第8章 結論
第1節 本研究の要約
た。そこで、満足構造における自己効力感の役割と期待の影響を解明することを試みた。
まず、探索的研究として135名の患者インタビューによる質的調査を行い、患者の医師 に対する評価を調査した。その結果から、患者の評価に影響するのは技術的側面よりも対 人的側面の方であることが分かった。また、患者の医師選択には患者の価値観や選好が影 響していることをことが示唆された。そして、患者満足の中核になる満足は医師に対する 満足であることが明らかになった。再診意図には、総合満足ではなく、医師に対する満足
であると推測された。
医師にもインタビューを行い、診療態度と診療理念について調査した。医師患者関係ビ ついては複数のモデルが提唱されているが、医師らは短い診療時間の中で、患者の反応に 合わせ様々なモデルを使い分けていた。医師自身が患者とどのような関係を築きたいかで なはなく、患者がどんな関係を期待しているかという視点が医師らに共通して見られた。
医師は、診療の際、特定の医師患者関係モデルを用いるのではなく、患者の選好や病状に 合わせモデルを使い分けていた。1回の診療の中でも状況によって変化させていた。医師
の高いコミュニケーション能力を背景に良好な医師患者関係が構築され、患者満足が高ま っていると推測された。
インタビュー調査のコーディング結果から患者が重要と考えている医師の評価項目を抽 出し、医師患者関係モデルとの関連を検討した。医師患者関係モデルに特徴的な医師のサ ービス品質を特定しようとしたが、医師患者関係は動的であり、サービス品質を特定でき
るものではないという結論に達した。
また、評価と患者の選好についても考察した。患者の選好の軸として、「手早さ」と「手 厚さ」が浮かび上がった。この2つは対立概念ではなく共存することが可能で、共通して 関連する要素として「不安除去」があり、「手早さ」と「手厚さ」は患者がどのような形で 不安を除去してほしいかに対する選好と考えられる。
医師のコミュニケーションに関する先行研究のレビューとインタビュー調査をもとに仮 説導出を行い、1111名を対象に本調査を行った。調査内容は、医師のサービス晶質に対す
る患者の評価と医師に対する満足、総合満足である患者満足の関係である。そして、患者 の治療への参加を動機づけと医師恵者間の相互作用を促進する概念として、自己効力感と」
主観的な人生の満足として医療現場で重視されているQOLも調査に含めた。また、患者 は医師の関わりによって治療意欲、健康意識がどのように変わったと感じているかも調査
した。この2つを医師と患者の相互作用の指標とした。
本調査の結果では、自己効力感は、医療サービスの満足構造に重要な役割を果たしてい ることがわかった。自己効力感は、医師に対する満足を、患者満足につなぐ重要な媒介変数 になっていた。そして、自己効力感が媒介変数として機能するカ者かは、患者の期待の高 低の影響を受けると示唆された。また、医師のサービス品質が医師に対する満足を形成し、
再診意図につながることも実証した。
自己効力感には、特性的自己効力感と特定的自己効力感があり、両者がQOLに関係し ていた。2つの自己効力感の作用に影響するのは、医師と患者の相互作用であることが明
らかになった。医師のサービス晶質が患者満足の中核の満足であることもわかった。
提供者と消費者の相互作用は、再購買意図に影響を与えていた。5年以上継続受診して いる患者は、高相互作用と医師主導型が多数を占めていた。医療サービスの関係性管理に おいては、相互作用に着目することで患者満足、再診意図を改善することができると考え
られる。
患者の選好と医師患者関係の質は密接に関係しており、患者の選好にあう医師患者関係 の構築が患者を動機づけ、患者満足を向上する。患者の病状や治療の理解度が様々である だけでなく、価値観の多様化が進む現代において、医師患者関係の質は医療のサービス晶 質において、ますます重要な役割を担う。
本研究の貢献は、以下の3点である。1つめは、中核的な満足である医師に対する満足 が、患者満足、再診意図に重要であることを明らかにしたことである。このことは、医師 のコミュニケーション能力開発の必要性を邪魔している。
2つめは、医師と患者の相互作用を促進することによって、患者満足と自己効力感が高 まることを実証したことである。患者の医師に対する満足を高めるオペレーションを他の 医療従事者の業務を含めて構築することで、医師の負担を増やさず、高相互作用の関係を 作り、満足と自己効力感を高めることができる。
3つめは、サービスにおける提供者と消費者の相互作用にQOLと自己効力感の概念を 取り入れることの意義を提示できたことである。提供者に対する満足を高め、QOLと自 己効力感に影響を与える本研究のモデルは、顧客の参加が重要なサービスにも適用できる。
本研究の結論を図表8−1に示す。本研究において実証できた部分を黒の矢印で示し、実 証できたが引き続き検討が必要な部分を白抜きの矢印で示した。また、今回は実証されな かったが、再度検討していきたい部分を、点線の矢印で示した。
図表8・1本研究の結論
困ぐ
好ましい提供者と顧客の関係 (医師一患者関係モデル)\\
え」
中核サービス品質
(医師のサービス晶質)
特性的自己効力感
中核的な満足
(医師に対する満足)
特定的自己効力感
関連QOL
(健康QOL)
再購買意図
(再診意図)
、 、
〃一 工11 1111 1111
1 I l I l l 1.
総合満足
(患者満足)
(出所)筆者作成