機は補助冷却設備より
40mm/hr以上では補助冷却設備の方が早いが、それ以下ではほぼ同 じ時期に機能喪失に至ることを示している。したがって、シーケンス別のマージン評価は 補助冷却設備を対象とした機器別のマージン評価結果を代用できる。
なお、本評価では、屋上で排水設備が閉塞して水位が数
mに到達することを想定したが、
実際には
1m未満で建物側壁側に流れ込み、補助冷却設備が浸水することはありえない。
したがって、異常降雨のみの外部ハザードに対して除熱失敗シーケンスは現れない。
3.1.6.11
火山噴火に対するマージン評価手法(H26)
(1)重要パラメータ(プラントに影響を与える因子)
火山灰の場合、積雪と同様に、通常は発生から到来までに時間がかかり到来後も数日は 継続すること考えられる。主な機能喪失要因は火山灰による空気取入口閉塞であり、建物 に堆積した火山灰の除去やフィルタに吸着した火山灰の除去は有効な対策ではなく、空気 取入口のフィルタの取替えが重要な対策となる。それを考慮すると、フィルタ閉塞(フィ ルタ取替え)に影響を及ぼす重要パラメータは火山灰の大気中濃度と降灰継続時間である。
(2)機器別のマージン評価
a. 定式化(a)大気中濃度
火山灰の大気中濃度は次式で表される。
tephra tephra tephra
tephra tephra
C L
t V
=
ρ
∆
(3.1.6-10)
ただし、
Ctephraは大気中濃度(kg/m
3)、
Vtephraは降灰速度(m/s)、
∆ttephraは降灰継続
時間(s)、 ρ
tephraは火山灰密度(kg/m
3)、
Ltephraは層厚(m)である。
降灰速度は、火山灰の終端速度とみなすと、火山灰粒子径から下記の沈降速度式に より降灰速度を算出できる[3.1.6-12]。
4 3
tephra air
tephra tephra
w air
V g d
c
ρ ρ
ρ
= − (3.1.6-11)
沈降速度式は火山灰粒子の沈降速度を自由沈降として考えてモデル化されたもので
3.1.6-18
あり、沈降速度は単粒子が静止した気体中を自由落下し、粒子の流体抵抗、重力及び 浮力の間に釣り合いの状態が生じたときの粒子の速度である。ここで、 g は重力加
速 度 (
=9.8m/s2) 、 c
wは 抵 抗 係 数 (
=0.44)
[3.1.6-13]、 ρ
airは 空 気 密 度
(=1.1kg/m
3)である。 ρ
tephraは粒子密度であり、1,000kg/m
3を想定した。
dtephraは粒子 径(m)であり、この粒子径によって終端速度は決まる。大気中に浮遊している火山 灰粒径を観測し、粒径分布の中央地は数十μm であると報告されている。例えば、
0.1mm
の粒径の場合、約
1.6m/sの終端速度となる。
(b)猶予時間(マージン)
空気取入口のフィルタ閉塞に至る前に、プラント作業員がフィルタを取り替えれば よいため、フィルタ閉塞に至るまでの猶予時間をマージンと定義する。ただし、その 猶予時間が降灰継続時間より長い場合、フィルタ閉塞に至る前に降灰が終了すること になるため、機能喪失には至らない。つまり、機能喪失となるのは、降灰継続時間よ り猶予時間が短い場合となる。
平成26年度に実施したフィルタ目詰まり試験で、フィルタの破損限界を取得して おり、7kg/m
2と設定する。各機器の吸込み風量は決まっているため、ある火山灰濃度 で吸い込む場合のフィルタの単位時間あたりの吸着量は、火山灰濃度
Ctephraと吸込み
風量 V
suctionの積で表される。このフィルタ吸着量でフィルタ破損限界 F
limitを除すること
により、猶予時間
Tmarginを算出でき、次式で表される。
limit margin
tephra suction
T F
C V
= (3.1.6-12)
各機器の吸込み風量 V
suctionは、ディーゼル発電機が
11,000m/hr、換気空調系が
5,000m/hr、メンテナンス冷却系が9,067m/hr、強制通風時補助冷却設備が2,833m/hrである。自然通風時補助冷却設備が
1,250m/hr である。(3.1.6-12)式に(3.1.6-10)式を代入すると、次式が得られる。limit
margin tephra tephra
tephra tephra suction
T F V t
L V
= ρ ∆
, if Tmargin≤ ∆ttephra(3.1.6-13)
一方、猶予時間が降灰継続時間より長い場合は機能喪失とならないから、次式で表 される。
margin
T = ∞, if Tmargin > ∆ttephra
(3.1.6-14)
