力検査対象の5教科に関して配慮をする内容である。具体的には、国語に関し ては作文により、社会は個人面接のみとし、数学、理科、英語に関しては10分 間の時間延長を認め、難しい漢字にはふりがなを付与するという内容で実施さ れている。なお昨年度の実績は、全日制に14人、定時制に4人の計18人の合格 が認められた。長野県の場合は、この適用が1校単位ではなく、各高校毎に必 要に応じて、県内各地に点在する中国帰国者生徒を対象にして、運用されてい
る実態である。(12)
東京都では、1986年度から都立高校の入試において、 「引揚生徒を対象とす る海外帰国生徒学級1という名称で、中国帰国生徒に対する特別募集枠を設け ている。定員枠は1校あたり、1991年度から受け入れており、その当時におけ る中国帰国生徒の在籍者は10名である。1992年度現在における中国帰国生徒の 受け入れ都立高校は11校である。そして1994年度現在においては、受け入れ校 は13校にまで拡大した。1994年度現在の東京都内の各都立高等学校の在籍者の 内訳は、1年生に3名、2年生に2名、3年生に6名の総計11名である。u3)
東京都や長野県の場合、この中国帰国生徒を対象とする特別募集枠や募集枠 外の特別配慮が設置されていることからみて、高等学校におけるアファーマテ
ィブ・アクションへの動向としての実例として把握することができる。
しかしながら、現行の東京都立の高校において、中学校から高校へ入学して きても、高校教職員側の受け入れの組織体制の不備のため、その制度の理念と は裏腹に、中国帰国生徒が、高校を中退するケースの率が高いという実態があ る。このことは、受け入れた側の高校教師の側の方で、むしろこの問題に対す る不適応状況が起こっているという逆現象が起こっている。高校現場のなかで は、この特別枠制度ができた頃、現場の教師たちの側では、東京都教育委員会 からの押しつけ的、強制的な形態であるとして受けとめる傾向もあった。しか し、現在では、共生の教育の重要性への認識の下地が、教職員の間にも一定の 広がりを持つ芽生えが、生じ始めている。(、4)こうした動きは、東京都の中国 帰国生徒を受け入れている各高校代表者が集まり、この問題に関係する高校の 教職員関係者が、お互いに情報交換や連絡機能を持ち合うためのく東京都立高
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等学校中国帰国生徒受け入れ校連絡協議会〉という名称のネットワーク組織が できあがる契機にもつながっている。c、5)
こうした事例は、中国帰国生徒等である当事者自身の、生活実態を背景とし た、長期間にわたる学校現場を中心とした取り組みの積み重ねと、広範囲な運 動の重要性が必要であることを表している。
ウ 大阪府の高校入試制度の問題点
大阪府における公立高校の入試においては、中国帰国生徒を対象とした制度 としての特別枠は、設置されていない。このことについては、既に、第1章の 第1節においても触れているので、ここでの再びの論述は避けるが、その入試 の制度の前提として、機会均等と平等の原則を建前としているが、実は、その 理念そのものが、文化的再生産と貧困の再生産につながることは、今日までの 研究成果からも明らかである。
大阪府においても、積極的に差別を解消する観点からのアファーマティブ・
アクションの立場に立ちさった、新たな教育政策が必要であるといえるのであ る。その意味で、四国学院大学や長野県立高校また東京都立高校等との事例と 同じく、特別枠の制度の設置は、単なる特別の方法ではなく、積極的に課題を 解決していく方向性としての理念であり、まさしくアファーマティブ・アクシ
ョンであるといえるのである。
3 「多文化主義教育」を唱える動きについて
近年の、中国帰国者をはじめとしての、 「ニューカマー」等の人々の増加に より、さまざまな社会的問題が生じてきていることの現状については、既に、
上記の各章において論述してきたが、こうした社会的変化のなかで、新たな社 会づくりのための理念が提唱され始めている。それらのなかで、とりわけ注目 されるのは、〈多文化主義教育〉とか、〈多文化教育〉、またく多文化共生社 会〉などといわれる論調である。これらの理念の概念枠等については、既に第 2章でも触れたので割愛するが、その特徴として、〈内なる国際化〉への方向
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性とく同化と排外〉を脱するという視点がそこに盛り込まれる形で論Cらてい る点があげられる。
