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さえも、あきらめざるをえないのが現状だ。東京都や長野県では、中国帰国生 徒に対して高校進学の特別枠があるが、大阪府では、中学卒業後の高校やその 他の教育機関への進路保障ができていない」と指摘している。そして「高校特 別枠をはじめとする進路保障の制度的保障を確立することは、中国帰国生の今 後の日本での生活を励ますためにも、是非とも必要な端緒となろう」と主張し

ている。(44)

 ウ 東大阪市の盾津中学校の23人の進路の:事例と分析について

 東大阪市立盾津中学校においては、今まで23人の中国から来た生徒の卒業生 を送り出している。この23人の生徒の進路状況を追跡調査した貴重な調査結果 の統計表が作成されている。

 このことに関連する大同教の2っの研究大会で報告された発表内容や報告資 料等により、この該当する23人の生徒の進路結果を検討することにより、大阪 府下における中国帰国生徒等の進路状況が、象徴的に表されている事例として 位置づけ、検討したい。

 同報告と統計によると、卒業生23人の内、高校へ進学した生徒は12人、テク ノセンターへ5人、就職した生徒6入である。しかし、言葉の壁や周りの人間 関係による辛さで中退した生徒もいる。高校進学生徒は卒業生の半数であり、

わずかに52.1%の進学率であるにしかすぎない。この数値の結果は、中国帰国 生徒にとって、如何に現行の受験制度そのものが、進路の壁となって、立ちは だかっているかということを、暗示している。

 東大阪市立盾津中学校教諭福味加世子氏の報告によれば、 「今年卒業した中 国から来た生徒達11名は『このままの状態で社会へ出て仕事をするのには不安 がある。もっと日本語や、教科の勉強を続けたい。』という思いをもっていま した。しかし、渡日の経過の中で1〜2年就学の空白期間があったり、就学し ていても言葉がほとんど理解できずに 教室にすわっているだけ の期間があ ったりして現在の入試制度の中では高校進学はかなり困難になります。特に渡

日後の期間が1年半に満たない7名のほとんどが進学を断念せざるを得ない学

力状況でした。」と中国帰国生徒の現況の問題の提示をしている。 45)

 このことは、来日後、まもなくの内に、つまり未だ日本語の習得が、未習熟 のままの状態から、受験の時期に遭遇し、日本の受験制度の壁の前に、彼らの 進路が制約されている状況と現実が明確にあることを示している。

 さらに日本の教育環境や社会状況の不備、つまり中国帰国者をはじめとする 外国籍生徒や家族を受け入れるための施策やシステム等の不備故の、新たな問 題が彼らを取り巻いている。それは、上記の福味氏も指摘しているように「進 学したものの、日本語摺導の体制や受け入れ経験のない進路先での、未知の困 難が彼らを待ち受けています。」という実態がある。(46)

 こうした、中国帰国者等を取り巻く現実の中で.先の福味氏は「中国残留孤 児・婦人の帰国受け入れを行政がすすめているのですから、行政の責任で次の

ことが行なわれるべきではないかと思います。」とし、次のことを問題提起し ている。 「1、生活基盤の保障く自立の援助)、2、教育の保障(学校生活が 送れるような条件を保障)、3、受け入れ地域への啓発」の3点をあげながら  「特に、そのうちの教育条件が保障されていないことが中国からの生徒の進路

に端的に表れています。」そして行政と学校現場の教職員が早急に着手するべ き課題として「】.、日本語の系統的な指導 2、教科書等を使っての教科補充 指導・3、本人にやる気を持たせる指導として、ア 中国人であることを大切

にする。イ 支える学習集団、共に頑張れる集団 4、校内体制 5、中高の 連携」の4点を提案している。

 同氏はさらに重要な問題提起をしている。 「私たち教師はr生徒は、教師の 学習指導を受け入れる態勢を、持っているのが当たり前Sという前提で生徒に 接してきたのではないでしょうか」と問題を投げかけ、さらに続けて「多くの 場合その家族の自主的な意思決定の結果としての 渡日 と受け止められ、自 主的な意思決定の結果であれば、日本語習得の責務は、保護者および本人の責 任ととらえてきたのではないでしょうか。」と問い掛ける中で「i残留婦人や 残留孤児の家族』の残留と『帰国』の経緯から考えて、日本語習得・日本の学 校教育の習得を、本人と保護者だけの責任とするわけにはいきません。 r帰国

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生徒』とのかかわりは、単なる 対策 にとどまらず、日本の教育が、国際化 していくための一つの重要な課題であるように感Oられます。」と結論づけて

いる。 (47)

