3 トップランナー方式の導入に際しての課題整理
3.2. サッシ
3.2.2. 目標基準値等策定における考え方
1)対象範囲の考え方について
(原則1)対象範囲は、一般的な構造、用途、使用形態を勘案して定めるものとし、①特殊 な用途に使用される建築材料、②技術的な測定方法、評価方法が確立していない 建築材料であり、目標基準値を定めること自体が困難であるもの、③市場での使 用割合が極度に小さい建築材料は、原則として対象範囲から除外する。
・ 住宅用サッシ(主に戸建住宅向け)については、性能別出荷量等の統計データがある程 度整備されているが、建築用サッシ(主に集合住宅、業務用ビル向け)については、統 計データを含め、実態把握の体制が整っておらず、実態把握にはシステム構築等、新た な設備投資も必要となり、相応の期間を要すると考えられる。したがって、当面は断熱 性能向上による暖冷房負荷削減への寄与度の大きい住宅用サッシを対象とすることが 考えられる。
・ また、住宅用サッシについては、構造や開閉形式等により種類が非常に多いことから、
現状における性能別出荷量等のデータの整備状況や、性能値の算出に要する製造事業者 への負担等を鑑みて、引き違い、FIX、上げ下げ、縦すべり出し、横すべり出しの5種
(2012年度におけるシェア93.6%)を対象とし、状況に応じて他の種類にも対象を広 げていくことが考えられる。
・ 住宅用サッシと建築用サッシの区別として、一般的に、木材にねじまたは釘で固定する 構造を「住宅用サッシ」、階高が高いことによる強度等についての考慮から、アンカー に溶接で固定する構造を「建築用サッシ」と区別することが可能である。
図表 3.2.2 住宅用サッシの開閉形式別、構造別出荷量(2012年度)
出所))日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会の提供データよりNRI集計
( 単位: 窓)
% 数量 % 数量 % 数量 % 数量 % 数量
8 .6 % 1 ,0 3 3 ,0 0 1 2 6 .8 % 3 ,2 3 2 ,3 9 2 1 7 .7 % 2 ,1 3 5 ,2 1 1 1 .7 % 2 0 5 ,6 0 9 5 4 .8 % 6 ,6 0 6 ,2 1 3 0 .7 % 7 9 ,6 6 7 3 .7 % 4 4 3 ,5 6 6 2 .9 % 3 4 6 ,9 2 3 0 .8 % 1 0 0 ,4 9 7 8 .1 % 9 7 0 ,6 5 3 0 .3 % 3 8 ,1 4 0 3 .7 % 4 4 5 ,1 5 8 1 .4 % 1 6 6 ,9 1 3 0 .2 % 2 2 ,0 3 6 5 .6 % 6 7 2 ,2 4 7 0 .7 % 8 3 ,4 1 8 6 .9 % 8 2 9 ,0 5 8 7 .4 % 8 9 5 ,3 0 3 2 .4 % 2 8 8 ,7 7 7 1 7 .4 % 2 ,0 9 6 ,5 5 6 0 .4 % 4 3 ,0 0 1 3 .3 % 4 0 1 ,4 6 8 2 .8 % 3 3 5 ,8 5 3 1 .1 % 1 2 7 ,8 9 8 7 .5 % 9 0 8 ,2 2 0 1 .3 % 1 5 2 ,7 4 3 3 .3 % 3 9 2 ,2 3 6 1 .7 % 2 0 4 ,1 7 2 0 .4 % 1 0 ,4 3 9 6 .6 % 7 5 9 ,5 9 0 1 1 .9 % 1 ,4 2 9 ,9 7 0 4 7 .7 % 5 ,7 4 3 ,8 7 8 3 3 .9 % 4 ,0 8 4 ,3 7 5 6 .6 % 7 5 5 ,2 5 7 1 0 0 .0 % 1 2 ,0 1 3 ,4 8 0
※1 仮設用サッシはアルミSGに含む。
2 0 1 2 年 度 2 0 1 2 年 度 2 0 1 2 年 度 2 0 1 2 年 度
構造
総合計
アルミSG アルミPG アルミ樹脂複合
合 計 合 計 合 計 合 計 引き違い
樹脂
開 閉 形 式
FIX 上げ下げ 縦すべり出し 横すべり出し その他
・ 以下のサッシは、原則1に従い対象範囲から除外するか否かの議論が必要である。
①特殊な用途に使用されるもの
○防火用サッシ
防火用サッシは、建築基準法の規定により、断熱性能の確保よりも「防耐火性 能」の担保が優先的に求められる。断熱性能の向上に必要な有機材は、一般的 に加熱物の増加を意味することから、防耐火性能の担保とは相反することに繋 がる。
防火用サッシの出荷割合は、各特定行政庁が定める市街地用途区分の規制によ る結果であり、近年の防火地域の増大傾向を受けて、将来的に出荷が増える可 能性も考えられるが、製造事業者のコントロールが利く範囲ではないことが懸 念される。
住宅用サッシに対する大臣認定を受けている防火用サッシが占める割合、アル ミPGでは約2%、アルミ樹脂複合では約5%、樹脂では0.1%未満である。
一方で、防火用サッシは、防火性能の担保が優先的になるとはいえ、断熱性能 の担保が求められることに変わりはなく、また、防火用サッシとして認定され ているか否かの区別が出荷時に判別できることから、通常サッシとは別区分(原 則3の適用)にすることも考えられる。
②技術的な測定方法、評価方法が確立していないもの
JIS A2102(計算法)または、JIS A4710(測定法)で評価することができるが、
省エネ基準、低炭素建物認定基準 等により他の評価方法が併設されている開閉 形式(引き窓‐シャッター付サッシ)が該当する。
