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研究課題5に関わる結果:学習者要因

第5章 研究2

5.3 研究の結果

5.3.5 研究課題5に関わる結果:学習者要因

ここからは、研究課題5に関わる結果を報告する。まず、学習者の英語のライティング力 及びさスピーキング力がそれぞれのタイプのプレライティング・ディスカッションにおけ る熟議型エピソードの産出に影響を与えるのか、また、そのPWDの作文への活用度や作文 自体に影響を与えるのか、分析した結果を報告する。さらに、それぞれの学習者の協働的な 学びに対する志向性が熟議型エピソードの産出、PWDの作文への活用度に影響を与えるの か、分析した結果を報告する。

5.3.5.1 学習者の英語運用能力と熟議型エピソードの長さ

産出された熟議型エピソードの長さは学習者の英語運用能力によって影響を受けている のか確認するために、ライティングのスコア及びスピーキングのスコアとの相関係数を計 算した。その結果を表5-23・5-24に示す。

5-23

各条件下のPWDで表出された各種エピソードの長さとライティングスコアの相関係数 Writing scoreとの相関係数 r

(p)

全体

N=60

PWD-J

(N=20)

PWD-E

(N=20)

PWD-TL

(N=20)

PWD-R .144

(p =.272)

.281 (p =.229)

.251 (p =.286)

.020 (p =.933)

PWD-NR -.101

(p =.443)

-.313 (p =.180)

.037 (p =.878)

-.097 (p =.683) 注:* p < .05, ** p < .01

表5-23から明らかなように、ライティングスコアと各種エピソードの長さには全体でも、

各条件下でも、統計的に有意なレベルでの相関は見られなかった。スピーキングとの相関で 見ると(表5-24)全体では熟議型エピソードの長さとは r =.319 (p =.013)と、弱い相関がみ

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られ、PWDのタイプ別にみてみると、PWD-Eにおいては表出された熟議型エピソードの長 さとスピーキングスコアは高い相関関係にあることが示された。

5-24

各条件下のPWDで表出された各種エピソードの長さとスピーキングスコアの相関係数 Speaking scoreとの相関係数 r

(p)

全体

(N=60)

PWD-J

N=20

PWD-E

N=20

PWD-TL

N=20

PWD-R .319*

(p =.013)

.284 (p =.225)

.683**

(p =.001)

.207 (p =.381)

PWD-NR .021

(p =.872) -.209

(p =.377) -.118

(p =.620) .305

(p =.191) 注:* p < .05, ** p < .01

5.3.5.2 学習者の英語運用能力とPWD活用度

次に、学習者の英語のライティング力及びスピーキング力がそれぞれの条件下のPWDの 作文産出における活用の度合いに及ぼしうる影響について検討するため、IU数、PWD based

IU数、及びPWD based IU 率とTOEICにおけるライティングおよびスピーキングのスコア

の相関係数を計算した。その結果は表5-25及び表5-26に示す。

5-25

各条件下で表出されたPWD based IU数及びPWD based IU率とライティングスコアとの相 関係数

Writing との相関r 全体

(N = 60)

PWD-J

(N = 20) PWD-E

(N = 20) PWD-TL (N = 20)

PWD based IU数 .588**

(p =.000) .645**

(p =.002) .729**

(p = .000) .426

(p =.061)

PWD based IU率 .322*

(p = .012) .468*

(p =.038) .524*

(p =.018) .029

(p =.904) 注:* p < .05, ** p < .01

5-26

各条件下で表出されたPWD based IU数及びPWD based IU率とスピーキングスコアとの相 関係数

Speakingとの相関r 全体

(N = 60)

PWD-J

(N = 20) PWD-E

(N = 20) PWD-TL (N = 20) PWD based IU数

.574**

(p = .000) .632**

(p =.003) .672**

(p =.001) .443* (p =.050) PWD based IU率

.399**

(p =.002) .449*

(p =.047) .532*

(p =.016) .241

(p =.306) 注:* p < .05, ** p < .01

表5-25および5-26から読み取れるように、全体としてPWD based IUの数はライティン グ及びスピーキングのスコアと中程度の相関関係にあり、その率は低度の相関関係を示し

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ている。PWD の条件別に詳しくみると、PWD based IU数及びその率は、PWD-Jおよび PWD-Eの条件下ではライティングスコアと中程度から高めの相関を見せるのに対し、PWD-TLの 条件下においてはPWD based IU数及びPWD based IU率とライティングのスコアとの相関 関係は認められない。この傾向はスピーキングのスコアとの相関においてもほぼ同様で、唯 一異なる点はPWD-TLの条件下におけるPWD based IU 数とスピーキングの相関が中程度 見られるという点である。しかし、PWD based IU率になるとこの相関はライティングスコ ア同様、統計的に有意なレベルではなくなる。

