4 研究推進に必要な技術開発・環境整備
4.1 観測技術開発
4.1.2 固体地球研究分野の観測・分析機器開発
以下に、開発項目と2章で述べたサイエンスゴールの関連を示す。
カテゴリー 機器開発項目 対応するサイエンスゴール
(2章の項目と対応)
電磁場観測 高分解能・高感度磁力計の開発 2.5.1., 2.5.2., 2.7.1., 2.7.2 船上3成分磁力計の小型化・高度化 2.7.2.
リアルタイム津波モニタリングシス テムの開発
2.6.2.
惑星/衛星電磁探査用電極の開発 2.3.4., 2.5.2., 小型・低消費電力・高精度な電磁場
センサ、ロガーの開発
2.5.1., 2.6.1., 2.6.2., 2.6.3., 2.6.4.
以下に,各開発項目の概要を述べる。
高分解能・高感度磁力計の開発
磁力計がより高感度になることで、従来は測定できなかった天然試料(地球外物質を含 む)を対象とした古地磁気・岩石磁気学的な研究が可能になり、新しいサイエンスを開い
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てきた。今後の研究においては、現在にも増して、地球最古の岩石や月・惑星などからの 地球外物質といった希少な試料を分析することが必要となる。ここでは、1インチ試料を大 量に測ることを基礎とした従来の古地磁気学的アプローチが取れず、微小試料の測定を行 うことになる。そのためには、近年、周辺分野で開発されている技術をより積極的に導入 し、高分解能かつ超高感度な磁力計の開発を進める必要がある。
たとえば、具体的には、サブミリスケールの磁化構造の解明を可能とする、天然試料に 特化した超伝導量子干渉素子(SQUID)顕微鏡の開発が急務である。また、近年、SQUID にならぶ磁気センサ(例:光ポンピング原子磁気センサ)が開発されつつあり、既に天然 試料への応用が始まっているが、これらの利用についても考える必要がある。現在、堆積 物や鉱物などの微小な残留磁化の測定には、米国メーカーのSQUID磁力計が広く使われて いて独占状態にあるが、次世代の高感度の残留磁化測定を行うためには、消磁方法やサン プルホルダーを試料の特性に応じて自在に工夫できる技術をもつことがのぞましい。国産 の高感度磁力計システムを,日本の研究グループとして共同開発することが望まれる。
SQUID 磁力計のみならず、既存の磁力計の感度を向上させることも重要である。残留磁
化、磁化率、磁気ヒステリシスを磁場強度や周波数、温度を変化させて、数十mgの試料で も測定できる高感度の磁力計の開発が望まれる。1つの種類の磁力計でカバーすることは できないので、様々な種類の磁力計が必要であり、また、測定の自動化を考慮した開発を 進めることも重要である。
船上3成分磁力計の小型化・高度化
現状の海洋地磁気異常観測では、船上 3 成分磁力計は船体磁気の影響が大きく絶対値は 使いづらいという問題がある。現在のプロトン磁力計(セシウム磁力計)のように曳航型 の磁力計で 3 成分磁気異常を簡便に観測可能な小型・高性能 3成分磁力計の開発が望まれ る。たとえば、GPS・ジャイロを入れて非磁性で構成し、波の影響を受けすぎない程度に海 面下 1 m 程度を曳航する設計とする。これにより、GPS のアンテナは海上に出る。
GPS/GLONASS/Galileoが同時受信できるレシーバーが出てきているのでDGPSの精度は十
分と考えられる。GPSジャイロでも良いかもしれない。しかしながら、3成分磁力計センサ としてフラックスゲートを考えると、全磁力用のセンサに比べて温度ドリフトの影響が大 きいと考えられるので、この点の克服が必要と考えられる。人工衛星などで利用する高性 能センサを利用すればよいかもしれないが、価格が高いという欠点がある。新型センサの 可能性についても、検討すべきである。
リアルタイム津波モニタリングシステムの開発
地磁気の存在下で、良導体である海水が津波によって運動したとき、電磁場が誘導され ることが知られており、海底電磁場観測はベクトル型の津波観測を可能にする新たな手段
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として注目されている。電磁場を用いた津波のリアルタイムモニタリングを行うためには、
主として海底で、地磁気3成分・地電位2成分と水位を同時に連続観測し、津波による水 位変化と誘導電磁場を検出する必要がある。津波用の海底電磁場観測には、センサの分解 能の向上、時間分解能の向上、姿勢変化検出精度の向上という技術課題がある。現在より も分解能を上げた電場・磁場センサを理想的には 10 秒サンプリングで連続駆動するため、
システム全体の省電力が必要になる。また、長期安定した観測実現のため、電極の長寿命 化が必要である。揺れによる変化を補正するために、観測機器の姿勢制御または姿勢感知 の精度の向上する必要があり、小型ジャイロの高精度化が望まれる。これらに加えて、電 磁場計と水位計を長期連続稼働するために、電源系と伝送系の整備が必要となる。沿岸部 であれば海底ケーブルによる電力供給やデータ伝送が可能であるが、津波警報として社会 に資するならば深海部での多点観測が不可欠となり、低消費電力センサ・大容量電池・そ の場発電システムなどの電力系と、係留ブイと衛星によるデータ伝送系の開発が必要であ る。
惑星/衛星電磁探査用電極の開発
地球での電気伝導度探査では、電磁場の両方を計測する MT 法がしばしば用いられる。
これは、磁場変動入力に対する電場の応答を直接的に観測することで、電気伝導度探査の 非常に強力な手法となっている。しかし、地表での観測においても、長期間安定して良好 な電場データを取得するためには、電極のメンテナンスが必要となる。惑星/衛星での電 場観測では、電極と大地との接地抵抗の軽減と、高入力インピーダンスの計測器の開発が 必要となる。地上の観測では接地抵抗の軽減のために、銅—硫酸銅電極のような液体部分 を含む電極に、粘土質の材質を付着させ、大地と接地させる。このような方法は、惑星/
衛星での電場観測には用いる事ができないので、ゲル状物質を用いた電極等の開発を行う 必要がある。また、通常の設置型電極に加えて、コンデンサー型の電極等の検討を行う必 要がある。
小型・低消費電力・高精度な電磁場センサ、ロガーの開発
構造探査、モニタリングの各分野において、手軽に多点展開するため、安価で取り扱い やすい電磁場観測システム(センサ、ロガー、伝送、電源)の開発が望まれている。共通 するのは、小型化、高精度化、低価格化、低消費電力化であり、電池に関しては高密度化 も望まれる。量子効果を用いた磁場センサ等、衛星用に開発された高精度超小型センサや 技術を地上での観測に応用するのも有力な方法であり、電磁気探査や長期観測の要求に即 して改良する研究が必要である。
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