第 4 章 在宅ホスピスボランティア活動の現状と課題
5.1 在宅ホスピスボランティア活動の事例の概要
インタビュー内容の分析の対象は、在宅訪問活動の14事例(表30)である。ただし、
複数のボランティアが同じ患者・家族に対して在宅訪問活動を行うことがあるため、14の 事例の中に同じ患者・家族が重複して言及されている。
事例にとりあげられた患者の実数は10 人で、家族の実数は6 人である。在宅訪問活動 の対象者である患者10人のうち、一人暮らしは2人、家族と同居していたのは8人であ った。
〈ボランティアの個人史との関連〉
〈患者や家族とのやりとりからのやりがい〉 〈生活支援ニーズへの対応〉
活支援ニーズへの対応
〈自分らしい最期の実現へのサポート〉
活支援ニーズへの対応
《活動の実際》
①介護・死別の経験
②旧・現職業との関連
③他のボランティア活動の経験
④活動が可能な状況
⑤自身の療養体験
〈活動開始の切っ掛け〉
⑥Nクリニックとの関係
⑦養成講座の受講
《活動の背景》
〈ボランティア自身の成長〉 〈活動を行う上での問題点や課題〉
《活動における困難点や課題》
《活動を通じてのやりがい》
〈組織の運営に関する問題点や課題〉
《活動に対する支援体制》
<「A」内部における取り組み> <Nクリニックからのサポート>
⑧本人へのケア
⑨家族へのケア
⑩生活者同士の交流
⑪願望実現へのサポート
⑬役立てるという実感
⑭ふれあいからの喜び
⑮在宅ホスピスに関する情報・知識の獲得
⑯死生観の内省
⑰社会参加の機会の獲得
⑱任意活動による活動展開の限界
⑲活動の基準設定
⑳周りの偏見・理解不足
㉑終末期の人に寄り添うことの難しさ
㉒患者や家族との信頼関係の構築
㉓その他の問題点・課題
㉔活動参加の自律性の確保
㉕報告・連絡・相談しやすい関係性の構築
㉖活動の場の提供
㉗コーディネートとフィードバック
〈その他の活動〉
活 支 援 ニ ー ズ へ の 対 応
⑫その他の活動
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表 30 在宅訪問活動事例の概要 調査
対象者
在宅訪問
活動対象者 活動事例の概要
Bさん
【事例①】
アさん
(80代・男性・老 衰・夫婦のみ)
アさんは、老衰による身体能力の低下と若干の認知症が確認され、7年前に二ノ 坂クリニックからデイホスピスへの参加を勧められ、夫婦ともにデイホスピスに参 加し始めた。アさん夫婦は、月2回のデイホスピスへ参加するなかで、多くのボラ ンティアや他の患者・家族との交流が深まり、少しずつ見守り・外出支援等を「手 と手」に頼むようになった。Bさんは、アさん夫婦とボランティア活動以外に個人 的な付き合いをするようになってきた(月2回~3回5年以上活動・現在も継続し て活動中)。
【事例②】
イさん
(80代・女性・病 名不明・家族と同 居)
イさんは終末期にある人であり、1日のほとんどの時間寝ている状態であった。
Bさんは、家族の外出時に見守りをしていた。患者の傍でただ見守ることも、心身 ともに緊張し負担を感じることがあった。ある日、急にイさんが目を覚まし、食べ 物をほしがった。直ちに家族と病院に連絡をとり、アドバイスを受け、急遽お粥を つくった。対象者が患者の場合、病状の急変の可能性がある人が少なくないため、
事前の打ち合わせや連絡先の交換、医療機関に相談できる環境が必要である(月2 回程度を6ヶ月未満活動・イさんの死亡により活動終了)。
Cさん
【事例③】
ウさん
(90代・女性・心 筋梗塞・一人暮ら し)
ウさんは、老衰による身体能力の衰えと若干の認知症で、会話は可能であるが、
全介助に近い状態であった。ウさんは自宅で静かに過ごす時間を好む人であったた め、一人暮らしであっても半分は家で過ごしていて、週の半分は小規模多機能施設 で過ごしていた。自宅にいる時は、小規模多機能施設の在宅介護サービス、弁当屋、
近隣住民の見守り、ボランティア等によって支えられ、最期を自分らしく過ごした。
Cさんはウさんの若い頃の話を傾聴し、好きだった思い出の食べ物をつくって一緒 に食べるなど、6ヵ月後死亡するまで交流を行った(月2回以上を約 6ヶ月間活 動・ウさんの死亡により活動終了)。
Dさん
【事例④】
エさん
(60代・女性・神 経難病・一人暮ら し)
エさんは、進行型の神経難病のため、ベッドから車椅子に移るのにも大変な状況 であった。だんだん外出することが少なくなり、人との関わりも減っていた。家事 援助の大半はヘルパーにやってもらっていた。二ノ坂クリニックのMSWのTワー カーは、エさんが社会との繋がりの中で生きがいを感じていくことが必要であると 考えた。エさんは編み物が得意であったため、Dさんは週1回エさんの家を訪問し、