シャッター付サッシについては、JIS A2102(計算法)または、JIS A4710(測 定法)で評価することができるが、省エネ基準、低炭素建物認定基準等では、
夜間シャッターが閉まった状態での評価が併用されているため、技術的な測定 方法、評価方法について、検討が必要である。
また、シャッターのスラット(シャッターが巻いている部分)の計算モデル化 が困難であるため、統一したルール作りについても検討が必要である。
③市場での使用割合が極度に小さいもの
○2012年度における市場シェアが5%未満ときわめて少ない開閉形式
具体的には、突き出し窓、外倒し窓、内倒し窓、オーニング、ガラスルーバー 窓、ガラスブロック窓、折りたたみ戸、引き窓/雨戸付サッシ、出窓、天窓、
その他(回転、多機能 等)を指す。
2)区分設定および目標基準値設定の考え方について
(原則2)特定熱損失防止建築材料はある指標に基づき区分を設定することになるが、その 指標(基本指標)は、熱損失防止性能との関係の深い物理量、機能等の指標とし、
最終消費者のニーズの代表を有するものとして設計事務所、ハウスメーカー、工 務店等が建築材料を選択する際に基準とするもの等を勘案して定める。
・ サッシの基本指標として、単位面積あたりの熱の逃げやすさを表わす熱貫流率が考えら れる。その他にも、熱貫流率に窓面積を乗じた指標で、窓全体からの熱の逃げやすさを 表わす単位温度差あたりの通過熱流量も指標として考えられる。
①熱貫流率
・ 熱貫流率を指標とする場合には、サイズが大きい方が熱貫流率の値が小さく、つまり断 熱性能は高くなるが、実住宅におけるエネルギー消費量は多くなることから、ユーザー に対する説明性が低くなる。一方、窓のサイズは住宅設計(意匠性や機能性等)の視点 から決定される傾向が強く、熱貫流率は単位温度差あたりの通過熱流量に対してサイズ による影響度が小さいことから、窓製品のエネルギー消費効率の向上という観点からは 評価できる。一方、サイズによる影響で、結果的に断熱性能の向上を促すためには大き な窓をたくさん作った方がよいというように捉えられることも考えられる。
②単位温度差あたりの通過熱流量
・ 単位温度差あたりの通過熱流量を指標とする場合には、サイズによる依存性がエネルギ ー消費量と直接対応することから、ユーザーに対する説明性は高くなる。一方、サイズ による影響度が大きく、結果的に断熱性能の向上を促すためには小さな窓をたくさん作 った方がよいというように捉えられることも考えられる。
図表 3.2.3 熱貫流率・単位温度差あたり通過熱流量と窓サイズの関係
幅寸 法W
高 さ 寸 法 H
←小 大 →
←
小
大→
幅寸 法W
高 さ 寸 法 H
← 小 大 →
←
小
大→ U値
U値 U値
U値 通過 熱量 量q通過 熱量 量q通過 熱量 量q通過 熱量 量q
U値は 大き な 値と な る U値は 大き な 値と な る U値は 大き な 値と な る U値は 大き な 値と な る
U 値 は小 さ な 値と なる U 値 は小 さ な 値と なる U 値 は小 さ な 値と なる U 値 は小 さ な 値と なる
qは 小さな 値と な る qは 小さな 値と な るqは 小さな 値と な る qは 小さな 値と な る
qは 大きな値と な る qは 大きな値と な る qは 大きな値と な る qは 大きな値と な る
(原則3)目標基準値は、同一の熱損失防止性能を目指すことが可能かつ適切な基本指標の 区分ごとに、1つの数値又は関係式により定める。
・ サッシにおいて、性能値に影響するものとして、構造、開閉形式、窓サイズが考えられ る。
①開閉形式
・ 開閉形式は、各住宅でどのタイプが活用されるのかは、隣接する建物との位置関係、換 気・採光の観点で必要な開口面積、居室の配置、消費者の嗜好等により左右される。ま た、住宅内で使用される開閉形式は以下の通り、違いが生じている。
A) 引き違い:全般的に採用されるサッシ
B) 横すべり出し:主にトイレに採用されるサッシであり、外部からのプライバシー に配慮しつつ、換気を行うことに適したサッシ
C) 縦すべり出し:住宅内の通風確保としてのウィンドキャッチを目的とするサッシ D) 上げ下げ:外部に窓が飛び出すような開閉形式が設置できない場所において採用
されるサッシ(狭小地において、隣地境界までの距離を確保できない場所にも採 用)
E) FIX:デザイン性を重視したサッシ
・ 採用される開閉形式により、平均的な窓寸法が異なるため、その分、熱貫流率に差が生 じているが、アルミ、アルミ樹脂複合、樹脂の構造別に同一のサッシフレーム、同一サ イズのガラスを想定した場合の、開閉形式別の熱貫流率は(図表 3.2.4)の通りである。
A) アルミサッシの場合:一般ペアガラス、Low-E ペアガラスのどちらを想定したケ ースにおいても、引き違い<上げ下げ<縦すべり出し≒横すべり出し<FIX の順 に性能が向上する。
B) アルミ樹脂複合の場合:一般ペアガラス、Low-E ペアガラスのどちらを想定した ケースにおいても、上げ下げ<引き違い<縦すべり出し≒横すべり出し<FIX の 順に性能が向上する。
C) 樹脂サッシの場合:一般ペアガラス、Low-E ペアガラスのどちらを想定したケー スにおいても、引き違い<上げ下げ<縦すべり出し≒横すべり出し≒FIX の順に 性能が向上する。