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第 11 章

ドキュメント内 古典チベット語文法 (ページ 78-83)

人称 単数(*は単複同形) 複数

2人称 ;?dHo`kyh¨o¨o  

;?dHoV=o¯kyh¨orað

;?cHo`kyhee* ;?cHo'MZo`kyhee nam

;?cHo><o`kyheetyaa* ;?cHo><o'MZo`kyheetyaa nam

;?cHo><oOVo`kyheetyaa tso

;?cHoV=o¯kyherað* ;?cHoV=o'MZo¯kyheraðnam 3人称 ;do¯kho

;d=o¯khoð ;d=o'MZo¯khoðnam  ;d=oOVo¯khoNtso

;d=oV=o¯khoNrað  

以下,人称別に解説する。   

1 1 人称を表す人称名詞

1.1 1 人称単数形

1人称単数を表す形式としてよく用いられるものに,=o´Naと=cHoˆNeeがある。前者 は,自分が相手と対等であるか,優位である場合に主に用いられるのに対し,後者は相手 に対して自分が下位である場合などに主に用いられ,やや格式張った表現のようである。

また,=o´Naや=cHoˆNeeに「自身」の意味を表すV=oraðを付けた=oV=o´Narað,=cHo

V=o´Neeraðという形式もある。「私自身」という意味で用いられていると思われる。

1人称単数のその他の表現として,LH<oˆtaaがある。*1

また,1人称単数形として,;doLdo¯khowo,;doMdo¯khomoが用いられることがある。会 話中の話者などが自分自身に言及する際に用いる。前者が男性の場合,後者が女性の場合 である。*2

また,日本語の「小生」にあたる表現としてKDIo¯trh¨aðがある。

*1LH<oˆtaaと対応する形式は中央チベットのツァン方言などで,自分が格下である場合の表現として用い

られるようである。

*2これらと対応する形式は現代のアムド・チベット語で用いられている。

1.2 1 人称単複同形

=cHoˆNee,=cHo><oˆNeetyaa,=cHoV=o´Neerað,LH<o><oˆtaatyaaは単数と複数の両方 を表す。文脈によって単数と複数のどちらを含意しているかを判断する必要がある。*3

1.3 1 人称複数形

複数形は一般に,名詞の末尾に複数化助詞'MZonam,OVotsoを付加することで作られ るが,人称名詞の場合も同様である。

テキストによって異なるが,=cHo'MZoˆNee nam,=cHoOVo´Neetsoなどは比較的よく見ら れる形式である。また,『王統明鏡史』には用いられていないが,=oOVo´Naðtsoがある。*4 また,従来の文語チベット語の文法書では指摘されてこなかったが,1人称複数形には 聞き手も含めて「われわれ」という場合に限定して用いられる包括形がある。*5具体的に

は,=cHoV=o'MZo´Neeraðnamや=cHoV=oOVo´Neeraðtsoなど,複数形にV=oraðを挿入

した形式がこれに対応する。『王統明鏡史』では,これらは相手も含めて「われわれ」と述 べている文脈で用いられている。また,Tdo><oˆotyaaやTdo><o'MZoˆotyaa nam,Tdo><o OVoˆotyaa tsoという形式も包括形として用いられる。*6

なお,包括形以外の1人称複数形は,聞き手を含めていない場合に主に用いられるが,

聞き手を含めている場合に用いられることもあるので,解釈の際には注意を要する。

1.4 助詞との結合形式

1人称単数形の=o´Naに格助詞などの助詞が結合した場合,以下のような融合形式と なる。

能格助詞との結合形 =ZoˆN¨a¨a (私が) 到格助詞との結合形 =Vo´Naa (私に) 属格助詞との結合形 =T`o´N¨a¨a (私の) 副助詞との結合形  =T=o´Na að(私も)

*3><oは辞書の記述では複数を表す形式とされているが,『王統明鏡史』の用例を検証すると単数を表して

いることもあるので,本書では単複同形と解釈する。ちなみに,><oのついた形式が複数専用形式でない ことは,LH<o><o'MZoˆtaatyaa nam,=cHo><o'MZoˆNeetyaa namといった複数化助詞を伴う用例が 見られることからも明らかである。

