3.1.6-1
3.1.6
評価手法の整備(4年間のまとめ)
3.1.6.1
はじめに
平成24年度に既往研究からマージン評価手法を調査し評価手法の概念を構築するとと もに、種々の外部ハザードを調査し本研究で対象とする外部ハザードの代表性を検討・整 理した。平成25年度に外部ハザードに対する一般的なマージン評価手法を開発し、積 雪・竜巻に対するマージンを評価し、手法開発を行った。平成26年度に強風・降雨・火 山噴火に対するマージンを評価し、手法開発を行った。平成27年度に森林火災・重畳事 象に対するマージンを評価し、手法開発を行うとともに、コスト-ベネフィット評価手法 を構築した。平成27年度実施内容は前節までに記述していることから、ここでは、平成 26年度までの実施内容をまとめる。
3.1.6.2
マージン評価手法に関する既往研究の調査・整理(H24)
ストレステストは、安全上重要な施設・機器等について、設計上の想定を超える事象に 対して、どの程度の安全裕度が確保されているかを評価するとされた。評価は、許容値等 に対し、どの程度の裕度を有するかという観点から行われた。なお、許容値が最終的な耐 力に比して余裕をもって設定されている場合については、必要に応じ、技術的に説明可能 な範囲においてその余裕を考慮した値を用いることとされた。また、設計上の想定を超え る事象に対し安全性を確保するために取られている措置について、多重防護の観点からそ の効果が示された。国際的な活動状況を調べてみると、地震については日米欧においてマ ージン評価が実施されていた。津波については欧米では洪水として同様の手法で評価され ていた。
地震確率論的リスク評価(PRA; Probabilistic Risk Assessment)は、日本原子力学会
標準[3.1.6-1]に示される考え方に基づき、起因事象を選定する。次に、選定した各起因
事象に対して、事象の影響緩和に必要な機能を抽出し、イベントツリーを作成の上、事象
の進展を終息させる終息シナリオを特定する。耐震裕度の評価方法は、当該評価対象設備
の損傷モードに応じた地震動に対する評価値を求め、評価値が許容値に達するのはどの程
度の地震動に相当するかを算出し、耐震裕度を求める。各イベントツリーの耐震裕度の中
から、各イベントツリーの耐震裕度の中の最も小さいものとしてクリフエッジ(終息シナ
リオが成立しなくなる地震動)を特定する。
3.1.6-2
ける設備機器のマージンを示すとともに、炉心損傷に至る事象シーケンスについても対策 のマージンを整理することが可能である。
3.1.6.4
モデルサイト条件及びプラント情報の調査(H24)
(1)モデルサイト条件の調査
ナトリウム冷却高速炉原型炉の原子炉設置許可申請書(平成18年10月変更)
[3.1.6-2]によれば、原子炉施設を設置する敷地(発電所敷地)は、敦賀半島の北端に位
置し、福井県敦賀市白木に属する。敷地は日本海に面し、標高
200m地点を頂点とする北西斜面及び丘陵部にあり、北東から南西にかけて海岸線が形成されている。原子炉施設は
標高
20m~80mの丘陵部に設置される。地質は主として花崗岩類から成る。敷地の面積は約
108万m
2であり、ほとんどが山林原野である。
(2)プラント情報の調査
ナトリウム冷却高速炉原型炉の崩壊熱除去設備は補助冷却設備及びメンテナンス冷却系 設備を有している。補助冷却設備は強制循環のみならず自然循環でも冷却できる設備であ る。崩壊熱除去に必要な機器設備について、環境(外気、海水)と接している機器設備を 抽出して、崩壊熱除去に必要な機器設備に影響を及ぼす外部ハザードを整理した。
3.1.6.5
本研究で対象とする外部ハザードの代表性の検討・整理(H24)
(1)研究のスコープ
炉心損傷に至る事象として炉停止機能喪失及び崩壊熱除去機能喪失が挙げられるが、東 京電力福島第一原子力発電所の事故では、崩壊熱除去機能の重要性が認識されたため、本 研究では崩壊熱除去機能に着目した評価を実施した。また、一般に、トリウム冷却高速炉 では、最終ヒートシンクが大気であるため、プラント上方からの自然災害が重要であるこ とを鑑みて評価する必要がある。
(2)外部事象リストとスクリーニングの概要
まず、考えられる全ての外部ハザードを網羅的に抽出し、リストを作成することである。
IAEA(International Atomic Energy Agency
、国際原子力機関)[3.1.6-3、3.1.6-4 、
3.1.6-5]、 及 び
OECD/NEA(
Organisation for Economic Co-operation and Development/The Nuclear Energy Agency、経済協力開発機構原子力機関)[3.1.6-6]を参照して網羅的に外部ハザードをまとめた。ただし、本研究で検討する外部ハザードとは、
自然現象及び偶発的に発生する人為的な事象を指している。つまり、人為的な事象のうち、
日偶発事象であるテロは別途の評価が必要となることから、本研究の対象外とした。
PRA
の評価が必要な外部ハザードを選定するためにスクリーニングを実施することによ
って、PRA の評価対象を絞り、評価全体の効率化を図る必要がある。米国の軽水炉を対象
に実施された既往のスクリーニング手法は、NUREG レポート[3.1.6-7、3.1.6-8]に記載の
ある
5つの基準を設けてスクリーニングを実施している。以降、本研究ではこれを「第
13.1.6-3
スクリーニング」と呼ぶ。
(3)本研究のスクリーニング
