2.2 海洋プラスチックごみ問題への対策状況
2.2.6 日本における海洋プラスチックごみ対策技術
前項で紹介した民間企業の技術も含めて、海洋プラスチックごみ問題に対処するために日本で 適応されている技術の全般を、以下の表のように整理した。なお、本邦企業の技術の海外展開の 検討へと繋げていくとの観点から、技術とはここでは理工学的技術を指し、制度や教育・啓発的 な技術は含んでいない。
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表 2-18 日本における海洋プラスチックごみ対策技術 プラスチック
ごみの種類
マクロプラスチック(いわゆる「プラスチック
ごみ」の状態で発生) マイクロプラスチック
(微細粒子として発生)
陸上活動起源 海洋活動起源
ごみの例
レジ袋、容器包装、電 気・電子機器、建材、輸 送、食器、文具、履物等
漁網、ロープ、ブイ、
フロート、船舶内で発 生する左記のような ごみ
タイヤ、塗装、道路の白線 標示、靴底などの摩耗によ る細片、製品中マイクロビ ーズや研磨剤、ペレット
製 造 段 階
素材転換 紙や木など素材開発
バイオマスプラスチ ックの開発
生分解性プラスチッ クの開発
特段の強度の求め られない用具に関 して、生分解性プ ラスチックの利用
プラスチック製マイク ロビーズの不使用
生物由来の素材による マイクロビーズ開発
プラ使用量 削減/リサ イクル設計
軽量化、詰め替え、付 け替え
素材の単一化
分別しやすい設計
フロートにカバー 装着
廃 棄 以 降
回収/分別
/破砕/圧 縮
プラスチックの分別
破 砕/圧 縮 な ど の 可 搬性向上
破砕/圧縮などの可 搬性向上
下水処理施設での回収
リサイクル
/リカバリ ー*注
マテリアル回収
エネルギー回収
環境からの 回収
漂流ごみ・漂着ごみ の回収
海洋での回収
実態把握 測定/モニタリング
*注)エネルギー回収を「サーマルリサイクル」と呼んでリサイクルの一部とする考え方もあるが、廃棄物の有するエネルギー は一度の利用に限られることから「サーマルリカバリー」と呼んでリサイクルとはみなさないことも多い。我が国の「プラスチ ック資源循環戦略」では、リサイクル率と熱回収率を合わせたものを有効利用率としており、EUの廃棄物枠組み指令(2008/98/EC)
では、リサイクルには熱回収を含まないとしている。
本業務では陸上活動を起源とするものに重点を置くことから、表の左列に示した、「陸上活動 起源」のマクロプラスチックを対象とした上表の技術について、以下に説明する。
(1)素材転換技術
これは、従来のプラスチック製品を紙や木、石油由来ではなく植物由来のバイオマスプラスチ ック、または生分解性プラスチックで製造する技術である。特殊な加工や塗工を施すことにより、
高い耐水性を有した紙の包装材や木製のストローなどが開発されている。バイオマスプラスチッ クは、トウモロコシやパームヤシなど再生可能資源を原料とすることから、焼却した場合でもカ ーボンニュートラルで二酸化炭素を排出しない特徴がある。また、生分解性プラスチックについ ては、特に海洋環境で生分解性のある海洋生分解性プラスチック19の開発に注目が集まっている。
いずれの代替素材においても、実質的にプラスチックを代替するにはコストや利便性に課題が ある。また、これら素材の利用は、ポイ捨てを助長したり適切な廃棄物管理の重要性を損なった
19 海水中で生分解する「OK Biodegradable MARINE」(30℃の海水中で、生分解度が6カ月以内に90%以上になる こと)の認証制度がある。一定の条件下での分解を保証するもので、あらゆる環境の下で分解されることを保証し ているものではないことに注意する必要がある。
41 りするものであってはならないと指摘されている。
(2)プラスチック使用量削減/リサイクル設計
プラスチックの使用量を削減する技術としては、パッケージの軽量化や詰め替え容器の開発な どがある。PET ボトルを例にすると、素材を薄くする代わりに全体に凹凸をつけて強度を持たせ る、あるいは、口部のネジ山を改良するなどして軽量化が図られている。詰め替え製品は、より 移し替えしやすくこぼれにくい容器が開発されている。さらには、専用のホルダーに製品を取り 付ける「付け替え」方式の製品も増えている。
また、リサイクルしやすさの向上には、単一素材化(例えばプラスチックとアルミとが複合し た食品包装材をプラスチックのみにするなど)、家電製品の分解を容易にするような部品取り付 け方法の改善などの技術がある。
こうした取り組みの背景には、業界が自主ガイドラインを設け、リサイクルしやすい製品設計 を促していることがある。
