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第1項

医師の評価の中核因子

分析2では探索的調査として3名のコーディングの合計値を用いることによって、患者 の分類仮説を導出することができた。本節では、分析2で用いたクリニック患者95名のコ ーディング結果の中で、3名のうち2名以上判断した値が一致したサンプルのみを用いて、

分析を試みた。コーディングの精度を高めることによって医師の評価の中核となる要素を 特定しようとするものである。

 医師の特性と解釈した25項目(説明、診断、指導、迅速さ、専門知識、紹介先、有難い、

信頼、不安除去、傾聴、親切、親近感、丁寧、優しい、相談相手、言畔1、親身、家族受診、

端的、明るい、個性的、若い、近い、設備、待ち時間)のうち、被験者の90%以上がO(な し)とコーディングされた5項目(診断、有難い、端的、設備、待ち時間)は分析から除

外した。

 各変数の2名以上判断が一致したサンプル数は、説明n・95、指導n・93、迅速さn=93、

専門知識n=93、紹介先n=94、信頼n=89、不安除去n・87、傾聴n=91、親切n:95、親近感

204Cronin et a1. (1992)

205SERVQUALはParas皿a㎜n,Berry,Zeith㎝1が開発したサービス品質の評価尺度である。信頼性、

対応性、確実性、共感性、有形性の5つに分かれ、事前と事後の差をとる方法が用いられている。

206SERVPERFは、実現値のみでサービス品質を評価する方法である。

n=92、丁寧n=94、優しいn=93、相談相手n=93、評判n:94、親身n=94、家族受診n=92、

明るいn=95、個性的n=95、若いn=95、近いn=94、全体満足n=94、治療行動n:91であり、

平均一致率は、97.8%であった。

図表5−20は、分析に用いた医師の評価20項目と総合満足、自発的な治療行動の22変数 の相関分析の結果をまとめたものである。有意差があった項目のみ一覧にした。相関係数 が0.2〜0.4のやや相関がある組み合わせが複数存在する。患者の医師に対する評価は、非 常に複合的であり、弁別が難しいことがわかる。

 また、全体満足には専門知識、 不安除去、親近感、家族受診、明るいが影響している一 ことが推測される。また、全体満足と治療行動にも何らかの関係があることが示唆された。

図表5−20医師の評価の相関分析

全体満足 治療行動 説明 指導 専門知識 紹介先 不安除去 親切 親近感 優しい

治療行動 .329紳

指導 .288欄 .255}

専門知識 .23ゴ

紹介先 .261}

不安除去 .243*

親近感 .235‡ .241‡

丁寧 .338欄 .210‡

評判 .232‡

親身 .219*

家族受診 .255‡ .255ホ .269材

明るい .262‡ .301榊

個性的 .369神 .377榊

若い .213‡

近い .227ホ

榊p仰,㌔く05

Vinagre et a1,207は、サービス品質と患者の感情の両方が患者満足に影響を与えている という。本研究の結果からも、全体満足は、専門知識など医学的な側面だけでなく、不安 除去や親近感、家族受診、明るいなどの医師の評価と関連性が認められ、患者の感情的側 面が全体満足に影響を及ぼすと考えられる。

前述の相関分析では、2名以上の評定者の判断が一致したサンプルのみを使用し、その コーディング値0〜3を用いたが、次にコーディング値「0」と「1〜3」の2値データに して、分析を打つだ。この結果は、インタビューの中で触れた(評価した)患者割合を示

207Vinagr・eta1.(2008),P.98

しており、比率が高いほど多くの患者が重視している項目であることを意味する。つまり、

どのクリニックでも不可欠な要素であると推測される項目である。

95名のうち各項目の評価した患者数は、説明n:43、指導n:27、迅速さn=34、専門知識 n・21、紹介先n:29、信頼n=52、不安除去n=51、傾聴n:59、親切n=32、親近感n=40、丁寧 n=30、優しいn:45、相談相手n=39、評判n=51、親身n:45、家族受診n=45、明るいn=20、

個性的n=18、若いn=17、近いn=68であった。

 20項目のうち1番評価した患者が多かった項目は、自宅から近い(71.6%)であった。

大学病院のような高度な医療の提供と研究・教育が目的である特定機能病院とは異なり、

クリニックを受診する場合は、自宅から近い範囲内で選択されることがわかった。2番目 は傾聴(62.1%)、3番目が信頼(戸4.7%)、4番目が不安除去と評判(53.7%)であった。

