〈平成15年10月・神戸市〉
河口 豊
広島国際大学医療福祉学部教授
2.各自治体は災害による地域の被害予想図(ハ ザードマップ)を作成しつつありますが,被害 予想図についてお聞きします
2−1 貴院の存在する自治体では被害予想図を 策定していますか
「策定済み」が33%,「策定中」が8%,「検討中」
が22%と策定の動向を約3分の2の病院が把握 していたが,「不明」の病院が36%にも上った(図 2)。1.の回答の「十分」と「概要」を把握して いる79%の病院のなかには被害予想図について の情報を持っていない病院も少なくないことがわ かる。
2−2−1 策定済みの場合は,病院周辺(半径 約2km)について次の項目から活動が妨げら れたり,多数の被災者が来院するとお考えです か
ア.地割れ:「周辺との往来が困難」24%,「支障 はない」28%,「不明・未記入」48%であった(図 3)。半数が不明であるが,残りの半数近くが往 来が困難になると予想している。傷病被災者の移 動や物資の搬送が滞ることを前提に計画を立てな ければならない。
イ.液状化:「周辺との往来が困難」が28%,「支 障はない」36%,「不明・未記入」36%であった(図 4)。「困難,支障はない」は地割れより多く,「不 明・未記入」の割合が低くなった。地割れよりも 液状化の方が資料が整っているためと考えられる。
ウ.建物倒壊:「周辺との往来が困難」が30%,
「支障はない」35%,「不明・末記入」35%であ
救 急 医 療 防 災 セ ミ ナ ー
調 査 報 告
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︱ 地 域 の 防 災 対 策 に お け る 病 院 の 位 置 づ け に つ い て の 調 査
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図5
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図1
図2
図3
った(図5)。釧路沖地震では電柱の倒壊もあっ たが,前2者に比べ最も困難の割合が高くなって いる。少なくとも全体の30%の病院は自立生活 を余儀なくされることを意味し,これに不明の病 院からの数を加えると半数近くがこのような状態 に陥る危険性がある。
エ.人的被害:「多数の被災者の来院の可能性大」
は43%,「それほどでない」は41%,「不明・未記 入」16%であった(図6)。最も多い43%の病院 が多くの被災者が来院すると予想しており,地割 れ,液状化,建物倒壊などによる車両の往来が困 難のなかで多くの被災者をかかえることを前提に 計画を立てることになる。もっとも,以前の十勝 沖地震のときのように当日の救急当番病院に被災 者が集中し,ほかの病院も受け入れ態勢を整えた のにわずかしか来院しなかったということもある。
前述の宮城県北部地震と同様に,地域体制が機能 しなかったために地域の被災者を地域全体で受け 止められなかった,ということがないようにした い。
2−2−2 病院周辺の主要道路網は自治体によ って確保される計画ですか
「確保される」が57%,「確保されない」が19%,
「不明・未記入」は24%であった(図7)。主要 道路網は6割がたが自治体によって確保されると しており,後は主要道路網から病院までの取り付 き道路の確保である。「周辺との往来が困難」で は病院との被災者移動や支援物資の搬送が難しい。
多くの被災者が来院する前提では多くの人手をこ れらにさけない。
3.各自治体は災害医療計画を策定しつつありま すが,貴院の役割についてお聞きします 3−1 貴院が立地している自治体では災害医療
計画を策定していますか
「策定している」が63%,「策定中」が6%,「検 討中」が9%,「不明・未記入」が22%であった
(図8)。「策定している」と「策定中」を合わせ ると約7割となり,かなり進んできたといえる。
むしろ「不明・未記入」の病院が2割強あり,災
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︱ 地 域 の 防 災 対 策 に お け る 病 院 の 位 置 づ け に つ い て の 調 査
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図9 図6
害医療計画にコミットしていないことの方が問題 となる。
3−2 貴院は災害医療計画のなかで位置づけら れていますか
