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北極圏各国のエネルギー資源生産動向

ドキュメント内 日本北極海会議 報告書 (ページ 58-66)

2010年の石油・コンデンセート埋蔵量の増加は7.5億トン、置き換え率9は149%に達す る高水準となった。また天然ガスも8,100億m3、置き換え率125%となり、良好な結果 となった。新発見の鉱床は42鉱床あり、これらはクラスノヤルスク地方、イルクーツ ク州およびオホーツク海に位置し、東シベリアと極東に集中している。

ロシアの2010年の石油生産量は前年比2.2%増の5億519万トン(1,017万bbl/d)で、2 年連続で世界一となった。西シベリア地域が減産傾向にある一方で、東シベリア・太平 洋パイプライン(East Siberia - Pacific Ocean:ESPO)の稼働によって東シベリア油田の生 産が始まったことが、増産の背景にある。

ロシアの天然ガス生産は、2009年は、世界的な経済危機と欧州市場でのスポットLNG シェア拡大等により前年比12.1%の減少を余儀なくされたが、2010年は前年比11.6%増 の6,503.1億m3となり、再び世界一となった。生産量のうち、Gazpromの生産量は前年

比10.1%増の回復を示したが、その内訳には変化が見られる。まず、2008年のシェアが

83%であったのに対し2010年は79.6%にとどまっており、Novatekを筆頭とする独立系 ガス企業の生産拡大が目立っている。また、Gazpromの国内市場向け生産量は5%増と なったものの、欧州向けは前年比 10%減となり、Gazprom の欧州市場での苦戦が続い ている10

ESPOは、イルクーツク州のタイシェットを西側の起点とし、東はロシア太平洋沿岸 のコズミノ湾に至る全長約4,000kmの石油パイプラインである。第1期はタイシェット からスコヴォロディノまでのパイプライン(全長2,694km、設計年間輸送能力3,000万 トン)およびコズミノ湾の石油輸出施設で、2009 年12 月28 日から稼働を開始した。供 給原油は、東シベリアのVankor油田、Verkhnechon油田、Talakan油田の3油田が主体 で、これに西シベリアからの原油が「応援」で追加されてパイプライン輸送され、スコ ヴォロディノからは鉄道にてナホトカ南東部のコズミノ・ターミナルに運び、10 万ト ン級タンカーによって原油輸出されている。スコボロディノから分岐して中国東北部の パイプラインに接続する部分は2011年初頭に営業運転を開始した。スコヴォロディノ からコズミノ湾までの区間2,100kmは第2期プロジェクトとして2010年に着工され、

2014年完成を目指している。

ロシア政府はESPOで運ばれる原油をESPOブレンドと命名し、低硫黄の品質とアジ ア需要国への至近性を武器に既存ブレンドに対する優位性を協調している。また、日本 海を望むデカストリ(サハリン1)、プリゴロドノエ(サハリン2)、コズミノ(ESPO) の3箇所に原油輸出ターミナルが出現したことになり、アジアへの供給体制が強化され た。

9 年間に新しく発見・追加された埋蔵量をその年の生産量で除した指標。

10 本村真澄:『ロシア:ロシアの石油生産は20年振りに日量1,000万バレルの大台を回復-天然ガス生産 でもアメリカを抜いて世界一に返り咲き-』、JOGMEC、2011.1

図3.4 ESPO パイプラインの概要11

②ティマン・ペチョラ、西シベリアのエネルギー資源開発プロジェクト12

ロシア北極圏のティマン・ペチョラ地域では、2002年に1,470万トンであった原油生産

が、2008年には2,940万トンにまで増大した。これには、ネネッツ自治管区のバランデイ

石油ターミナルからの原油生産・輸出が2008年に始まったことが大きい。コミ共和国 政府によれば、ティマン・ペチョラ地域の石油・天然ガス生産量は 2011年に最大レベ

ル3,700万トンにまで増大し、その後は2015年にかけて3,500万トンレベルを維持する見通

しである。また、ネネッツ自治管区のバランデイ原油ターミナルにおける原油生産は、

2010年に2,500万トンレベルに、2015年には3,000万トンレベルに増大する見通しを立てて いる。

西シベリアでは最大級の規模を有するバンコール(Vankor)油田では、油田の南550km

の Purpe まで来ている西シベリア石油パイプラインターミナルに接続するバンコール~

プルペ石油パイプラインが2009年に完成し、生産を開始した。これにより、バンコー ル油田は、欧州だけでなくESPOによって東アジアにも輸出することが可能となった。

LUKOILとConoko Philipsが開発するティマン・ペチョラ地域(ネネッツ 自治管区)

のYuzhno Khylchuyu 油田では、バランデイ石油ターミナルの固定式石油荷役ターミナ

11本村真澄:『東シベリア・太平洋(ESPO)原油を求めて伸びる「北極パイプライン」』、独立行政法人 油天然ガス・金属鉱物資源機構、2010.11.18

12 Aleksei Bambulyak and Bjorn Frantzen : “Oil transport from the Russian part of the Barents Region”, the Norwegian Barents Secretariat, Akvaplan niva and Bioforsk, 2009.