学校教育現場からのく新たな渡日者〉をはじめとするくニューカマー〉に対 する実践的なとりくみのなかでも、その理念の必要性が唱えられ始めている。
その代表的な例として大阪府を中心として、展開されている大阪府在日外国 人教育研究協議会(略称、府外教)や、あるいは大阪市外国人教育研究協議会
(略称、「大阪市外教)等々の活動内容は、上記のく多文化共生社会〉またく多 文化主義教育〉の理念の実践的分野からの提唱である。
先にあげた大阪府在日外国人教育研究協議会(以下、府外教と略す)は1992 年に発足し、これまで1995年現在で、過去3回の教育研究集会の積み上げの実 績を持っている。府外教が発足当時からかかげているスローガンのなかで、そ の研甕集会報告集のタイトルにも一一貫して、表記されているが、〈ちがいを豊 かさに〉という下葉である。その他の表現として、 「在日外国人の子供たちの 未来を保障する教育の確立をめざして」といった表現や、また「多文化共生の 社会を切り拓く子どもたち1とか「共生社会への変革をめざす個性豊かな子ど
もたちを」 L6>という表現が、その教育研究集会の要項や報告集に、散見され るのである。
こうした動きの他に、全国在日朝鮮人教育研究集会(以下、歴朝研という)
の要項集(1995年8月開催)においても、 「新渡日の子どもたちの教育」の分 科会での数本のレポートに基づく報告発表においても、多文化共生社会の観点 から論じられる報告が多い現況にあることが指摘できるのである。
また、各全国の市町村の実践記録等の…覧が掲載された『外国人子女教育の ための資料便覧 第3版S (大学入試センター研究開発部・小野博研究室編発 行・平成7年3月)に掲載された全国の「外国人子女教育」のための資料や実 践内容等を概観しても、「違いを認めあい、ともに学ぶ」という基本姿勢が共 通するものであるということが指摘できる。
再び、大阪府の事例にもどるが、大阪府下の各地において、各市町村で、独 自の各市町村の外国人教育研究協議会(以下、市外教という)があいついで、
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設立され、先の、府外教と連携した活動を展開して、その広がりは、ますます 深まりをみせており、期せずして「違いを認めあい、ともに学ぶ」といった、
多少の表現の違いはありながらも、大勢においてく多文化共生社会〉<多文化 主義教育〉の基本的理念を基調としての、地道な活動が各地において展開され
ている。
さらにまた新しい動きとして、大阪府のなかで「ブロック外教」ネットワー クが創立される動きがある。これは具体的には、高校受験ブロックを中心とし た小中高の連携ネットワーク組織であり、既に、三島ブロック外教が、設立済 みである。正式な名称は「三島地区在日外国人教育研究協議会」と称し、1994 年9月8日に創立されたものである。 (略称三島外教)この組織に所属するの
は、大阪府下のなかでも、北摂の三島地区を中心として、高槻市外教、吹田市 外教、茨木市外教、摂津市外教、島本町外教等々の5っの市町外教が集まって 結成されたものである。u7)この他にも豊能地区においても、1995年10月段階 で準備中であったが、同年12月現在の時点で、既に創立されており、府下のな かでも、2番目に設立されたブロック外教(略称、豊能外教)である。この2 っのブロック外教の他にも、中河内地区、泉南地区等では、現在においては高 校との交流会の積み重ね作業が、進行中であり、近い将来において、大阪府下 の東西南北の各地域にブロック外教が創立されることにより、新たな渡日者を は じめとしたくニューカマー〉等に対する教育活動の実践的高揚が現実的なも のとなっている現況である。
このように、学校現場からのく多文化共生教育〉の主張は、広がりを持ち始 めているが、その中でも、こうした動向を端的に示す1つの特徴的な事例とし て、茨木市外国人教育研究協議会(茨木市外教)の動きと茨木市同和教育研究 協議会(以下、茨同母と略す)・中国ベトナムプロジェクトの活動内容を提示 しておきたい。 「茨木市外教1は、1993年置月30日に設立された民間の教育研 究団体である。その設立趣意書によると、今後とりくむべき方向として、6点 のことが明示されている。その第4点目にあげていることは、 「在日外国人の おかれている歴史的、政治的背景や生活の現実を正しく認識し小・中学校教育
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