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H. 世話事件及び保護収容事件,成年補佐事件

I. その他の家事事件及び非訟事件

1. 総説

FamFG

98

条~第

104

条において明文規定がない事項の国際裁判管轄は,

FamFG

105

条に 従い,土地管轄に関する規定を準用することで決定される。

FamFG

105

条の規定は,該当する土 地管轄ルールの「二重機能性」(Doppelfunktionsgrundsatz)を示すものである329

特に従来は,非訟事件としての相続及び遺産分割事件について,いわゆる「並行原則」(準拠法 と国際裁判管轄の並行を指す)が妥当しており,ドイツ法が相続準拠法となる場合にのみ国際裁判管轄 が認められていたが330

FamFG

105

条によって,新たに相続及び遺産分割事件についても土地管 轄に関する規定が準用されるに至っている331

2. FamFG98~第104条以外の家事事件の国際裁判管轄ルール

(1) 婚姻住居及び家財事件

婚姻住居及び家財事件の国際裁判管轄を定める

EU

法又は条約法上の規範は存在しない。これ らの事件は,

EU

法に固有の解釈としては夫婦財産制に分類され,ブリュッセル

I

規則第

1

条第

2

a

号及び

2007

年ルガノ条約第

1

条第

2

a

号によって適用除外されている332

FamFG

200

条に定める手続(BGB1361a条〔別居後の家財の分割〕,第1361b条〔別居後の婚姻

住居〕,第1568a条〔離婚後の婚姻住居の扱い〕,第1568b条〔離婚後の家財の分割〕)の国際裁判管轄につい

ては,

FamFG

201

条を準用する。それによれば,ドイツ裁判所は,①ドイツにおいて婚姻事件(

婚の場合には,FamFG98条第2項に基づく管轄が認められる)が係属している場合(FamFG201条第 1号準用),②夫婦共通の住居がドイツにある場合(同第2号準用),あるいは③夫婦の一方がドイツ に常居所をもっている場合(同第3号及び第4号準用)に管轄をもつ333

(2) 暴力からの保護に関する事件

夫婦間又は登録パートナーシップ間の暴力事件は,婚姻住居及び家財事件に近い事項であるた め,同様にブリュッセル

I

規則及びルガノ条約の適用は除外される。それに対して,婚姻関係又は 登録パートナーシップ関係にない者の間の暴力については,ブリュッセル

I

規則第

5

条第

3

号(2007 年ルガノ条約第5条第3)に定める不法行為の一つであるため,同規則又はルガノ条約によって国 際裁判管轄が決定される。その場合には,被告の住所地(ブリュッセルI規則第2/ルガノ条約第2) 又は不法行為地(ブリュッセルI規則第5条第3/ルガノ条約第5条第3)が管轄原因となる。ただし,

329 Zöller/Geimer, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 1.

330ただし,外国法が準拠法となる場合にも,内国に所在する財産については相続証書が発行されてきた(BGB 2369条)

331 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 1 et seq.

332 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 5.

333 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 6.

GewSchG

ドイツ暴力からの保護に関する法律334

2

条に定める住居の専権的利用に関する措置につ いては,ブリュッセル

I

規則第

22

条第

1

/2007

年ルガノ条約第

22

条第

1

号に定める不動産に関す る物権的権利をめぐる争いとして,不動産所在地の専属管轄が認められる335

被告が

EU

構成国又はルガノ条約の締約国以外の国に住所をもつ場合には,

FamFG

211

条の 準用によって国際裁判管轄が導かれる。それによれば,①当該行為がドイツにおいて行われたとき

(FamFG211条第1号準用),②当事者の共通住居がドイツにあるとき(同第2号準用),あるいは③

相手方がドイツに常居所をもつとき(同第3号準用)に国際裁判管轄が認められる。①の行為地は,

ブリュッセル

I

規則第

5

条第

3

号及び

ZPO

32

条の不法行為地と同じ概念として理解され,行動 地と結果発生地の双方が含まれる。それゆえ,加害者が外国から通信手段を用いてドイツにいる被 害者をストーキングした場合にも(GewSchG1条第2項第2b),またドイツにおいて暴力を振る う旨の脅しだけでも(GewSchG1条第2項第1文第1),ドイツ裁判所の管轄が肯定される336

