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第 4 章  plant : 葉群がざわめくインタラクティブアート作品

4.6 展示による評価と考察

図 4-13 plant

の形状記憶合金アクチュエータの電圧制御

タ同士の距離の関係から、電圧を長い時間加えて曲がりすぎると葉同士が重なっ て外れなくなるためである。plant では葉の動きの大きさよりも、葉の密集した デザインを優先させている。その結果、応答時間は Himawari の7秒から plant では5秒になり、2 秒早くなっている。

 plant は、Ars Electronica Festival 2010(オーストリア・リンツ)へ招待され、

Ars Electronica Festival の開催期間中とその後 Ars Electronica Center で5ヶ 月間展示を行うことができた。また、国内において、男女 35 名に体験してもら い感想を得た。

 Ars Electronica Festival 2010 では、国際的な展示会場において老若男女の 多くの方に直接説明を行い、感想を聞きながら展示を行うことができた。感想に ついては、「動きがかわいい」「魅力的な作品だ」「ロボットで植物を造るという 考え方が面白い」「スポットライトで浮かび上がっている葉群がとても印象的だ」

といったものがあり、高い関心を持って作品を体験している方が多かった。

 また、plant を新しいロボットの形として捉える人も多く、近年発表されてい るヒューマノイドと比較して、「同じロボット技術を利用しても、人間に近づけ すぎるために不気味な表現が生まれる一方で、plant のようにとても愛らしい表 現を生み出すことができることに驚いた」という感想があり、どのようなテクノ ロジーを使うかではなく、どのように魅せる(演出する)かが重要であると感じた。

図 4-14 Ars Electronica Festival 2010

での展示風景

 国内における男女 35 名(男 25 名、女 10 名、共に成人)の体験では、次のよ うな感想を得た。

 葉群がざわめく動きの表現に対しては、「風がないのに風に揺れているように 見える」「葉のかすかな動きがとても魅力的だ」「ゆっくりとした動きに心地よさ を感じる」「葉が揺れる様子がとても魅力的である」「葉と茎のデザインが面白い」

の感想があった。これらの感想から、plant の目標とした葉群のざわめきを効果 的に表現できていたと言える。また、SMD の特徴である、直立して曲がるアクチュ エータの仕様も効果的であることが示された。

 植物をモチーフにした作品性に対しては、「生命感を感じる」「葉群とのコミュ ニケーションには癒しの効果がある」「音の変化と暗い中で浮かび上がる空間が とても幻想的で、おとぎの国を連想させる」の感想があり、アート作品としての 完成度の高さも評価された。

 インタラクティブ性に関しては、「葉の動きの反応がもう少しはやい方が、わ かりやすい」との感想があり、アクチュエータの性能向上の必要性を感じた。一 方で、「この緩慢な動きがとてもよい」との意見もあり、効果的なアクチュエー タの速度を実験によって求める必要があると感じた。

 さらに、 「触りたくなる」という、作品との接触を求める感想も多くあった。

plant は赤外線カメラでセンシングしているため、触っても触らなくても稼動す るが、アクチュエータ部分が繊細な造りになっているため、鑑賞者には plant を 触らせずに体験させていた。しかしながら、より自然な体験を行うためには、ア クチュエータに触知覚センサーを付加して、葉群への接触が可能なインタラク ションを実現する必要があると感じた。

4.7 まとめ

 本章では、SMD の応用事例として、葉群のざわめきを表現したインタラクティ ブアート作品 plant について述べた。

 葉をデザインした形状記憶合金アクチュエータ、電圧制御回路、プログラムを 含む制御システムを開発して plant を制作した。plant では、葉群れのざわめき の動きに加えて音も利用することで、幻想的な展示空間の演出を行った。

 展示による鑑賞者の評価から、SMD による葉群のざわめきが、インタラクティ ブアート作品として効果的に表現されていたと言える。また、ヒューマノイドと の比較による感想から、単にモチーフを模倣するのではなく、どのように演出す るかが重要であると感じた。

 アクチュエータの駆動速度が遅いことによるインタラクション性の低さに関し ては、アクチュエータの構造、駆動に用いた形状記憶合金素材の見直しが必要で ある。 一方、葉群の動きの緩慢さが良いという評価もあり、心地よいアクチュエー タの反応速度を求めるためには、速度の違うプロトタイプによる評価実験が必要 だと考える。

 さらに、SMD に触ることによるインタラクティブ性を付加できれば、鑑賞者 にとって、よりインパクトのある体験が可能になると感じた。

 本章では、SMD の応用事例であるインタラクティブアート作品「Tentacles」(映 像参照 URL [V3])について述べる。Tentacles は、55 本の触手にあたる形状記 憶合金アクチュエータを用いて、触手の蠢きを表現するアート作品である。この Tentacles の制作、展示を通して、SMD の「触手の蠢き」の表現の可能性につ いて考察する。

 イソギンチャクは、日本語では名前の通り「磯の巾着」を意味するものだが、

英語では「Sea Anemone=海に咲く花」という魅力的な名前で呼ばれている[51]。

19 世紀中頃のヨーロッパではすでに鑑賞目的の海洋生物として飼育され、美し いイソギンチャクを飼うことが、社交界のステータスと言われるほどであった [52]。また、映画『ファインディング・ニモ』(2003 年)では、カクレクマノミ と共生するイソギンチャクが登場して日本でも人気が高くなっており、カクレク