図4.6 組織的な両替操作(続き)
(2)生徒Eの1時問目の操作過程
生徒の操作を分析した中で、n進数のしくみの調べ方として特長的な 操作、思いつきの両替、規則的な両替、組織的な両替を行っていた生徒
Eの操作過程を取り上げて見ていくことにする。
この生徒Eの操作過程はまず操作法や動作を試す操作からはじまり、
5進数の両替を行っていた。その後、進法を変える操作の後10進数の しくみを振り返っていた。そして、試行錯誤的な操作の後、2進数、3 進数の規則的な両替を行っていた。ここでは10・3,円玉3個をまとめる とユOO(,3)円になることに気づきていた。最後に組織的に両替を行い、
n進数の2桁目の位の違いを比べていた。
この生徒の操作画面を再現して更に詳しく分析してみたところ、この 生徒の操作過程は試行錯誤的な操作、思いつきの両替操作、規則的な両 替操作、組織的な両替操作が表4.3に示すような順序で行われているこ とが分かった。池中の数字は操作が行われた順序を表している。これら の数字は同じ種類の操作が連続した場合は、はじめと終わりを「一」で結 んび、連続していない場合は「,」で区切って示している。また、操作の 種類が変わった場合はその順序を見やすくするために、数字を縦に並べ いる。それぞれの操作については、次の操作履歴グラフの点を辿りなが
ら、この生徒の操作過程を見ていく中で具体的に述べる。
表4.3 生徒Eの1時問目の操作過程の分類
分類記号・分類 操作順序A・試行錯誤的な操作 レ6,9,13・17。
iB偲いっきの両替 7, 18,
C・規則的な両替 8.10−12,19。
20・25.(26・28)
・1
図4,7には、この生徒Eの1時病目の操作履歴グラフを示している。
このグラフはコンピュータ教材の4つの:ブロックとお金工場とソロバン のメニューを横軸にとって、1回のメニュー操作または1回の入力、実 行開始を1点で表し、この点一つ一つを縦軸の経過時間に合わせてとり、
これらの点を結んでグラフ化したものである。横軸の「n」、「10」、
「金」、「ソ」はそれぞれn進数、10進数の表示・計算、お金工場、
ソロバンの4つのブロックに、「作」、「小」、「①」、「大」、「変」
、 「ヒ」はそれぞれお金作成、両替(小へ)、①作成、両替(大へ)、レト変
(消)、ヒントのお金工場の6つのメニューに、「表」、「玉」、「数」、「
玉変」は表示・加減、玉上下、数え上下、無数変(消)のソロバンの4つの メニューに対応している。横軸の「s」は実行開始の点を下に並べるため のもので、図中の「s」はコンピュ・・ndタ教材が処理を中断し、生徒が再実 行を行った場合の実行開始時間に点をとり、その点の水平位置に記した ものである。また、血中に「A2」などと手書きしているのは、表4.2の 操作過程の分類記号と操作順序を表している。この操作履歴グラフの点 を図の上から順に辿りながら、この生徒の操作過程を学習時間の経過に 沿って見ていくことにする。
File Name= Sl−1 .DTA
nlO金作小①大$変ヒ,ソ表玉一数回変
《 A■ A了 j97
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q図4.7 生徒Eの1時問目の操作過程
まず、図4.7のグラフはまず横軸の「金」から、r作」、「小」、「
大」の下に点が移っている。これは移動メニ t一一でお金工場を選び、お 金作成でお金を作成し、両替(小へ)で崩し、両替(大へ)でまとめていっ
たことを意味する。実際は372円を作成し(A1)、100円玉を1個
崩し(A2)、崩した10円玉をまとめて100円玉に戻し(A3)ていた。この操作を10進数のお金について行っていた。10進数のお金の両替 操作はこの活動に入る前に教師が示していたものと同じものである。従
〈、それぞれのお金工場のメニューの動作を試し確かめるための操作と 考えられる。そこで、このようなコンピュータ教材の操作方法や動作を 試すような操作を試行錯誤的な操作として分類することにした。二品の
「A1」、 rA2」、 rA3」は表4.2の分類記号がAである試行錯誤的な 操作を1回、2回、3回と行ったことを意味する。
次に、この生徒は10進数以外のn進数に変える操作(A4)を行った 後、一旦移動メニューに移り、お金工場に戻って、レト変(消)で5進数の
お金に変更(A5)し、①作成で1円玉を77個作成(A6)した。
その後、次のようなお金作成と両替の繰り返しの操作(B7、 C8)を行 っていた。まず、お金作成で10 5)円玉1個を作成し、両替(大へ)によ る1円玉を5個ずつまとめる操作を3回繰り返した後、10(5)円玉2個 作成し、10 5)円玉が6個できたところで、10(5)円一まとめ100
(5)赤玉に両替した(B7)。次に、1円玉をまとめる両替3回と10(5)
円玉の作成で10ぐ5)円玉を5個作成した後、また、10(5,円玉をまと め100(5)円玉に両替していた(C8)。この2回目の100c5)円玉に する両替が10(5)雨渓が5個にならたところで行われていることから、
この生徒は1円玉5個で10(5)円山になるから10〔5)薬玉も5個で1 00 5ン絵漆になることに気づいたことが伺われる。1回目の100(5)
