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4 研究推進に必要な技術開発・環境整備

4.1 観測技術開発

4.1.1 太陽地球系科学分野の機器開発

太陽地球系科学分野では、人工衛星、観測ロケット、観測気球といった飛翔体を用いる 観測と、地上に機器を設置する観測を相補的に駆使して、現象の発見・解明を図る。これ らの観測機器について、それぞれ、将来に向けた開発項目を以下に述べる。

4.1.1 (1) 飛翔体搭載機器および新プラットフォームの開発 以下に、開発項目と2章で述べたサイエンスゴールの関連を示す。

カテゴリー 機器開発項目 対応するサイエンスゴール

(2章の各節との対応)

プラズマ/

高エネルギ ー荷電粒子/

中性粒子

熱的電子の温度およびエネルギー 分布の高時間分解能観測

2.1.1, 2.1.2, 2.2.1, 2.2.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.3.2, 2.4.2,

超熱的エネルギー帯におけるイオ ン3次元速度分布計測

2.1.1, 2.1.2, 2.2.1, 2.2.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.3.2, 2.4.2,

超低エネルギー粒子計測のための 衛星電位制御

2.1.1, 2.1.2, 2.2.1, 2.2.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.3.2, 2.4.2,

超高層大気における中性粒子計測 2.1.1, 2.1.2, 2.2.1, 2.2.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.3.2, 2.4.2

高時間分解能プラズマ計測 2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1 惑星圏での低エネルギーイオン同

位体計測

2.3.1, 2.3.2, 2.3.5

非熱的中性粒子観測 2.1.1, 2.1.2, 2.1.4, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1 高感度高エネルギー荷電粒子計測

のための検出器・読み出し回路開発

2.1.1, 2.1.2, 2.1.4, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1

電磁場 飛翔体搭載電界アンテナの開発 2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1 小型プラズマ波動観測器の展望 2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1 飛翔体搭載直流/低周波磁力計の開 2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1

99 発

飛翔体搭載交流磁界センサの開発 2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1 高い電磁感受耐性を備えたソフト

ウェア波動観測器

2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1

光学・X線 惑星大気・プラズマ観測用軟X線観 測機器の開発

2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5

近接離角にある高強度光源からの 迷光除去技術の開発

2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5

紫外線領域での面分光観測の光学 技術の開発

2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5

紫外分光計/撮像の性能向上 2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5 飛翔体による可視高分散分光観測

装置と高安定型検出器の開発

2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5

小型サブミリ波放射計の開発 2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5 飛翔体プラ

ットフォー ム

気球を利用した惑星光学観測 2.3.1, 2.3.2, 2.3.3, 2.3.5 編隊飛行の衛星間通信を活用した

観測動作制御法

2.1.1, 2.1.2, 2.2.3, 2.3.1, 2.4.1

以下に,各開発項目の概要を述べる。

熱的電子の温度およびエネルギー分布の高時間分解能観測

従来型のラングミューアプローブでは5 Hz程度で電圧電流特性を取得するのが限界であ ったが、微小空間スケールの電子密度擾乱等の研究に必要とされる高速サンプリングが可 能な測定器の開発が求められている。単純にDC電圧スイープの周波数を上げる方法ではテ レメータ容量に起因する限界を超えることは出来ないために、スイープの結果取得された 電圧電流特性をオンボードで処理し、電子温度、電子密度の情報に加えて飛翔体電位など の情報を地上へ伝送する手法の開発が行なわれている。電子エネルギー分布の測定には二 次高調波法が使用されてきたが、従来の方法ではサンプリングの高速化には限界があるた めに、新たなアイデアを取り入れて高時間分解能観測を可能にすることが求められる。

また、近年ではアクティブ実験により飛翔体電位が大きく変化するような状況下におい て熱的電子の温度や密度の測定を要求されることが多くなってきた。このような状況下に おいては、まず飛翔体の電位を自ら見つけ出した上でDC電圧のスイープ範囲を決定し電圧 電流特性を取得して、電子温度と密度を導き出せるようにすることが望ましい。現在、こ のようなロジックでの動作を可能にする測定器の開発に取り組んでいる。

100

超熱的エネルギー帯におけるイオン3次元速度分布計測

非・弱磁化惑星周辺での太陽風・電離圏・熱圏の相互作用と、それに左右される地球型 惑星超高層大気環境を、直接観測を基軸とする手法により探査するためには、超熱的エネ ルギー帯におけるイオン3次元速度分布計測が必須となる。この様な相互作用環境下で熱化 された惑星プラズマイオンのラーモア半径自体が電離圏構造に比較しても無視できない大 きさであるため、惑星大気プラズマが流出する過程として重要なエネルギー帯といえる。