本研究では、サンプルケースとして敦賀のモデルサイトを想定した。外部ハザードリス トを作成及びモデルサイトを選定した後、第
1スクリーニングを実施し、外部ハザードリ ストの事象全てに対して、PRA の評価が必要な外部ハザードと
PRAの評価が不要な外部ハ ザードに分類する。第
1スクリーニングにて
PRAの評価が必要な外部ハザードであると選 択された事象のうち、選択された幅広い外部ハザードの中から更に的を絞って評価を実施 するため、本研究の対象とすべき外部ハザードを選定する。ここでは、その選定過程を第
2スクリーニングと呼ぶ。
本研究では自然災害についての評価手法を開発することとしている。したがって、第
2スクリーニングの最初のステップは、第
1スクリーニングから選定された外部ハザードの うち、自然災害である外部ハザードを選択する。2 番目のステップでは、プラントの最終 ヒートシンクが大気である崩壊熱除去機能に着目して評価を実施するため、主に気象など プラントの上方からのハザードを選定し、それ以外の事象は別途評価とする。最後のステ ップとして、プラントに及ぼす影響の観点から類似する外部ハザードを
1つにまとめ、本 研究で対象とする
PRAの評価が必要な外部ハザードを選定する。
以上のスクリーニングにより、本研究で検討すべき
PRAの評価が必要な外部ハザードは 以下の
6つの事象及び重畳事象に選定された。
・Strong winds (e.g. hurricane, cyclone, typhoon)/強風(暴風、温帯性低気圧、
台風等)
・Tornado/竜巻
・Extreme rain/極端な降雨
・Extreme snow pack(including snow storm)/極端な積雪
・Volcanic phenomena/火山現象
・Forest fire/森林火災
・Any combination of the above as a result of a common initiating event
/外部ハザードリストの中の任意の重畳事象3.1.6.6
一般的なマージン評価手法の開発(H25)
(1)外部ハザードの特徴と指標
a. 地震地震については地震加速度、津波については津波高さを指標としてマージンを評価して
いる。地震の場合、発生から極めて短時間のうちに地震が到来することから、プラント作
業員は発生直後に地震による影響を防ぐ(例えば、サポートを追加して耐震補強する)こ
とはできない。大小の地震波が到来することになるが、本震の地震加速度は余震と比べて
相対的に機器の健全性に影響が大きいことから、本震の地震加速度が地震ハザードの指標
となる。つまり、短時間で地震加速度というハザード強度のみに着目すればよい。
3.1.6-4 b. 津波
津波の場合、地震発生後数分から数時間で津波が到来する。プラント作業員は地震後に 津波到来を認識し退避等は可能であるが、地震発生直後に津波による影響を防ぐ(例えば、
防潮堤を設ける)ことはできない。津波による損傷モードは、被水・没水、波力、洗掘、
漂流物衝突、海底砂移動による閉塞等が挙げられるが、これらに影響する津波ハザードの 指標は津波水位である。つまり、地震と同様に、津波の場合も短時間で津波水位というハ ザード強度のみに着目すればよい。
c. 積雪
積雪の場合、降雪が数日にわたって継続することになり、プラント作業員は除雪により プラントへの影響を軽減できる。プラントへの影響は積雪荷重による構造損傷や積雪によ る空気取入口閉塞といった機能損傷が挙げられ、降雪速度(日降雪深)と降雪継続時間の 積である積雪深で評価できる。ただし、除雪作業は時間依存であることを考慮すると、降 雪の時間依存性を取り入れて評価する必要がある。つまり、積雪の指標は降雪速度と降雪 継続時間の組み合わせで表され、長時間で積雪深というハザード強度と降雪速度というハ ザード進展速度と降雪の継続時間に着目すればよい。
d. 竜巻
竜巻の場合、発生から数分ないし数十分で到来すると考えられ、津波と同様に、プラン ト作業員は発生後に竜巻到来を認識し退避等は可能であるが、竜巻発生直後に竜巻による 影響を防ぐ(例えば、飛来物からの防護壁を設ける)ことはできない。竜巻の強度は一般 に被災状況から判断される
Fujitaスケール(F スケール)で表されることが多いため、
竜巻ハザードの指標は
Fスケールとなる。つまり、津波と同様に、竜巻の場合も短時間で
Fスケールというハザード強度のみに着目すればよい。
e. 強風
強風の場合、竜巻に比べると、発生から到来までに時間はかかり到来後も数時間は継続 すると考えられる。しかし、プラント作業員は強風発生直後に強風による影響を防ぐ(例 えば、飛来物からの防護壁を設ける)ことはできない。強風は数時間にわたるため長時間 事象と言えるかもしれないが、強風による損傷モードは風荷重や飛来物衝突によるものと 考えられるため、強風の指標は風速となる。つまり、風速というハザード強度のみに着目 すればよい。
f. 降雨
降雨の場合、積雪と同様に、通常は発生から到来までに時間がかかり到来後も数日は継
続すること考えられる。プラント作業員は排水によりプラントへの影響を軽減できること
から、積雪と同様に、降雨の指標は降雨速度(日降水量)と降雨継続時間の組み合わせで
表され、降水量というハザード強度と降雨速度というハザード進展速度と降水の継続時間
に着目すればよい。
ドキュメント内
外部ハザードに対する崩壊熱除去機能のマージン評価手法の研究開発(PDF:23.4MB)
(ページ 106-112)