4. 北極航路
4.2.1 河川舟運
ロシアでは旧ソ連時代より、東西の長距離輸送は主として鉄道が基幹輸送手段となり、
そこから沿岸部など陸上輸送の困難な遠隔地に向かう輸送には、河川舟運や冬の道路が 用いられてきた。利用可能な国内水路はロシアの鉄道延長の約6割の全長8万5,000km に達し、国内の貨物輸送に占める河川舟運の割合は 10%以下に減少したものの、依然 として貨客輸送で重要な役割を担い続けている。特に北部や東部の遠隔地では、極めて 重要な交通手段となっている。代表的な河川舟運網はエニセイ川水系およびレナ川水系 で発達している。
(1) エニセイ川水系
エニセイ川は、東サヤン山脈に発してクラスノヤルスク州を北上し、北極海にそそぐ、
全長5,500km、流域面積270万km2の大河である。拠点都市クラスノヤルスクはエニセ イ川上流部に面し、シベリア鉄道、国際空港、モスクワに続く連邦道 M53 が通る。エ ニセイ川水系ではエニセイ川船舶会社(Enisei River Shipping Company)が、上流のアバ カンから北極海河口のディクソンまでの間の船舶輸送事業を展開しており、コンテナ、
各種バルク、燃料、プロジェクト機械、旅客等の輸送を行っている。バルク輸送にはプ ッシャーバージが多用される。
ユルブチェン、クユンビンの各油田方面には、エニセイ川支流ポドカメナヤ・ツング ースカ川河岸にあるバイキットが拠点となり、春の増水期を利用して船舶による物資輸 送が行われている。また、夏期・冬期とも、資源開発サイトへの人員輸送、緊急の物資 輸送にヘリコプターが使われることがある。
エニセイ川下流の拠点ドゥディンカは、巨大ニッケル産地であるノリリスクの輸送拠 点となっている。ダブルアクティングハル氷海貨物船が通年で就航し、物資および生産 物の輸送にあたっている。
図4.6 エニセイ川の河川輸送網3 (2) レナ川水系
レナ川は、上流域はイルクーツク州、中・下流域はサハ共和国を流下して北極海にそ そぐ、全長4,400km、流域面積240万km2の大河である。サハ共和国の交通・輸送の大 きな割合は、レナ川を幹線動脈に、レナ川支流および、アナバル、ヤナ、インジギルカ、
3 ОАО “Енисейское речное пароходство”,retrieved on Jan.2012, http://www.e-river.ru/about/
ドゥディンカ
イガルカ
レソシビルスク
クラスノヤルスク クラスノヤルスク クラスノヤルスク
クラスノヤルスク クラスノヤルスク
コリマの各河川を利用した船舶輸送が占めている。レナ川上流のオセトローボ河川港
(ウスチクト)は、BAM 鉄道レナ駅との結節点であり、鉄道輸送してきた貨物を船に 積み替えて、サハ共和国に輸送する起点となっている。サハ共和国内では、レンスク河 川港やヤクーツク河川港が主要拠点となっている。また河口にはティクシ港があり、北 極海航路との接点にもなっている。ヤナ、インジギルカ、コリマ河へは、ヤクーツクか らレナ川河口のティクシを経由して、北極海航路で輸送する。レナ川の河川輸送は結氷 のため、場所によるが、6月~10月末までの約5ヶ月間のみ稼働できる。
イルクーツクはバイカル湖の南西端、アンガラ川上流に位置し、シベリア鉄道、国際 空港、モスクワに続く連邦道 M53 が通る。ウスチクトとの間には、タイシェット経由 でBAMに入る鉄道路線、M53トゥルン経由でブラーツクを経てウスチクトに続く州道、
ローカルの航空路線がある。イルクーツク州の中央から北東にかけての中央シベリア高 原には、ベルフネチョン、タラカンなどの油田地帯があり、ウスチクト、キレンスク、
ビティムなどのレナ河沿岸の都市が、その開発のための拠点となっている。特にウスチ クトはBAM鉄道で輸送してきた貨物を夏期は船に、冬期はトラックに積み替えて、開 発サイトへ輸送する拠点となっている。
図4.7 レナ川の河川輸送網4
4 http://www.lorp.ru
ペベク
ヤクーツク ウスチクト
ティクシ
レンスク プロビデニヤ
4.2.2 鉄道輸送