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1. 総説

FamFG

102

条は,離婚事件の附帯処分ではなく,独立に年金分割請求がなされた場合の国際

裁判管轄について定めている。従前は,年金分割事件が離婚の必要的附帯処分とされていたため,

独立の管轄原因を定める規定が存在せず,欠缺補充について見解が分かれていた。連邦通常裁判所 は,①婚姻事件の附帯処分に関する規定を類推適用するとしていた(ZPO旧第606a条第1項第1号:

一方配偶者の国籍も管轄原因とされていた291。それに対して,学説上は,②附帯処分としての請求で はないこと理由に,非訟事件に関する規定(FGG旧第45)を類推適用する説,あるいは,③年金 分割事件が一方では夫婦財産事件に,他方では扶養事件に類似する二重の性質をもつことを理由に,

ZPO

12

条,第

13

条,第

23

条,そして第

23a

条による説があった292

FamFG

102

条によれば,ドイツ裁判所は,

(a)請求者又は相手方がドイツに常居所をもつとき

1),

(b)内国における年金期待権について判断するとき(

2),あるいは(c)ドイツ裁判所が 離婚判決を下したとき(3)に管轄をもつ。立法者は,

FamFG

102

条を制定するに当たって,

婚姻事件に関する管轄ルールの準用を否定した。特に一方配偶者の国籍だけを管轄原因とするのは,

過剰管轄につながるとして否定し293,基本的には③説の立場に従っている。ただし,外国における 年金期待権の分割は離婚とは独立に判断されることが多いが,外国裁判所が年金分割請求を認める か否かは分からないため,

FamFG

102

条第

3

号は,ドイツ裁判所が離婚判決を下した場合には,

事後的に年金分割事件についても管轄をもつと定めている。それによって,「管轄の継続」原則によ ってはドイツ裁判所の管轄が認められないケースも(EGBGB17条第3項第2号に定める離婚判決後 の年金分割請求など294),

FamFG

102

条第

3

号によって救済される295

コンヴィーニエンスの法理を採用し,外国におけるドイツ養子縁組決定の承認可能性が否定される場合には,

管轄権を行使すべきではないという見解もある。Rauscher は,特に第三世界の国籍をもつ子がドイツに常居所 をもっていない場合には,ドイツ裁判所は管轄権を行使すべきではないとし,フォーラム・ノン・コンヴィー ニエンスの法理ではなく,権利保護の必要性に鑑みて管轄権の有無を判断すべきことを根拠としている。

290 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 101 FamFG, Rn. 22.

291 BGHZ 75, 241; BGH FamRZ 1993, 176.

292 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 1.

293 Zöller/Geimer, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 1.

294 EGBGB17条第3項第1文によれば,年金分割請求の準拠法は,原則として離婚裁判係属時の婚姻の身分

的効力の準拠法による。年金分割請求は,それによってドイツ法が指定され,しかも夫婦双方の離婚裁判係属 時の本国法の一つが年金分割請求制度をもっている場合にのみ遂行される。同第2文によれば,それ以外の場

2. 国際裁判管轄ルール (1) 適用範囲 (a) 事項的適用範囲

FamFG

102

条の事項的適用範囲は,同第

217

条に定める「年金分割に関する手続を対象とす

る事件」である。夫婦間のみならず,登録パートナー間の年金分割請求にも適用される296。 附帯処分として年金分割が請求される場合には,FamFG第

98

条第

2

項に従ってドイツ裁判所 の管轄が認められる。この管轄原因は,年金分割事件を附帯処分として手続が開始され,後に手続 が分離された場合にも,管轄の継続を認める。それゆえ,

FamFG

102

条は,独立の年金分割事件,

特に①外国で離婚がなされた後に年金分割請求がなされる場合,②事後的に

EGBGB

17

条第

3

項 に基づいて年金分割請求がなされる場合,③年金分割法第

19

条~第

26

条に基づく年金分割請求,

④従前の離婚事件において留保されていた債務法上の年金分割請求,そして⑤年金分割法第

48

条以 下の移行規定に基づく手続について適用される297

(b) EU法及び条約

EU

法上,年金分割請求について直接定めている規範はまだない。ブリュッセル

IIbis

規則は,

夫婦財産制に関する事項を適用対象外としている(1条第1a)。しかし,将来の夫婦財産制に 関する

EU

規則及び登録パートナーシップ財産制に関する

EU

規則においては,年金分割請求をそ の適用対象として明記すべきであると指摘されている。現行法上は,ブリュッセル

IIbis

規則によっ て離婚事件の国際裁判管轄が認められる場合には,FamFG第

98

条第

2

項に基づいて附帯処分とし ての年金分割請求にも管轄が拡張される(上述III-A-3参照)。

(2) 管轄原因 (a) 常居所

FamFG

102

条第

1

号によれば,申立人又は相手方がドイツに常居所をもつ場合には,国際裁

判管轄が認められる(常居所概念については,上述III-A参照)。この国際裁判管轄は,外国において発 生した年金期待権であって,附帯処分としての年金分割請求権に算入すべきであった部分にも及ぶ。