(3) 扶養事件

扶養事件の国際裁判管轄については,

EU

法上,扶養義務規則によって管轄が決定される。

EU

扶養義務規則は,場所的適用範囲を被告が構成国に住所をもつ場合に限定しておらず,一般的な適 用を予定している。そして,

EU

構成国又はルガノ条約締約国のいずれも管轄をもたない場合には,

補充的管轄として夫婦の共通本国の管轄を認めており(6

Auffangzuständigkeit

),国内法上の 管轄ルールの適用を排除している。それゆえ,扶養義務規則又はルガノ条約の事項的適用範囲に入 る扶養事件については,FamFG第

105

条及び第

231

条第

1

項は適用されない(上述I-A参照)。しか も,扶養義務規則は,家族間の扶養全般を対象とするため,

FamFG

269

条第

1

項第

9

号に定める 登録パートナーシップに基づく扶養義務もその事項的適用範囲に含まれる337

扶養義務規則によれば,第一に,扶養義務者又は扶養権利者がドイツに常居所をもつ場合に,

ドイツ裁判所の管轄が認められる(扶養義務規則第3ab)。この規定は,同時に土地管轄も定め ている。また,身分関係事件又は親責任事件について国際裁判管轄をもつ裁判所は,附帯処分とし ての扶養請求についても管轄をもつ(同条cd)。当事者には,一定範囲で管轄合意が認められ( 4),応訴管轄も認められる(同第5)。扶養義務規則第

3

条~第

5

条の規定によっても,EU構 成国又はルガノ条約締約国のいずれも管轄をもたない場合には,補充的に夫婦の共通本国の管轄が 認められる(同第6)。

334 Gesetz zum zivilrechtlichen Schutz vor Gewalttaten und Nachstellungen (Gewaltschutzgesetz - GewSchG) vom 11.12.2001, BGBl. I S. 3513.

335 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 7 et seq.

336 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 9.

337 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 11.

(4) 夫婦財産制・登録パートナーシップ財産制

夫婦財産制及び登録パートナーシップ財産制については,今後

EU

規則が制定され,そこで国 際裁判管轄についても規律される予定である(詳細は,個別項目の解説にゆずる)。これらの

EU

規則 が制定・施行されるまでは,離婚事件等の附帯処分ではなく,独立の裁判手続としての夫婦財産事 件については,

FamFG

105

条に基づいて第

262

条第

2

項を準用することで国際裁判管轄が導かれ る。

FamFG

262

条第

2

項は,

ZPO

の規定を準用しているため,具体的には,①請求の相手方の常 居所地(ZPO12・第13条準用),あるいは②十分な内国牽連性がある場合には財産所在地(ZPO 23条準用)がドイツにある場合に,国際裁判管轄が肯定される338

