時差来襲する長期的な影響に分類される。
(a)同時来襲による影響
2つの自然現象が同時に発生する可能性があるため、その重畳の影響を評価する必 要がある。ただし、次の条件を満足する場合は除外できる。
条件1:事象として物理的に同時に発生しないこと(例:高温+積雪) 。 条件2:重畳の可能性が非常に小さいこと(例:津波+竜巻)
一方の自然現象による影響と他方の自然現象の影響が重畳し、その影響を増大させ るケース(例:火山+降雨など)があるため、以下の相互影響及び発生順序を適切に 考慮する。
a)相互影響
① 同一の影響モードの重なり:影響モードが同一であり、事象が重なり合うこ とで影響度合いが大きくなるもの(例:積雪+火山灰による荷重) 。
② 自然現象の影響の変化:一方の自然現象の影響により、他方の自然現象の前 提条件が変化し、元の自然現象の影響度合いが大きくなるもの(例:火山灰
+降雨による火山灰の密度変化) 。
③ 他の自然現象の対策設備への影響:一方の自然現象による影響が、他方の自 然現象に対する設備耐力や防護対策に影響を及ぼすもの(例:竜巻による避 雷鉄塔の倒壊後、落雷の影響) 。
④ 新たな損傷・機能喪失モードの発生:自然現象が重畳することによる新たな 損傷・機能喪失モードが生じるもの(川岸で地すべりにより川がせき止めら れ、川の水位が上昇、その状態で地震が発生し決壊して鉄砲水が発生する) 。
b)発生順序自然現象の発生の順序によって生じる影響の違いを考慮する(例:火山灰が蓄積 した後に降雨が発生すると影響度合いは大きくなるが、降雨の最中に火山噴火が発 生しても火山灰は拡散しにくくなり、影響度合いは小さくなる。 ) 。
(b)時差来襲による影響
自然現象の同時発生はないが、ある自然現象が別の自然現象の防護設備に影響を与 え、その状態が長時間持続するものについては当該設備に生じた影響を緩和・除去、
修復するのに必要な時間、あるいは他の防護対策を実施するのに必要な時間の観点か ら重畳事象を考慮する(例:地震+津波、竜巻+地震など) 。また、長期影響について 検討する際は、発生する自然現象の順序によって生じる影響の違いについても適切に 考慮する。
自然現象の重畳を考慮する必要のある範囲の設定について、 「自然現象の重畳が発生
3.2.1.2-4
する確率が十分低ければ検討対象外とすることができる」とし、その条件を「プラン ト寿命中に発生する自然現象重畳の発生確率」としている。
(2)本研究に適した重畳事象の選定方法の考案
平成24年度に実施した単一外部ハザードのスクリーニングを活用して、重畳事象の選 定方法を考案した。
本研究では、網羅的に作成された外部ハザードリストからスクリーニングプロセスを経 て研究対象とすべき単一外部ハザードを平成24年度に6つ選定した。これらの6つの外 部ハザードに対して網羅的に重畳関係を調べるため、まず、IAEA[3.2.1.2.1~3.2.1.2.3]
及び
OECD/NEA[3.2.1.2-6]を参照して、重畳関係を調べる対象を網羅的に抽出する。抽出された対象には、自然現象及び偶発的に発生する人為的な事象が含まれる。この抽出され た対象を基に
PRAの評価対象を絞り込むため、図
3.2.1.2-2に示す流れに従ってスクリー ニングを行う。
米国の軽水炉を対象に実施された外部事象
PRA[3.2.1.2-16、3.2.1.2-17]では、表3.2.1.2-1
に記載された5つの基準を設けて外部事象のスクリーニングを実施している。
本研究ではこの5つの基準によるスクリーニングを図
3.2.1.2-2における「第1スクリー ニング」として適用する。ここで特筆すべき点は、単一外部ハザードのスクリーニングで はプラントへの影響がなく評価対象外となるものであっても、他の外部ハザードとの重畳 影響を考えることでプラント影響が有意になる場合があることである。例えば、霧は単一 ハザードとしてはプラントへの影響がなく評価対象外となるが、火山灰の降下中に霧があ る場合には、フィルタ目詰まりといったプラント影響の可能性がある。
次に、重畳影響を考える対象を本研究の範囲に合致するものに絞り込むため、図
3.2.1.2-2
における「第2スクリーニング」を行う。この過程で、人為事象を将来の課題