「位置づけられている」が62%,「位置づけられて いない」が13%,「不明・未記入」が25%であっ た(図9)。「位置づけられていない」が1割強あ るが,それは独自に計画を立てておけばよいが,
ここでも4分の1を占める「不明・未記入」である。
ぜひ,早急に確認をし病院として災害時にどのよ うな体制を敷くべきなのか検討をする必要がある。
3−3 位置づけられている場合,災害医療計画 のなかでの役割は次のうちのどれですか
「発生初期の受け入れ中心病院」が42%,「発生初 期の受け入れ一般病院」が14%,「後方受け入れ高 度病院」が15%,「後方受け入れ一般病院」が15%,
「その他」12%である(図10)。災害拠点病院の割 合が多いこともあり「発生初期の受け入れ中心病 院」の率が高い。また「後方受け入れ病院」は高 度,一般合わせて30%が担う体制にある。
3−5 位置づけられていない場合,災害医療活 動を行う予定はないですか
全体で50病院と少数であるが,3分の2が「行 う予定」としていた。「行う予定なし」は7病院 14%である(図11)。
3−6 その地域でほかの病院が担う機能を知ら されていますか
「知らされている」が38%,「知らされていない」
が25%,「不明・未記入」が37%であった(図12)。 他の病院の機能を知らなければ患者・被災者の移 動や支援に行く,あるいは逆に支援を依頼するこ とができない。地域のなかでの医療施設の活動で あることをあらためて認識しておく必要があろう。
3−8 知らされていない場合,震災で貴院の機 能が低下し入院中の患者などを外部へ搬送しな ければならないとき,どのような方法をとりま すか
「交流のある病院に依頼する」が38%,「災害対策 本部に問い合わせる」が50%,「その他」が7%,
「不明・未記入」が5%であった(図13)。対策本
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図13 図10
部への期待が高く,本部が被災地外の患者受け入 れ病院の情報を発信できる機能を求められている。
また,普段から交流のある病院へもかなり大きい 割合であるが,できれば同時に被災を受けない地 域との支援協定を取りかわしておきたい。
4.災害対策本部(自治体)と貴院との連絡方法 についてお聞きします
災害優先電話が用意されていますが,それが何 らかのために使えない場合の代替えはどのよう な手段を考えられますか(複数回答)
「災害無線」が27%,「携帯電話」が33%,「パソ コン」が18%,「伝令」が11%であった(図14)。
「災害無線」は限定されるがかなりの信頼が寄せ られている。「携帯電話」,「パソコン」の回線確保 が必要となろう。「伝令」は確実であるが宮城県 北部地震の際は,災害拠点病院から公立深谷病院 へ様子を見に行かせるときに危険地帯へ出すこと への 躊 躇 があったという。
ちゆう ちよ
5.災害時に地域の避難所などにできる救護所に ついてお聞きします
5−1 開設される救護所の場所をご存じですか
「知っている」が51%,「知らない」が32%,「聞 いていない」が14%であった(図15)。半数の病院 はその場所を知っていたので,そこから移送され てくる被災者の様子も比較的把握しやすく,また 人手に余裕ができたときに支援をしやすいと考え る。しかし,「知らない」,「聞いていない」を合わ せて46%の病院がその場所を知らない。もっと も,救護所が開設されるのはある程度時間がたっ てからにならざるを得ないので,次の段階からの 参加は可能であろう。しかし,地域の全体像を把 握できているかどうかはその病院の活動の見通し をつけるうえで重要なこととなる。
5−2 救護所を担当する医師はどこの所属医師 ですか(複数回答)
「地域の病院」が36%,「地域の診療所」が21%,
「外部」は1%,「決まっていない」が10%,「分 からない」と「未記入」を合わせると32%になる
(図16)。2−2−1 エ(図6)で病院は多くの 被災者が来院すると予想している病院が多く,救 護所にどの程度の人手をさけるか予想は難しい。
災害医療計画のなかでも判断の分かれる点である。
また診療所の医師が自宅や診療所の整理をして救 護所を担当することは比較的現実的である。さら に被災地内部の医療関係者も被災者なので,外部 からの医療職支援者を災害対策本部などが計画的 に配置できればよいが,外部者のみを当てに計画
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