なお,夫婦財産登記簿への登記,特に

EGBGB

16

条に基づく外国法上の契約又は法定夫婦財 産制の登記については,夫婦の一方がドイツに常居所をもつかぎり,ドイツ裁判所の管轄が認めら

れる(FamFG105条による第377条第3項の準用)。夫婦いずれもドイツに常居所をもたないが,一

方配偶者がドイツにおいて事業を行う場合,第三者に対抗するためにはドイツでの登記が必要とな

る(EGBGB16条第1)。その場合の国際裁判管轄は,

EGHGB

339

4

条第

1

項から導かれ340,主

たる事業所所在地を所轄する夫婦財産登記簿に登記するだけで,土地管轄が発生する341

登録パートナーシップ財産事件(

FamFG

269

条第

1

項第

10

号)の国際裁判管轄については,

FamFG

105

条に基づいて土地管轄のルールが準用される。そして,

FamFG

270

条第

1

項第

2

文によれば,

FamFG

111

条第

9

号の夫婦財産事件に準じて扱われるため,上述の夫婦財産事件の 管轄ルールが登録パートナーシップにも妥当することになる。

(5) 保護収容措置

FamFG

99

条第

1

項及び第

104

条第

3

項が対象としていない,州法に基づく精神病者の保護 収容措置については,未成年者の場合にはブリュッセル

IIbis

規則及び

1996

年ハーグ子の保護条約 の適用が,成年者の場合には

2000

年ハーグ成年者保護条約の適用がありうる。ドイツ法上は,公法 上の保護措置であっても,それが

EU

法上又は条約上の概念としては私法上の保護措置に当たるか ぎり,これらの規範が適用される342

本人が

EU

構成国又はハーグ条約締約国に常居所をもたない場合には,

FamFG

105

条及び第

152

条(未成年者)又は第

313

条第

3

項(成年者)に従って国際裁判管轄が決定される。それによれ ば,未成年者については,本人がドイツに常居所をもつとき又はドイツにおいて保護する必要があ

338 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 15 et seq.

339 Einführungsgesetz zum Handelsgesetzbuch (HGBEG) vom 10.05.1897, zuletzt geändert durch das Gesetz vom 22.12.2011 (BGBl. I S. 3044).

340 EGHGB4条第1項は,Die nach dem bürgerlichen Recht mit einer Eintragung in das Güterrechtsregister verbunde- nen Wirkungen treten, sofern ein Ehegatte Kaufmann ist und seine Handelsniederlassung sich nicht in dem Bezirk eines für den gewöhnlichen Aufenthalt auch nur eines der Ehegatten zuständigen Registergerichts befindet, in Ansehung der auf den Betrieb des Handelsgewerbes sich beziehenden Rechtsverhältnisse nur ein, wenn die Eintragung auch in das Güterrechts- register des für den Ort der Handelsniederlassung zuständigen Gerichts erfolgt ist. Bei mehreren Niederlassungen genügt die Eintragung in das Register des Ortes der Hauptniederlassung.」と規定している。

341 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 43.

342肯定説として,MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 17 et seq.

るときに(FamFG152条準用),成年者については,ドイツにおいて保護収容措置をとる必要があ るときに(FamFG313条第3項準用),国際裁判管轄が認められる343

3. 相続及び遺産分割事件の国際裁判管轄ルール (1) EU法及び条約

EU

においては,

2009

年に相続規則提案が出されており,

EU

規則として相続規則を制定するた めの準備作業が進んでいる。条約においては,領事条約の一部に相続の国際裁判管轄に関する規定 がある(上述参照)。

(2) 土地管轄ルールの準用 (a) 並行原則の解消

従来,非訟事件としての相続及び遺産分割事件の国際裁判管轄は,判例法理によって「並行原 則」に従っていた。そして,

EGBGB

25

条第

1

項によってドイツ法が準拠法となる場合にだけ,

ドイツ裁判所の管轄が認められるとされていた。しかし,

FamFG

の立法者は,並行原則を放棄し,

土地管轄に関する

FamFG

343

条及び第

344

条の規定を準用することで国際裁判管轄ルールを導く こととした(FamFG105344。その根拠として,土地管轄と国際裁判管轄の平仄を図ることがで きること,並行原則が必ずしも国際判決調和に資するとはいえないこと,そして相続・遺産分割事 件についてだけ並行原則を認めるのは体系的な調和を欠くこと等が挙げられる345

(b) 管轄原因 (aa) 相続

FamFG

105

条によって同第

343

条を準用することにより,ドイツ相続裁判所は,次の場合に

国際裁判管轄をもつ。

①被相続人が最後の「住所」をドイツに有していたときには,国際裁判管轄が認められる(FamFG 343条第1)。相続事件については,法文上の「住所」概念が常居所と読み替えられず,端的に 住所が管轄原因とされるため,注意が必要である。住所概念は,相続準拠法とはかかわりなく,

BGB

7

条以下の規定に従って決定される346

②ドイツ相続裁判所は,被相続人がドイツ人であったときにも管轄をもつ(FamFG343条第2 )。この原則は,被相続人が重国籍者であっても,ドイツ国籍の実効性を問うことなく常に認めら れる。被相続人が外国に住所をもっていた場合には,ベルリン・シェーネベルク相続裁判所が土地 管轄をもつ347

343 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 19.

344 Zöller/Geimer, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 4.

345 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 34 et seq.; Zöller/Geimer, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 4.

346 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 25.

347 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 105 FamFG, Rn. 26.