(3)回収/分別/破砕/圧縮
後に続くリサイクル工程の円滑化のためには、プラスチックとその他の素材との分別やプラス チックの種類ごとの分別が必要となる。風力や比重差、分子構造の違いを捉える分光法などを用 いた機械による自動分別機器も開発されているが、人の手による解体・分別も広く行われている。
破砕工程からはシュレッダーダストが発生するが、シュレッダーダストからの近赤外線を使っ た識別技術などによるプラスチック回収技術が開発されている。
またプラスチックごみは軽量ながら嵩張るものも多く、回収・分別後のリサイクル施設への運 搬を容易にするため、減容処理も重要となる。鮮魚や農産品を入れる発泡スチロールのごみが大 量に発生する市場や発泡トレーを回収している自治体などが、熱減容機を設置して容積が50分の 1ほどのインゴットとし、運搬の効率化を実現している例がある。
(4)リサイクル/リカバリー
日本での廃プラスチックのリサイクル技術は次のように分類される。(%は日本での廃プラス チック総量に対してそれぞれの技術が適用されている割合(2017年))
図 2-11 廃プラスチックのリサイクル技術 プラスチック リサイクル技術
マテリアル回収 (27%)
メカニカルリサイクル(23%) ケミカルリサイクル(4%)
原料・モノマー化 高炉原料化 コークス炉化学原料化
ガス化 油化 エネルギー回収
(58%)
固形燃料/セメント原・燃料化(18%) 焼却発電(32%)
焼却熱回収(8%)
42 上図の技術20をそれぞれ、以下に説明する。
メカニカルリサイクル
メカニカルリサイクルとは、廃プラスチックをその素材の化学的構造を大きく変えることなく プラスチック原料あるいはプラスチック製品へと転換することである。日本では、マテリアル(材 料)リサイクルと呼ばれることが多い。メカニカルリサイクルにおいては、樹脂の均一性や純度、
量の確保が重要であることから、産業系廃プラスチックおよび一般廃棄物のうちのPETボトルが 主にこの技術によりリサイクルされる。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルでは、プラスチックをモノマー、あるいはプラスチックの化学構造が変化 した新しい材料に転換する。これにはさらに、以下のような技術がある。
原料・モノマー化:廃プラスチックを化学的な分解反応により原料やモノマーに戻し、再度 製品化する。実用化されているものとして、PETボトルからのPETボトルの再生技術がある。
高炉原料化:還元剤であるコークスの代替品として、廃プラスチックを高炉に投入する。プ ラスチックの混合物を利用できるが、プラスチック以外の不純物は取り除く必要がある。ま た、塩化ビニルを含んだプラスチックの場合は、発生する塩化水素が設備腐食の原因となる ため、無酸素高温(350度)下で塩化水素を除去しておく必要がある。
コークス炉化学原料化:石炭に 1~2%程度廃プラスチックを混入してコークス炉に投入し、
炭化水素油、コークス、コークス炉ガスを産出し、それぞれ化学原料、高炉還元剤、発電燃 料として利用する。プラスチック混合物を利用できるが、前処理として、異物除去、塩化ビ ニル除去、粒状への加工成形が必要である。
ガス化:酸素を制限した状態で廃プラスチックを加熱させて発生する合成ガス(主成分は一 酸化炭素と水素)を、水素、メタノール、アンモニア、酢酸などの化学工業原料として利用 する。また排出される不燃物やスラグは、土木・建築資材として利用する。
油化:廃プラスチックをその原料の石油に戻す技術である。しかし、そのプロセスにもエネ ルギーを必要とすること、生成物の分離プロセスが必要なこと、発火や爆発のリスクがある ことなど、採算の取れる事業としては成立させるには課題が多い。
なお、ここで示したメカニカルリサイクルとケミカルリサイクルは、加工工程における分子レ ベルの変化から区分されるが、リサイクル資源であるプラスチックと再生されるプラスチックと の種類や品位から、カスケードリサイクルと水平リサイクルという区分もある。
リサイクル資源であるプラスチックよりも再生されるプラスチックが低品位の製品である場合 がカスケードリサイクル、同じ品位の同じ製品が作られる場合が水平リサイクルである。PET ボ トルをリサイクル資源とした場合、果物用トレー、繊維製品、ごみ箱、椅子などを再生するのは カスケードリサイクル、同じPETボトルを再生するのが水平リサイクルである。
20 図中のケミカルリサイクルは、ISO 15270:2008(プラスチック―プラスチック廃棄物の回収とリサイクルのガイ ドライン)では、Feedstock Recyclingと称される。