と位置づけて自然現象のみを評価対象とし、プラントの最終ヒートシンクが空気であるこ とを鑑みて、自然現象のうち主にプラントの上方からのハザードを選定し、地震や津波と いったプラント全体あるいは地表面付近で影響する重畳事象は別途評価することとする。
さらに、類似事象は一つにまとめることとする。
最後に、日本保全学会ガイドラインを基に、同時来襲と時差来襲を区別した上で重畳に より影響が増大するかを考慮した「第3スクリーニング」を取り入れて、重畳事象を選定 する。
(3)重畳事象の選定
上記で考案した選定方法に沿って、第1スクリーニングを実施した結果を表
3.2.1.2-2に示す。重畳影響を考える対象のうち、表
3.2.1.2-1のスクリーニング基準に従い、評価
3.2.1.2-5
対象外と判定したものに、判定に適用したスクリーニング基準の番号を記した。選定対象 として残ったものには〇を記した。
次に、第2スクリーニングを実施した結果を表
3.2.1.2-3に示す。ここでは、自然現象 でないと判定されたものに
A、上方からのハザードでないと判定されたものにB、類似事象としてまとめられたものに
Cと記述し、それらに当てはまらないものを選定対象として残 し、〇を記した。この過程で、人為事象である火災及び敷地内外の施設影響は排除された。
高潮、津波、雪解け水、地震、地滑り、雪崩は上方からのハザードにあたらないため、別 途評価することとした。ただし、地滑りは異常降雨によって発生する可能性が高いことか ら、異常降雨との重畳影響を考える際の重畳事象として選定され、雪崩は異常積雪によっ て発生する可能性が高いことから、異常積雪との重畳影響を考える際の重畳事象として選 定された。落雷はプラント全体にわたって影響を及ぼすため別途評価することとし、ここ では検討対象外とした。 水面上で発生する竜巻及び潮を伴う嵐は、 モデルサイトの特性上、
竜巻が海上からプラントに近接することに照らして、竜巻との類似事象にまとめた。極度 の気圧変化は強風または竜巻によって生じることが考えられることから、これらの類似事 象にまとめた。霜、水面の氷、氷晶、雪嵐は、低温に関連することから、低温の類似事象 にまとめた。雹は低温時の強風や竜巻時の飛来物との類似事象とみなした。
第3スクリーニングでは、 「a:同時来襲」及び「b:重畳による影響増大」の可能性があ る場合、または「c:時差来襲時に防護設備への影響」がある場合に、重畳影響を考える対 象として選定し、これらにあてはまらない場合に検討対象から除外した。例えば、 「高い気 温」は、森林火災と重畳する際に最終ヒートシンクである大気温度の上昇を増大すること で除熱能力を低下させることから検討対象とし、他の事象との重畳の際には影響が増大す ることはないことから対象外とした。この過程で検討対象に残った事象の組み合わせは、
表
3.2.1.2-4において、
a、bまたは
cと記入されたものである。最後に、これらについて、
3.2.1.2
(1)
b.(a)節で示したとおり、相互影響と発生順序を考慮して重畳影響を検討し、
重畳事象として考慮すべきかを判定し、表
3.2.1.2-5にまとめた。以下に検討の概要を述 べる。
まず、3.2.1.2(1)b.(a)節の「条件
2」に記された「可能性が非常に小さいこと」を根拠に重畳事象を除外することは避けた。
自然現象のうち、強風、降雨、積雪、低温のようにハザードの強度を表す指標(例;強 風の場合は風速[m/s]、 降雨の場合は降水量[mm/h]等) を明確に定義できるものについては、
その自然現象の単独発生ではプラントに影響を与えないほど小さい強度の範囲であっても、
重畳の組み合わせ次第ではプラントに影響を与える場合には重畳影響を考慮した。
一方、霧のようにハザードの強度を表す指標を定義しにくい自然現象については、単独
発生においてはプラントに影響を及ぼさない場合であっても、重畳の組み合わせによって
3.2.1.2-6
プラントへ影響を及ぼすかどうかを検討した。
この他、単独の発生でプラントに大きな影響をもたらす可能性がある竜巻、火山、森林
火災及び斜面崩壊については、これらが重畳することによる相互影響により、より大きな
影響をプラントに及ぼすかを主に検討した。
ドキュメント内
外部ハザードに対する崩壊熱除去機能のマージン評価手法の研究開発(PDF:23.4MB)
(ページ 131-134)