第 6 章 階層的 Mobile IP と NAT, SIP の連携による実現手法
6.2 ネットワーク構成と設計方針
階層的Mobile IPにおけるSIPシグナリングを用いたプライベートアドレスのサポートを 実現するネットワークに関して、提案するネットワーク構成を図 6-1に示す。また、第 3 章3.3節の図 3-3で示したALL IP / NGNを指向した大規模ネットワークと、提案ネットワー ク構成との対応関係を図 6-2に示す。これらの図に示すように、各アクセスネットワークに 対応する複数の外部ネットワークと、Mobile IPのHAおよびSIPサーバ機能を含む複数のホ ームネットワークを想定し、各ホームネットワークおよび外部ネットワークの内部はプラ イベートネットワークとして構成されるものとする。提案ネットワーク構成と通信手順の 設計方針を以下に示す。
FA FA FA FA GFA1
MNa1v1
外部ネットワーク2 (domain-v2) ホームネットワークB
(domain-b)
NAT
(プライベートネットワーク) (プライベートネットワーク) 外部ネットワーク1
(domain-v1)
グローバルIP ネットワーク
(プライベートネットワーク)
SIP-proxy
GFA2 NAT SIP-proxy HAa SIP-proxy
ホームネットワークA (domain-a)
HAb SIP-proxy
(プライベートネットワーク)
MNb2v2 CNa
CNg
CNb
MNa2v2 user-a1@domain-a
IP=Pa1
user-a2@domain-a IP=Pa2
user-b2@domain-b IP=Pb2 MNb1v1
user-b1@domain-b IP=Pb1
IP=Gg1
図 6-1 提案手法のネットワーク構成
(1) 複数プライベートアドレス空間の利用を考慮して、各移動端末(MN)が所属するホーム ドメインに対応するホームネットワークが複数存在することを想定する。それぞれのホー ムネットワークは、閉じたプライベートネットワーク(プライベートアドレスを使用するネ ットワーク)とする。また、各ホームネットワークはSIPのホームドメインに対応する。
(2) 各HAはグローバルアドレスを持ち、ホームネットワークとグローバルIPネットワー クのゲートウェイルータとしての役割を持つものとする。またHAは、モビリティ管理機 能に加えてSIPプロキシーサーバ(Proxy Server)機能を持つ。さらに、該当するホームネッ トワークに所属するMNの登録情報を管理するSIPレジストラ(Registrar)の役割も含む。
統合IPコアネットワーク
アクセス ネットワーク
アクセス ネットワーク (グローバルIPネットワーク)
外部 ネットワーク1
GFA+SIP
外部 ネットワーク2 HA+SIP
GFA+SIP ホームネットワークA
HA+SIP ホームネットワークB
CNg IMS / MMD
図 6-2 ALL IP大規模ネットワークと提案ネットワーク構成の対応
なお、論理名とIPアドレスのマッピングを管理するSIPロケーションサーバ(Location
Server)は、HAの外部に設ける場合とHAに含む場合が考えられるが、提案手法の議論に
おいては本質的な違いは無いため、以下ではHAがロケーションサーバも含むと仮定する。
簡単化のため、以下ではHAに含むSIPサーバ機能もSIPプロキシーと呼ぶ。
(3) 各MNは、それぞれのホームアドレスとして、ホームネットワークから割り当てられた プライベートアドレスを持つ。MN がホームネットワークに存在する間は、割り当てられ たプライベートアドレスを用いて他のノードと通信を行う。
(4) 異なる地域をカバーするネットワークや、異なる種別の無線アクセスネットワークなど に対応した、複数の外部ネットワークを仮定する。外部ネットワークも、閉じたプライベ ートネットワークを想定する。提案手法においては、外部ネットワークは、異なるホーム ネットワークから移動してきた端末のモビリティ管理やパケット転送をサポート可能とす る。すなわち、ある外部ネットワーク内において、異なるホームネットワークによって割 り当てられたホームアドレスが重複しても正しく動作可能とする。
(5) 外部ネットワークにおいては、FAを階層的に配置した階層的Mobile IPによる位置管 理を導入する。階層の最上位のFAであるGFA (Gateway FA)は、閉じたプライベートネッ トワークである外部ネットワークとグローバルIPネットワークを接続するゲートウェイル ータとしての役割を持つ。階層的Mobile IPの導入は、広範囲の地域をカバーするとともに、
多様なアクセスネットワークを収容するキャリア規模のバックボーンに適していると考え られる。またGFAは、階層的なモビリティ管理機能に加えて、端末間のエンド・ツー・エ ンド通信をサポートするために、SIPプロキシー機能およびNAT機能を提供する。
(6) MNが外部ネットワークに移動した場合、そのMNのホームアドレスとして割り当てら
れたプライベートアドレスを使用可能とする。MNは、接続先のFAのIPアドレスをロー カルな気付けアドレス(Local Care-of Address: LCoA)としてGFAに登録し、GFAのIPア ドレスをグローバルな気付けアドレス(Global Care-of Address: GCoA)としてHAに登録す る。GFAがゲートウェイルータとして動作するため、GCoAはグローバルアドレスとなる。
(7) MNは、外部ネットワークに移動した際に、Mobile IPの登録処理に加えて、SIPプロ
キシー機能を持つGFAおよびHAに対してSIP登録処理(REGISTER)を実行する。本登録 処理の結果として、HAは外部ネットワークに存在するMNのGCoAおよびSIP URIの登 録エントリを保持する。
(8) あるMNが、そのMNとは別のホームネットワークに所属する他のMNや、グローバ ルIPネットワーク上の通信相手ノード(CN)と通信を行う場合は、通信相手ノードのネット ワークに応じて、MNから送信されるパケットの送信元アドレスに相当する MNのプライ ベートアドレスを一時的に割り当てられたグローバルアドレスまたは別のプライベートア ドレスに変換する。提案手法においては、GFAがその外部ネットワークに存在するMNの ための一時アドレスのプールを持つ。GFAは、MNのセッションが確立される際に、一時 アドレスのプールから1つを選択し、MNに割り当てる。GFAは、外部ネットワークにお けるMNのモビリティ管理機能を提供しており、外部ネットワークにおけるゲートウェイ ルータとしての役割を持つため、そのネットワークから外部に送信されるMN 発のパケッ ト、および外部からMN 宛のパケットをすべて把握することができる。このため、一時ア ドレスの割り当て機能およびNAT機能をGFAに持たせることとした。