3.2 高効率石炭火力発電技術の普及に向けての課題
3.2.2 普及に向けての取組みの方向性
以下では、高効率石炭火力発電技術の普及に向けた今後の取組みについての期待・要望 について、高効率石炭火力発電技術WGループメンバーから得た示唆を示す。
(1)豪州
高効率石炭火力発電技術とCCS(二酸化炭素回収貯留技術)の組合せに期待。
効率及び信頼性の向上と、コスト削減に向けた研究開発が必要。
(2)中国
石炭火力の効率向上が進展しているが、更なる向上が必要。
高水分の石炭の利用技術(乾燥技術)の開発が必要。
(3)インド
国内炭の利用に際しては、灰の処理技術が課題。
高灰分炭を利用したIGCC技術の開発に期待。
既存火力の改修、改良が重要。定期点検期間の短縮も必要。
(3)インドネシア
高効率石炭火力発電技術は、運転・技術面での複雑さや、給水や燃料の品質管理、
建設コストの高さなどが課題。
高効率石炭火力発電技術導入の成功事例の共有が求められる。
技術者の育成や、共同研究/開発が求められる。
品質の異なる多様な石炭を均質化させる混炭技術や低品位炭を燃料とする超臨界圧
/超々臨界圧技術が求められている。
(5)タイ
高効率石炭火力発電技術の開発に対する支援が求められる。
ソフトローンなど、資金面での支援が求められる。
国民理解の向上に向けたノウハウの供給が求められる。
(6)韓国
発電設備新設に関わる技術と経験や、既存発電設備の修理・改修、運転・保守に係 る知見、ノウハウの協力が重要。
省エネインセンティブの向上や研究開発費充足のため、電気料金の引上げが求めら れる。
(7)日本
省エネ、省CO2に向けたインセンティブの改善や、環境規制強化、効率基準の導入 が求められる。
技術移転や投資に対するリターンの不足や、発電所に必要なインフラ(港湾、工業 用水、燃料、送電系統)の整備が課題。
高効率石炭火力発電技術に適した運転、保守管理手法の習得が求められる。
低品位炭の利用や、相手国のニーズに応じた技術支援の提供といった観点が重要。
従来型技術と高効率石炭火力発電技術のコスト差が課題。
関係各国はこれらの障壁を相互に理解したうえで、今後いかに克服していくかを検討し ていくことが求められている。障壁の克服においては、各国の主体による自助努力が前提 となるのはもちろんであるが、より効率的に障壁を克服していくためには、必要な国際協 力を行うことも重要であろう。
また、国際協力を行うに際しては、活動に参加する全ての主体が利益を得ることができ るような枠組みを構築することが、協力活動を継続的、かつ実効性の高いものとする上で 重要な条件であることは言うまでもない。より具体的には、高効率石炭火力技術の担い手 の多くが民間企業であることを鑑みれば、協力事業によってそうした民間企業が適切な利 益を得られるようにすることが必要である。
さらには、前述の整理でも明らかなとおり、政策や制度は高効率石炭火力技術の普及に 大きな影響を及ぼすことから、各国政府間の対話や協力に向けた支援も求められよう。
では、具体的にどのような点に国際協力の可能性を見出すことができるであろうか。各 国の専門家による意見交換においては、次のような点が示唆された。
高効率石炭火力発電技術に関する情報の共有、マッチング
既存発電所の効率改善、維持に関する情報、技術の共有
IGCCなどの技術開発に関する情報の共有、協力
低品位炭の性状や、石炭灰の処理/利用技術に関する情報、技術の共有
高効率発電技術に関わる人材の育成
国民理解の向上に向けたノウハウの共有
ファイナンス面での支援
これらは国際協力の可能性を示す一例であり、全てではない。今後、各国の専門家を交 えた議論をさらに深めることで国際協力を具体化し、高効率石炭火力の普及に結び付けて いくことが求められる。
第 4 章 ERIA 関係国におけるエネルギー・石炭需要の展望
4.ERIA関係国におけるエネルギー・石炭需要の展望
本章では、2010 年 11 月に財団法人 日本エネルギー経済研究所が発表した「アジア/
世界エネルギーアウトルック 2010」に基づき、世界、アジア、及び ERIA 関係主要国の 石炭需要見通しを検討する。
なお、本アウトルックでは「レファレンスケース」と「技術進展ケース」の2つのケー スを設定して試算を行っており、世界とアジアの一次エネルギー及び発電電力量見通しに ついては、「レファレンスケース」とともに「技術進展ケース」についても紹介する。
「レファレンスケース」では、現時点における経済・社会情勢を踏まえ、今後施行される 確度の高い政策や、普及可能性の高い技術の展開を考慮に入れ、エネルギー需給を予測して いる。
一方で「技術進展ケース」では、世界各国においてエネルギー安定供給確保、地球温暖化 対策の強化に資する政策を実施し、また、技術に関する国際協力や国際移転の促進を背景に、
革新的技術の開発が加速し、その普及が世界各国でより一層拡大するケースを想定して予測 をしている。同ケースでは、エネルギー効率がレファレンスケースよりも早いペースで改善 され、さらに原子力、太陽光発電など非化石エネルギーの導入が拡大すると想定している。
技術進展ケースにおける技術の想定
【需要サイドの技術】
■ 産業部門
セクトラルアプローチ等により最高効率水準 (ベストプラクティス)の産業プロセス技術(鉄 鋼、セメント、紙パルプ、石油精製)が世界 的に普及
■ 運輸部門
クリーンエネルギー自動車(低燃費自動車、
ハイブリッド自動車、プライグインハイブリッ ド自動車、電気自動車、燃料電池自動車)の 普及拡大
■ 民生部門
省エネ家電(冷蔵庫、テレビ等)、高効率給湯 器(ヒートポンプ等)、高効率空調機器、高効 率照明の普及拡大、断熱強化
【供給サイドの技術】
■ 再生可能エネルギー
風力発電、太陽光発電、太陽熱発電、バイ オマス発電、バイオ燃料の普及拡大
■ 原子力導入促進
原子力発電建設加速化、設備利用率向上
■ 高効率火力発電技術
超々臨界圧石炭火力、石炭IGCC、石炭 IGFC、天然ガスMACCの普及拡大
■ 二酸化炭素回収・貯留(CCS) 発電部門(石炭火力、ガス火力の新設、既 設設備)、産業部門(鉄鋼、セメント等大規模 排出源)での導入拡大
環境規制や国家目標の導入、強化 環境税、排出量取引、再生可能エネルギー導入 基準、補助金・助成制度、固定価格買取制度、省 エネ基準、燃費基準、低炭素燃料基準、省エネ・
環境ラベリング制度、国家的戦略・目標設定等
研究開発投資の拡大、国際的な省エネ技術 協力(鉄鋼、セメント分野等)や省エネ基準制 度の構築支援等
技術開発強化や国際的な技術協力の推進
石炭は、現状において世界の一次エネルギー消費量の 29%を、発電電力量の41%を占 め、アジアでは一次エネルギー消費量の53%、発電電力量の60%を占めるというように、
一次エネルギー供給、特に電力供給において重要な役割を果たしている。今後も石炭は、
発電用燃料として、経済成長が著しいアジアを中心に需要の拡大が見込まれている。