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性能評価

ドキュメント内 プライベート IP アドレスを用いた (ページ 88-93)

第 5 章 異なる運営主体間のローミングのための実現手法

5.4 実装と評価

5.4.2 性能評価

実装したローミング手順、特にアドレス変換とパケット転送処理を中心とするGRAの性 能評価のために、図 5-10に示す実験ネットワークを構築した。GRA、HA、FA、MN、CN およびゲートウェイルータは、すべてPentium Ⅲ CPU (800MHz)、メモリ128 MByteを 搭載するパーソナルコンピュータ上で実装し、すべてのノードは、10Mbpsのイーサネット リンクで接続した。

性能評価として、エンド・ツー・エンドのping応答時間とftpスループットを測定した。表

5-1に測定結果を示す。ping応答時間は、64バイトのping要求/応答を50回行った際の最

FA1-1 FA1-2 FA2-1

HA1 HA2

モバイル IP ネットワーク 1 モバイル IP ネットワーク 2 CN-g

MN

<mn-pa1 / MN mn-nai1>

GRA1 GRA2

FA2-2

ゲートウェイルータ (PC)

HUB HUB

<mn-pa2 / mn-nai2>

図 5-10 実験ネットワーク構成

小/平均/最大値を示す。また、ftpスループットは、2 Mバイトのファイル転送を10回行 った際の平均値を示す。

表 5-1において、CN-gからGRA1 経由のMN宛の通信は、5.3.5節で示したグローバルイ ンターネットからの着信(ケースA)に相当し、CN-gからGRA2およびGRA1経由のMN宛の

通信は、5.3.6節で述べたグローバルインターネットからの着信(ケースB)の場合に相当する。

前者の場合は、GRA1がMNのために一時的なグローバルアドレスを割り当ててグローバル

/プライベートアドレス変換を行い、後者の場合は、GRA2 がグローバルアドレスを割り 当ててグローバル/プライベートアドレス変換を行うとともに、さらにGRA1がMNのプラ イベートアドレス(ホームアドレス)間の変換を行う。

また、比較のために、GRA1 をローカルサーバと見立て、GRA1から HA1 経由で MN 宛にMNのモバイルIPネットワーク1におけるプライベートアドレスを指定して通信した 場合の結果も示している。グローバルインターネットからの着信(ケース B)は、GRA1 や GRA2 によるアドレス変換のオーバヘッドが最も大きいと予想される。しかし、ケース A の場合と比べても性能劣化はそれほど大きくなく、また、GRA1 から直接送信した場合と 比較しても、応答遅延は若干大きくなるが、スループットの劣化はそれほど大きくないこ とがわかる。これは、GRAにおけるユーザパケットの転送やアドレス変換処理をカーネル

表 5-1 エンド・ツー・エンド性能測定結果

測定結果 測定項目 GRA1から

MN (HA1経由)

CN-gから MN (GRA1経由)

CN-gから MN (GRA2 +

GRA1経由) ping応答時間 (msec)

(最小 / 平均 / 最大)

1.207 / 1.223 / 1.269

2.349 / 2.767 / 3.154

3.596 / 3.985 / 4.400 ftp (put)

スループット (KByte/s) 877.4 815.2 792.8

内のデータ構造とカーネル関数によって実現し、カーネル空間とユーザ空間の間の不必要 なデータ転送を避けている効果によるものと考えられる。

GRAによるアドレス変換とパケット転送のスケーラビリティをさらに評価するため、市 販のIPトラヒック生成/性能解析ツール(IXIA 400)と2つのGRAを100Mbpsのイーサネッ トで接続し、多数のMNが移動して通信を行っている状況を模擬した性能評価実験を行った

(図 5-11)。実験では、複数のMNがモバイルIPネットワーク2(GRA2配下)からモバイルIP

ネットワーク1(GRA1配下)に移動し、モバイルIPネットワーク2に存在するCNから各MN 宛に通信している状況(5.3.2節で示した他モバイルIPネットワークからの着信の場合に相 当)を想定して、トラヒック生成ツールからGRA2 にパケットを送信し、GRA1 からMN宛 のパケットを受信した。移動中のMN数、すなわちGRAへのMN登録エントリ数を変化させ、