 この方向性は、学校という実践の現場からでてきた意見として、大変貴重な ものである。つまり、教師たちがその実践のなかで気づかないままに行なって きた「文化的善意」の押しつけという傾向に、実践の主体である教師自らが、

そのことを内省しながら、次のあるべき次元を模索する行為に、つながること であるからである。

 そして、 「中国帰国者問題」の本来の当事者である「中国帰国者」本人とし ての生徒およびその家族の立場に立ちさった実践活動の新たな展望に結びつく

ものである。

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第6節 中国帰国生徒の進路等に関する課題と分析

 1 中国帰国生徒にとっての今後の進路の課題

 東大阪市立盾津中学校で常勤講師として、中国帰国者生徒の指導に、献身的 な努力を傾けている中国人講師としてのロ尼哺(ニイナン)氏が「来日した中 国の生徒と共に」と題する論文報告を「解放教育」 (NO331,1995年9月号)に 発表している。

 そこで進路について論及しているが、同氏は「中国人生徒の最大の課題は、

日本語の習得というく言葉の壁〉を乗り越えることですが、さらに、義務教育 の最終段階には、大きなく進路の壁〉が待ち構えています。日本語の理解力が 不足しているという理由だけのく低学力〉で高等学校の入学試験の壁をクリア できにくいという事実があります。」f4g)と指摘している。そして続けて「今 年の3月までに、25名の卒業生を送りましたが,高校進学者13名(うち中退者

1名)、テクノセンター5名(うち中退者3名)、アルバイト7名となってい ます」(4ωと卒業生たちの進路状況について報告している。

 この点についての分析は、上記の第5節でも触れたので省略するが、中国帰 国者生徒にとって、日本の受験制度は、かなりの障壁となって彼らの前に立ち はだかる現実があり、進路選択にあたって、当事者たる彼らの人生のうえで、

最も重要な位置を占めるはずの進路の保障がされるどころか、むしろ阻害され ている現況がある。

 こうした状況に対して、近年σ)研究動向として注目されることは、・外国人労 働者やその子どもたちの学習権保障の必要性が、唱えられる傾向にあることで

ある。それらの主張の論理展開の特徴としては、外国より来日してきた暗々に 対する生活権の保障の、世界的傾向としての動向を説くなかで、彼らの固有に 持つ法的権利としての主体がもつ存在の在り方を、その論理の基調とするとこ ろにある。その論理展開のなかから、生存権的、教育権的、そして学習権的把 握という観点が導きだされている。

 こうした主張と論理展開の中心となり、またその口火を切った研究者のなか

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で、特に野元弘幸氏の論文は、無視できない意味を持ち、かっ重要な位置にあ ると思われる。

 日本教育学会編の「教育学研究」 (1994年9月発刊の第61巻第3号P242)に おいて、野元氏は、「外国人労働者やその子どもたちの学習権保障」と題する 研究論文の中で、上記に関連する論調で、論を展開する。つまり「在日の外国 人労働者の多くは、日本語によるコミュニケーションに困難を感じているだけ ではなく、地域や職場で様々な問魑に直面しているにもかかわらず、それらを 解決していくための学習の場を十分に保障されてはいない」(5ωとし、またこ の他にも「外国人労働者に伴われて来日している子どもたちも、学校では母語 や母文化の学習を保障されないまま、日本人児童・生徒とほとんど変わらない カリキュラムで教育を受けているのが現状である。」{5、)といった外国人労働 者とその家族が置かれた現状を分析する中で、「子どもたちの学習権保障の新 たな時代を開くと思われる」(: 2)「子どもの権利に関する条約」と「すべての 移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」に注目しながら、外国人労働 者およびその子どもたちの学習権保障について検討している。そして外国人労 働者やその子どもたちの生活・就労・教育に関する調査結果に基づいて、彼ら

の学習権の具体的内容とその構造について言及し、教育行政の諸課題を提示し

ている。

 伺氏の主張の根底にあることは、外国人労働者やその子どもたちが、固有に 保持している基本的権利としての「生存権と学習権」であり、 「社会権と教育 権」の尊重と実質的な制度的保障の必要性についてである。

 このような、研究者による、この問題に対する提唱と分析とはまた別の角度 から、学校教育の実践現場の中から、これらの問題に関わりを持つ数多くの現 場の教師からも、実践に基づく貴重な報告と提案がなされている。多くを紹介 することは、紙数の関係で省略するが、それらの中で特に注目されるのは、学 校現場の実践的報告論文として発表された、先に掲げた曜哺(ニイナン)氏の 報告論文である。

 そこでは、実践をとおして導きだされたことがらが、6点にわたり、提案さ

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