1. 外国裁判所の裁判
FamFG
第108
条第1
項及び第109
条による承認の対象となるのは,外国裁判所の裁判である。判決国において裁判所ではなく,行政機関や国家元首,公証人協会等が下した判断であっても,機 能的にみて,当事者に対する手続的保障に基づく公権的な判断に該当するかぎりは,ドイツにおい
390 Zöller/Geimer, op.cit., § 107 FamFG, Rn. 18.
391 FamFG第108条第2項第1文が非財産事件に限定しているのを批判するものとして,Zöller/Geimer, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 3.
392 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 5 et seq. 二国間条約については,Rn. 6aを参照。
て外国裁判として承認される。宗教裁判所による判断も,当該国において民事上の効力をもつかぎ り,外国裁判として承認される393。それに対して,法律行為によって創設される身分関係の成立及 び効力は,ドイツ国際私法が指定する準拠法によって判断される。たとえば,認知及び認知への同 意は,
EGBGB
第19条及び第23条が指定する準拠法により,
契約型養子縁組及びその同意は,EGBGB
第22
条及び第23
条が指定する準拠法によって判断される394。外国裁判としての承認の対象になるのは,本案判決又は決定だけであり,具体的には,訴訟物 に関する終局的裁判,そして人の身分関係を形成する裁判を指す。相続証書が訴訟法上の効力をも たず,権利関係を擬制する実体法上の効力(公信の原則)しかもたないかぎり395,承認の対象となら ない396。それに対して,訴訟判決,訴訟の開始に関する決定,裁判所による事実行為(たとえば相続 法上の宣言の受容),身分登録簿等への登録は承認の対象にならない。また,第三国の裁判の承認を決 定する外国裁判も,ドイツにおいて承認されえない(二重の有効宣言〔Doppel-Exequatur〕の禁止)。
承認の対象となるのは,判決国において効力をもつ裁判である。
ZPO
第328
条の解釈としては,法的安定性を確保するため,外国判決の確定性,すなわち通常の不服申し立ての方法では覆らない 状態になっていることが要件とされる397。ただし,非訟裁判に関するかぎり,形式的及び実質的既 判力は要件とされない。
外国保全処分も,承認の対象となる。保全処分が略式手続によっていたり,本案判決が下され るまでの限定された効力をもたない場合にも,承認自体の妨げとはならない398。
2. 承認要件
(1) 総説
FamFG
第109
条は,外国裁判が承認されることを出発点とし,例外的に承認を拒否すべき事由を列挙する形をとっている。この規定は,
ZPO
第328
条第1
項第1~第 4
号及び旧FGG
第16a
条を 引き継いでいる。また,FamFG
第109
条第5
項においては,一般に認められてきた実質的再審査の 禁止原則が明記されるに至っている。(2) 承認拒否事由
FamFG
第109
条第1
項によれば,外国裁判の承認は,以下の場合に拒否される。すなわち,(a)
外国裁判所がドイツ法によれば管轄をもっていなかったとき(第1号),
(b)
一方当事者が本案につい て争っておらず,適式又は適時の送達の欠如を援用していること(第2号),(c)
外国裁判がドイツの 先行裁判又はドイツで承認される第三国の先行裁判と矛盾すること(第3号),(d)
外国裁判の承認が393 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 8 et seq.
394 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 11.
395ドイツ法について,Rainer Frank/Tobias Helms, Erbrecht, 5. Aufl., München 2010, S. 212 et seq.
396 Zöller/Geimer, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 10.
397 家事事件の外国裁判の承認要件に関する規定がZPO第328条からFamFG第109条に移行した後は,外国裁 判の確定性を要件としなくてよいとする説もある。MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 14.
398 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 108 FamFG, Rn. 15.