それ以外は、評価した患者は50%以下であり、患者の価値化や選好によって重要度が異往 ると考えられる。

第2項   分析3の考察

各評価項目と全体満足および治療行動の相関では、複数の項目において弱い相関が見ら れた。各項目は、互いに関連し合いながら患者に評価されていると考えられ、医療サービ スの評価の複雑性が示唆される。

分析2では患者満足と治療行動に関連は認められなかったが、分析3では弱い相関が見 られた。非構造化インタビューであったためうまく抽出できなかった点が否めないが、こ の結果には、2つの解釈があると考えられる。

 1つは、患者満足と治療行動に何らかの関係があり、医師の影響を受けている可能性が ある。Bandum208は、特定の行為や事象が引き起こす結果についての情報は、環境刺激に よって伝えられる。場所、人、物などの顕著な特徴とか、他の人の言葉やしぐさとか、行 為が含んでいる社会的信号などによって、予期すべき内容についての情報を得ることがで きると述べている。診察室という空間の中で、医師は専門的な機器、言葉、態度などを用 いて患者に環境的刺激を送り、患者はそれを受け取って結果を予測する。反応情報を得る

208Bandura(1977),P58

と、それによって必要な行動を遂行しようとする意図やそのための自己教示が起こる209。

医師が患者との関わりの中で患者の不安を取り除き、治療の道筋や見通しを提示する。患 者はその提示から先を予測し、治療に対する行動を動機づけられると考えられる。

 もう1つは、自発的な治療行動がない場合でも患者満足は高い場合があり、満足が高い からと言って必ずしも患者は積極的な参加をするとは限らないことということである。こ れは、そもそもの患者の自己効力感によって、満足と治療行動の相関は異なるかもしれな い。もし、自己効力感の高低によって治療行動と患者満足の相関が変わるならば、自己効 力感を高める医師の関わりを明らかにすることは意味がでてくる。

 クリニックにおける患者の受診選択には、自宅からの距離が大きな選択理由になってい た。かかりつけ区としての役割を担っている開業医が地域に根付いて診療を行っているこ

とが結果から確認できた。

 全般的に患者が重視すると推測される項目として、医療では最も重要とされている「信 頼」、良好な医師患者関係構築に重要な共感や支援を示す「傾聴」「不安除去」が上位に含 まれていた。また、「評判」も高く、他者の評価も重要と考えていることが推測された。

第6節  まとめ

分析1,2,3では、医師患者関係の質と患者満足の関係を考察した。患者満足には、

患者の価値観や選好が影響していることが示唆された。医師の患者への関わりは、技術的 な側面に加え、患者の感情に配慮が重要であることがわかった。

 また、主治医選択にも患者の価値観と選好が影響しており、患者が共感する医師を受診 していると示唆された。医師は自分の理想を押し付けず、患者の価値観や選好に合わせた 医師患者関係を提供し、患者二一ズに歩み寄ることが患者満足につながると考えられる。

 分析から、治療意欲を高めることによって患者満足が高まることも可能性として考えら れた。医療サービスの目的は、患者満足を高めると同時に治療効果を高めることである。

患者の積極的なサービスヘの参加は治療上重要であり、治療行動を動機づける自己効力感 について満足と共に引き続き調査を進める必要があると考える。

年齢、病状、境遇の異なる患者を診療する医師には、柔軟な対応力、患者二一ズにぶさ

209バンデューラ(1974),P15

わしい関係モデルの選択、高いコミュニケーション能力が求められる。患者が医師とどの ような関係を患者と築きたいと考えているのか、また関係構築プロセスで何を感じるかは、

患者の医師患者関係の質に対する選好に依存すると考えられる。

第5章では、3つの方法でインタビュー調査を分析したが、結果を解釈する際、以下の4 点の限界について考慮する必要がある。

第1に、研究施設が大学病院、内科クリニックの再診患者に限定されている点である。

施設規模、初診等対象が異なれば異なる結果になるかもしれないため、r般化は出来なレ、

と考えている。

 第2に、インタビューのためサンプル数に限界があったことである。対象患者が同意を 得た協力者であったため、結果にバイアスがかかっている可能性がある。また、ボイスレ

コーダーへの録音を意識している患者が若干いたようにも感じられた。

 第3に、患者インタビューの内容が一定に保てなかった点である。半構造化インタビュ ーであり、コーディングに用いた評価項目すべてを網羅できたとは言えない。話題に出な かったからと言って、重視していないあるいは関心がないとは言えない。

 第4に、コーディングが評価者の主観的評価に基づき実施されている点である。コーデ ィングに習熟していたわけではないので、全変数全サンプルにおいて完全に一致させるこ とができなかった。

 よって、限定的な解釈をする必要があると考えている。第6章で、この分析から得られ た仮説をもとに行った実証研究を報告する。