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 〈3章のまとめ〉

 日本社会のなかにある「同化と排外」そして「文化的善意」のなかに、巧妙 に仕組まれた「隠された同化と排外の意識とシステム」に対して、「中国帰国 者」に何らかの関わりのある人々の間で、そのことの問題性が意識されはじめ てきている現状にある。

 こうした「中国軍国者」や新たな渡日者等への、日本語教育やその他の生活 支援活動等のボランティア活動をはじめとして.近年の新たなとりくみのなか で、表明され明確化してきたことは、第1に、 「中国帰国者としてのアイデン ティティを尊重することを基本」として、第2に、 「中国文化を背景として渡 日してきた経緯をこそ大切」にすることにより、第3に、 「彼らの持つ文化や 言語を保持し、維持することこそが最大限に尊重」〔2。,されなければならない

ということである。

 「異文化の違いを認め」、そして「自他のアイデンティティの確認と尊重」

を基本としてなされる文化システムや文化様式とその社会を創設することこそ が、このことを克服するための重要な課題である。 2、)

 この解決の鍵を握るのは、学校教育をはじめとして、その他の教育機関を含 めての社会的な教育機能の「教育1の有り様にこそかかっている。

 日本の文化システム・文化様式を、「中国帰国者」をはじめとする「社会的 不利益者」・「マイノリティ」の立場に立ちさるシステムや様式へと転化させ ていく方向性が提示され始めている。今後の日本や日本社会がどちらの方向に 行くのかの、拮抗関係の時期にあるといえる。

 そして、もっとも、悶題にされなくてはならない、今日的課題は、「文化的 善意1のなかに見られる「自文化中心主義」の問題性こそが、今後、実践的な 場において問い直しがされなくてはならないもっとも重い課題である。

 このことが克服されるとき、はじめて「中国帰国者」をはじめとする「ニュ ーカマー」や「オールドカマー一」へのとりくみが、質的に高められ、変化し、

ひいては日本社会の在り方や文化様式・文化システムの変容にまで迫り得る性 格を持つものであるといえるのである。

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〈第3章 註〉

(1)横田耕一「アメリカにおける積極的差別解消策〈アファーマティプ・アク  ション〉」 『世界差別問題叢書4・現代世界の差別問題』明石書店所収

(2)池田寛f第1章アメリカにおけるマイノリティ政策の展開について」『人   間・文化・まちづくり一付属報告書一』所収、関西人権啓発研究会、1991   年発刊

(3)池田寛同上報告書P95

(4)池田寛同上報告書P95

(5>池田寛同上報告書P95

(6)四国学院大学発行の1996年版「学生募集要項入試ガイド」

(7)同上募集要項

〈8)同上募集要項

(9)これらの記述は以下の文献によった。

 末吉高明「大学教育におけるアファーマティブ・アクションの試み一四国  学院大学特別推薦入学選考一」月刊部落解放NO3791994年9月号

(10)同上のとおり、末吉高明「同化論と差異の認識」 『シリーズ、現代の差別   を考える128S月刊同和教育第303号、1994年12月25日、

(11>同上のとおり、末吉高明「大学におけるアファーマティブ・アクション」

  RAIK通信第第37号、在日大韓基督教会、在日韓国人問題研究所発行、

  1994年9月30日

(12)長野県教育委員会への1995年12月11日の筆者の電話取材による担当職員の   応答を基にして筆者の責任において編集する。

(13)東京都立足立東高校B教諭「都立高校中国帰国生徒の現状」全国在日朝鮮   人教育研究集会報告レポート

(14)第16回全国在日朝鮮人教育研究集会・1995年8月20〜23日第11分科会・

  〈新渡日の子どもたちの教育〉における東京都立一橋高校A教諭による報   告「東京の都立高校における中国帰国生徒の現状」を基にする。

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  また東京都立千歳高校の埼玉県所沢市に所在する中国帰国者センターに訪   問した同都立千歳高校の4名の教員に対する同センター職員のインタビュ   一による。出展・『中国帰国者のための教育指導者ネットワークづくりを   めざして・ニューズレター』創刊準備号・1994年7月25日・中国帰国者定   着促進センター教務課講師会発行の掲載記事による。

(15)東京都立高等学校中国帰国生徒受け入れ校連絡協議会編集発行になる  「いっしょにやろうヨー中国から来た仲間、そして幅広い仲間とともに一一 」

(16>第1回大阪府在日外国人教育研究集会要項および報告集、第2回府外教   研究集会、第3回府外教研究集会要項、報告集「豊能大会」等

(17)三島地区在日外国人教育研究協議会設立趣意書

(18)1993年度茨木市外教基調報告「隣人と歩む」掲載(1994年度第号)

