5.2.1
招へいプログラムの有効性の検証(目標達成度)・成果本招へいプログラムの目標は「本邦招へい者が本招へい事業内で実施する現地視察を通し、海 洋ごみに関する日本の官民による対策の現状を包括的に学び、自国での対策の重要性・必要性を 理解するとともに、対策の実施に向けた知見を得る」ことである。
そこで、海洋ごみに関する日本の官民による対策の現状を包括的に学んだことによる、「海洋 ごみに対する自国での対策の重要性・必要性の理解」および「海洋ごみ対策の実施に向けた知見 の習得」の達成度について評価するため、プログラム参加者に対する調査票による全数調査(有 効回答数12)を行った。
後述するように、日本を代表する研究者らによる講義とともに、「自身の所属する組織・団体 にとって興味深く、魅力的なものであったか」という設問において、日本の消費材メーカーの取 り組みが、また、「政策/システム/技術等が招へい者の所属する組織・ 団体における業務に対し て、実際に適用可能か、取り入れられそうか」という設問においては、日本のベンチャー企業と 化学工業界による取り組みが最高評価を得られていたことから、本邦技術の活用による当該分野 の協力の展開についても大きな可能性が見込まれる。
(1)海洋ごみに対する自国での対策の重要性・必要性の理解
本招へい計画の各プログラムにおける講義・視察の内容が「自身の所属する組織・団体にとっ て興味深く、魅力的なものであったか(The topic is interesting and attractive for your organization. )」
という設問に対し、「非常にそう思う(Strongly Agree)」から「まったくそうは思わない(Strongly Disagree)」まで5段階に分け、参加者による評価を得た(表 5 3)。その結果、プログラム内容に 対する評価は、全体平均で4.51であり、「非常にそう思う(Strongly Agree):5」と「そう思う(Agree):4」
の間であった。海洋ごみに関する日本の官民による対策の現状について共有され、各講義・視察 先における活発な議論・質問からも、自国における対策の重要性・必要性についての理解が深ま ったことが窺える。海洋プラスチックごみ対策における日本の取り組みや技術についての関心が 高まり、その重要性・必要性が理解されたことは大きな成果といえる。
表 5-3に全参加者による各プログラムの評価結果を示す。17のプログラム中で最も評価の高い 値(平均4.8)となったのは、P-1(九州大学磯辺教授)「海洋プラスチックごみ問題の現状と将来予測、
環境への影響及び調査・研究手法」、P-2(東京農工大学高田教授)「海洋プラスチックの自然生態 系や社会への影響」およびP-13(株式会社花王のESG活動推進部柴田マネージャー)「消費財メー カーによるプラスチックごみ対策の取組」の3件である。
101
表 5-3 全招へい者によるプログラム評価(理解・関心)
No. プログラム 形態 自身の組織・団体にとって興
味深いトピックであったか
P-1 「海洋プラスチックごみ問題の現状と将来予測環境への影響及び調査・研究手
法」(九州大学・磯辺篤彦教授) 講義 4.8
P-2 「海洋プラスチックの自然生態系や社会への影響」(東京農工大学・高田秀重教
授) 講義 4.8
P-3 「海洋プラスチックごみ及び国際資源循環に係る動向」(アジア経済研究所・小
島道一研究員(ERIA 出向中)) 講義 4.7
P-4 「我が国における海洋ごみ対策の現状及び技術動向」(環境省・安陪室長補佐) 講義 4.4 P-5 「プラスチック資源循環を巡る日本の産業界の取組」(クリーン・オーシャン・
マテリアル・アライアンス (CLOMA)・竹下満事務局次長 ) 講義 4.6 P-6 「東京都における 3R・廃棄物管理及びプラスチック・海洋ごみへの対応」(東
京都環境局・古澤康夫専門課⻑) 講義 4.4
P-7 「戸吹クリーンセンター(プラスチック資源化センター/焼却施設)」(八王子市/都
内) 視察 4.3
P-8 「陸域から海洋におけるマイクロプラスチック流出実態調査」(株式会社ピリ
カ・小嶌不二夫) 講義 4.5
P-9 「プラスチックごみの分別・回収・資源循環及び人工知能やSNSアプリを活用した市民参加によ るごみの散乱状況の調査・回収の取組」(横浜市資源循環局・株式会社ピリカ/横浜市)
講義・
実習 4.4
P-10 「北部下水道センター」(横浜市環境創造局/横浜市) 視察 4.2
P-11 「廃プラスチックを主原料としたフラフ燃料製造工場」(株式会社グーン(旧萬世
リサイクルシステムズ)/横浜市) 視察 4.1
P-12 「日本の化学業界による海洋プラスチックごみ対策や生分解性プラスチック活
用の取組」(日本プラスチック工業連盟・岸村小太郎専務理事) 講義 4.7
P-13 「消費財メーカーによるプラスチックごみ対策の取組」(株式会社花王・柴田学
氏) 講義 4.8
