第5章 研究2
5.3 研究の結果
5.3.1 研究課題 1 に関わる結果:PWD のタイプ
研究課題1では、まず熟議型・非熟議型のエピソードがどのタイプのPWDで多く表出さ れるか検討するため、すべてのPWDを書き起こしてコーディングし、そのエピソードの秒 数を数えた。グループ④の二人の学習者が英語を用いて産出したPWDを内容エピソードご とに切片化し、熟議型―非熟議型のいずれか、及びその内容についてコーディングした結果 を、その概要とともに表5-13に例示する(トランスクリプトの例は付録5を参照。また、
すべてのグループのPWDにつき、そのCEの内容及びコーディングとその長さ(秒数)を 表にまとめたものを付録6に提示してある)。
60 表5-13
英語によるPWDで表出されたエピソードの概要、種類及びその長さ(グループ④)
PWD-E ④ 熟議型・
非熟議型の別
エピソードのタイプ 秒数
いじめ R OC 146
スペリング力の低下 R OC 43
個人情報の漏洩 R OC 65
「情報の漏洩」 NR L 17
コミュニケーション上の利便性 NR OC 199
寂しくない NR OC 47
SNSを使わない理由 NR C 179
否定立論の流れ確認 R O 98
個人情報漏洩にかんする反駁 R O 82
いじめに関する反駁 R O 37
全体像の確認 NR O 16
議題と関係のないコミュニケーション NR COM 25
全体像の再確認 R O 67
言葉探し NR L 90
注:C=内容に関わるエピソード O=構成に関わるエピソード
OC=構成を意識しつつ内容を検討しているエピソード
L=単語や文法の確認など、言語に関わる検討をしているエピソード
COM=トピックの内容に関係のない、コミュニケーションをとるためのエピソード R=熟議型エピソード
NR=非熟議型エピソード
この例では熟議型エピ―ソードは合わせて538秒、非熟議型エピソードが573秒あった。
熟議型の内訳は、Cは0秒、OCが254秒、Oが284秒であり、非熟議型の内訳はCが179 秒、OCが246秒、Oが16秒、Lが107秒、COMが25秒であった。すべてのPWDについ てこれらの内容エピソードの長さ(秒数)を種類別に合計した結果を表5-14に示す。
61 表5-14
PWDで表出されたエピソードの種類とその長さ
熟議型エピソード 非熟議型エピソード
R-C R-OC R-O 計 NR-C NR-OC NR-O L COM 計
1-J 87 286 0 373 109 223 0 0 47 379
1-E 209 0 121 330 109 224 34 94 2 463
1-TL 301 0 0 301 449 0 0 0 49 498
2-J 0 229 71 300 89 56 59 380 0 584
2-E 47 87 0 134 719 25 84 62 46 936
2-TL 356 0 0 356 437 48 0 0 36 521
3-J 373 36 16 425 260 120 40 0 0 420
3-E 82 0 0 82 555 0 0 0 65 620
3-TL 529 86 72 687 415 0 0 8 0 423
4-J 160 438 281 879 37 0 34 0 9 80
4-E 0 254 284 538 179 246 16 107 25 573
4-TL 357 161 0 518 333 173 35 0 31 572
5-J 265 65 0 330 220 190 5 0 5 420
5-E 86 0 0 86 634 0 0 45 0 679
5-TL 696 145 14 855 55 156 49 32 0 292
6-J 296 73 102 471 182 149 68 0 81 480
6-E 147 55 52 254 159 169 9 35 16 388
6-TL 151 0 0 151 505 0 27 122 285 939
7-J 122 171 179 472 235 59 24 8 31 357
7-E 362 0 66 428 194 172 23 0 0 389
7-TL 337 0 328 665 100 173 147 12 32 464
9-J 593 24 0 617 273 14 51 0 14 352
9-E 290 0 0 290 452 139 32 0 0 623
9-TL 307 144 86 537 332 46 128 0 0 506
10-J 310 0 0 310 269 102 9 0 0 380
10-E 336 0 0 336 321 125 0 24 0 470
10-TL 162 0 0 162 425 51 0 33 298 807
11-J 243 147 235 625 109 19 13 0 0 141
11-E 0 0 0 0 191 172 12 21 1 397
11-TL 0 215 0 215 0 249 0 3 0 252
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5.3.1.1 それぞれの条件下における熟議型エピソードおよび非熟議型エピソ ードの長さ
課題1に答えるため、それぞれの条件下におけるPWDの内容エピソードを大きく熟議型 と非熟議型の2つに分類し、その平均を求めた(表5-15)。
表5-15