5.3.5.3 学習者の英語運用能力と産出された作文

学習者の英語のライティング力及びスピーキング力がそれぞれの条件下で産出された作 文の評価に及ぼしうる影響について検討するため、総語数、語彙の多様性及び質的評価得点

とTOEICにおけるライティング及びスピーキングのスコアの相関係数を計算した。その結

果を表5-27及び表5-28に示す。

5-27

各条件下で表出された総語数、語彙の多様性、及び質的評価得点とライティングスコアとの 相関係数

Writing との相関r 全体

(N = 80)

No-PWD

(N = 20) PWD-J

(N = 20) PWD-E

(N = 20) PWD-TL (N = 20) 総語数 .578**

(p =.000) .602**

(p =.005) .558**

(p =.011) .580**

(p =.007) .591**

(p =.006) 語彙の多様性 .578**

(p =.000) .664**

(p =.001) .737**

(p =.000) .574**

(p =.008) .391 (p =.088) 質的評価得点(合計) .616**

(p = .000) .570**

(p =.009) .720**

(p =.000) .662**

(p =.001) .549**

(p =.012) 注:* p < .05, ** p < .01

5-28

各条件下で表出された総語数、語彙の多様性、及び質的評価得点とスピーキングスコアとの 相関係数

Speaking との相関r 全体

(N = 80)

No-PWD

(N = 20) PWD-J

(N = 20) PWD-E

(N = 20) PWD-TL (N = 20) 総語数 .476**

(p =.000) .355

(p =.125) .515*

(p =.020) .539*

(p =.014) .507* (p =.022) 語彙の多様性 .613**

(p =.000) .618**

(p =.001) .670**

(p =.001) .553**

(p =.011) .687**

(p =.001) 質的評価得点(合計) .327**

(p = .003) .211

(p =.372) .445*

(p =.049) .491*

(p =.028) .172 (p =.469) 注:* p < .05, ** p < .01

作文データ全体としては総語数、語彙の多様性、そして質的評価得点もともにTOEICの ライティングスコアと中程度の相関を見せ、スピーキングスコアとも、低~中程度の相関を

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見せた。しかしこうした相関は、各条件下において、異なったパターンを見せる。総語数は 常にライティングのスコアと中程度の相関を示す。語彙の多様性についてみると、ライティ ングスコアともっとも高い相関を示しているのはPWD-Jの作文で、PWD-TLの条件下で産 出された作文については相関関係が見られない。この傾向は質的な評価得点でも似通って いて、ライティングスコアとの相関はPWD-J の条件下で最も高く、PWD-TLではPWDな しの条件よりもさらに低く、最低になっている。スピーキングスコアとの関連で言えば、語 彙の多様性はどの条件でも中程度以上の相関を見せるが、PWDなしの状態では総語数及び 質的評価得点とスピーキングのスコアの間に相関関係は認められない。また、PWD-TLの状 態でも質的評価得点との相関は見られず、PWD-JとPWD-Eにおいて中程度の相関が確認さ れた。

5.3.5.4 協働学習への志向性と熟議型エピソードの長さ及び PWD 活用度

それぞれの学習者の協働的な学びに対する志向性が熟議型エピソードの産出、PWDの作 文への活用度に影響を与えるのか検討するため、アンケート調査の結果から、協働的な学習 に対して肯定的な学生とそうでない学生の 2 群にわけた。協働的な学習よりも個人学習を 好むとしたものは5名のみ(ID3-1, 5-1, 5-2, 7-1, 及び9-2)で、残り15名は協働的な学習に を好むと回答した。それぞれの表出した熟議型エピソードの長さ及びPWDの作文への活用 度に差があるかを検討するため、平均値を比較した(表5-29)。

5-29

協働学習を好む学習者と個人学習を好む学習者が表出した熟議型エピソードの長さと PWD-basedIU及びPWD-based IU率の平均値と標準偏差

協働学習を好むもの 個人学習を好むもの

Mean SD Mean SD

熟議型エピソードの長さ(秒) 371.31 203.737 449.67 256.670 非 熟議 型エ ピソ ードの長 さ

(秒) 486.09 209.035 462.40 130.949

PWD based IU数 25.20 12.460 29.13 15.720

PWD based IU率 56.607 17.9662 54.995 17.6104

シャピロ‐ウィルク検定の結果、熟議型エピソードの秒数、PWD based IU 数、及びPWD

based IU率はすべて正規分布を仮定できることが示されたため、t検定を行った。その結果、

熟議型エピソードについては、t (58)= 1.207, p =.232、PWD based IU数についてはt (58)= .990, p =.326、PWD based IU率についてはt (58)= -.302, p =.763と、いずれも有意差は認められな かった。また、正規分布が仮定できなかった非熟議型のエピソードの長さに対してはマン・

ホイットニーのU検定を行った。その結果は、U = 359.500, p =.707で、ここでも有意差は 見られなかった。

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