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カセレス司教区学校における「シティズンシップ教育」科目

ドキュメント内 宗教にかかわる教育の研究.indb (ページ 95-102)

2.カセレス司教区学校における「宗教」科目

3.  カセレス司教区学校における「シティズンシップ教育」科目

 以下で紹介する初等教育課程第6学年の授業は、2014年3月11日の3時限(10時35分

〜11時25分)の「シティズンシップ教育(Educación para la Ciudadanía)」を担当した AlfonsoAlbertoGalánGosálvez教員によるものである。生徒22人を対象とした当日の授 業テーマは「子どもの権利:不当な子どもの労働」であった。教科書として、“Educación para la Ciudadanía, Educación Primaria, 3 ciclo”(edebé, 2009年, ISBN:978842 3693290)が指定されているが、授業観察の当日には教科書を用いなかった。具体的な授 業展開は資料9のとおりである。授業では、「児童搾取(explotacióninfantil)」および「児 童労働(trabajo infantil)」という今日的グローバルな問題について生徒たちがグループ 活動を通して調べてきた成果の発表がなされた。授業の発表で用いられた作品は、公的機 関のインターネット情報を画用紙にまとめたものであった。出席した生徒22人中18人が 実際に発表した。その後、他者の立場を思いやる力を養うために、教員は生徒に目をつぶっ て「児童搾取」や「児童労働」の状況を「想像」させた。そこで教員がゆっくりと語った 内容は、生徒が作品に挙げた言葉や文章であった。

資料9 「シティズンシップ教育」科目の授業展開15

教員:それでは、課題を発表していきましょう。いいですか? では、発表したい人。

生徒1:私、私たち!

教員:どうぞ。[第1グループの6人が前へ移動]どんな風にやったのかな?

生徒1:「児童搾取(Explotación infantil)」というタイトルを書きました。それから労働して いる子どもの写真を何枚か貼りました。そして、どのような児童搾取が起こっているのかにつ いての情報と、児童搾取を示すいくつかの言葉を書きました。

教員:わかりました。では、読んでください。

生徒2:児童搾取や児童労働は新しい問題ではありませんが、現在、とくに発展途上国にかか わりがあります。残念なことに、世界では2億1500万人の児童および青少年が労働しています。

その46%は女子です。

生徒3:児童労働を担う未成年者の大部分が小売業、農業および畜産業、建築業を請け負わさ れています。

生徒4:「児童および青少年の労働調査(Encuesta de Actividades de Niños, Niñas y Adoles-centes)」と呼ばれる2012年に行われた研究によると16、児童搾取の主な理由は、社会的に最も弱 く不利益な境遇に置かれている家族が被る貧困と社会的冷遇です。

生徒1:子どもたちは親や家族もしくは見知らぬ人に促されたり、強いられたりして様々な労 働をしています。彼らは妥当な給料を受け取っておらず、不安定で不衛生かつ悲惨な状態で働 かされているので、搾取されているのです。

生徒5:とくに頻繁に児童が使われる労働には、道で物乞いをして売ったり、農場や工場で働 いたり、第三者のために家事をしたり、建設するなど、ほかにもいろいろあります。

生徒6:この調査は、12万5千人の児童および青少年が、危険を伴うとみなされる様々な労働、

具体的には機械の使用、農業などに用いられる化学薬品の使用、また高所での作業などをさせ られているということを示しています。

生徒2:そのため、国および児童労働に反対する様々な福祉事業の監督機関は、社会的弱者層 の保護に関心を注ごうとしています。

生徒1:「苦痛」、「苦しむ」、「悲しい」。

教員:「苦痛」、「苦しむ」、「悲しい」。それらはあなた方が思うことですか? どうしてそう書 いたのですか?

生徒2:子どもたちが感じていることだからです。

教員:みんなもそう思いますか?

生徒一斉に:そう思う!

15 実際の授業では、移動を促すためや注意喚起をするために、生徒の名前を頻繁に呼んでいたが、こ こではその部分は省略した。なお、強調のための下線は筆者(村越)による。

16 生徒が発表で引用した資料は、チリ政府発行の資料“PrincipalesResultadosEncuestadeActividades deNiños,NiñasyAdolescentes(EANNA)2012”(2013年6月28日)である。その内容は以下のサイトで 確認できる。

<http://observatorio.ministeriodesarrollosocial.gob.cl/layout/doc/eanna/presentacion_

EANNA_28junio_final.pdf>

教員:いいでしょう。わかりました。座ってください。[第2グループの3人に対して]どうぞ。

どのようにやりましたか。

生徒7:私たちは本のようにしました。児童搾取についての文章をいくつか載せました。ここ は扇子のようになっていて、「児童搾取はもうたくさん」と書きました。そしてここには「血」、

「苦痛」、「苦悩」と書かれたTシャツをきた子どもたちを描き、(絵に大きく)バツ、「反対」

と書きました。児童搾取反対という意味です。

教員:書いたことを少し読んでください。

[第2グループおよび第3グループの生徒8から生徒12による報告内容は省略]

教員:いいでしょう。では、ほかに発表していないグル-プは? どうぞ。

生徒13:私たち[第4グループの4人]はだいたい四つに分けました。ここには児童労働の定 義、ここには児童労働の様相、ここには各大陸における児童労働、それから写真を載せました。

(資料10-1を参照)児童労働には、児童および幼児を巻き添えにしたいかなる労働も含まれま す。要は、身体および精神の健康状態に害を及ぼす活動ということです。

生徒14:不衛生な場所での長時間にわたる家事、危険な場所で危険な物質や機械を使用する作 業、子どもに重すぎるものを無理やり運ばせたりすることも含まれます。これらの活動は労働 とはみなされていません。家族の日常の仕事を補って単に親を助けるという活動については、

