素材転換技術
プラスチックの素材転換は、使用後に廃プラスチックとなりうるものを製造段階から回避しよ うとの試みであり、廃プラスチックの適正管理が不十分な開発途上国においてむしろ関心が高い。
レジ袋やストローなどの使い捨てプラスチックに対して法的に厳しく対応している、または使い 捨てプラスチックの削減方針をとる民間流通企業が多く活動している国や都市では、代替素材へ のニーズが高い53。また、都市化による廃棄物の増大に対してコンポスト化を推進している場合54 には、有機ごみ排出用に生分解性のごみ袋への需要が見込まれる。
一方、代替素材の開発は開発途上国を含めて各国で盛んであり、厳しい価格競争が不可避であ る。
代替素材の中でも海洋での生分解性のある素材には高付加価値がある。海洋生分解性プラスチ ックはオーストリアの認証機関が OK biodegradable MARINE という認証を与えている55が、それ を取得している企業は世界に4社しかなく、うち1社は日本企業である。現在ISOにおいて海洋 生分解性の規格が整備されつつあり、我が国も経済産業省や研究機関、業界団体などが協同で評 価手法の提案をしていくこととなっている。これらの過程を経て我が国の海洋生分解性プラスチ ック製造技術の優位性を得ていくことが、海外展開の推進につながるものと考えられる。
53 マレーシアでは2019年1月に採択した「使い捨てプラスチックゼロに向けたロードマップ」により、2030年まで に使い捨てプラスチックの利用をゼロにすることを目指しており、生分解性プラスチックの利用促進は主要なア プローチの一つとなっている。
54 都市ごみのうち有機ごみをコンポスト化する事業では、コンポストにマイクロプラスチックが混ざってしまう 問題が指摘されている(例えばWoods End Laboratories & Eco-Cycle, 2018)。生分解性プラスチック袋はコンポスト に利用される有機ごみの排出に有用であるが、それ以外のプラスチック製品を確実に制限する取り組みが必要と なる。
55 脚注19参照。
72 プラスチック使用量削減・リサイクル設計
プラスチック製品あるいはプラスチック部品を含んだ製品の各企業は、強度を保ちつつ厚みを 減らす技術や廃棄後に再生されやすいように設計する技術を常に向上させている。
日本では、「資源有効利用促進法」あるいは「家電リサイクル法」「容器包装リサイクル法」な ど個別製品群のリサイクル関連法の求めに応じるべく、業界団体が核となってリサイクル促進の ためのガイドライン56を定めている。省資源型あるいは再生しやすい設計上の技術の進展は、昨今 のESG(環境・社会・ガバナンス)という企業を見る尺度の普及も背景にあって、そうしたガイ ドラインに準じようとの各企業の自主性によるところが大きい。
こうした企業の個々の技術が活用されうるとともに、そのような企業努力を促す制度技術もま た海外支援での普及対象として考えられる。
回収・分別・破砕・圧縮
この工程は、廃プラスチックの再生資源としての価値を左右する。しかし効率的・効果的な回 収や分別は、廃棄物管理の制度や状況によるところも大きく、開発途上国では人件費も安いため、
民間企業の有する技術優位性が発揮されにくい状況も想定される。
そうした中、すでに触れた発泡スチロールの圧縮技術は注目される。発泡スチロールは体積の 98%が気体であり、体積当たりの樹脂量が極めて少なく、当然、そのままでは輸送効率は低い。容 積が50分の1になれば体積当たりの単価は50倍になり、取引機会がぐっと増すことになる。た だし、これまで発泡スチロールの取引市場が確立されていない場合もあり、市場の開拓が必要と なる。
リサイクル
メカニカルリサイクル
メカニカルリサイクルの多くは、カスケードリサイクル、すなわち原料とする廃プラスチック よりも再生されたプラスチックの方が品質が低くなる方法がとられている。開発途上国では、コ ストと時間を掛けるよりも、不徹底な分別やプラスチックに含まれる不純物の存在を受け入れて 経済性に見合う製品を作る結果として、より品質の低い製品を作りがちである。これらの製品に まだ需要が見込める場合にはリサイクルとして成り立つが、ほぼ一度きりのリサイクルであり使 用後は廃棄あるいはエネルギー利用となる。
水平リサイクルの場合は多大なエネルギーを必要とするため、コストの問題が課題としてある ものの、カスケードリサイクルの中でも品質がなるべく下がらないリサイクル、さらには水平リ サイクルへと近づくような技術が望まれていると考えられる。
