7. 考察
7.3. オガールプロジェクトが地域にもたらした意義・効果
こうしたことを踏まえ、オガールプロジェクトが地域にもたらした意義や効果は何だったのだ ろうかということを公共経営という観点から改めて考えてみると、一過性の投資的事業ではない 仕組みが出来たということが何よりの財産になったのではないかと考える。
運営を担う主体(オガール紫波(株))を立ち上げて、オガールプロジェクト全体を常にマネジ メントしていく仕組みを作っていることは、持続的に事業展開していくにあたってはプラスであ ると考える。もちろん、この主体は町の出資団体であるので、経営状況を含め、行政も適切にチ ェックしていく必要があるが、引き続きオガールエリアにおいて、魅力的なイベントの企画や新 規の事業展開等を継続していくためには、このような民間主体によるマネジメントを行っていく 仕組みが有効に機能するのではないかと考える。
さらに、財政面においても、PPP 手法により事業用定期借地権の設定をはじめとする工夫によ って、行政に継続的に収入が入る仕組みが出来ており、建設費・運営費等の全てを賄えるわけで はないが、厳しい財政状況の中で、長期的に見ると少しでも歳入を増やすことができたのは重要 である。
施設の構造面でも、地域の様々なニーズに合わせて柔軟に活用を変えていくことができるよう な「場」になっている。例えば情報交流館を見ると、映画観賞用に限定するようなホールを作る のではなく、いろんな用途に使えるような大きさのスペース、何にでも使えるステージ等、活用 方法が一つに限定されないような施設づくりに取り組んでいる。こうしたことは、住民ニーズを 丁寧にくみ取った成果でもあり、何十年と利活用され続ける公共施設の整備ができたと言えるの ではないか。
そして何よりも価値があったと言えるのは、紫波町でも分析しているように、諦めや閉塞感の 打破、町全体の活気の上昇といった意識面での変化である。このことは、今後、行政運営や地域 が様々な活動を展開していく上でも、全ての素地となる部分であり、こうした意識があるかない かでは、同じ政策を実施しても全く異なる結果になり得るほど重要なファクターだと言える。こ れらは紫波町が住民とともに努力を重ねてきた最も大きな財産であり、むしろ地域で勝ち得たも のであると言えよう。
8. おわりに
最後に、お忙しい中本調査にご協力いただいた紫波町経営支援部企画課の高橋企画課長、紫波 町情報交流館・紫波町図書館の工藤館長及び堀内事務局長、また、本調査の実施にあたり、多大 な支援をいただいた岩手県の風早総務部長及び環境生活部環境保全課の臼井課長に深く感謝申し 上げる。なお、本文中意見にわたる部分は筆者の私見である。また、記述には正確性を期したつ もりであるが、事実誤認等があればひとえに筆者の責任であることを申し添える。
脚注・参照文献
1
「公共サービスの提供や地域経済の再生など何らかの政策目的を持つ事業が実施されるにあた って、官(地方自治体、国、公的機関等)と民(民間企業、NPO、市民等)が目的決定、施設建 設・所有、事業運営、資金調達など何らかの役割を分担して行うこと。その際、(1)リスクと リターンの設計、(2)契約によるガバナンス、この2つの原則が用いられていること。」 東洋大学 PPP 研究センター, 第Ⅲ部公民連携キーワード解説, 公民連携白書 2013~2014, 東洋 大学 PPP 研究センター, 時事通信社, 2013, p.136
2
PFI(Private Finance Initiative)とは、公共事業を実施するための手法の一つであり、民間の 資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管 理・運営を行う公共事業の手法のこと。
内閣府. “PFI 事業導入の手引き”. http://www8.cao.go.jp/pfi/tebiki/kiso/kiso01_01.html,
(参照-2013-01-27)
3
紫波町. “紫波町役場行政情報”. 2016-01-26. http://www.town.shiwa.iwate.jp/cms/, (参 照-2013-01-26)
4
財政力指数とは、「地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除 して得た数値の過去3年間の平均値」
総務省. “指標の説明”, http://www.soumu.go.jp/main_content/000327703.pdf (参照 201 6-01-27)
5
実質公債費比率とは「当該地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金及び準元利償還金 の標準財政規模に対する比率の過去3年間の平均値で、借入金(地方債)の返済額及びこれに 準じる 額の大きさを指標化し、資金繰りの程度を表す指標のこと」
