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研究課題1に関わる分析

第5章 研究2

5.2 研究の方法

5.2.3 データ分析の方法

5.2.3.1 研究課題1に関わる分析

RQ1: 英語によるPWD(PWD-E)、学生の母語である日本語によるPWD(PWD-J)、TL状 況下におけるPWD(PWD-TL)のどの条件におけるPWDがもっとも多く熟議型エピ ソードを引き出しうるか。またこれらのPWDで熟議型エピソードが見られるとする ならば、内容に関わるものと文章の構成に関わるもののどちらが多く見られるか。

この研究課題に応えるために、まず、3つの条件下におけるPWDを内容エピソードごと に区切り、それぞれの内容エピソードが熟議型か非熟議型かについて判定した。

内容エピソード(content episode: 以下CE)は、Newmann and McDonough (2015)になら って「主たるアイディアとその理由またはサポートからなる学習者のインタラクション」と 定義した。具体的には、「あとなんだろうなぁ」や「難しいなぁ」といった、一つの内容に ついての話がある程度収束し、次の話題に移るための発話が見られたところや、話し合った 事柄についてメモを取るためなどのため、5秒以上の長いポーズがあるところでCEの区切 りとした。ただし、5秒以上のポーズがあっても、ポーズの前と同じ内容について補足を始 めている場合などは区切らずに、ひとつのCEとみなした。

さらにこれらのCEを熟議型エピソード(reflective episode)と非熟議型エピソード(non-reflective episode)に分類した。Newmann and McDonough (2015)では熟議型エピソードに、

明示的な評価(explicit evaluation)、代替案の検討(consideration of alternatives)、及び理由付 け(justification)が含まれるものとし、非熟議型エピソードとはこれらの特徴が含まれない ものとしている。言い換えると、相手の考え方に何らかの影響を与えたことが明確なものを 熟議型とみなしているといえるだろう。これを受けて本研究では、一方が単に相手の言った ことを繰り返したり、わずかにパラフレーズしたりしているだけのCEや、相手の意見にう なずいているだけのCEは非熟議型とコーディングした。また、単なるプロンプトの確認を しているCEや、お互い疑問を提示し合っているCE、お互いの意見を述べ合っているだけ

のCE、プロンプトと関係のない話に脱線していったCE及びお互いの話がかみ合っていな

いCEについても非熟議型とした。こうした非熟議型のCEとは対照的に、相手の考えに影 響を与え合うようなCEを熟議型と判定した。ここには、相手の発話によって自分の意見が 変容したものに加えて、相手が悩み探している考えを発見して提示するようなものや、もと もと相手と同じ意見であっても、それぞれの言葉でパラフレーズし合いながらコンセプト としてまとめていくようなものなども相手の考えに影響を与えていることを考慮し、熟議 型と分類した。

さらに、これらのエピソードで議論された対象についても分析のためにコーディングを 行った。Newmann and McDonough (2015)では内容(content)に関わるものと文章構成

(organisation)に関わるものに二分する方法がとられていたが、本研究では、構成を意識し た内容(organisational content:以下OC)という項目を加えた。これはNewmann and McDonough

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(2015)のStudy 1の研究結果を受けて、構成を意識したPWDになりやすいよう学習者に 明示的な指導を行い、ワークシートを活用しながらのPWDを行わせた結果、ライティング に入れるべき内容について話し合う際にもその話題が全体のどの部分に位置付けられてい るのかを意識したエピソードが多く見られたことによるものである。具体的には、CEの冒 頭で、どちらかが「じゃぁ反対意見には何がある?」などのような明示的な発話をしている ものをOCと判定した。ワークシートの使い方および、ある内容について否定側・肯定側・

現状分析などのうちどの項目に振り分けるべきかなどの議論、ある内容についての立論の 根拠やサポートとしての妥当性の吟味などについては、構成として分類した。加えて、本研 究では学習者の母語によるPWD、目標言語によるPWD、またトランス・ランゲージングに よる PWD という条件による違いを見るため、語彙に関わる確認をするエピソー ド

(Language:以下L)及び、プロンプトとは直接関係のないエピソード(Communication:以下

COM)についても判定した。LとCOMについては性質上21すべて非熟議型のエピソードと

なった。したがって、PWDの分析については、内容エピソードごとに以下の8種類に分類 することになる(表5-3)。

表5-3

PWDで表出される内容エピソードの分類

非熟議型 熟議型

内容 NR-C R-C

構成 NR-O R-O

構成的内容 NR-OC R-OC

言語 L

コミュニケーション COM

21 語彙の確認については、お互いの意見を出し合って結論を導く熟議型があり得ないわけではないが、

本研究のPWDにおいては辞書使用を認めているため、熟議が必要な場合、つまり意見が分かれるような 場合はすぐに辞書による確認に移行している。そのため、本研究の語彙確認に関わるエピソードはすべて 非熟議型となった。