P-14 「ペットボトルのメカニカルリサイクル」(協栄産業株式会社/茨城県) 視察 4.6
P-15 「オールジャパンによる産官学民が連携した海ごみ対策 Change for the Blueの
取組と今後の展望」 日本財団・宇田川貴康氏) 講義 4.3
P-16 「ペットボトルの自動回収機の取組」(セブン-イレブン千代田二番町店/都内) 視察 4.4
P-17 「海洋プラスチックごみ対策から循環型社会を目指すための市民と生産者の責
任と取組」(ごみじゃぱん(神戸大学名誉教授)・ 石川雅紀代表) 講義 4.7
磯辺教授による講義は、国別ではタイ(3名)およびベトナム(3名)の参加者からの評価が特 に高かった(平均5)。所属機関別では地方自治体(2名)および民間(1名)の参加者からの評 価が高く(平均5)、業務分野別では工業分野(2名)から高い評価(平均5)を得ていた。マイ クロプラスチックを含めた海洋へのプラスチックごみの流出状況とその将来予測、科学的な調査・
分析手法が参加者の関心を集め、課題の現状について科学的エビデンスを持って理解することに 寄与したと考えられる。また、2019年にタイにて開始されたSATREPS「東南アジア海域における 海洋プラスチック汚染研究の拠点形成」(九州大学・チュラロンコン大学)の取り組みと展望に ついても紹介された。プラスチック使用量の削減は持続可能な方法で行わなければならないこと、
より正確な流出状況の把握と科学的知見に基づいたアクションプランの策定等が重要であること が共有された。
高田教授による講義は、インドネシアの参加者(3 名)からの評価が高かった(平均 4.7)。所属 機関別では中央政府(9名)の参加者からの評価が高く(平均4.9)、業務分野別では海洋分野(5 名)から特に高い評価を(平均5)得ていた。プラスチックやマイクロプラスチックが海洋生態系 や生物に与える影響についての最新の知見や社会的影響、考えられる有効な対策についての科学
102
的な分析が、参加者の理解を促したと考えられる。また、焼却処理や生分解性プラスチックおよ びバイオプラスチックを活用するうえでのリスクと留意事項について、日本の政策的状況及び生 態系や社会への影響を踏まえ共有された。
花王の柴田マネージャーによる講義も、インドネシアの参加者(3名)からの評価が高かった(平 均4.7)。所属機関別では中央政府(9名)の参加者からの評価が高く(平均4.9)、業務分野別で は海洋分野(5名)から特に高い評価(平均5)が得られた。日本を代表する消費財メーカーであ る同社が 2019 年発表した「プラスチック包装容器宣言」による 4R の取り組み(Reduce, Reuse, Recycle, Replace)、つめかえ用製品および包装容器の設計変更等によるプラスチック使用量の削 減、自治体と協力して包装容器を回収し、ブロック等に再生加工し、地域で活用する「リサイク リエーション」の活動などの技術や取り組みが紹介され、参加者各国での展開を望む声があがっ た。
(2)海洋ごみ対策の実施に向けた知見の習得
本招へい計画の各プログラムにおける海洋ごみ対策の実施に向けた知見の習得度を測るた め、各講義・視察において紹介された「政策/システム/技術等が招へい者の所属する組織・ 団 体における業務に対して、実際に適用可能か、取り入れられそうか(The topic is interesting and
attractive for your organization. )」という設問に対し、「非常にそう思う(Strongly Agree」から
「まったくそうは思わない(Strongly Disagree)」まで 5 段階に分け、参加者による評価を得た
(表 5-4)。その結果、プログラム内容に対する評価は、全体平均で4.11であり、「そう思
う(Agree):4」を上回る結果となった。自国での海洋ごみ対策の実施に向けた新たな知見を得
ることに繋がったとみられる。日本の官民による海洋プラスチックごみ対策の取り組みや技 術が、各国においても適用可能と捉えられたことは大きな成果といえる。
表 5-4に参加者による各プログラムの評価結果を示す。17のプログラム中で最も高い値(平 均 4.3)と評価されたのは P-2(東京農工大学・ 高田教授)、P-3(ERIA・小島研究員)、P-8(株式 会社ピリカ)、P-12(日本プラスチック工業連盟・岸村小太郎専務理事)ならびにP-17(NPO法人 ごみじゃぱん)の5件である。
表 5-4 全招へい者によるプログラム評価(適用可能性)
No. プログラム 形態 政策/システム/技術等は自身
の組織・ 団体で適用可能か
P-1 「海洋プラスチックごみ問題の現状と将来予測環境への影響及び調査・研究手
法」(九州大学・磯辺篤彦教授) 講義 4.2
P-2 「海洋プラスチックの自然生態系や社会への影響」(東京農工大学・高田秀重教
授) 講義 4.3
P-3 「海洋プラスチックごみ及び国際資源循環に係る動向」(アジア経済研究所・小
島道一研究員(ERIA 出向中)) 講義 4.3