円頭1こする両替は10(5)円玉6個で行われていることから、それ以前の お金作成や両替は100,5,円玉にするつもりで10(5)円山にしていっ たのではなく、10cc)昏怠6個になった時点で100(r,)品玉にするこ とを思いついたと・考えられる。これに対し、1回目の100(5)円玉にす る両替以降の操作(C8)は、はじめから10015)円玉にするために5個 の10噸円頭にしたと考えられる。そこで、同じようなお金作成と両替 の操作でも、思いつきの両替操作(B>と規則的な両替操作(C)と区別
して分類することにした。
この後、10円玉を2個作成した後、進法を変えるだけの試行錯誤的 な操作(A9)に移っていた。
次に、この生徒は10進i数のしくみを振り返る操作(C10、 C11、 C12)
を行っていた。まず、10進数の500円を作成し、100円玉1個を
崩し、できた10円玉をまとめる両替を行った後、100円玉を:全部10円玉に崩し、できた10円玉50個を全部100円玉にまとめる両替
の繰り返しの操作(C10)を行った。この間のグラフの点を辿っていくと、
後半の玉00円玉にまとめる両替の中に、お金作成が2回あったことが 分かる。このお金作成の操作はメニュー選択のときリターンキーを押し 忘れだため、この生徒の意図に反して選択されたものであることが、操 作記録の分析して分かった。従って、この一連の操作は100呑玉を順 に崩し、戻す操作と解釈できる。リターンキーの押し忘れ操作について
は操作記録とともに後述する。次に、お金作成で100円玉10個にし たところで1000円札にまとめ、1000円札を作成し1000円札 2枚にしたところで1000円札を2枚共崩し、また、戻す両替の繰り 返し(C11)を行った。そして、1000円札を3枚作成し、1000円 札、100円玉、10円玉を大きい順に崩していだ(C12)。これらのあ
る単.位のお金を全部崩し戻す操作(CIO、 C11)や大きい順に崩す操作(
C12)は、先の5進数のお金の両替操作(B7)で述べた操作中に思いつい たお金を両替する操作に比べ、より位取り原理に近い形で規則的に両替 が繰り返されている。10進数についてはよく知っているので5進数の 場合より調べ方が進歩したものになるのは当然ではあるが、同じ両替操 作でもこのような操作過程に違いがあることが画面を再現してみて分か
その後、この生徒は進法を変えてお金を作成する操作(A13、 A14、 A1 6、A17)を4回、進法を変えるだけの操作(A15)を1回行った後、2進 数の1110円で10(2)円玉を崩す両替を行っていた(B18)。そして、
3進数の10円で10(3)円玉を崩し、戻した後、10(3,円玉を3個に したところで、100(3)円玉にする両替を行っていた(C19)。
次に、進法を変え、お金作成後、特定の単位のお金を崩す操作(E19−
24)を6回繰り返していた。実際は5進数の10 5)円玉(E20)、3進 数の10(3)円玉(E21)、2進数10c2)円玉(E23)と順に崩していく
ものであった。この操作で各11進数の2桁目の位の違いが比べられたも のと考え、組織的な両替操作として分類した。
この組織的な両替操作(E20−E22)を拡大した操作履歴グラフにして図 4.8に示す。組織的な両替操作は図のように同じ形を繰り返すグラフに なっていた。
File Name= Sl一一1 .DT自
。
n10金作小①大$変ヒソ表玉一数玉変
nin
E20
m
E21
4
抽
5
33 一 38 min (dtaNo. 2Z9 一一 242 )
図4.8 操作履歴グラフに表れた組織的な両替操作
以上がn進数のしくみを調べる学習活動における生徒Eのコンピュー タ教材のお金工場を使った操作過程である。図4.2に示したこの生徒E
のグラフでは40分から45分にかけて点がほとんどない。これはこの
間、この生徒がコンピュータ教材を操作しなかったことを意味している。実際の授業ではこの時間帯は学習シートの記入とまとめの指導であった。
操作がないのは学習シー・トの記入とまとめの指導の参加のためと考えら れる。その後の操作(E26−E28)はこの生徒が授業後に操作を行ったもの
生徒Eの操作過程をまとめると次のようになる。
まず、コンビz一タ教材の操作や動作を試す試行錯誤的な操作からは じまり、5進数の1円玉をまとめる両替の操作で1円玉5個で10(5)円 玉になることから10 (5)円玉5個をまとめると100(5)円になること に気づき、確かめた。
次に、進法を変える試行錯誤的な操作の後:、規則的な両替操作で10 進数のしくみを振り返った。規則的な両替操作は作成したお金を大きい 順に崩し、小さい順にまとめてもとのお金に戻す可逆的なものと大きい 順に崩していくものがあり、位取り原理に近い形で両替が行われていた。
そして、進法を変えお金を作成する試行錯誤的な操作の後、2進数の 10(2)円玉を崩す操作を行った。3進数の10(3)国玉を崩し戻す規則 的な両替操作の後、1円玉:3個で10(3)円玉になることから10(3)円 玉3個をまとめると100c,3)円になることに気づき、確かめた。
最後に、進法を変えながら10円玉を崩す組織的な両替操作を行い、
各n進数の2桁目の位の違いを比べていった。この生徒の操作過程では
5進数や10進数、2進数、3進数のお金の両替操作が行われ、規則的
な両替操作や組織的な両替操作も行われていたことから、コンピュータ 教材が生徒Eのn進数のしくみを調べる学習活動を効果的に支援したことが分かる。