それぞれの条件下で表出された熟議型エピソードの長さの平均
熟議型 非熟議型
M SD M SD
PWD-J 480.20 176.937 359.30 144.720
PWD-E 247.80 165.773 553.80 167.267
PWD-TL 444.70 237.739 527.40 204.436
熟議型のエピソードの平均が最も高かったのはPWD-Jで、PWD-TLがすぐそれに続き、
PWD-EはPWD-Jのおよそ半分程度であった。非熟議型エピソードの長さは、PWD-Eの時
が最も長く、PWD-TLが最も短かった。こうした差について、統計的に有意なレベルである か検討した。まず、シャピロ・ウイルク検定によって正規性の検定を行ったところ、p =.108 となり、正規分布に従うと判定できたため、一元分散分析を行った。その結果は、
F (2, 57) = 8.156, p = .001となり、異なる条件下で行われたプレライティング・ディスカッシ
ョンにおける熟議型エピソードの差は有意であると認められた。さらに、Tukey法による多 重比較の結果、PWD-JとPWD-Eの間及びPWD-TLとPWD-Eの間でその差は有意であった
(有意確率は順にp = .001, p = .007)。
非熟議型エピソードは、シャピロ・ウィルクス検定によって正規分布に従わないと判定さ れた(p = .005)ため、条件間の差の検定にはクラスカル・ウォリス検定を用いた。その結 果、χ2 (2, N=60) = 14.006, p = .001で、異なる条件下で産出された非熟議型エピソードの長さ の差は有意であった。また、すべてのペアごとに事後検定を行った結果、PWD-TLと PWD-Jの間の調整済み有意確率がp = .020, PWD-JとPWD-Eではp = 0.003だったが、PWD-Eと
PWD-TLの間には有意差は認められなかった。
5.3.1.2 それぞれの条件下で産出されたエピソードの種類
さらに、これらのPWDにおいて産出されたエピソードは、内容にかかわるものや文章の 構成に関わるものなど、どのようなタイプのものが多く見られるか確認するため、各条件下 の各タイプのエピソードの平均値を求めた(表5-16)。
いずれの条件下においても、内容に関するエピソード(PWD-C)の平均値が最も長く、
次いで構成を意識しながら内容を検討したエピソード(PWD-OC)、そして構成を吟味す るエピソード(PWD-O)の順になっている。そのほか、PWD-Cの十分の一以下のごく短
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い時間で、文法や語彙について検討するエピソード(PWD-L)と、ごく短い時間、トピッ クと直接関係のない話をするエピソード(PWD-COM)が見られる。PWD-TLではPWD-COMが他の二つの条件に比して長くなっている。ただしこれはグループ6とグループ10が 突出して長くPWD-COMに該当するエピソードを展開していることによるもので、全体的 な傾向というわけではない。
表5-16
それぞれの条件下における各種エピソードの平均発話時間(秒)
PWD-C PWD-OC PWD-O PWD-COM PWD-L
PWD-J (N=10)
Mean 423.20 240.10 118.70 18.70 38.80
SD 228.292 140.157 108.910 26.230 116.714
PWD-E (N=10)
Mean 507.20 166.80 73.30 15.50 38.80
SD 227.813 137.185 91.859 22.535 37.475
PWD-TL (N=10)
Mean 624.70 164.70 88.60 73.10 21.00
SD 250.112 153.733 146.549 113.451 36.712
こうした差について、統計的 に有意なレベルであるかクラスカ ル・ウォリス検定によって検討し た。その結果、PWD-Cはχ2 (2, N=30) = 8.542、p = .014, PWD-OC はχ2 (2, N=30) = 3.796, p = .150、 PWD-Oはχ2 (2, N=30) = 2.939, p
= .230、PWD-COMはχ2 (2, N=30) = 2.004, p = .367、PWD-Lはχ2 (2, N=30) = 10.512, p = .005でPWD-C
及びPWD-Lの差のみが有意であっ
た。またすべてのペアごとに事後 検定を行った結果、PWD-Cでは
PWD-JとPWD-TLの間の差の有意
確率はp = 0.021でPWD-TLで産出 された内容に関わるエピソードの 長さの平均値はPWD-Jに比べて統 計的に有意なレベルで長かった。
PWD-J PWD-E PWD-TL
図5-3 各条件下で産出されたPWD-Lの長さ(秒)
PWD-J E
PWD-図5-2 各条件下で産出されたPWD-Cの長さ(秒)
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また、PWD-Lでは、PWD-JとPWD-Eの間の有意確率がp = 0.007だったが、そのほかの 組み合わせでは有意差は認められなかった。つまり、言語に関わるエピソードの長さの平均
はPWD-J よりPWD-Eの方が統計的に有意なレベルで長かった。(図5-2、及び5-3にその
結果を提示)。