b. マージン評価
各機器の猶予時間(マージン)は、フィルタ破損限界と吸込み風量が定数であるため、
大気中濃度の反比例で表される。機器別のマージンを評価した結果、大気中濃度が高くな
るにつれて、猶予時間が短くなる。特に、10
-3kg/m3以上では補助冷却設備でさえも猶予時
間は
10時間未満となる。
3.1.6-19
(3)シーケンス別のマージン評価
a. イベントツリー火山噴火に対するイベントツリーでは、メンテナンス冷却系は検討対象としないことと したが、非常用電源使用時にはポニーモータで冷却するため強制通風を考慮するイベント ツリーとした。機器別のマージン評価から、補助冷却設備は強制通風より自然通風の方が 猶予時間が長くなり、マージンが大きいことを示した。プラント運用を考えれば、強制通 風を停止して自然通風によりフィルタ閉塞までの猶予時間を長くすることも考えられる。
そこで、強制通風停止の判断をイベントツリーに取り入れた。
上記を踏まえて、ここで検討する炉心損傷に至るシーケンスは次のとおりである。
シーケンス
1:非常用電源が使用可能な状態で強制通風時に補助冷却設備のフィルタ閉塞(強制循環除熱失敗)
シーケンス
2:換気空調系フィルタ閉塞に伴う非常用電源喪失によって、強制通風時から自然循環に移行した後、自然通風時に補助冷却設備のフィルタ閉塞
(自然循環除熱失敗)
シーケンス
3:非常用ディーゼル発電機フィルタ閉塞に伴う非常用電源喪失によって、強制通風時から自然循環に移行するが、自然通風時に補助冷却設備のフ ィルタ閉塞(自然循環除熱失敗)
シーケンス
4:強制通風停止の判断により、補助冷却設備自然循環モードに移行した後、自然通風時の補助冷却設備のフィルタ閉塞(自然循環除熱失敗)
b. 定式化
シーケンス
1及び
4は、補助冷却設備の強制通風時と自然通風時の猶予時間となるため、
機器別のマージン評価で得られた猶予時間で代用できる。一方、シーケンス
2及び
3は、
非常用ディーゼル発電機あるいは換気空調系のフィルタ閉塞による非常用電源喪失が起き るまでは、補助冷却設備は強制循環除熱だが、それ以降は自然循環除熱になることを考慮 する必要がある。すなわち、次式で表される。
, , , ,
tephra suction ACS FC margin A tephra suction ACS NC margin B limit
C V − T +C V − T ≤F
(3.1.6-15)
ただし、
Tmargin A,は非常用電源喪失までの時間(hr)、
Tmargin B,は非常用電源喪失後の補助冷
却設備機能喪失までの時間(hr)、
Vsuction ACS FC, −と
Vsuction ACS NC, −はそれぞれ補助冷却設備の強 制通風時と自然通風時の吸込み風量(m/hr)を表す。ここで、
Tmargin A,は次式で求められる。
,
, limit margin A
tephra suction A
T F
C V
= (3.1.6-16)
ここで、
Vsuction A,は非常用ディーゼル発電機あるいは換気空調系の吸込み風量を表す。
, ,
margin margin A margin B
T =T +T
の関係から、補助冷却設備機能喪失までのマージンを求めることが できる。よって、シーケンス
1~4のマージンは次式で表される。
シーケンス
1:3.1.6-20
, limit margin
tephra suction ACS FC
T F
C V
−= (3.1.6-17)
シーケンス
2と
3:, , ,
, ,
suction ACS NC suction A suction ACS FC limit
margin
tephra suction ACS NC suction A
V V V
T F
C V V
− −
−
+ −
=
(3.1.6-18)
シーケンス
4:, limit margin
tephra suction ACS NC
T F
C V
−= (3.1.6-19)
c. マージン評価
火山噴火時のシーケンス別のマージンを評価した結果、大気中濃度が高くなるにつれて マージンが小さくなる。支配的なシーケンスは、シーケンス
3に相当するが、大気中濃度
10-3kg/m3以上では猶予時間は短いが、10
-4kg/m3以下では猶予時間が長い。噴火規模に応じ て適切に対処することが重要であることを示唆している。
シーケンス
1は補助冷却設備強制通風運転をしているため早くフィルタ閉塞に至り、猶
ドキュメント内
外部ハザードに対する崩壊熱除去機能のマージン評価手法の研究開発(PDF:23.4MB)
(ページ 122-125)