ただし、タイのように衛生の面から食品や飲料の容器包装への再生プラスチックの利用を禁止 している国では、リサイクルの促進と食の安全の確保とを満たす制度の構築がまずは求められる。
56 例として、PETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトル自主設計ガイドライン」、家電製品協会の「家電製 品のプラスチック等部品の表示およびリサイクルマークのガイドライン」「家電製品アセスメントマニュアル」な ど。
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図 3-2 マテリアルリサイクルの望ましい方向性
(藤井, ほか (2009)より図を改変)
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、当該国・都市の産業(高炉製鉄や化学工業施設の有無)によりその需 要が左右される。これらの需要がある場合、再生品の品質を損なわない廃プラスチックの品質管 理、廃プラスチックに含まれる塩素分の除去技術、あるいは副産物としてのスラグの有効利用な どに我が国技術の優位性があると考えられる。
固形燃料/セメント原・燃料化
RDF による焼却発電事業は、FITによる後押しもあり、タイなど開発途上国でも普及し始めて いる。上記マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルにおいても指摘できるが、開発途上国に おいて廃プラスチックはいったん分別回収されれば有価で取引されることから、日本における事 業採算の前提とは異なっており、いかに原料を確保するかが課題である。
JICAの民間連携事業を通じてフィリピンで事業化された事例では、フラフ燃料を供給している。
フラフ燃料はRDF燃料に比べて製造コストを抑えられる点、また最終処分場に運び込まれる廃棄 物から廃プラスチックを選別するところから事業に取り込んでいる点が、成功要因として働いて いるものと考えられる。
焼却発電
焼却発電は我が国における廃棄物管理の基幹技術であり、国内のみならずアジア、欧州等にお いても数多くの実績を積んでいる。水分の多い開発途上国の廃棄物にも適合でき、環境への配慮、
安定した操業など最高水準の技術を有している。
一方、日本の焼却発電施設は高額で、開発途上国の実情に合っていないとの指摘があり、コス ト縮減が大きな課題である。コスト縮減の検討にあたり留意すべき点の一つとして、日本と海外 での焼却施設の立地条件の違いがある。本調査にて実施した 4カ国の現地調査において得られた 焼却施設に関する情報による限り、焼却処理が必要なほどに都市化の進んだ都市においては、焼 却施設の用地取得には多大な社会的コストを要するため、現有最終処分場の敷地内に焼却施設を
飲料ボトル 高品位製品 低品位製品
熱・電力 飲料ボトル 高品位製品 低品位製品
廃棄
飲料ボトル 高品位製品 低品位製品
熱・電力 飲料ボトル 高品位製品 低品位製品
廃棄 現在のリサイクル
(カスケードリサイクルで、かつ、多く が低品位製品に再生される。)
望ましいリサイクル
(なるべく品位を下げずに再生する。)
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建設するケースがほとんどであり、居住区域にすら建設される日本の立地条件とは大きく異なっ ている。日本では、排出基準を法律や条例よりもさらに厳しく自主的に設定したり、街の景観と 調和するよう建屋の外装にも最大限の配慮をしたりしているが、現地の事情に応じた環境配慮設 備の簡素化や建屋を省略した屋外仕様の導入などにより、建設費の抑制は可能である。
海洋プラスチックの回収および測定・モニタリング
海洋プラスチックの回収は、技術としては物理的に捕集することであり、日本が特段の技術優 位性を持つわけではない。
一方で、漂流ごみの挙動や漂着ごみの量の測定などについては、気象・海洋情報の分析やドロ ーンや衛生などを用いた画像情報の解析を活用した研究成果が上がっている。このような、海洋 プラスチックの測定技術やシミュレーション技術を適用することで、漂流ごみの回収の効率化を 図ることができる。
またマイクロプラスチックの測定・モニタリングは、すでに述べてきたように日本では研究実 績に長じており日本近海では相当な情報の蓄積がある。日本の測定・モニタリング技術の普及は 海外における情報ニーズを満たすのみならず、標準化された手法によるデータの蓄積やネットワ ーク化の進展も促すという効果も得られる。