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動詞連続型の動詞句

ドキュメント内 古典チベット語文法 (ページ 121-124)

第 17 章

7.2 動詞連続型の動詞句

動詞と動詞の間に接続助詞を伴わない動詞連続の場合,後続の動詞は補助動詞と呼ぶ。

補助動詞とは,他の動詞に接続して,「移動・到達」「可能」「必要」などといった特定の意 味付けを持たせることのできる動詞である。

後述する助動詞とは明確に区別できず,正確には連続的であるといえるが,補助動詞は より文の主動詞に近い位置で用いられるのに対し,助動詞はより文末に近い位置で用いら れ,補助動詞の後に付けて用いられることもある。

なお,補助動詞の役割を果たす専用の形式はなく,意志的自動詞や変化動詞,意志的他 動詞でも用いられている形式が補助動詞にも援用されている。

主な補助動詞として,以下のようなものがある。

1.「移動・到達」の補助動詞 T2Fdo ´ndro (〜ていく) Td=o ´oð (〜てくる) 1^=o

´tyhuð(〜てきた)

2.「可能」の補助動詞 GbLo`thup, `thuu (〜できる) XcZo`syeð(〜できる,〜の仕 方が分かる) 7qZoˆn¨u¨u (敢えて〜できる) KdHo`ph¨o¨o (敢えて〜できる) 3.「必要」の補助動詞 H<dZoˆk¨o¨o, ´ko (〜しなければならない)

4.「願望」の補助動詞 THdHoˆnd¨o¨o (〜したい)

5.「懸念」の補助動詞 Hd<Zoˆthoo (〜する懸念がある) 6.「頃合い」の補助動詞 VIo´r¨að(〜する頃合いである)

7.「終了」の補助動詞 S`Io´sið(〜し終わる) OVo¯tshar (〜し終わる) 8.「経験」の補助動詞 M?d=o´nyoð(〜したことがある)

9.「〜ておく」の補助動詞 LR<oˆsyaa (〜しておく)

10.「存在」の補助動詞 UdHoˆy¨o¨o (〜してある),T6q<oˆnduu (〜してある)

このうち「頃合い」「終了」「経験」「〜しておく」「存在」の補助動詞については第IV 部「単文>テンス・アスペクト」(p. 162)で紹介しているので参照されたい。

A.移動・到達の補助動詞:T2Fdo,Td=o,1^=o

■視点自体の移動または視界からの移動を表す補助動詞:T2Fdo

「行く」という意味を表す動詞T2Fdo´ndroは,動詞の完了形の後に置いて補助動詞として 用いることで,「〜していく」という意味を表すことができる。

;D`HoT2Fdo`trhii ´ndro「連れて行く」

Wd<oT2Fdoˆloo ´ndro「帰る」

動詞T2Fdo´ndroには,(1) 移動する人とともに話者の視点自体が移動することを表す

場合と,(2)話者の視点は移動せず,人やモノがその視界から去ることを表す場合とがあ り,両者は完了形が異なる。(1) の完了形は0>`Io`tyhið,(2)の完了形はZd=o ¯soðとな る。*4この動詞が補助動詞として用いられる場合も同様の含意があるため,どちらの意味 で補助動詞が用いられているのか意識する必要がある。

例えば,上記の「連れて行く」は未完了の例であるが,「XがYを共に連れて行った」と いう完了の文では,Xとともに視点が移動する場合は,;D`Ho0>`Ioとなる。逆に視点がその 場に留まり,XとYが視点のある場から去ったという意味になる場合は,;D`HoZd=oとなる。

なお,VZd=oは,移動そのものではなく,「ある事態が起きてしまった」という,事態 の完了の側面を表すことがある。これについては第IV部「単文>テンス・アスペクト>

完了」(p. 168)で後述する。

*4現代のチベット語のうち,ラサのチベット語では0>`Ioを完了形とし,アムドのチベット語ではZd=oを完 了形とするといった差異が見られる。

■視界への移動を表す補助動詞:Td=o

「来る」という話者の視界への移動という意味を持つ動詞Td=o´oðは,動詞の完了形の後 に置いて補助動詞として用いることで,「〜てくる」に相当する意味を表すことができる。