このうち同時に通信を行っているMN数(セッション数)を登録エントリ数の 20%または

50%として、256バイトのパケットをロスなしで正常に受信できる最大トラヒックを転送ス

ループットとした。図 5-12にスループット測定結果と、それぞれの場合におけるパケット あたりのGRAの合計処理時間を示す。

図 5-12から、セッション数が登録エントリ数の20%の場合、最大登録エントリ数50,000 までほとんどスループットが劣化しておらず、処理時間も24μ秒程度でほぼ一定している ことがわかる。セッション数が50%の場合は、登録エントリ数が 5,000以上でスループッ トが若干低下し、処理時間も増加するが94Mbps以上のスループットが得られており、性能

劣化は小さいと言える。また、本実験に合わせて、イーサネット・ドライバによるパケッ ト送受信以外のカーネル内処理時間、すなわちテーブルのハッシュ検索やアドレス変換を 含むGRAのコア部分の処理時間(図 5-9に示したgra_input()からip_output()まで)をハードウ ェア・クロックの読み出しにより測定した結果、登録エントリ数/セッション数によらず

平均2.5μ秒程度であった。全体の処理時間に対して、大部分はドライバによるパケット送

受信が占めていると言える。

本実験では、GRAに使用したパーソナルコンピュータのカーネルメモリなどの制約から 最大登録エントリ数を50,000としたが、最大エントリ数でも性能劣化が小さいことに加え、

特定のモバイルネットワークに加入している全端末のうち 50%以上が他モバイルネットワ ークに移動することは想定しにくいことから、今回実装したGRAでも数千以上の端末を持 つ企業ネットワーク程度の規模には十分対応可能と考えられる。ただし、より大規模な公 衆セルラーネットワークなどでは、想定する端末数やトラヒック量に応じて、端末のプラ イベートアドレスの範囲ごとに別のGRAを導入するなどの負荷分散を図る必要があると考 えられる。一方、GRAにおける処理オーバヘッドの大部分はパケット送受信にかかわる部 分であり、カーネル内でのグローバル/プライベートアドレス変換とプライベート/プラ イベートアドレス変換の処理オーバヘッドは同程度と推測されるため、グローバルインタ ーネット上の端末との通信においても同様なスケーラビリティを持つと考えられる。

本提案手法では、公衆セルラーネットワークや企業ネットワークなどのように、ネット ワーク内のローカルサーバ(メールサーバ等)や別の移動端末との通信が大部分を占める 場合、すなわちプライベートアドレス間の直接変換による通信形態に主眼を置いており、

グローバルアドレスを用いたトラヒックの割合は比較的小さいと想定している。しかし、

利用可能なグローバルアドレス数には制限があるため、グローバルアドレスを必要とする 通信需要に応じて、負荷分散を図るとともに、グローバルアドレスのライフタイムを調整 し、一定時間以上パケット転送が発生せずにライフタイムが満了した場合は該当グローバ ルアドレスを解放し、その後同じMNに対しても別のグローバルアドレスを割り当てるこ となどにより、特定のMNがグローバルアドレスを占有し続けることがないように工夫す る必要があると考えられる。

IP Traffic Generator /

Analyzer

GRA1 GRA2

モバイルIPネットワーク1 モバイルIPネットワーク2

MN MN

CN

図 5-11 GRA性能評価実験

86 88 90 92 94 96 98 100 102

1 10 100

1,000 5,000

10,000 20,000

30,000 40,000

50,000 MN登録エントリ数

スループット Mbps

10 20 30 40 50 60

GRA処理時間 μsec

スループット(セッション数20%) スループット(セッション数50%) GRA処理時間(セッション数20%) GRA処理時間(セッション数50%)

図 5-12 GRA性能評価結果

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