総務省. “指標の説明”, http://www.soumu.go.jp/main_content/000327703.pdf (参照 2016-01-26)
6
平成19 年法律第 84 号
7
早期健全化基準とは、地方公共団体が「財政健全化計画」を定める必要があるかどうかを判断 するための基準のこと。具体的には、健全化判断比率である実質赤字比率、連結実質赤字比率、
実質公債費比率、将来負担比率についてそれぞれ数値的な基準値が設定されている。実質公債費 比率の場合には、25%が早期健全化基準である。
総務省. ”早期健全化基準と財政再生基準”, 2015-07-24,
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/index3.html, (参照-2013-01-27)
8
紫波町における公民連携とは、「公共施設の整備にあたって、町と民間事業者、NPO、町民等 がそれぞれの役割を分担し、目的決定、施設整備・所有、事業運営、資金調達などを行うこと」
と定義されている。
紫波町. 紫波町公民連携基本計画-公共施設整備と町有地の有効活用-. 2009, p.56
9
前掲8) p.52
10
VFM(Value For Money)とは、「支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を 供給するという考え方である。同じ質のサービスであれば、より価格の安い方が VFM があるとし、
同じ価格であれば、より質の高いサービスの方が VFM があるということになる。」
東洋大学 PPP 研究センター. “ 第Ⅲ部公民連携キーワード解説”, 『公民連携白書 2013~2014』. 東洋大学 PPP 研究センター, 時事通信社, 2013, p.137
11
なお、条例上は、「紫波町情報交流館条例」(平成 24 年条例第2号)と図書館法に基づく「紫波 町図書館設置条例」(平成 24 年条例第3号)の二つが存在している。
12
前掲8) p.3-p.4
『未来の紫波中央駅前におけるある一日』
1
魅力的なブールバール
2
のある街の朝は、一番乗りの店主が店を開けた瞬間から賑わいを見せる。足早に行き交う出勤途中の人々の中に、役場庁舎に向かう職員の姿がある。高齢者は早朝講座の ために情報交流プラザに集まって来ている。統一されたデザインの
2
列の事業棟の間に位置する ブールバールを紫波中央駅前大通りに向かって歩いて行くと、住宅地の住民が通勤電車に乗る前 に、駅前でカプチーノを買っている。通りの北側を見ると、高校生が始業に間に合うように学校 へ急いでいる。日中の街では、人々が図書館や交流館、医療施設など様々なサービスを利用しているのが見受 けられる。紫波の農産品を揃えた地元の小売店やレストラン、カフェは、街の魅力を堪能する人々 で溢れている。事業棟に事務所を構える人の中には、打合わせ場所としてレストランやカフェを 選択する人もいる。ブールバールに彩りを添えるプランターの手入れをしているグループの1人 が、花屋の店員に話しかけている。昼休みになると、レストランやカフェはアーケードの下の歩 道やブールバールの遊歩道にテーブルと椅子を広げる。歩道に出されたメニューに書いてある「今 日のおすすめ」が、買い物客や用事を済ませた人々を食事へと誘う。情報交流プラザのロビーで は、アート・スタジオが作品展を開催中である。ダンス・演劇関係者は町民劇場の開演に向け、ホ ールで準備をしている。アーケード下の歩道を歩いているのは、事業棟の上階にあるエステサロ ンやヨガ教室へ向かう人々などである。ブールバールの広場では、子供たちが大きな木の周りを 追いかけっこするのを見守りながら、親同士はおしゃべりをしている。お話の時間を目当てに、
広場を横切り図書館に向かう親子もいる。木陰には、新聞を読んでいる人や将棋に興じる人がい る。すこやか号を待つ間、ベンチで世間話に夢中の人たちもいる。
平日の夕方、街の中心は演劇の幕間のような雰囲気に包まれる。店主が歩道に並べていた看板 や商品を店内に取り込み、店の前を掃除している。銀行で今日最後の用事を足し、紫波中央駅や 近隣の駐車場・駐輪場に向かう勤め帰りの人々がいる。図書館に本を返却する学生やビジネスマ ン、講座を終えて出て来た人々などで、情報交流プラザ前に静かな混雑が見られる。塾を終えた 子供を迎えに事業棟へ行った後、並びにあるパン屋で焼きたてのパンを買い、広場で夕陽を眺め ながら頬張る親子がいる。太陽の長い日差しが、緑のカーテンとして植えられた朝顔が覆うシビ ックセンターの外観を照らしている。家路を急ぐ人々は、ブールバールに面した新鮮でこだわり の品揃えが自慢の店で買った夕食の食材をエコバッグに詰め、自宅のある住宅地へ向かう。
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序編は本計画の第