第 6 章 異なる運転挙動を示す車両が混在したときのネットワークデザイン問題
6.2 定式化
6.2.3 交通流
CAVとRHVが混合した交通流の定式化は峪・内田(2018),Nitta et al. (2019)およびTani
and Uchida (2018)に基づいている.本章における交通流の定式化は,3.2.5における定式化を
発展させたものである.対数正規分布に従う確率的総交通需要 Q を仮定する.総交通需要 の平均と変動係数は外生的に与えられ,それぞれ𝑞とcvとして表される.
𝐸[𝑄] = 𝑞 (6-1)
var[𝑄] = (𝑞 ⋅ 𝑐𝑣)2 (6-2)
各OD交通需要におけるCAVの混合率は,対象とする道路ネットワーク全体で等しいと仮 定する.車両モードh (∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉})の総交通需要は,総交通需要におけるCAV の混合率 𝑝ℎと総交通需要の積で表される.
𝑄ℎ = 𝑝ℎ⋅ 𝑄 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} (6-3)
ここで,𝑝ℎは∑ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}𝑝ℎ = 1を満たす.各OD ペアの総交通需要の平均と分散共分散は
以下のように表される.
𝐸[𝑄ℎ] = 𝑝ℎ⋅ 𝑞 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} (6-4) cov [𝑄ℎ, 𝑄ℎ′] = 𝑝ℎ⋅ 𝑝
ℎ′⋅ (𝑞 ⋅ 𝑐𝑣)2 ∀ℎ, ℎ′∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} (6-5) ここで,ℎ = ℎ′であるとき,(6-5)は車両モード h の総交通需要の分散を表す.上記までの 総交通需要の定式化に従い,車両モードhにおけるODペアiの交通需要は以下のように定 義される.
𝑄𝑖ℎ= 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑄ℎ
= 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑄 ∀𝑖 ∈ 𝐼, ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼
(6-6)
96
ここで,𝑝ℎ,𝑖(≥ 0)は𝑄ℎに占める,車両モード h における ODペア i の交通需要の割合であ り,∑ 𝑝𝑖 ℎ,𝑖= 1を満たすものとする.各交通需要の平均と分散共分散は以下のようにそれぞ れ定義される.
𝐸[𝑄𝑖ℎ] = 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝐸[𝑄ℎ]
= 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑞 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼
(6-7)
cov [𝑄𝑖ℎ, 𝑄
𝑖′ ℎ′
] = 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑝ℎ′,𝑖′⋅ 𝑝ℎ′⋅ (𝑞 ⋅ 𝑐𝑣)2 ∀ℎ, ℎ′∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖, 𝑖′∈ 𝐼 (6-8) 車両モードhのODペアiにおける経路jの交通量は以下のように定義される.
𝐹𝑖𝑗ℎ= 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑄𝑖ℎ
= 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑄 ∀𝑖 ∈ 𝐼, ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉}
(6-9)
ここで,𝑝ℎ,𝑖,𝑗(≥ 0)は車両モードhのODペアiにおける経路jの交通量に対応する割合であ
り,∑ 𝑝𝑗 ℎ,𝑖,𝑗= 1を満たすものとする.各経路交通量の平均と分散共分散は以下のように,そ
れぞれ表される.
𝐸[𝐹𝑖𝑗ℎ] = 𝐸[𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑄𝑖ℎ]
= 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑞 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼, ∀𝑗 ∈ 𝐽𝑖,ℎ
(6-10)
cov [𝐹𝑖𝑗ℎ, 𝐹
𝑖′𝑗′ ℎ′
] = 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑝ℎ,𝑖⋅ 𝑝ℎ⋅ 𝑝
ℎ′,𝑖′,𝑗′⋅ 𝑝
ℎ′,𝑖′⋅ 𝑝
ℎ′⋅ (𝑞 ⋅ 𝑐𝑣)2
∀ℎ, ℎ′∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖, 𝑖′∈ 𝐼, ∀𝑗, 𝑗′∈ 𝐽𝑖,ℎ
(6-11)
ここで,𝑝ℎ,𝑖および𝑝ℎは外生的に与えられる変数であるが,経路選択確率𝑝ℎ,𝑖,𝑗はのちに示す 交通量配分問題を解く過程で内生的に求まる.経路交通量とその平均は常に非負である.
𝐹𝑖𝑗ℎ≥ 0 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼, ∀𝑗 ∈ 𝐽𝑖,ℎ (6-12) 𝐸[𝐹𝑖𝑗ℎ] ≥ 0 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼, ∀𝑗 ∈ 𝐽𝑖,ℎ (6-13) 各ODペアにおいて,経路交通量の総和はその元となるOD交通需要と等しくなければなら ないため,確率変数とその平均についてそれぞれ以下の条件を保つ.
∑ 𝐹𝑖𝑗ℎ
𝑗∈𝐽𝑖,ℎ
= 𝑄𝑖ℎ ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼 (6-14)
∑ 𝐸[𝐹𝑖𝑗ℎ]
𝑗∈𝐽𝑖,ℎ
= 𝐸[𝑄𝑖ℎ] ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑖 ∈ 𝐼 (6-15) 車両モードhの車両がレーンlを走行するときの交通量は以下の通りである.
