3.1.4-11
を用いて、マージン評価を行う。補助冷却設備は(3.1.4-14)式により、機能喪失に至る ことはない。
図
3.1.4-7は海水ポンプのマージン評価結果を示す。左図は屋外水位係数
0.1の場合で
あるが、排水溝の閉塞がない排水能力係数
1の場合はマージンが非常に大きいが、閉塞を 考慮して排水能力係数が
1/10になった場合はマージンが小さくなるものの、50mm/hr の異 常降雨に対しても
300hr程度のマージンを有することが分かる。右図の屋外水位係数
0.5の場合では
1時間降水量が大きい場合にはマージンは小さいものの、排水溝の閉塞物を除 去して排水能力を高めればマージンは大きくなることが分かる。図
3.1.4-8は海水ポンプ のマージンに対する屋外水位係数の影響を示しているが、1.0 と
0.5はさほど変わらない が、0.5 から
0.1にすると大きく変化する。実際には降水のうち海に流れ込む分も多く、
水位上昇は有意でないと考えられるため、0.5 よりも
0.1程度で想定しておいてよい。
図
3.1.4-9はディーゼル発電機室の水位上昇履歴を示す。200mm/hr の異常降雨時に排水
能力係数
0.1、屋外水位係数0.1の場合、90 時間程度で水位
1mに到達し機能喪失に至る。
図
3.1.4-10はディーゼル発電機室のマージン評価結果を示す。排水能力係数
0.1を用い
て、屋外水位係数は
0.5と
0.1で計算を行った。海水ポンプと比べると、建物内浸入によ る時間遅れを考慮しているため、マージンは大きくなっている。例えば、排水能力係数
0.1、屋外水位係数0.1の場合、200mm/hr で比較すると、海水ポンプの
65hrに対して、デ ィーゼル発電機は
90時間のマージンを有している。
図
3.1.4-11は電気設備室の水位上昇履歴を示す。1 時間降水量にかかわらず屋上水位は
1.1m
で一定であり、浸水を考慮しても
115hrで
0.08m程度の水位であった。これから線形 外挿すると、1m 到達には
1,000hr以上を要するので、機能喪失には至らないと言える。
機器別のマージン評価結果として表されるのは海水ポンプとディーゼル発電機だけであ り、排水能力係数
0.1、屋外水位係数0.1を用いたマージンを図
3.1.4-12に示す。双方と も同程度であるが、例えば、100mm/hr を見ると、海水ポンプは
140hr、ディーゼル発電機は
144hrの猶予時間であり、マージンは非常に大きい。
(3)シーケンス別のマージン評価
a. イベントツリー降雨に対するイベントツリーを図
3.1.4-13に示す。イベントツリー1 及び
2はそれぞれ
3.1.4-12
図
3.1.4-12に示す機器別のマージン評価結果(排水能力係数
0.1と屋外水位係数
0.1)より、海水ポンプとディーゼル発電機の猶予時間の短い方をとることで、シーケンス別の マージンを評価できる。90mm/hr 以下では双方とも同じだが、90mm/hr 以上では海水ポン プの猶予時間を参照すればよい。したがって、シーケンス別のマージン評価は機器別のマ ージン評価結果を代用できる。実際には、補助冷却設備のダンパ手動調整は異常降雨時に は可能と考えられるため、異常降雨のみの外部ハザードに対して除熱失敗シーケンスは現 れない。
3.1.4.4
強風と降雨の重畳事象に対するマージン評価手法
(1)重要パラメータ(プラントに影響を与える因子)
強風と降雨の重畳事象を考えると、降雨によって強風に対する防護設備に影響を与える とは考えにくく、強風によって降雨に対する防護設備に影響を与える可能性がある。プラ ントに影響を与えるシナリオを検討した結果、強風と降雨の重畳事象時に崩壊熱除去機能 喪失に至らしめるシナリオとしては補助冷却設備排気部雨どいの強風時の飛来物衝突によ る破損、その雨どいの開口部に雨の浸入、雨水の繰返し接触による伝熱管の疲労破損が考 えられる(図
3.1.4-14参照)。ここでは、そのシナリオに対するマージン評価手法を開 発する。
