3 トップランナー方式の導入に際しての課題整理
3.1. 断熱材
3.1.2. 目標基準値等策定における考え方
以下、断熱材についての詳細な制度設計にあたっては、2013 年10月1日に開催された 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会 建 築材料等判断基準ワーキンググループ(第1回)にて審議された。
1)対象範囲の考え方について
(原則1)対象範囲は、一般的な構造、用途、使用形態を勘案して定めるものとし、①特殊 な用途に使用される建築材料、②技術的な測定方法、評価方法が確立していない 建築材料であり、目標基準値を定めること自体が困難であるもの、③市場での使 用割合が極度に小さい建築材料は、原則として対象範囲から除外する。
・ 熱損失防止に資する建築材料が対象となることから、対象は住宅・建築用途とし、冷 凍倉庫、土木、車両用途、吸音材、遮音材等は除くことが考えられる。これらは、製 造事業者において出荷統計等により判別することが可能である。
・ 断熱材は、繊維系3種、発泡プラスチック系5種、それ以外に羊毛等、製品種類が多 種多様であり、業界構造や商流構造も種類毎に分かれていることから、当面は出荷割 合が大きいグラスウール、ロックウール、押出法ポリスチレンフォームの3種を優先 対象とし、将来的に他の断熱材にも対象を拡大していくことが考えられる。ただし、
グラスウールの吹込み品は、出荷段階において施工時の性能担保が難しく、技術的な 測定方法、評価方法が確立していないため、対象とするには引き続き検討が必要であ る。
・ 断熱材の出荷全体(施工面積ベース)に占める上記3種の割合は、2010年時点にお いて住宅用は約 80%、非住宅用(主に建築用途)は約 66%である(いずれも施工面 積ベース)。
原則1に従い、以下の建築材料は対象範囲から除外することが望ましい。
①特殊な用途に使用されるもの
○グラスウール断熱材のうち、密度24[kg/㎥]以上の建築材料
・ グラスウール断熱材のうち密度24[kg/㎥]以上の製品は、遮音材、防火材として使 用されている(「準耐火構造の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1358号)」 において防火構造の条件として定められている。)。本製品は、主として断熱用途では なく、遮音用途・防火用途として用いられることから、「①特殊な用途に使用される もの」に該当すると考えられる。
②技術的な測定方法、評価方法が確立していないもの
○硬質ウレタンフォーム
まで運び、現場によって発泡させ壁等に吹き付ける、吹き付け品が主流である。吹き つけ品は施工現場によって性能が変わる可能性があり、現段階では出荷時点における 製品の断熱性能を把握できていないことから、「②技術的な測定方法、評価方法が確 立していないもの」に該当すると考えられる。将来的に現場の施工にかかる測定方法、
評価方法が確立された段階で、トップランナー制度の対象とすることを再度検討する ことが望ましい。
○ロックウール断熱材およびグラスウール断熱材のうち吹き込み品
・ 吹き込み品は施工現場によって性能が変わる可能性があり、現段階では出荷時点にお ける製品の断熱性能を把握できていないことから、「②技術的な測定方法、評価方法 が確立していないもの」に該当すると考えられる。将来的に現場の施工にかかる測定 方法、評価方法が確立された段階で、トップランナー制度の対象とすることを再度検 討することが望ましい。
③市場での使用割合が極度に小さいもの
○グラスウール断熱材を使用した真空断熱材
・ 超高性能な断熱性能を有する真空断熱材は、現時点では、冷蔵庫等の家電用途が中心 であり、近年になり実験的に住宅・建築物の断熱用途として発売されてきている。現 時点でこの断熱材は、採用実績はほとんどない(シェア0.1%未満)ことから、「③市 場での使用割合が極度に小さいもの」に該当すると考えられる。
○セルロースファイバー、高発泡ポリエチレン、ビーズ法ポリスチレンフォーム、フェノ ールフォームおよび羊毛断熱材
・ これらの断熱材は、いずれもシェアが数%である(羊毛については殆ど用いられてい ない)ことから、「③市場での使用割合が極度に小さいもの」に該当すると考えられ る。
図表 3.1.2 断熱材の出荷割合(施工面積ベース)
断熱材種
出荷割合(施工面積ベース) 主要 メーカー
住宅用 非住宅用
繊維系
断熱材
グラスウール 55% 30% 4社
ロックウール 11% 3% 2社
セルロースファイバー 1% 1% 4社
発泡プラスチック系
断熱材
押出法ポリスチレンフォーム 14% 33% 3社
硬質ウレタンフォーム 12% 13% 10社
高発泡ポリエチレン 1% 11% 1社(平成24 年に生産中止)
ビーズ法ポリスチレンフォーム 4% 8% 41社
フェノールフォーム 2% 1% 2社
その他 羊毛等 不明 不明 -
計
100 %
(365,373千㎡)
100%
(136,052千㎡)