*4=oOVoはラサのチベット語で最も一般的な1人称複数形である。

*5現代チベット語のうち,アムド・チベット語,カム・チベット語,西部チベット語(ラダック語やバルティ 語など)など,東チベットや西チベットで話されているチベット語では1人称複数形における包括形とそ れ以外(除外形という)の形式が明確に区別される。

*6Tdo><o=cHo><oLH<o><oと異なり,今のところ単数を含意する用例は見つかっていない。なお,ア

ムドやカムなどのチベット語にはこれらと対応する形式がある。

2 2 人称を表す人称名詞

2.1 2 人称単数形

;?dHo`kyh¨o¨oと;?cHo`kyheeのうち,後者は丁寧な言い方である。1人称との対応で言え

ば,=o´Naに対応するのが;?dHo¯kyh¨o¨o,=cHoˆNeeに対応するのが;?cHo`kyheeである。

2.2 2 人称単複同形

;?cHo`kyheeおよび;?cHo><o`kyheetyaa,;?cHoV=o¯kyheraðは単数と複数の両方を表す。

文脈によって単数と複数のどちらを含意しているかを判断する必要がある。1人称の=cHo

ˆNeeと=cHo><oˆNeetyaa,=cHoV=o´Neeraðが単複同形であるのと対応する関係にある。

2.3 2 人称複数形

口語などでも用いられる2人称複数形として,以下のものもある。

;?dHoOVo¯kyh¨oðtso  ;?dHoV=oOVo¯kyh¨oraðtso

;?cHoOVo¯kyheðtso  ;?cHoV=oOVo¯kyheraðtso

3 3 人称を表す人称名詞

3.1 3 人称単数形

3人称単数形として挙げた;do¯khoと;d=o¯khoðはいずれも男女の区別なく用いられ るという点で共通している。一方,;do¯khoは,自分がその人と対等であるか,優位であ る場合に主に用いられるのに対し,;d=o¯khoðは自分がその人に対して下位である場合な どに用いられる丁寧語である。

この他に,;doV=o¯khoraðや;d=oV=o¯khoNrað のようにV=orað を付けた形式が用い られることもある。

女性のみを表すMdo´mo,MdoV=o´moraðという形式もある。

3.2 3 人称複数形

3人称複数形として,;d=o'MZo¯khoðnam,;d=oOVo¯khoNtsoなどが用いられるほか,;do 'MZo¯kho nam,;d=oV=oOVo¯khoNraðtsoなども用いられる。

4 人称名詞と数詞との結合形式

構成員の人数を示すときに,数詞と結合させた表現がよく用いられる。発音する際も,

一単語として発音される。

=o<A`ZoˆNanyii (私たち2人)  

=cHo<A`ZoˆNeenyii (私たち2人)  =cHo<ZbMo´Neesum (私たち3人)

;?cHo<A`Zo`kyheenyii (あなたたち2人)  ;?cHo<ZbMo¯kyheesum (あなたたち3人)

;d=o<A`Zo`khoNnyii (彼ら2人)  ;d=o<ZbMo¯khoNsum (彼ら3人)

5 人称名詞と語順

人について言及する際に,職位,名前などの個人の属性を表す名詞を先に述べて,すぐ 人称名詞を後続させる表現も多い。例えば次の例は「職位+2人称名詞」の例である。

LVdIoJdo?cIoJdo;?cHoV=o¯l¨oðpo ¯tyheðpo ¯kyherað(偉大な大臣であるあなた) LVdIo?cIo;?cHo¯l¨oðtyeð`kyhee (偉大な大臣であるあなた)

また,次の例は複数化助詞'MZonamの前に名詞を入れた例である。

=cHoHJdIo<Ud<o'MZoˆNee `p¨oðyoo nam (われわれ主人と臣下の者たち)

ドキュメント内 古典チベット語文法 (ページ 78-83)