下で、中心市街地に立地する利便性によって多くの利用が見込まれること、
今後人口減少の見込まれる将来を見越した図書館の立地場所としては妥当性がある等の意見であ
った。最終的に、基本構想検討委員会としては、「賛否両論の議論が重ねられた」ものの、「懸念 要因を最小限に抑える工夫を十分加えることにより、中心市街地に立地する利便性の高い新図書 館を追手前小学校敷地に整備することを期待したい」
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といった検討結果を示した。なお、懸念要 因の一つであった敷地面積が小さいといった問題に対しては、当時、住居地域の用途区分とされ ていた地域を商業地域に見直すことによって、容積率や建ぺい率を上げて対応していくなど、そ の後の施設の建設を具体化させる段階で、基本構想検討委員会での議論を踏まえた対応を行って いる。
また、新たな組織の運営等の在り方についても、検討委員会においては多くの議論があった。
特に、第4回(平成22 年 12 月24 日開催)の委員会においては、事務局から提示した組織体制の たたき台について、多くの反対意見があり見直された。当初、新図書館の組織体制としては、県 立図書館・市立図書館の二つの組織をそれぞれの機能と役割に分けた上で存続させるとともに、
両者を調整する役割として、両図書館長の上に、総館長という役職を設け、トップを集約させる 形での組織形態を考えていた。しかしながら、総館長の役割が明確でないということや、どちら かの図書館がどちらかの図書館に吸収される性質のものではないことから、新たな図書館は、一 体型図書館でありながらも二つの組織が並立しながら双方の機能を果たしていくものであるとい った認識が多数であり、組織体制がイメージと合わないということで事務局案は見直されること となった。この結果、最終的には、二人の館長を持つ図書館となり、それぞれの運営の調整に関 しては、両図書館長及び図書館運営の専門家等から構成される調整機関を別途設けていくことと なった。
このことの背景を理解するには、そもそも県立図書館と市立図書館の役割が制度上異なってい るということを認識する必要がある。市立図書館は、住民に対する直接サービスを中心とした地 域の情報拠点であることが求められている一方で、県立図書館は、域内全体の資料の体系的な保 存や提供を通じた市町村図書館の支援や連絡調整の推進等の業務がメインとなっている
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。したが って、共通する業務がもともと多いわけではなく、それぞれ別個に維持していかねばならない部 分は一体型図書館になった場合においても、県・市それぞれが分かれて担っていかねばならない ことになる。こうしたことを踏まえ、基本構想の中では、それぞれの組織が「役割分担を明確に した上で、両館が連携して業務を遂行する」と書いてあるに留まるが、議論の中では、一体型図 書館となることによって、レファレンスサービスなど連携して情報共有する中で、サービスの向 上や効率化できるような部分については、連携体制を組んでいくべき方針も確認された。ただし、
基本構想の検討の段階では、組織・運営の詳細に関しては時間の制約もあり十分な議論ができた とも言えない状況であり、今後、開館に向けて、組織の在り方については、更なる詳細な論点の 検討していく必要がある。
最後に、間接的ではあるが、県下全域を見渡した図書館行政のあり方の議論もなされたという 点を指摘しておく。基本構想の最終取りまとめの段階において、中心市街地における合築による 一体型の図書館が建設されるイメージが徐々に出来上がってきている中で指摘されたのが、中心 部に大きな図書館が出来上がることによるストロー効果があってはならないという点である。つ まり、新図書館を充実させることが、すなわち周辺市町村における読書環境の充実強化と逆の方
向にいってしまっては元も子もないという点であり、新図書館整備の議論と同時に、県下全域に おける生涯学習機能の向上を目指す図書館振興計画の策定の必要性なども指摘された。合築によ る新図書館の整備は、高知県内における高知市中心部への集中的投資といった見方もされており、
それによる周辺地域の切り捨てといった懸念も直接的ではないにせよ、議会やパブリックコメン ト等では寄せられていたものである。したがって、新図書館の在り方を検討すると同時に、県下 全域における図書館振興を併せて進めていくことも、新図書館の構想を実現させていくための重 要な論点となっていた。このことは、新図書館基本構想検討委員会の策定した基本構想の「おわ りに」で委員の皆様の思いが述べられている
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