つまり,本号の国際裁判管轄の範囲は,

EGBGB

17

条第

3

項第

1

文の規定(職権による年金分割) 又は第

2

文の規定(申立てによる年金分割)と平仄を合わせている298

合には,年金分割は,一方配偶者の申立てにより,他方配偶者が婚姻期間中に内国において年金期待権を取得 したとき(第2文第1号),あるいは婚姻の身分的効力が婚姻期間中の一部において,年金分割を認める外国法 に服しているときであって(同第2号),その実行が双方の経済関係に鑑みてドイツ以外の地で過ごした期間を 算入することが衡平の原則に反しないとき,ドイツ法に基づいて認められる。

295 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 1 et seq.

296 Zöller/Geimer, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 3.

297 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 4.

298 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 7.

(b) ドイツにおける年金期待権

FamFG

102

条第

2

号によれば,ドイツ裁判所は,内国における年金期待権(

Inländische Anrechte

) について判断すべき場合に管轄をもつ。これは,EGBGB第

17

条第

3

項第

2

文第

1

号にいう「内国 における年金期待権」(Inländische Versorgungsanwartschaft)(申立てによる年金分割請求)に相当する299

問題は,

FamFG

102

条第

2

号に基づく管轄が,①専ら内国における年金期待権を争う場合に

だけ妥当するのか,あるいは,②内国における年金期待権に加えて,外国における年金期待権も分 割請求の対象となっている場合にも妥当するのかという点である。これは,EGBGB第

17

条第

3

項 第

2

文第

1

号の申立てによる年金分割請求が,内国における年金期待権だけを対象とするのか,あ るいは外国における年金期待権も包括するのかという議論とも共通する。もっとも,管轄が問題と なるのは,

EGBGB

17

条第

3

項第

2

文の場合に限られない。むしろ,ドイツには

FamFG

102

条第

2

号に基づく管轄しか存しないが,

EGBGB

17

条第

3

項第

1

文に基づいて,職権で包括的な 年金分割が行われるべき場合もある。この場合に,管轄の欠缺が生じないようにするためには,

FamFG

102

条第

2

号に基づく管轄を内国における年金期待権に限定すべきではない。むしろ,一

旦ドイツの管轄が肯定されれば,その判断の対象となる事項は,専ら

EGBGB

17

条第

3

項によっ て決定されるという300

(c) ドイツ裁判所による離婚

FamFG

102

条第

3

号によれば,ドイツ裁判所が離婚判決を下した場合には,独立の年金分割

請求についても国際裁判管轄をもつ。規定の目的に照らせば,特に対象となるのは,外国における 年金期待権が離婚の附帯処分としての年金分割において参入されていなかったため,事後的に( 常は債務法上の)年金分割請求がなされる場合である。もっとも,それに限定されず,ドイツ裁判所 が離婚判決を下した場合には,第

3

号に定める管轄原因が,事後的に

EGBGB

17

条第

3

項に基づ いて年金分割が行われるあらゆる場合に妥当する。なお,年金分割請求が離婚事件の附帯処分とし て係属しており,事後的に分離されたに過ぎない場合には,

FamFG

98

条第

2

項の規定に従う301

(d) 限定列挙及び専属管轄の否定

FamFG

102

条は,附帯処分ではない独立の年金分割請求事件について,管轄原因を限定列挙

しており,それ以外の管轄原因は認められない。この規定は,従前の判例と異なって,一方配偶者 のドイツ国籍だけに基づく管轄(FamFG98条第1項第1号参照)を否定することを主な目的として いた。それゆえ,ドイツ法上年金分割請求権が認められること,あるいは

EGBGB

17

条第

3

項第

2

文第

2

号(婚姻期間中の一時期,婚姻の身分的効力の準拠法がドイツ法であったこと)によって申立てに

299 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 9.

300 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 10.

301 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 102 FamFG, Rn. 11.

基づく年金分割請求権が認められることをもって,直ちに国際裁判管轄が肯定されるわけではない。

さらに,

ZPO

上の一般的な管轄ルールの援用,特に合意管轄も排除されている302

FamFG

102

条の管轄は専属的ではなく,外国裁判所の管轄と競合する(FamFG106条参照)。

(e) 管轄の継続

訴訟係属後に管轄原因事実が失われた場合に,管轄が継続するか否かは,その性質上,

FamFG

102

条第

1

号についてしか問題とならない。訴訟係属時にドイツに常居所を有していた一方配偶 者が,その後口頭弁論終結前に外国に常居所を移した場合には,ZPO第

261

条第

3

項第

2

号に基づ いてドイツ裁判所の管轄は係属する。年金分割請求は,財産法的性格が強いため,FamFG第

99

条 や第

101

条のような権利保護の要請は働かないと解されている303