前節で示したように、強風によって破損に至るには飛来物衝突が考えられ、最大瞬間風 速が重要パラメータとなる。一旦、構造損傷が発生し、その開口部から雨水が浸入する場 合には
1時間降水量といった降雨速度と降雨継続時間の組み合わせが重要パラメータとな る。
(2)機器別のマージン評価
a. 重要機器強風と降雨の重畳時に現れるシナリオで崩壊熱除去に必要な重要機器は補助冷却設備だ けとなり、次のような影響が考えらえる。
・強風飛来物による補助冷却設備排気部雨どいの破損
・排気ダクト出口ダンパ下部への雨水液滴の落下
・雨水液滴の空気冷却器伝熱管接触により発生する熱衝撃
・繰り返し雨水接触によって発生する熱応力による伝熱管疲労破損
上記のシナリオに従い、伝熱管疲労破損に至るまでの猶予時間をマージンと定義した。
b. 定式化
(a)飛来物による補助冷却設備排気部雨どいの破損
(3.1.4-3)式を用いて飛来物衝突による破損評価が可能であり、3.1.4.2 節を参照 する。
(b)排気ダクト出口ダンパ下部への雨水液滴の落下
排気部雨どいの破損後、空気冷却器排気ダクト内を雨水が落下して伝熱管部に接触
3.1.4-13
する。出口ダンパの開度によっては雨水はダンパに衝突してから落下すると考えられ るが、ここでは、ダンパには接触せずに伝熱管部に落下すると考えた。また、雨水液 滴がダクト内を落下していく過程で、伝熱管部で加熱された高温の空気と対向流の状 態で熱伝達が行われ、雨水液滴温度は浸入時から上昇していく。仮に雨水液滴温度が
100℃に達した場合には、雨水液滴は蒸発し、伝熱管部には到達しないものと仮定する。
雨水液滴と伝熱管部からの空気の間の熱伝達については、雨水液滴の落下速度と空 気冷却器排気速度が対向流となるため相対速度に基づく球体の強制対流熱伝達として、
Ranz-Marshall
の式を用いる[3.1.4-25]。
1/3 1/ 2
2 0.6 Pr Re
Nu= +
(3.1.4-15)
ここで、 Nu はヌッセルト数、 Pr はプラントル数(=0.7 )、 Re はレイノルズ数
( = v
dropD
drop/ υ
air)を表す。 D
dropは液滴直径、 v
dropは落下速度(終端速度) υ
airは空気の動粘性係数(400℃で
26mm2/s、500℃で39mm2/s、600℃で52mm2/s)である。λ
airは空気の熱伝導度(400℃で
33mW/m/K、500℃で40mW/m/K、600℃で46mW/m/K、)を用いると、空気側熱伝達係数 h
airは次式で求められる。
air air
drop
h Nu D
= λ (3.1.4-16)
大雨の時の液滴直径 D
dropは
5mm程度で、降雨時落下速度(終端速度) v
drop,0は
10m/sと言われている[3.1.4-26]。単一液滴の初期温度を
20℃と仮定し、単一液滴の熱バランスから温度上昇は次式で求められる。
1
( )
n n
drop drop n n
drop drop drop air drop air drop
T T
Cp V h A T T
ρ τ
+
−
= −
∆ (3.1.4-17)
1 air drop( airn dropn )
n n
drop drop
drop drop drop
h A T T
T T
Cp V
τ
ρ
+ −
= + ∆
(3.1.4-18)
ここで、 ρ
dropは液滴密度(998kg/m
3)、 Cp
dropは液滴比熱(4.18kJ/kg/K)、 V
dropは液 滴体積(= (4 3) ( π D
drop/ 2)
3)、 T
dropnは
nステップ時の液滴温度(℃)、 T
airnは
nス テップ時の液滴周り空気温度(℃)、 A
dropは液滴表面積(= π D
drop2)、 ∆ τ はタイム
ステップである。
空気冷却器内の空気流量 F
AC、断面積 A
ACとすると、降雨時落下速度 v