𝑉𝑙ℎ= ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝐹𝑖𝑗ℎ
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖 𝑖∈𝐼
∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑙 ∈ 𝐿 (6-16)
ここで,𝛿𝑖,𝑗,𝑙はレーンlが経路𝑗 ∈ 𝐽𝑖,ℎを構成するときに1を,それ以外のときに0をとる変
数である.5.2.2で説明した通り,道路ネットワーク中の各リンクは2本のレーンで構成さ れている.車両モードhが各レーンに流れる交通量の平均は以下の通りである.
97 𝐸[𝑉𝑙ℎ] = ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝐸[𝐹𝑖𝑗ℎ]
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖 𝑖∈𝐼
∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑙 ∈ 𝐿 (6-17) 上の定式化において,𝑙 ∈ 𝐿𝑠であれば,レーンlは共有レーンである.𝑙 ∈ 𝐿𝑑であれば,レ ーンlはCAV専用レーンである.
(6-9)より,経路交通量は各種交通量を規定する割合と総交通需要の割合の積によって
表現される.つまり,経路交通量は総交通需要のスカラー倍になっている.(6-16), (6-17) に示すように,レーン交通量は経路交通量の和で表されることから,レーン交通量もまた 総交通需要のスカラー倍として定式化されている.
𝑉𝑙ℎ= ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝐹𝑖𝑗ℎ
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖 𝑖∈𝐼
= 𝑝𝑙ℎ⋅ 𝑄 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉} ∀𝑙 ∈ 𝐿 (6-18) ここで,𝑝𝑙ℎはレーン交通量𝑉𝑙ℎに対応するスカラー量である.このレーン交通量の特性によ って,車両モードhのレーンlにおける交通量の分散を以下に示す形で定式化することが できる.
var[𝑉𝑙ℎ] = var [∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝐹𝑖𝑗ℎ
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖 𝑖∈𝐼
]
= ∑ ∑ ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙 𝑗′∈𝐽
ℎ,𝑖′ 𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
𝑖′∈𝐼 𝑖∈𝐼
⋅ 𝛿𝑖′,𝑗′,𝑙⋅ cov [𝐹𝑖𝑗ℎ, 𝐹
𝑖′𝑗′ ℎ ]
= ∑ ∑ ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙
𝑗′∈𝐽 ℎ,𝑖′ 𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
𝑖′∈𝐼 𝑖∈𝐼
⋅ 𝛿𝑖′,𝑗′,⋅ 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑝
ℎ,𝑖′,𝑗′⋅ cov [𝑄𝑖ℎ, 𝑄
𝑖′ ℎ ]
= (∑ ( ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝑝ℎ,𝑖,𝑗 𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
) ⋅ 𝑞𝑖ℎ
𝑖∈𝐼
)
2
⋅ 𝑐𝑣2
= (𝑣𝑙ℎ⋅ 𝑐𝑣)2 ∀ℎ ∈ {𝐶𝐴𝑉, 𝑅𝐻𝑉}, ∀𝑙 ∈ 𝐿
(6-19)
ここで,レーン交通量とOD交通需要の平均はそれぞれ𝑣𝑙ℎ = 𝐸[𝑉𝑙ℎ]と𝑞𝑖ℎ= 𝐸[𝑄𝑖ℎ]のように簡 略 的 に 表 記 さ れ る . な お , レ ー ン l に お け る す べ て の 車 両 モ ー ド の 交 通 量 の 和 , 𝑉𝑙(= ∑ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}𝑉𝑙ℎ)の分散は以下のように表される.
98 var[𝑉𝑙] = var [ ∑ 𝑉𝑙ℎ
ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
]
= var [ ∑ ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝐹𝑖𝑗ℎ
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖 𝑖∈𝐼 ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
]
= ∑ ∑ ∑ ∑ ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙
𝑗′∈𝐽 ℎ′
,𝑖′ 𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
𝑖′∈𝐼 𝑖∈𝐼
⋅ 𝛿𝑖′,𝑗′,𝑙⋅ cov [𝐹𝑖𝑗ℎ, 𝐹
𝑖′𝑗′ ℎ′]
ℎ′∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
= ∑ ∑ ∑ ∑ ∑ ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙
𝑗′∈𝐽 ℎ,𝑖′ 𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
𝑖′∈𝐼 𝑖∈𝐼
⋅ 𝛿𝑖′,𝑗′,𝑙⋅ 𝑝ℎ,𝑖,𝑗⋅ 𝑝
ℎ,𝑖′,𝑗′ ℎ′∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
⋅ cov [𝑄𝑖ℎ, 𝑄
𝑖′ ℎ′]
= ( ∑ (∑ ( ∑ 𝛿𝑖,𝑗,𝑙⋅ 𝑝ℎ,𝑖,𝑗
𝑗∈𝐽ℎ,𝑖
) ⋅ 𝑞𝑖ℎ
𝑖∈𝐼
)
ℎ∈{𝐶𝐴𝑉,𝑅𝐻𝑉}
)
2
⋅ 𝑐𝑣2
= (𝑣𝑙⋅ 𝑐𝑣)2 ∀𝑙 ∈ 𝐿
(6-20)
ここで,𝑣𝑙 = 𝐸[𝑉𝑙]である.上記の定式化より,各種レーン交通量の分散はレーン交通量の
平均と総交通需要の変動係数の積の 2 乗によって表されていることがわかる.この定式化 はTani and Uchida (2018)の自然な拡張となっている.(6-19)と(6-20)の具体的な関係は,本章 末に示す付録において,簡単なテストネットワークを用いて説明される.