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第 4 章 確定的なリンク交通量に基づく確率的リンク移動時間の評価手法

4.3 数値計算

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して表される.この形式は,リンク移動時間の共分散を,2 辺が𝑋𝑎|𝑏+ と𝑋𝑏|𝑎 ,または𝑋𝑎|𝑏 と 𝑋𝑏|𝑎+ で与えられる矩形の面積で表すことができることを意味する.

これまでの一連の定式化によって,リスクプレミアムと2変量リスクプレミアムは,上 記のように確率的リンク移動時間の積の平均と平均に対応して構造化される.リスクプレ ミアムと 2 変量リスクプレミアムを構造化することで,道路ネットワーク全体のリスクを リンクベースの指標で測定することができる.金融リスク管理の分野では,ポートフォリオ リスクはリスク要因の変動に依存する.本章では,ポートフォリオリスクとリスク要因がそ れぞれ確率的な総移動時間と確率的交通量に対応することを前提としている.この議論の 詳細は付録4Bで述べる.なお,(4-31)と(4-32)より,risk component 行列とリンク移動時間 の平均𝑣𝑎,リンク移動時間の平均に対応するリスクプレミアム𝜋𝑎そしてリンクコスト関数 が所与であるとき,π̂𝑎|𝑏 (∀𝑎 ∈ 𝐴, 𝑏 ∈ 𝐴)は一意に求まる.

上記で定義したリスクプレミアムと 2 変量リスクプレミアムを用いて,リンク移動時 間の平均と分散共分散,経路移動時間の平均と分散はそれぞれ以下のように定義される.

𝐸[𝑇𝑎] = 𝑡𝑎(𝑣𝑎+ 𝜋𝑎)∀𝑎 ∈ 𝐴 (4-33) 𝑐𝑜𝑣[𝑇𝑎, 𝑇𝑏] = 𝑡𝑎(𝑣𝑎+ 𝜋̂𝑎|𝑏) ⋅ 𝑡𝑏(𝑣𝑏+ 𝜋̂𝑏|𝑎) − 𝑡𝑎(𝑣𝑎+ 𝜋𝑎) ⋅ 𝑡𝑏(𝑣𝑏+ 𝜋𝑏)∀𝑎, 𝑏 ∈ 𝐴 (4-34) 𝐸[𝑇𝑤,𝑘] = ∑𝑘∈𝐾𝑤𝛿𝑤,𝑘,𝑎⋅ 𝐸[𝑇𝑎]∀𝑘 ∈ 𝐾𝑤, ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-35)

var[𝑇𝑤,𝑘] = var [ ∑ 𝛿𝑤,𝑘,𝑎⋅ 𝑇𝑎

𝑘∈𝐾𝑤

]

= ∑ ∑ 𝛿𝑤,𝑘,𝑎⋅ 𝛿𝑤,𝑘,𝑏⋅ cov[𝑇𝑎, 𝑇𝑏]

𝑏∈𝐴 𝑎∈𝐴

∀𝑘 ∈ 𝐾𝑤, ∀𝑤 ∈ 𝑊

(4-36)

65 ミアムを𝛑𝑇= (80, 100)𝑇とする.

図4-4 2変量リスクプレミアム

図4-4は,(4-17),(4-19),(4-27)で示される,2変量リスクプレミアムについての3つの領域

を示している.図4-4の実線①は(4-17)で示した曲線である.点線②,③はそれぞれ(4-27),

(4-19)で示した曲線である.2 変量リスクプレミアムの集合は,(4-19)と(4-27)からなる非線

形連立方程式系を解くことで特定される.例えば,cov[𝑇1, 𝑇2]またはcov[𝑇2, 𝑇1]に対応する二 変量リスクプレミアムの集合は,(4-19)と(4-27)で示される非線形連立方程式系を解くこと

により,π̂ = [97.3, 113.6]𝑇として計算される.リンク移動時間の分散共分散行列とそれに対

応する2つの行列XT+, XTをそれぞれ以下のように求める.

𝜮𝑻= [0.0023 0.0027

0.0027 0.0508] (4-37)

𝑿𝑻+= [𝑋1|1+ 𝑋1|2+

𝑋2|1+ 𝑋2|2+ ] = [0.2044 0.1986

0.4679 0.5471] (4-38)

𝑿𝑻= [𝑋1|1 𝑋2|1

𝑋1|2 𝑋2|2 ] = [0.0115 0.0136

0.0058 0.0928] (4-39)

(4-37)のリンク移動時間の分散共分散は,(4-11)の右辺と(4-21)の右辺をそれぞれ用いて,テ

イラー級数近似により算出する.(4-38), (4-39)の結果は,上記で指定した(4-29), (4-30)とπ̂を 用いて直接計算できる.上記の方法で求められた2変量リスクプレミアムの組を図4-4にお ける十字印によって示す.

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4.3.2 テストネットワークにおける数値計算

テストネットワークにおいて交通量配分したリンク交通量とリンク移動時間の結果を

用いて,risk component 行列を導出する過程を示す.提案したモデルを Nguen and Dupuis

(1984)が使用したテストネットワークを用いて実証する.このテストネットワークにおいて

交通量配分計算を実施し,得られたリンク交通量とリンク移動時間を用いて,リンク移動時 間の平均に対応するリスクプレミアムのベクトルと,その分散共分散行列に対応する 2 変 量リスクプレミアムの行列をそれぞれ計算する.テストネットワークは,4つのOD ペア,

25の経路,19のリンクから構成されている.ODペアは,(1, 2),(1, 3),(4, 2),(4, 3)である.