-
出所)財団法人建築環境・省エネルギー機構(平成23年6月)および業界ヒアリングに基づきNRI作成
2)区分設定および目標基準値設定の考え方について
(原則2)特定熱損失防止建築材料はある指標に基づき区分を設定することになるが、その 指標(基本指標)は、熱損失防止性能との関係の深い物理量、機能等の指標とし、
最終消費者のニーズの代表を有するものとして設計事務所、ハウスメーカー、工 務店等が建築材料を選択する際に基準とするもの等を勘案して定める。
指標選定に際し、論点となる事項を以下に記載する。
①熱伝導率(W/m・K)
・ 熱伝導率は、断熱材の性質を表わしている点で素材の性能の比較が容易であり、業 界側の技術開発により、性能改善をすることが可能である(ハンドリングが利きや すい)。
・ 住宅や建築物の設計においては、厚みも考慮した熱抵抗値で基準が設定されている ことから、熱伝導率をどれだけ向上させても、設計において薄い断熱材が選択され た場合、結果的に省エネにつながらない可能性も想定される。
②熱抵抗値
標として設定されることで、熱伝導率の向上とともに、厚手化を推進することで、目 標基準値を達成することが可能となる。
・ 消費者(工務店、ハウスメーカー等)からの注文は熱抵抗値で行われることから、指 標として分かりやすい(ただし、求める熱抵抗値を定めるのは消費者側(工務店、ハ ウスメーカー等)であり、製造事業者側ではない)。
・ 一方で、住宅や建築物の設計においては、厚みも考慮した熱抵抗値で基準が設定され ていることから、省エネ基準強化等の政策の影響を受けやすい側面もある。
以上の二案を受け、(a)断熱材の素材そのものの熱損失の程度を示す、(b)設計事務所、
ハウスメーカー、工務店等の消費者や省エネ基準強化等の政策の影響を受けにくく、製造 事業者の性能改善に係るコントロールが利きやすい、の二点から、断熱材の熱損失防止性 能は、断熱材の素材そのものの熱損失の程度を表す熱伝導率λ[W/(m・K)]を指標とする こととされた。
※熱伝導率λ[W/(m・K)]:1度の温度度差がある場合に、1㎡の断面積・1mの長さを有 する断熱材を流れる単位時間当たりの熱量。値が小さいほど性能が良い。
図表 3.1.3 断熱材の基本指標(熱伝導率および熱抵抗値)
・
出所)NRI
(原則3)目標基準値は、同一の熱損失防止性能を目指すことが可能かつ適切な基本指標の 区分ごとに、1つの数値又は関係式により定める。
・ 繊維系断熱材は主に内断熱材(充填断熱工法)として木造建築物、鉄骨造建築物の天 井、壁等に利用されるのに対し、発泡系断熱材は主に外断熱材(外張り断熱工法)と して鉄筋コンクリート造建築物用途や床等に利用されている。
・ 上記のように、利用される部位および利用方法の重複が繊維系断熱材と発泡系断熱材 とで少ないことから、原則2のとおり、断熱材の目標基準値の策定では、「断熱材」
熱の伝えやすさを 表し、 数値が小さいほど、
断熱性能が優れていることを表す
熱伝導率[W/m・K ] 熱抵抗値[㎡・K/W ]
断熱材の厚さを 考慮
熱の伝えにくさを表し、 数値が大きいほど 断熱性能が優れていることを 表す
という単一の区分ではなく、繊維系断熱材と発泡系断熱材とに区分を分けることが建 築材料等判断基準WGにて審議された。
・ また、繊維系断熱材のうち、グラスウール断熱材とロックウール断熱材は下表の通り、
原料、製造方法が異なっていることから、「最も優れている製品の熱損失防止性能」、
「技術開発の将来の見通し」いずれも異なるものとなっている。これらの違いを踏ま えると、グラスウール断熱材とロックウール断熱材とで同一の目標基準値を設定する ことは適切でないことから、原則3に基づき「グラスウール断熱材」と「ロックウー ル断熱材」との区分に分けることとされた。
図表 3.1.4 グラスウール断熱材とロックウール断熱材の原料および製造方法の違い
断熱材種類 原料・製造方法
グラスウール
製造工程
■原料
・リサイクルガラス等
■製法方法
・ガラスを高温で溶解、スピナー(回転体)※により遠心力 で繊維化し、結束剤を添加し綿状にしたもの。
ロックウール
製造工程
■原料
・高炉スラグ等
■製造方法
・原材料を1,500~1,600℃の高温で溶解、スピナー(繊維化 装置)※により遠心力で繊維化し、結束剤を添加し綿状にした もの。
※グラスウールとロックウールで使われているスピナーは、原料の溶解温度の違い 等から形状に大きな違いがある。
以上から、断熱材における区分は以下の3区分とすることとされた。
①グラスウール断熱材
②ロックウール断熱材
③押出法ポリスチレンフォーム保温材
また、技術開発および断熱性能の改善余地の将来の見通しは以下の通りとする。
①グラスウール断熱材
グラスウール断熱材においては、熱伝導率λを改善するための技術として、細繊維化等 による繊維質の改善、高密度化等が考えられる。具体的には、繊維化装置(スピナー)の 高速回転化等による細繊維技術、集綿装置の高性能化等による高密度化技術により2022年