公序に反すること(第4号)である。また,
(e)
一定の家事事件については,相互の保証がない場合 にも承認が拒否される(FamFG第109条第4項)。FamFG
第109
条に定める承認要件は,FamFG
第108
条によって外国裁判が自動承認される場合のみならず,第107
条によって婚姻事件に関する外国裁 判が州法務局の承認確認手続によって承認される場合にも妥当する。(a) 間接管轄
FamFG
第109
条第1
項第1
号が定める間接管轄の要件は,原則として,ドイツ法上の管轄ルールに従って判断される(いわゆる「鏡像理論」)399。ただし,①婚姻事件に関する外国裁判は,一方配 偶者がその判決国において常居所を有していた場合には,FamFG第
98
条第1
項第4
号の規定にか かわらず承認される(FamFG第109条第2項第1文)。また,②婚姻事件に関する外国裁判が夫婦双方 の本国において承認される場合には,第98
条の規定にかかわらず承認される(同第2文)。同様に,③登録パートナーシップ事件に関する外国裁判は,パートナーシップの登録国が当該裁判を承認す る場合には,第
103
条の規定にかかわらず承認される(同第109条第3項)。これらの規定は,婚姻事 件又は登録パートナーシップ事件の裁判に関する承認要件を緩和するものであり,特に②と③は,離婚事件又は登録パートナーシップ事件の準拠法所属国(EGBGB第17条第1項第1文及び第14条第1
項第1号;EGBGB第17b条第1項第1文)との判決調和の達成を優先するものである400。
なお,外国裁判所が当該国において妥当している準則によって国際裁判管轄をもっていたか否 かは,審査されない。また,外国において裁判を申立てた者は,承認段階において外国裁判所の無 管轄を主張できない401。
(b)適式又は適時の送達
FamFG
第109
条第1
項第2
号は,当事者の防禦権を保障するための規定であり,一方当事者が 本案について争っておらず,適式又は適時の送達がなかったことを援用する場合には,外国裁判の 承認を否定する。ZPO
第328
条第1
項第2
号が被告の防禦権を保障しているのに対して,FamFG
第109
条第1
項第2
号は,被告又は相手方に限定せず,いずれの当事者も対象とする。FamFG第109
条は,ブリュッセルIIbis
規則第23
条b
号とは異なって,親子事件において子の意見が聴取されな かったことを承認拒否事由としていないが,FamFG
第109
条第1
項第4
号の公序に反する可能性は ある402。399 少数説として,EU法又は条約上の承認ルールが妥当しない(EU構成国又は条約締約国以外の)第三国が下 した裁判について,FamFG第109条に基づいて承認の可否を判断すべき場合であっても,FamFG第98条以下の 管轄ルールだけではなく,EU法又は条約上の管轄ルールを援用できるとする見解もある。たとえば,米国内に 常居所をもつ夫婦について,米国の当該州の裁判所が離婚決定を下した場合,間接管轄は,ブリュッセル IIbis 規則第3条第1項a号に従って肯定されるという。MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 12 (Fn. 20).
400 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 4 et seq.; Zöller/Geimer, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 7 et seq.
401 Bassange/Roth/Althammer, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 2.
402 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 23 et seq.
FamFG
第109
条第1
項第2
号の承認拒否事由は,当事者による主張があって初めて審査され,職権では審査されない。適式の送達がなくても,当事者が防禦するのに足りるだけ適時に送達がな されていた場合には,承認されうる。送達の適式性は,判決国法によって判断されるのに対して,
送達の適時性は,ドイツ法上の応訴期間を勘案したうえで,客観的に判決国裁判所で防禦するのに 十分な時間的余裕があったか否かを基準とする403。
(c)先行裁判との矛盾
FamFG
第109
条第1
項第3
号によれば,外国裁判は,ドイツですでに下されている先行裁判又はドイツでの承認要件を具備した第三国の先行裁判と矛盾する場合には,承認されない。双方が同 一事件である必要はなく,重要な点で一致していれば,要件が満たされる404。
(d)公序
FamFG
第109
条第1
項第4
号は,外国裁判がドイツの実体的公序又は手続的公序に反する場合には,承認が拒否されるとしている。これは,基本的に
EGBGB
第6
条に定める公序則と一致する。基準時点は,外国裁判の承認の可否について判断する時点である。外国裁判の反公序性の判断にお いては,基本権侵害の有無(特に裁判を受ける権利,家族生活の保障,子の福祉など)も審査される。
(e) 相互の保証
家事事件の外国裁判の承認については,相互の保証が要件とされないのが原則である。ただし,
FamFG
第109
条第4
項によれば,争訟性の家事事件(第1号)(FamFG第121条に規定する事項)405及 び登録パートナーシップ事件(第1号に該当する争訟性の事件のほか,第2~第5号)については,相互 の保証が要求される。後者に該当するのは,争訟性のある事件として(FamFG第109条第4項第1号),①扶養事件,②登録パートナーシップ財産制事件,③その他の登録パートナーシップ事件が挙げら れる。また,それ以外にも,④登録パートナーシップ上の扶助及び協力義務(FamFG第109条第4項 第2号),⑤住居及び家財(同第3号),⑥法定の後得財産共有制の清算において,支払猶予又は対象 財産の引渡しを命ずる家庭裁判所の決定(第4号),⑤選択財産制としての共有制において,特定の 法律行為に対する他方パートナーの同意等に代わる家庭裁判所の決定(第5 号)も対象となる。婚 姻事件については相互の保証を要件とせず,登録パートナーシップ事件についてだけそれを要件と しているのは,同性カップルを法的に保護する国がまだ少なく,その形態も各国ごとに大きく異な ることにあるという406。
403 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 26 et seq. 相手方が判決国において上訴しなかったことは,承認 拒否の妨げにはならない。
404 Bassange/Roth/Althammer, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 4.
405 FamFG第121条に規定する事項であって,FamFG施行前にはZPOにおいて規定されていた事項を指す。
406 MünchKomm/Rauscher, op.cit., § 109 FamFG, Rn. 6, 55 et seq.