また、これらの超熱的エネルギー帯の惑星大気プラズマイオンが、惑星周辺の太陽風プラ ズマ領域にまで電離圏から上昇したり、惑星中性大気粒子がその領域で太陽光により電離 する場合、それらのイオンは太陽風電場構造により更に加速され、惑星電離圏環境から完 全に流出することになる。従って、非・弱磁化惑星大気環境での惑星プラズマの流出量と 加速機構を特定することで、惑星大気自体が電離圏を経て惑星間空間に流出する過程を解 明し、数億年以上の時間スケールで進行する惑星大気の進化・変遷への影響を定量的に評 価することが初めて可能になる。加えて、ホットジュピターやスーパーアース等に続く地 球規模の系外惑星、特に金星・地球・火星に類似の大気惑星の発見とそれらの大気組成観 測は今や時間の問題であり、太陽系内外の惑星系における生命の誕生・維持、知的生命へ の進化という視点から、固体(地球型)大気惑星における大気進化・超高層大気環境に関 するより深い知見が求められている。この視点からも、系内惑星の直接探査・その場観測 は最も優先順位の高い研究開発項目といえる。計測原理としては、本分野の独自技術にお ける過去の成果・実績から、適用の有用性が証明されており、現時点で最も実現性・有効 性が高いものを採用する。具体的には静電型エネルギー分析部とTOF(Time-of-flight)型質 量分析部を、超熱的イオン粒子分析器を構成する2大要素として採用する。

静電型エネルギー分析部

過去に探査機(のぞみ・れいめい衛星)への搭載実績があり、探査機の自転運動を利用 する事で3次元速度分布関数を容易に、かつ高精度で取得できるという特性上の利点に鑑 み、360度の平面状視野を常時独立に確保できるTop-hat型を採用する。

TOF(Time-of-flight)型質量分析部

高質量の分子イオンに対する検出効率・質量分解能を向上させるため、また、10 kV以上 の高電圧を必要としないという利点を考慮し、金属表面衝突によるTOF start信号生成機構が 候補の一つであるが、ゲート電圧方式によるTOF型、あるいは、掃引電場印加方式による粒 子軌道偏向型とTOF型の組み合わせ、等の複数の機構を同時並行で研究開発する。

実際の惑星探査計画に適用するためには、上記の機構からなる超熱的イオン粒子分析器 を10 kg以下の重量、10 W以下の電力で実現することが必要である。

また、太陽光に晒される探査機自体が、光電効果により超熱的エネルギー帯と同程度に 帯電するため、以下に述べられる探査機自体の電位制御が必要となり、統合的な搭載機器

101 開発活動が求められる。

超低エネルギー粒子計測のための衛星電位制御

宇宙空間では周囲のプラズマ環境、太陽紫外線環境などによって衛星が帯電する。地球 磁気圏では数十V 程度の帯電 (日照時) は通常よく起こる範囲内にある。この場合、低 エネルギーイオン観測においては eV レンジの粒子観測が困難となる。また、低エネルギ ー電子観測では衛星表面から放出された光電子によるノイズの増大を招いてしまう。地球 惑星磁気圏において数 eV程度以下の低エネルギー粒子の観測例は少なく、その振る舞いは よく分かっていないが、無視できない量のフラックスが存在することが明らかになってき ている。特に天体からのイオン流出については、流出の初期エネルギーが低く、その加速 プロセスを解明するうえで低エネルギー粒子のエネルギー・質量分析が重要である。衛星 電位を制御する方法としてイオンエミッタによるアクティブ電位制御が考えられる。この 技術は日本ではまだ開発されておらず、将来の実現が望まれる。

超高層大気における中性粒子計測

地球・惑星超高層大気における中性粒子の速度分布関数の観測は、温度・風速・密度に 代表される基本物理量の精密観測のみならず、非磁化地球型惑星の大気進化や大気流出を 理解する上でも必要とされている。現在開発が進められている分析器の測定原理は、ラム 方向を向いた平面スリットから入射した中性粒子を電子衝撃により電離させ、その後RF電 場型質量分析部により弁別する。質量分析部を通過した粒子は、蛍光面付マイクロチャン ネルプレートおよびCCD素子によって検出されるが、平面スリットに平行な速度成分が分 析器内部で保存されるように設計することにより、取得された画像は質量電荷比毎の二次 元速度分布関数をあらわすことになる。この画像からは、温度・風速・密度の算出が可能 である。想定される測定レンジは、風速が0-1 km/s、粒子質量が1-40 AMU、密度が106-109

cm-3、温度が500-2000Kである。

高時間分解能プラズマ計測

宇宙空間において低エネルギー荷電粒子の3次元分布を計測する際の時間分解能は、

1990年代以前の数秒のオーダーから、現在では10ミリ秒近くまで向上して来ている。時間 分解能の向上のためには、荷電粒子の検出時間を短くするのに加えて、計測統計精度を維 持するために観測装置の感度を増加させることが必須となる。従来の技術の範囲内で、か つ衛星搭載可能なサイズに観測装置をおさめようとした場合、3次元分布の計測ではミリ 秒の時間分解能がほぼ限界であることが明らかとなってきた。大きな原因の一つは検出器 に用いている電子増倍素子のダイナミックレンジであり、もう一つは観測装置の感度/サイ ズ比の問題である。荷電粒子とプラズマ波動の相互作用をプラズマの分布関数の変化から 完全に理解するためには、現在のミリ秒時間分解能ではまだ不十分であり最終的にはマイ