;D`HoTd=o`trhii ´oð(連れてくる) 

;?cVoTd=o¯kyher ´oð(持ってくる)   ScVoTd=o´ser ´oð(言ってくる) 

なお,動詞にTd=o が後続したもので,「予測」の意味でも用いられる例がある。これに ついては第IV部「単文>モダリティ>推量」(p. 189)で後述する。

■視界への到達:1^=o

「生じる」という意味を持つ動詞T1^=oの完了形1^=o´tyhuðは,直前の動詞で表される 移動が話者の視界に到達したことを示す。日本語でいえば「〜てきた」に近い。主動詞は 完了形となる。

ZVcLZo1^=o`lee ´tyhuð(やって来る) LF=o1^=o¯tað´tyhuð(送り込んでくる)

また,動詞に1^=oが後続したもので,「ある事態が目の前で起きた」という,事態の完 了の側面を表すことがある。これについては第IV部「単文>テンス・アスペクト>完了」

(p. 168)で後述する。

B.可能の補助動詞:GbLo,XcZo,7qZo,KdHo

「〜することができる」という可能の意味を表す動詞にはGbLo`thup, `thuu,XcZo`syeð があり,V Vパターンで可能の意味を表す。GbLoXcZoはいずれも「できる」という意 味であるが,GbLoは条件が整って可能になる,という意味,XcZoは能力・知識があるので 可能,という意味である。前に来る動詞は未完了形。XcZoVJVoVパターンもある。

T2FdoGbLo´ndro `thup (行くことができる)

<lHoXcZo¯ma `syeð(言葉を話すことができる)

7qZoˆn¨u¨uとKdHo`ph¨o¨oも 可能の意味を表すことができるが,「敢えて〜することがで きる」「〜する気になれる」という意味で,主に疑問や否定の構文で用いられる。前に来 る動詞は未完了形である。

LRc=Zo7qZoˆsyaðˆn¨u¨u (建立することができる)

L<\!VoKdHo¯kyur `ph¨o¨o (捨てることができる)

否定の場合は,7qZoKdHoの前に否定接頭辞を置く。

LRc=ZoM`o7qZoˆsyaðˆmin¨u¨u (建立することができない) L<\!VoM`oKdHo¯kyur `hmip¨o¨o (捨てることができない)

C.必要の補助動詞:H<dZo

H<dZoˆk¨o¨o, ´koは「〜しなければならない」といった必要の意味を表す形式である。主

動詞は未完了形となる。

T2FdoH<dZo´ndro ˆk¨o¨o (行かなければならない)

1>cHoH<dZo´tyhe ˆk¨o¨o (しなければならない)

また,VH<dZoは要求や意志表明の意味を表すことがある。これについては第IV部「単

文>モダリティ」(p. 175)で後述する。

D.願望の補助動詞:THdHo

「〜したい」という願望の意味を表すにはTHdHo ˆnd¨o¨oが用いられる。前に来る主動詞 は未完了形である。

T2FdoTHdHo´ndro ˆnd¨o¨o (行きたい) XcZoTHdHo`syeðˆnd¨o¨o (知りたい) E.懸念の補助動詞:Hd<Zo

Hd<Zoˆthoo「〜してしまうのではないかと恐れる」「〜してしまう懸念がある」などの

ように,望ましくないことが起こる可能性があることを表す。主動詞は完了形。

X`oHd<Zo¯syi ˆthoo (死んでしまうのではないかと恐れる)

LDdZoHd<Zoˆtrh¨o¨o ˆthoo (逃げてしまうのではないかと恐れる)

「〜しないのではないかと恐れる」という場合は,主動詞を否定にして次のように言う。

MoS`IoHd<Zo´masiðˆthoo (終わらないのではないかと恐れる)

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