ル(fixed offshore ice resistant oil terminal)より、通年でSovcomflotの擁する3隻のアイス クラス・タンカーにて原油を輸送している13,14。原油生産・積出し能力は年間 1,200 万 トンである。原油の積み出しは2008年に始まり、2011年10月時点で2,040万トン、タンカ ー295隻分を積み出した。

図3.5 バレンツ海地域の油・ガスフィールドとヤマル半島開発15,16

③ シュトックマン・ガス田開発の遅延

2009年、米国のシェールガス増産により、米国向けのスポットLNGが欧州市場に向 かうこととなった。さらに、従来から欧州に天然ガスを供給してきたロシアのガスプロ ムは、石油製品に連動する価格体制や長期契約など、旧態のシステムを維持する姿勢を 崩さなかったため、カタールおよびノルウェーがシェアを伸ばす結果となった。こうし て同年のロシアの天然ガスは大きな減産となり、この結果を受けてシュトックマン・ガ ス田開発計画は、3 年間先送りされることとなった17。この事態の背景の一つとして、

ガスプロムに代表されるロシアの天然ガス開発・生産事業環境が、国際的な事業環境の 動きに柔軟に対応できないという課題が顕在化したと見ることができる。一方ロシア政 府は、この時点で、世界のLNG関係企業との連携を強めるとともに、ヤマル半島ほか におけるLNG事業推進政策を展開し始めた。

13 70,000DWT、ダブルアクティングハル、2×10MWポッド型推進機、アイスクラスLU6Aker Arctic 計、Sumsung造船。

14 ターミナルのある海域は、年間約8ヵ月近くが海氷に覆われる。

15 Arctic Monitoring and Assessment Programme, AMAP Assessment Report : Arctic Pollution Issues, Figure 10-3 and Figure 10-4, 1998.

16 原典:ria.nobosti、retrieved from http://arctic.ru/expert-opinions/timano-pechyorsky-oil-and-gas-province

17 本村真澄:『ロシア:ロシア北極海ではヤマルLNGがシュトックマンLNGよりも先行か』、JOGMEC 2011.6

バランデイ 石油ターミナル

④ ヤマル半島の開発

ロシアは、天然ガス生産の主力地域である西シベリア地域の生産量の減退を代替する 目的で、ヤマル半島の開発を進めてきた。「2030年までのロシアのエネルギー戦略」で は、ヤマル半島が、2030 年におけるロシア全体のガス生産量の 30%を占めると予想し ている。しかし、この計画のもとに開発作業中であったヤマル半島のBovanenkovガス 田は、2009 年以降の欧州市場向け天然ガス(パイプライン)の減退により、生産開始 が1年先送りされた。一方でYamal LNG計画は、プーチン首相主導のもとで2009年9 月に外国企業に紹介され、同時に開発に対する税制優遇措置を示唆した。

Yamal LNG計画は、ヤマル半島北東岸に位置する埋蔵量44兆cfのYuzhno Tambeyガ ス田を主ソースとするもので、生産量は年間1,500-1,660万t、当初は2018年の生産開 始を目指したものであった。その後、国際市場動向を意識して生産開始が2016年に大 きく前倒しされた。開発はGazpromではなくNovatekが主体で、TOTAL(20%参加)、

Shell、ONGC等が交渉中である。生産されたLNGおよびガスコンデンセートは氷海LNG

タンカーおよび氷海タンカーにより、北極海航路を通じて海上輸送される計画である。

このほか、ティマン=ペチョラのガスをバレンツ海岸で小規模ながら LNG 化する

Pechora LNG計画が発表されるなど、北極海でのLNG事業への関心は高まっている18

Novatek社は2005年、ネネッツ自治管区ノブイ・ウレンゴイの南にPurovsky ガスコ

ンデンセート施設を開設、生産を開始した。また同年、白海のビチノ港(Vitino)には、

Purovsky施設で生産したガスコンデンセートを6万トン級タンカーに積み込み可能な輸送

基地も開設した。Purovsky で生産されたガスコンデンセートは、鉄道にてビチノまで 輸送されている。2009年、Novatekはビチノからガスコンデンセートを、北極海航路を 通じて中国に出荷した。続く2010年にも7万トンのコンデンセートを中国のNingpo(寧 波)に出荷した。さらに2011年には、約48万トンのガスコンデンセートが北極海航路を 通じて中国およびアジア市場19に出荷された。このようにNovatekはアジア市場を今後 有望な市場として考えていることが伺われる。実際、Mark Gyetvey CEOは、ヤマル半 島に建設予定のプラントからのLNGに関し、北極海航路を通じた輸送を計画している と述べている20

⑤ 東シベリアのエネルギー資源開発動向

東シベリアでは、以前、サハ共和国を流れるレナ川上流部のタラカン・フィールド(可 採埋蔵量7.7億バレル)で原油生産が行われていて、原油は110kmのパイプラインを通 じてレナ川の港ビティム(Vitim)まで送られ、河川用タンカーに積み替えてレナ川を約

18 本村真澄:『ロシア: ロシア北極海ではヤマルLNGがシュトックマンLNGよりも先行』、JOGMEC、

2011.6

19 1隻はタイ国のマプタプート港に運ばれた。

20 本村真澄:『ロシア:ロシア北極海ではヤマルLNGがシュトックマンLNGよりも先行か』、JOGMEC 2011.6

ドキュメント内 日本北極海会議 報告書 (ページ 58-66)