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期待と満足の位置づけ

第3章  期待と満足の研究

第1節 期待と満足の位置づけ

 サービス・マーケティング研究では、品質向上や差別化戦略に不可欠なものとして顧客 満足が注目されてきた。山本74は「満足は購買後に顧客がもつ交換客体に対する態度、期 待は購買後の態度形成に影響するもの」と定義している。満足は、購買前の期待と実際に 得た結果の比較により発生する購買後の態度であり、知覚品質としてのサービス品質とは 異なる概念である。研究領域は、購買後の満足測定や再購買意図への影響など満足形成後 に焦点をあてたものとその前段階の満足形成過程がある。

 期待は、過去の経験から得られた最終的な結果の解釈として理解されている。01iver75 は「期待は過去の経験、現在の状況あるいは他の情報に基づいた将来の結果の予測である」

と定義した。期待は希望、願いなどを含み二一ズと重複することが多く、予測の期待と満 足に類似した期待の両側面を持っていると述べている。消費者は、予測と得られた結果の 差によって満足・不満足を感じ、次の期待を形成していく。

 期待と満足に関する研究の1つに01iver76の提唱した期待一不一致モデルがある。この モデルでは、満足は先験条件となる期待と実際に得たものとの一致・不一致の結果である

という解釈をしている。

 Churchi11et a1.ηは、耐久消費財と非耐久財では期待、結果、結果の不一致が異なる ことを示した。また、Shostack78では、有形性、無形性の比較を行い、サービスに関する 知識は動的かっ主観的であり、これまでの経験やプロセス、環境に左右されると説明して いる。例えば、飛行機では顧客は搭乗手続き、空港設備、機内サービスなどを総合評価す る。消費経験は、製品特性と各属性に対する統合された判断であり、消費者の主観的な期 待の影響を受けるため、満足は個人差がある。医療サービスにおいて、プロセスと結果の 両方が満足に影響するため、どちらも重要であることを前述したが、これは、無形性の性 質によるものである。

 01iverは、満足の前件条件である期待と態度、意図の関係について、図表3−1のモデル

74 R本(1999)P.96 7501iver(2010),P.63 7601i・・r(1980),P.462

77Ch皿。hi11eta1.(1982),P.503 78Shostack(1977),P.75−76

を提唱した。左側が購入前の時期T1、右が購入後の時期丁。を示している。期待は満足の 前件条件であり、態度に影響を与え、満足は期待との不一致によって生じるという考え方

である。

図表3−1満足の前件条件と結果の認知モデル

期 待

態 度

意 図

l

11 不一致

l

1 \

I

一   満 足

態 度

意 図 不一致期

T、

T2

(出所)01iver,(1980),p.462

期待は、消費者が二一ズを満足させるために商品を購入しようとする動機を発生させる。

その際、欲求、二一ズ、価値は先験条件となる。消費者は期待と欲求を別々に持ち、それ ぞれに満足と不満足を同時に感じる。Weavereta1.79は、期待が高く結果が悪いときは、

負の不一致と失望が生じ、期待が低く結果がよいときは、正の不一致と喜びが生じると述 べている。不一致には、期待を上回る状態と下回る状態が存在するのである。結果と不一 致の関係は、図表3−2の2つの曲線で示される。

 図表3−2の中央にあるゼロ点は、期待と結果が一致している状態である。、点線で示した 曲線①の縦軸は結果の出現確率、一横軸は結果である。中央付近の期待通りの可能性が最も 高い。一致の周辺にあたるグレーの部分は無関心(無差別)ゾーンと呼ばれ、消費者が受 け入れることのできる期待レベルを示している。無関心ゾーン外になると、正の不一致と 負の不一致の乖離が急増する。無関心ゾーンが広い場合、期待を上回ることは難しい。

 曲線②は縦軸に満足、横軸に結果を示している。負の不一致から一致の状態を通って期

79W・・・…t・1.(1974),P−425−426.

待以上の結果を示す。満足がゼロの部分が一致であり、曲線①と同様に一定の範囲(グレ ーの部分)があることを示している。この部分では、グラフは平らで満足は一定になる。

図表3−2満足と結果の関係

無脇むゾーン

五Φ不一致 く鼠潴棄)

     ↑

    ②満足と蜷県の賜係     ⑪繕棄⑨出籔磁撃

    !  と繕素Φ関係

     縮果    一教

(蜴鴛過リΦ縞察)

(出所)筆者作成80

 無関心ゾーンの右側は、良い結果ほど満足が高いことを表す右上がりのグラフになるが、

右端の良い結果の所では上昇率が穏やかになり満足の変化が少なくなる。これは、満足の 頭打ちを示しており、満足は高くなると、結果を良くしてもあまり変わらなくなる。つま

り、満足管理は、無関心ゾーンの左側(不満足)の部分に入らないようにすることと、満 足が右上がりになる無関心の右ゾーンの所で維持できる結果を提供することが重要である。

満足管理には、サービス・リカバリーに対する満足も含まれる。リカバリーに対する満 足研究をいくつカ紹介する。Fomei1et a1.81は、防衛的マーケティングの目的は顧客の 退出を最小限にすることであると述べている。その研究として、Fome11et a1.82は、顧 客の苦膚を促進することによって苦情管理が進み、離反顧客を取り戻すチャンスが得られ

8001iver(2010)p.108,Woodruffet a1.(1983)p.300,Andersonet a1.(2000)p.116をもと に筆者作成

81F・r・・11・t・1.(1987),P.3仏 説F・m・11・t・1.(1988),P.297

ることが実証した。サービス・リカバリーは、顧客満足の向上、顧客との関係構築、顧客 離反の防止に重要である。

 高橋醐は、サービス・リカバリーの満足は、失敗後のリカバリーに対する期待にどれだ け実際のリカバリー評価が一致したかによって決まると説明している。サービス・リカバ

リーの場合でも、満足形成は、期待一不一致モデルに基づくと考えられる。

Smith et a1.脳は、サービス・エンカウンターの失敗とリカバリーを含めた顧客満足モ デルを提唱した。サービスの失敗状況(種類とヨ鍍)と回復の属性(補償・迅速さ・謝罪・

主導権)が顧客の公平性(相互作用的公正・手続き的公正・分配的公正)既の認知を媒介 して、サービス・エンカウンターに対する満足に影響することを実証した。また、回復プ ロセスの中で期待との不一致にも配慮が必要であることを指摘した。期待は、サービス晶 質に対する満足だけでなくリカバリーの満足にも密接に関係しており、満足という概念を 考える上で、非常に重要な役割を果たしていることがわかる。

Tax et a1.跳は、3つの公平性(相互作用的公正・手続き的公正・分配的公正)から苦 情処理の満足が発生し、苦慮処理の満足は、信頼とコミットメントの両方に強く関係して いることを実証した。この結果は、結果に対する満足だけでなく、昔1青処理に対する満足 でも顧客と信頼関係を築くことができることを示している。サービスは、提供者と顧客の 協働であると共に、無形という性質が満足管理を難ししくしていると言えるだろう。顧客

との関係性の中心に提供者への信頼があり、信頼が満足を形作ると考えられる。