子どもは週に何時間かすることができます。また、小遣いとしてわずかのお金を稼ぐことが黙 認されています。これらは児童労働とはみなされない上に、生活を豊かにするものと安易に考 えられています。子どもの労働が認められている合法的最低年齢は15歳です。開発途上国では 14歳です。軽い労働であっても最低年齢は18歳のはずですが、発展途上国ではある種の条件 下で16歳です。

生徒15:各大陸において、例えばアジア太平洋地域では、家族の借金を返すために、女子児童 は家事労働をさせるために売られ、多くの男子児童は無給で働かされる労働者として織物工場 へ売られています。アフリカでは、親が家畜と引き換えに子どもを売ります。通常、子ども一 人が1頭の牛に相当します。これらの未成年者は農場や炭鉱で搾取されたり、家事労働者にさ れたりします。北アメリカやラテンアメリカでは、子どもが麻薬密売人として搾取されるケー スが増えています。そして多くの子どもが身体を売ることを強制されています。ヨーロッパで は、子どもが誘拐されて、無給で働かされる労働者にされています。

生徒16:それから、子どもたちが必要な言葉をいくつか載せました。「参加(Participación)」、「平 等(Igualdad)」、「遊び(Juego)」、「教育(Educación)」、「栄養(Nutrición)」、「アイデンティ ティ(Identidad)」、「保護(Protección)」です。(資料10-1を参照)

教員:わかりました。彼らにはそれらが必要にもかかわらず、それらがないということですね。

第4グループの4人一斉に:はい。

教員:そうですね。よくできました。ほかには?

生徒17:私たち[第5グループの4人]は子どもの奴隷問題の写真を載せました。それから、

児童の奴隷的境遇の八つのタイプを載せました。(資料10-2を参照)

教員:どんなことですか?

生徒17:「児童人身売買(Latratainfantil)」、「商業的性的搾取(Explotaciónsexualconfines comerciales)」、「児童強制労働(Trabajo infantil forzoso)」、「炭鉱での強制労働(Trabajo

forzosoenlamina)」、「農園での強制労働(Trabajoforzosoenlaagricultura)」、「少年兵(Niños soldados)」、「児童強制結婚(Matrimonio infantil forzoso)」、「家庭内奴隷(Esclavitud domésti-ca)」です。それから、搾取されている子どもたちの話をいくつか、それと奴隷とはどういう ことかという説明が少しです。

生徒18:作品の残りの半分には、世界のなかで児童搾取のある二つの国についてのニュースを 貼りました。それから、アブラハムがここに働く子どもの絵を、アドリアンが奴隷状態を示す 炎を描きました。私はここに児童の奴隷的境遇を連想させるツルハシとスコップの絵を描きま した。

教員:いいでしょう、よくできました。ニュースを読んでください。

生徒17:「ダビッドの話(LahistoriadeDavid)」(資料10-2の作品中の左下の資料)。ダビッ ドはスーダンの南、北バハル・アル・ガザール州の少年です。16歳です。子どものときに学校 へ行きませんでした。そのかわりに働きました。ムジャーヒーディーン政府(elgobiernomuyahidín)

とスーダン人民解放軍(SPLA軍)の戦争が始まると、政府軍は村を襲い、子どもを馬に乗せ て連れ去りました。兄弟のうち二人は誘拐されたあと殺されました。自分に残された唯一の選 択肢はスーダン人民解放軍に入隊することだと考え、11歳の時に志願しました。進軍したり、

発砲したり、戦ったり、防衛したりする軍事訓練を受けました。教育は全く受けられず、もし 何か間違えれば殴られます。前線で3回戦いました。他の子どもが死ぬのを見ましたが、怖く はありませんでした。2年後、逃げなければなりませんでした。もし逃げれば、厳しく罰せら れるか、殺されることもあるとは知っていました。学校に行きたかった。自分を含めて3人が 逃げました。森の中を何週間も歩いて、自分の家に着きました。そこで学校に行けるように親 を説得しました。当初は他の人達に反対されました。私はかつて兵士だったので、皆が私を恐 れました。学校はいつもよいとは限りません。通常は食べ物が何もなく、とてもお腹をすかせ て家に帰ります。それでも、銃を取って戦争へ行くことはよいことではないと考えるようにな りました。学校が私の人生を変えてくれました。

教員:よくできました。

生徒18:児童労働、ペルーで働く子どもたち17。国際労働機関のいくつかの資料によると、ペ ルーでは、300万人以上もの5歳から17歳の児童および青少年が労働し、その大半は農場で働 かされたり、危険な作業を強いられたりしていることから、ペルーは地方における児童労働の 割合がとりわけ高い国の一つといえます。ラテンアメリカのなかで、ペルーは児童労働の割合 が最も高い国です。地方における児童労働者数がとりわけ多いグアテマラ、ホンジュラス、ボ リビアにペルーは匹敵しています。国際労働機関が技術的財政的支援をすることによって、ペ ルーの国立統計情報研究所(InstitutoNacionaldeEstadísticaeInformática)は2007年に児童 労働についての調査をはじめて実施し、その内容が月曜日に報じられました。結果は予想をは るかに上回り、5歳から17歳の330万人の児童および青少年が労働しており、これは人口の 42%にあたるとのことです。5歳から13歳の労働者は200万人以上です。児童労働に関する国 勢調査によると、5歳から13歳の児童の66.7%が農業、畜産業、漁業、鉱山業に従事している 17 生徒が発表で引用した資料は、スペインのABC新聞の2010年2月17日の記事“Tresmillonesde

niños trabajan en Perú”<http://www.abc.es/20100216/internacional-iberoamerica/tres-millones-ninos-trabajan-201002162339.html>である。

ドキュメント内 宗教にかかわる教育の研究.indb (ページ 95-102)