49 以下にそれぞれのタイプのエピソード例を提示する。

5-4

R-Cの例 【グループ② PWD-J (Age Limit): エピソード6・R-C】

ターン ID 発話内容

1 2-2 まぁふつうに、あれだよね、あと、JRとか電車の売り上げにつながる

(笑)

2 2-1 あぁ、たしかにね!うん、いいんじゃない?実際。

3 2-2 売り上げにつながる 4 2-1 いいんじゃない?それ。

5 2-2 健康・・(先に話し合った内容について書きながら)

6 2-1 あ、それ結構大事じゃない?(売り上げのことを指して)わかんないけ ど

7 2-2 公共交通機関の売り上げ?売り上げ(書きながら)

8 2-1 維持・・できる(書きながら)keep 9 2-2 公共交通機関の経済が回る。経済発展?

10 2-1 あとなんだっけ?経済 そうだね 公共交通(書きながら)

11 2-2 機関の経済が発展する…

12 2-1 そうだね、これ結構大事じゃない?

13 2-2 まぁ確かに結構赤字じゃん JRとか

14 2-1 うん (書きながら)増えて…売上UP(書きながら)

15 2-2 うーん

注:タイトル中のカッコ内はライティング課題の内容を示す。エピソード番号は通し番号で何番目のエピ ソードであるかを示す。IDは表5-1のIDに対応。以下同様。

この例では、ターン1で新しい内容を提示した時点では、自分の発言に笑っていることか ら、2-2は自分の思い付きがある意味突飛なものかもしれないと思っているようである。し かし、それに対し2-1がターン2、4、6と肯定的に評価しそれを受けて2-2はターン7でそのコ ンセプトを「公共交通機関の売り上げ」といったんまとめたのち、「売り上げ」を「経済発 展」と言い換えるべきか考えているところにターン10で2-1がさらにそれに同意し、ターン 10と11では二人で一つの文を完成させるに至る。ターン13の発話からは2-2が当初は自信が 持てなかった自分の思い付きを肯定的に評価しなおしている様子が見て取れる。この対話 なしには、2-2は自分の発想を作文に使用できるようなコンセプトまで昇華できなかったか もしれない。また、2-1にとってはこのコンセプトは相手の指摘なしには思いつかなかった ものであることから、このエピソードは両者にとって自分の考察を深める働きをしている ものとなっている。このようなエピソードを熟議型と捉え、また、その内容が作文に書くべ き内容に関わるものの場合R-Cと分類する。

50 表5-5

NR-Cの例 【グループ⑨ PWD-J (Chinese): エピソード8・NR-C】

ターン ID 発話内容

1 9-1 ま、中国語やることでなんか中国の文化に触れて、その理解が深まると かね。

2 9-2 うーん。

3 9-1 その、関係-中国に対するイメージがもしかしたらよくなるかもしれな いね、悪いイメージ持ってる人もいるから。

4 9-2 そうですよね。(沈黙)

R-Cの例とは異なり、こちらは、9-1の提示した内容について、9-2は同意を示すものの、

特に新たな情報を付け加えたり、深める視点を提示するなどのコメントを返したりはして いない。こうしたエピソードをNR-Cと分類する。

表5-6

R-OCの例 【グループ① PWD-J (Age Limit): エピソード6・R-OC】

ターン ID 発話内容

1 1-2 反対意見なことをいうと、

2 1-1 うん

3 1-2 免許…まぁ、上限つけると、

4 1-1 うん

5 1-2 田舎だと交通網すごい少ないっていうのあるよね。

6 1-1 あー、なるほど?

7 1-2 都会はいいかもしんないけど。

8 1-1 あー

9 1-2 田舎になると…一日に…ほんとに五本指で数えれるくらい 本数しかな いところ ほんとにそういうところあるしょ。

10 1-1 あー便数とかがってこと?

11 1-2 うん

12 1-1 なに、つまり、交通機関がないために必要になるってこと?

13 1-2 少ないっていうか、だから、それで車が必要になるっていう… 14 1-1 あー、交通機関(書きながら)うん。間違えた。あれ、あってんのか

な?交通機関…(書きながら)

15 1-2 少ないの(書きながら)

16 1-1 少なさ?少なさ。まぁ、減少だね。

17 1-2 うん。

この例は、ターン1で1-2がこれが反対意見について考えてみるためのエピソードである ことを明確に提示し、1-1がそれに同意した形で始まる。このように、与えられた課題の賛 否両論を吟味する上で、どの部分についての議論なのかを明確に意識しているエピソード をOCと分類する。加えて、このエピソードでは新しい話題を1-2が提示する。ターン3、 5、7、9にかけては1-2が主導的に自分の考えを説明しているが、ターン10、12では1-1が

「交通機関」という言葉を提示しながらコンセプトとしてまとめ始め、ターン16で「減少」

という言葉をさらに提示している。このように協働的な議論を通じて一つのコンセプトが