経路とリンクの組み合わせは第3章の表3.5と同じである.

各 ODペアの交通需要の平均とその変動係数をそれぞれ 1,000[PCU/hour]と0.2 と設定 する.BPR関数のパラメータはすべて3.1と同じである.ここでは,ロジット型確率的交通 量配分モデルを定式化する.このモデルでは,経路選択確率はロジットモデルによって離散 的な確率変数として決定される.提案する手法に従って計算されるリスクプレミアムは,リ ンク交通量の平均と分散共分散とリンクコスト関数の形状によってのみ決定される.

リンクと経路の組み合わせは固定されており,4つのOD交通需要が25の経路に配分 されている.確率的交通配分モデルは次のような不動点問題として定式化される.

𝒇𝑤= 𝑞𝑤⋅ 𝒑𝑤(𝜼𝑤(𝒇))∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-40) ここで,

𝑝𝑘𝑤 = 𝑒𝑥𝑝(−𝜃⋅𝜂𝑘

𝑤)

𝑘∈𝑲𝒘𝑒𝑥𝑝(−𝜃⋅𝜂𝑘𝑤)∀𝑘 ∈ 𝐾, ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-41) 𝐟𝑤 = (𝑓𝑤,1, ⋯ , 𝑓𝑤,|K𝑤|) ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-42) 𝐟 = (f1, ⋯ , f|𝑊|) ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-43) 𝐩𝑤= (𝑝𝑤,1, ⋯ , 𝑝𝑤,|𝐾𝑤|) ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-44) 𝛈𝑤 = (𝜂𝑤,1, ⋯ , 𝜂𝑤,|𝐾𝑤|) ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-45) 運転者の認知誤差を表すパラメータ𝜃は1である.上記の交通量配分モデルは経路ベースの アルゴリズムによって解かれる.なお,本研究では,解の更新は逐次平均法(Sheffi, 1985) に基づいた.運転者は経路移動時間の平均と分散を考慮して,リスク回避的な経路選択行動 をとるものとする.運転者が経路選択をする際の不効用関数は以下の通りである.

𝜂𝑤,𝑘= 𝐸[𝑇𝑤,𝑘] + 𝛾 ⋅ 𝑣𝑎𝑟[ 𝑇𝑤,𝑘]∀𝑘 ∈ 𝐾𝑤, ∀𝑤 ∈ 𝑊 (4-46) リスク回避の程度を表す係数γは2である.なお,パラメータ𝛾が0であるとき,運転者はリ スク中立的な経路選択行動をとるものとする.パラメータγは経路移動時間の分散を不効用 に変換するための較正係数として解釈される.この不効用に関する仮定は Fosgerau and Engelson (2011)の議論に基づいている.

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4.3.3 数値計算の結果

数値計算の結果として得られたリンク移動時間の分散共分散行列を以下に示す.図4-6 と図4-7はそれぞれリンク交通量とリンク移動時間の分散共分散行列を表している.図4-8 と図4-9は(4-25)から(4-29)にかけて定義した,risk component行列(XT+とXT)をそれぞれ表 している.

図4-6 リンク交通量の分散共分散行列

図4-7 リンク移動時間の分散共分散行列

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図4-8 Risk component行列,XT+

図4-9 Risk component行列,XT

図4-8と図4-9が示すように,risk component行列,XT+とXTの相対的な傾向は互いに等 しい.これは,(4-28)と(4-29)より,XT+− 𝐭𝟏𝑇 とXT−𝑇+ 𝐭𝟏𝑇がそれぞれ等しいためである.こ こで,𝐭はリンク移動時間の平均を表すベクトルであり,𝟏はすべての要素が一であるベクト ルである.XT+− 𝐭𝟏𝑇あるいはXT−𝑇+ 𝐭𝟏𝑇を列に沿って総和をとると,リンク移動時間の分散 共分散行列の成分に対応する各リンクの移動時間の総和を表すベクトルを得る.(図4-10). ベクトルの各要素はそれぞれ∑𝑎∈𝐴𝑡𝑎(𝑣𝑎+ 𝜋̂𝑎|𝑎′) (𝑎 ∈ 𝐴)である.

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図4-10 リンク移動時間の分散共分散行列の成分に対応する各リンクの移動時間の総和

(4-28)と(4-29)の定義により,𝑋𝑇+− 𝐭𝟏𝑇と𝑋𝑇−𝑇+ 𝐭𝟏𝑇の2つの行列はそれぞれ等しい.換言す れば,2つの行列は互いにそれぞれ2𝐭𝟏𝑇と−2𝐭𝟏𝑇だけ平行移動したものである.また,図 4-10に示す,ベクトルの各成分の相対的な順序と平均リンク移動時間tの相対的な順序は 互いに類似している.これは,𝑡𝑎(𝑣𝑎+ 𝜋̂𝑎|𝑎′)と𝑡𝑎′(𝑣𝑎′+ 𝜋̂𝑎′|𝑎)の比は,(4-19)に示すリ ンク移動時間の平均によって決まるためである.