drop,0=10m/s を用いれば、空気冷却器内の液滴落下速度は次式で表される。
,0
/
drop drop AC AC
v = v − F A (3.1.4-19)
空気冷却器内出口温度で風量は変わることを考慮すると、液滴落下速度 v
dropは
400℃で
4.4m/s、500℃で5.1m/s、600℃で5.7m/sとなる。
(3.1.4-18)と(3.1.4-19)式を用いて、排気ダクト内の液滴温度を計算した結果
を図
3.1.4-15に示す。空気温度
400℃の場合、伝熱管位置(8.8mと仮定)に
2mmで
3.1.4-14
は
100℃に到達して蒸発することを表している。2.5mmでは液滴のまま伝熱管に衝突
することになる。空気温度
500℃の場合、3mmでは蒸発するが、3.5mm では液滴のまま 伝熱管に接触する。空気温度
600℃では、3.5mmでは蒸発するが、4mm では液滴のまま 伝熱管に接触することになる。なお、実際には、液滴径は表面の蒸発により小さくな るが、ここでは簡単のため、その効果を無視して計算した。また、入口側空気温度は 気象条件に左右されるが、伝熱管部で加熱された空気温度は伝熱管内のナトリウム温 度に影響を受けて入口側温度の影響は小さいと考えられるため、本計算では入口側空
気温度は
20℃とした。(c)雨水液滴の空気冷却器伝熱管接触により発生する熱衝撃
雨水液滴が伝熱管に接触すると、伝熱管部は局所的に温度低下が生じ熱衝撃を与え る。例えば、液滴直径
5mmの雨水は
600℃空気温度条件では排気ダクト通過中に約20℃上昇するから、顕熱は 5.5J
であり、潜熱
147Jに対して
4%程度と小さい。ただし、蒸発潜熱 Lv
dropは
2.26MJ/kgを用いた。2mm の場合であっても、70℃上昇するが、
顕熱は
1.2Jであり、潜熱
25Jに対して
4%程度と小さい。ここでは、顕熱の効果は無視して、潜熱分だけ考慮することとし、簡単のため局所的な温度低下のみを考慮する こととする。
伝熱管の熱容量を考えると、液滴と等価面積の伝熱管(約
3mm厚みを仮定)の温度 低下幅 ∆ T
tubeは次式で表される。ただし、雨水の蒸発温度
100℃を超えて温度低下することはないため、伝熱管初期温度と蒸発温度との差で制限されることを考慮する。
, ,
min
drop drop drop,
tube tube init vap drop
tube tube drop drop tube
V Lv
T T T
Cp C A t ρ
ρ
∆ = − (3.1.4-20)
ここで、 ρ
dropは液滴密度(998kg/m
3)、 Lv
dropは蒸発潜熱(2.26MJ/kg)、 V
dropは液滴 体積(= (4 3) ( π D
drop/ 2)
3)、 A
dropは液滴表面積(= π D
drop2)、 C
dropは液滴広がり係 数、 ρ
tubeは伝熱管密度(7,980kg/m
3)、 Cp
tubeは伝熱管比熱(500J/kg/K)、 t
tubeは伝 熱管厚み、 T
tube init,は伝熱管初期温度(℃)、 T
vap drop,は液滴蒸発温度(℃)である。
液滴接触により発生する熱応力 σ (kN/mm
2)は次式で求められる。
1
tube tube tube tube
E α T
σ υ
= ∆
− (3.1.4-21)
ここで、 E
tubeはオーステナイト系ステンレス鋼[3.1.4-27]のヤング率(193kN/mm
2)、
空気側熱伝達係数 α
tubeは熱膨張係数(1.61×10
-5/℃)、υ
tubeはポアソン比(0.3 を仮 定)である。
(3.1.4-20)式を用いて、雨水液滴接触による伝熱管温度低下を考慮した伝熱管温
度を図
3.1.4-16に示す。空気温度に合わせて伝熱管初期温度は
400℃、500℃、600℃
ドキュメント内
外部ハザードに対する崩壊熱除去機能のマージン評価手法の研究開発(PDF:23.4MB)
(ページ 75-79)