教師:クリスマスと聞いて何を思い浮かべますか?
―家族、食事、プレゼントをあげること、雪、サンタクロース
教師:それぞれのテーブルの上に、2枚の写真(クリスマスの装飾や広告)が置いてあ ります。それらについての印象を言ってください。まずは、ノートに書いてくだ さい。
―飾っている。キラキラ光っている。
教師:今度は、電子黒板(クリスマスの広告を集めた写真)を見てください。各テーブ ルの一人を指名するので、印象を言ってください。
―プレゼント、雪、ご馳走、テスコ(スーパーマーケット)、バーゲン、愛 教師:愛はどうして?
―そのような文字が書いてあるから。
写真①:筆者撮影
写真②:筆者撮影
教師:他には?
―プレゼントすること。ターキー大好き。
教師:何故、クリスマスを祝うのでしょうか? 学習ジャーナルに書いてください。
(以下のクリスマスの讃美歌「神には栄え」を流す。原題は「グローリー・トゥー・
ザ・ニュー・ボーン・キング」で、イギリスでは四大讃美歌の一つとされている。)
「神には栄え 地にはおだやか 人には恵み あれ」と歌える み使いたちの たたえの歌を 聞きてもろびと ともによろこび 今 あれましし きみをたたえよ
(日本聖公会聖歌集 81番より)
教師:これは、さっきとは随分違ったメッセージでしょ。さっきのクリスマスの広告の 写真はどんな感じがしますか。
―残念な気がする。
教師:それはいい言葉ですね。
教師:アドヴェントカレンダーは知っているでしょう。この教室にもありますよね。
何故、キリスト教徒は、クリスマスまでをカウントダウンするのでしょう。
教師:その意味は、このクリスマスの讃美歌に書いてあります。
(次に、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」という曲を流す。)
教師:この曲が最初に出されたのは25年くらい前で(最初は1984年)、ポップミュージッ クのスターたちが、「バンドエイド」というチャリティでアフリカの飢餓の子ど もたちの現状を訴えたのです。その結果、沢山の募金が集まりました。
写真③:筆者撮影
教師:その時のこの写真(左下:スライドで飢餓に陥っている少女の写真を見せる)の 少女が、この募金のおかげで救われて、現在はこの写真(右下:スライドで現在 は元気な大人になった女性の写真を見せる)のような大人になったのです。
教師:この歌詞をもう一度見てください。
「クリスマスの時だ 恐れることなんかない 光を受け入れ闇を消そう
満ち足りた世界に喜びの笑顔を届けよう クリスマスだ 世界に手をさしのべよう
人のために祈りをささげよう クリスマスだから 楽しんでいる時だから難しいかもしれないけれど 窓の外には世界があるんだよ。
不安と恐怖の世界が
流れている水はつらく突き刺す涙だけ
そこで鳴るクリスマスの鐘は運命の音を鳴らす
今夜は神に感謝しよう そこにいるのが君たちでなかったことを アフリカではクリスマスにも雪は降らない」(筆者による試訳)
教師:クリスマスのことを考えるとき、家族やプレゼントのことを考えるのもいいけど、
他の人のことも考えてみましょう。
この授業では、クリスマスのときにプレゼントをもらうなど、子どもたちの生活の中で 起こっていることを振り返らせるとともに、クリスマスの本来の意味を考えさせている。
そうした視点から同じ時期に世界の他の子どもたちが経験していることへ目を向けること を促している。このように、宗教について学んだことを、自分の内面に関連付けて考察す ることを促すことが、「宗教から学ぶ」ことを目指した指導方法の特徴である。
ちなみに、独立政府機関である教育水準局(OFSTED)による2013年の報告では、「宗
写真④:筆者撮影 写真⑤:筆者撮影
教から学ぶ」ことを毎回の授業で達成しようとするのは性急ではないかと指摘している19。 つまり、その前に、その宗教についての十分な調査をした上で、それに対する自分の反応 を吟味するべきということであろう。