日本では現在, 「地震保険に関する法律 (略:地震保険法)」 に基づき, 政府と民間の損保会社が共同で地震保険を運営している。 地震保険は
表2 日本における明治以降の地震・津波被害
年 地 震 名 死者・行方不明者数
(概数を含む) 1923 関東地震 (関東大震災)※ 105,000
1896 明治三陸地震※ 21,959
2011 東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災)※ 19,137
1891 濃尾地震 7,273
1995 兵庫県南部地震 (阪神・淡路大震災) 6,437
1948 福井地震 3,769
1933 昭和三陸地震※ 3,064
1927 北丹後地震 2,925
1945 三河地震 2,306
1946 南海地震※ 1,330
注:1 ※は, 津波による被害が発生した地震。
2 東日本大震災による死者・行方不明者数は2012年2月17日時点。
出典:「国土交通省白書2011」 を一部改変。
1964年6月に発生した新潟地震を契機として, 1966年に創設されたもの である。 地震保険法第1条には, 「保険会社等が負う地震保険責任を政府 が再保険することにより, 地震保険の普及を図り, もつて地震等による被 災者の生活の安定に寄与することを目的とする」 とある。 また同法第5条 第1項に, 「政府の再保険に係る地震保険契約の保険料率は, 収支の償う 範囲内においてできる限り低いものでなければならない」 とあるように, 地震保険の基準料率は, 不足や利潤が生じないように算出されるノーロス・
ノープロフィットの原則によっている。
個人が地震保険に加入するか否かは, 任意である。 また地震保険には単 独で加入することはできず, 火災保険に上乗せするようになっている。 地 震保険の契約金額は, 火災保険の契約金額の30〜50%の範囲内で設定さ れる。 さらに限度額もあり, 建物5,000万円2), 家財1,000万円である。 支 払われる保険金は, 損害状況により異なる。 全損であれば契約金額の100
%が支払われるが, 半損では50%, 一部損では5%となる。
半損と一部損とでは, 支払われる保険金が大きく異なるため, その中間 的な損害区分を設定すべきという声も今回の震災後, 多くなっている。 ま た地震保険の契約金額を火災保険の契約金額の30〜50%の範囲内にする という設定そのものについても, 十分な補償が得られないとして以前から 消費者の不満があった。 査定の対象となるのは, 建物の主要構造部分のみ のため, 生活するには相当の不便や不安を感じる場合にも, 被災者が期待 するほどには保険金が支払われないケースもあったことが, 今回の震災後 に指摘されている。 これらが, 地震保険について消費者が割高感を覚える 原因ともなっている。
地震保険の 「建物」 に関する契約は, 基本的には持ち家3)がある世帯の みに関わるものであり, その意味で地震保険は一定以上の富を持つ者を対 象とする保険であると考えられる。 実際に, 地震保険の加入者は非加入者 よりも世帯年収が高い傾向にあることを示す調査結果も公表されている4)。
1回の地震の保険金総支払限度額は, 2012年3月現在5.5兆円である。
2011年5月2日には, 東日本大震災による多額の保険金支払により準備 金の減少が見込まれたため, 政府と民間保険会社の負担額が変更された。
1,150億円以下は損保会社が支払い, 1,150億円超〜8,710億円以下は政府 と損保会社が50%ずつ負担する。 さらに8,710億円超〜5兆5,000億円以 下までは, 政府が保険金の95%を支払うというものだ。 この変更により, 損保会社の最大負担額は1兆1,987億5千万円から, 7,244億5千万円に 減った。 関東大震災クラスの地震が発生しても, 支払保険金の総額は5.5 兆円を超えないものとされたが, この数字は適宜見直しがなされ, 2012 年4月以降は6.2兆円となることが決定している。
地震保険の世帯加入率 (全国平均) は1994年度末の9%から2010年度
末の23.7%と高まっているが (図1), 海外の自然災害保険の普及率 (た
とえばフランスでは95%以上) と比して低い水準であるため, さらなる 普及が望まれている。
日本損害保険協会の発表によると, 2012年3月12日現在, 東日本大震 災に係わる地震保険の総支払金額は, 1兆2,185億9,209万円4千円となっ た。 これは, 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災における783 億円の約15.6倍である。 東日本大震災における被害自体の大きさに加え
図1 地震保険の世帯加入率 (全国) 出典:損害保険料率算出機構ホームページより筆者作成。
て, 世帯加入率の増加の影響もみられる数字となっている。
現在, 地震保険の世帯加入率のさらなる向上が求められる一方で, たと えば大規模な首都直下地震が近く発生するという最悪のシナリオの下では, 地震保険の準備金の積立不足の可能性も指摘されている。 東日本大震災の 支払により, 政府と損保会社が積み立ててきた準備金は半減し約1兆2千 億円となる見込みであり, 地震保険料の見直しも議論されている。
22 共済・少額短期保険業による備え
地震保険は, 自動車損害賠償責任保険と同様に, どの損害保険会社で加 入しても補償内容や保険料が同じになる。 それに比して共済は, 火災共済 金額に対する地震の保障割合 (たとえばJA共済では50%, 全労済では
30%, 都道府県民共済は5%, JF共水連は25%) や保障内容が団体によ
り異なる。 これは, 共済団体ごとに経営体力の差があることや, 組織構造 の相違があることが要因とされる。
地震保険と異なり, 共済団体の保障には政府の後ろ盾はなく, 独自の保 障提供である。 また共済は, 員外利用はあるものの, 原則として組合への 加入と加入時の出資金支払いが求められ, 保障を提供する集団には居住地 や職業など, ある程度の共通性が認められるとされる。
地震保険には, 保険料控除があり, 払い込んだ地震保険料がその年の契 約者の所得から控除される。 控除対象額は, 所得税については地震保険料 の全額 (最高5万円), 個人住民税については地震保険料の2分の1 (最 高2万5千円) である。 自宅や家財についてのJA共済の建物更生共済, 全労済, CO・OP共済の自然災害共済の地震等部分に相当する共済掛金 は, 「地震保険料控除」 の対象となる。 しかし, 都道府県民共済は対象と なっていない。
少額短期保険業の日本震災パートナーズ株式会社が提供する 「Resta (リスタ)」 は, 地震保険等の加入の有無にかかわらず購入できる。 被災後
の生活再建費用を補償する保険として2006年から販売されており, 東日 本大震災後に再注目されている。 一部損保会社においても, 地震保険の不 足分を補う商品などが開発されているが, これらの商品は, 特に二重ロー ンのリスクに備える手段の一つとして関心を集めている。