(19)「大阪府外国人教育研究協議会第3回研究集会」1995年6月17日)

   大阪府立松原高校の発表報告・資料・同大会報告集

   「中国からの渡日生の進路保障一国際化の中心となるべき外大が一」

(20)国際人権規約「言語、文化の保持一条約」

  国際教育法研究会血荒牧重人他『教育条約集』三省堂1987

(21>加藤鉄三郎「現代社会と人権問題」 『現代社会と社会学』誠信書房所収

  P 165  v P 167

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終章  「社会的教育jの今後の課題と展望

一社会的援助活動としてのf新たな社会的教育」を求めて一

第1節 本論の研究の基本的視点と姿勢について

 いままで、第1章から第3章までにわたりみてきたことは、第1章では、中 国帰国生徒とその家族がおかれた現状を探るなかで、その現状の問題点と課題 について検討してきた。特に中国帰国生徒にとって、彼らが抱える問題の一端 は進路の問題に集約的に現われている。またアイデンティに関係することがら は、中国帰国2世3世の立場の者達にとって、自己の存在感をめぐる重要な課 題である等々について述べてきた。第2章では、国際理解教育等に関連する概 念を検討しながら、国際化の中身をめぐって、地域づくりの実態は具体的には

どうであるのかについて、行政や民間の施策や活動の現状等を探り、そのなか に見られる特性を、内なる国際化と地域づくりという観点から考察してきた。

明らかになってきたことは、未だ社会的不利益者やマイノリティの人々の立場 に立った視点が欠落していたり、あるいは希薄である現状が在ることを否定で きない。第3章においては.多文化主義教育・多文化共生社会とアファーマテ ィブ・アクションに関する動向についての日本社会における有り様を、文化資 本や社会資本との関わりのなかで、また同化と排外に関する観点から考察して

きた。

 こうした考察の基本的姿勢や視点については、以下のとおりである。従来の 社会教育や生涯教育の理念と施策に批判的考察を施すことにより、今後の教育 現場における実践的展開のための指標が明らかになるということ、社会教育と 生涯教育を、社会的援助活動[社会的サポート]の視点からとらえなおすこと により、その他の「社会福祉援助活動等」との有機的連携の在り方が模索でき るということである。

 また、社会教育、生涯教育の対象として、 「社会的弱者」・「社会的不利益

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者」を中心に据え、彼らへの社会的援助活動を地域の課題とすることにより、

裡:会福祉と社会教育,学校教育等との有機的連関の深化がはかられ、彼らを地 域生活の主体とするることが可能となるということである。

 その点からいえば、 [ユネスコの学習権宣言]やE・ジェルピのいう生涯教 育体制を整備するhで大切なことは、次の視点である。それは、つねに「不利 益を被っている人々、抑圧されている人々、排除され搾取されている集団]に

(ジェルピの丁生涯教育』)焦点をおく視点である。具体的にあげれば、 「高 齢者、障害者、在日外国人.、被差別の立場にある人、被差別部落出身者、社会 的弱者、女性、少数者等々」の人びとである。そしてまた、小林文人氏が唱え るように「忘れられた人々」 (6公民館の再発見一その新しい実践一」)の要 求に応える教育とならなければならないという内容と立場に立つ、「生涯教育 理論」を分析の視点としてきた。

 社会教育関連施設のなかでも、国際交流センターや公民館や学校教育また中 国帰国者定着促進センター等で実施され、取り組まれている「日本語教育」等 の事業に着目し、実体化していく方向性こそが重要である。こうした認識に基 づいて追求をはかり、そして「中国帰国者」や、在日外国人に対する公的教育 機関の社会的援助活動としての機能の中で、特に「日本語教育」のありかたや そのとりくみを、研究事例としてとりあげ考察してきた。そして国際交流セン ターや公民館をはじめとする、他の社会教育的関連施設と社会福祉事業等の連 携による、 「社会的教育活動の構造化」を模索することが、これからの社会教 育や社会福祉の在り方を、深化させる作業につながると位置づけてきた。

 このrB本語教育」は、単なる言語教育の位置のみにとどまらない。つまり

「日本語」と「医療、福祉、教育、保育、文化」そして「就労、職業訓練、地 域コミュニティ」などのことがらに、多面的に展開し、社会教育や社会福祉の 在り方にまで迫ることのできる課題である。ここに「中国帰国者」と社会教育 や社会福祉等との接点があり、また研究の意義があると思われる。

 今までの社会教育概念である「伝統的社会教育」は、 [与える、教える、上 から下への啓蒙]の側面が強く、それに対してこれからの「新しい社会教育」