P-4 「我が国における海洋ごみ対策の現状及び技術動向」(環境省・安陪室長補佐) 講義 3.9 P-5 「プラスチック資源循環を巡る日本の産業界の取組」(クリーン・オーシャン・
マテリアル・アライアンス (CLOMA)・竹下満事務局次長 ) 講義 4.1 P-6 「東京都における 3R・廃棄物管理及びプラスチック・海洋ごみへの対応」(東
京都環境局・古澤康夫専門課⻑) 講義 4.1
P-7 「戸吹クリーンセンター(プラスチック資源化センター/焼却施設)」(八王子市/都
内) 視察 4.0
P-8 「陸域から海洋におけるマイクロプラスチック流出実態調査」(株式会社ピリ
カ・小嶌不二夫) 講義 4.3
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P-9 「プラスチックごみの分別・回収・資源循環及び人工知能やSNSアプリを活用した市民参加によ るごみの散乱状況の調査・回収の取組」(横浜市資源循環局・株式会社ピリカ/横浜市)
講義・
実習 4.0
P-10 「北部下水道センター」(横浜市環境創造局/横浜市) 視察 3.7
P-11 「廃プラスチックを主原料としたフラフ燃料製造工場」(株式会社グーン(旧萬世
リサイクルシステムズ)/横浜市) 視察 3.8
P-12 「日本の化学業界による海洋プラスチックごみ対策や生分解性プラスチック活
用の取組」(日本プラスチック工業連盟・岸村小太郎専務理事) 講義 4.3
P-13 「消費財メーカーによるプラスチックごみ対策の取組」(株式会社花王・柴田学
氏) 講義 4.2
P-14 「ペットボトルのメカニカルリサイクル」(協栄産業株式会社/茨城県) 視察 4.2
P-15 「オールジャパンによる産官学民が連携した海ごみ対策 CHANGE FOR THE
BLUEの取組と今後の展望」 日本財団・宇田川貴康氏) 講義 4.1
P-16 「ペットボトルの自動回収機の取組」(セブン-イレブン千代田二番町店/都内) 視察 4.1
P-17 「海洋プラスチックごみ対策から循環型社会を目指すための市民と生産者の責
任と取組」(ごみじゃぱん(神戸大学名誉教授)・ 石川雅紀代表) 講義 4.3
高田教授による講義は、インドネシアの参加者(3 名)からの評価が高かった(平均 4.7)。所属 機関別では中央政府(9名)の評価(平均4.4)および地方自治体(2名)の参加者からの評価(平 均4.7)も高く、業務分野別では廃棄物管理分野(5名)から高い評価(平均4.4)を得ていた。高 田教授は、昨年 5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」について審議を重ねてきた環境 省プラスチック資源循環戦略小委員会の委員も勤めており、現状の日本における海洋プラスチッ クごみ対策政策に対する科学的見解に基づいた評価についても述べられた。参加者にとり自国の 政策による、環境負荷や自然生態系、社会への影響を考えるうえで、有用で具体的な知見が得ら れたと考えられる。
小島研究員による講義は、ベトナムの参加者(3 名)からの評価(平均 4.7)が高かった。所属機 関別では地方自治体(2名)の参加者からの評価(平均4.7)が高く、業務分野別では海洋分野(5 名)の評価(平均4.6)及び廃棄物管理分野(5名)の評価(平均4.4)が高かった。2017年の中 国の廃プラスチック禁輸表明をはじめとしたアジアにおける国際資源循環・リサイクルの現況及 び、バーゼル条約等の国際条約・規制の現状や経済的影響・展望について共有され、自国の政策 について助言を求める声が相次いだ。
ピリカの小島社長による講義は、インドネシアの参加者(3 名)からの評価(平均 4.7)が高かっ た。所属機関別では中央政府(9名)の評価(平均4.4)及び民間(1名)の参加者からの評価(5)
も高く、業務分野別では工業分野(2名)から特に高い評価(平均5)が得られた。ピリカの取り 組みは人工知能(AI)による画像認識やスマートフォンアプリ、ドローン等の先端技術を活用し ながら、既に日本の自治体等の政策決定・評価に社会実装されており、特にプラスチックごみの 発生源・用途品目や流出状況を把握する取り組みは、国連環境計画(UNEP)でのプロジェクト等 を通じ途上国でも実証されていることから、各国でも取り入れ易い適正技術として関心を集めた と考えられる。
日本プラスチック工業連盟の岸村専務理事による講義は、インドネシア(3名)の参加者の評価
(平均 4.7)およびフィリピン(3名)の参加者からの評価(平均5)が特に高かった。所属機関 別では中央政府(9名)の評価(平均4.4)ならびに民間(1名)の参加者からの評価(5)が高く、
業務分野別では工業分野(2名)の評価(平均5)および廃棄物管理分野(5名)の評価(平均4.4)
も高かった。岸村専務理事も、環境省のプラスチック資源循環戦略小委員会の委員を勤めている。
日本の化学工業会の各企業・団体によるプラスチック流出抑止の取り組みやリサイクルや生分解