患者であるエさんから編み物を教わった。エさんは、病気を患っていても、Dさん に編み物を教えられることに生きがいを感じていた(週1回を3年以上活動・現在 はエさんの病状の悪化により活動中止)。
Eさん
【事例⑤】
ウさん
(90代・女性・心 筋梗塞・一人暮ら し・【事例③】と同 一人物)
ボランティアのEさんは、デイホスピスでの活動には力を入れていたが、在宅訪 問活動には心理的に負担を覚えていた。同居する家族にどのように関われば良いか 判らず、在宅訪問活動に自信がないためであった。ウさん(事例③と同一人物)は 1 人暮らしだったため、活動に挑んだ。ウさんと交流する活動はとても楽しく、E さんの在宅訪問活動に対する緊張感や負担感が少し軽減された。しかし、家族と同 居している人への訪問は、現在も戸惑いがある(月1回以上を約6ヶ月間活動・ウ さんの死亡により活動終了)。
Fさん
【事例⑥】
オさん
(80代・男性・悪 性腫瘍の末期・家 族と同居)
オさんは、終末期にある人で、一日中安静にしていた。オさんの妻は、オさんの 世話で外出もままならなかった。Fさんは、二ノ坂医師の紹介で、オさんの妻の外 出時の見守りをした。しかし、オさんの妻はボランティアがどんな人であるか理解 していなかったため、オさんの妻とFさん双方がどう接すればよいか戸惑いを感じ た。しかし、オさんの妻はFさんからボランティア活動に関する説明を受け、Fさ んとの関わりの中で安心できるようになってきた(週1回約2ヶ月活動・オさんの 死亡により活動終了)。
74 Gさん
【事例⑦】
カさん
(60代・女性・神 経難病・家族と同 居)
カさんは、神経難病のため、現在瞬きも自由にできない状態である。会話が可能 であった5年前に、訪問看護事業所の紹介で、「手と手」のボランティアがカさん の自宅を訪問したが、当時家族はボランティアの受け入れを拒否した。1年以上経 過し、カさんの状態がどんどん悪化し、人との関わりがほとんどなくなり始めてか ら、家族がボランティアの訪問を要請した。Gさんは、現在月2回、他のボランテ ィア1人~2人と一緒に訪問し、楽器の演奏、読み聞かせ、歌などで、カさんと触 れ合う時間をもっている。時々カさんの夫とも会話をする(月2回を3年以上活 動・現在も継続して活動中)。
【事例⑧】
キさん
(70代・女性・四 肢麻痺・家族と同 居)
キさんは、終末期ではないがほぼ全介助の状態である。主介護者はキさんの妹で あり、キさんと妹は二ノ坂クリニックから紹介され、ボランティアを受け入れたが、
初期はボランティアに対する警戒をみせ、快く受け入れる態度ではなかった。Gさ んは、3年以上、キさんに手足のマッサージをし、談話・外出支援などを行ってき た。現在はキさんや妹の表情も明るくなり、Gさんの訪問を心待ちにするようにな った(月2回を3年以上活動・現在も継続して活動中)。
Iさん
【事例⑨】
アさんの妻
(80代・女性)
Iさんは、アさん(事例①と同一人物)の妻と、デイホスピスのボランティア活 動中に知り合った。Iさんは楽器演奏が得意で、デイホスピスで披露することがあ った。それをみたアさんの妻は、趣味として楽器を習いたいとIさんに自宅でのレ ッスンを頼んだ。Iさんは月2回アさんの自宅に訪問し、アさんの妻に楽器を教え るようになった。現在は、デイホスピスで共演することもある(月2回を3年以上 活動・現在も継続して活動中)。
Jさん
【事例⑩】
クさん
(70代・女性・神 経 難 病・ 夫 婦 の み)
クさんは、神経難病で、人工呼吸器をつけており、全介助の状態である。クさん とは意思疎通できないが、Jさんは季節の花を持参しサさんに見せたり、本の朗読、
同行する他のボランティアが楽器の演奏をしていたりしている。クさんからの反応 は全くないが、ボランティアはクさんが人との繋がりや交流を望んでいるはずだと 考え活動を続けている。そして、24 時間つききりで介護しているクさんの夫とも お茶をしながら、介護や生活、趣味等について会話している(月1回以上を6ヶ月 未満活動・現在も継続して活動中)。
【事例⑪】
ケさん
(60代・女性・神 経難病・息子と同 居)
ケさんは、神経難病の進行により、食事もあまり摂れない状態であった。ケさん がさらに病状が悪化しないうちに、息子、兄弟、母、親戚、友達宛ての手紙を書き たいとボランティアを受け入れた。Jさんは全部で33通の手紙を代筆した。この 手紙が届いたことにより、ケさんの状態を初めて知りケさんを訪ね、数十年ぶりに 会ったという人もいた。手紙の代筆が終わってから、ケさんは入院し、入院先で亡 くなった(代筆の時期はほぼ毎日、活動期間不明)。
Kさん
【事例⑫】
カさん
(60代・女性・神 経難病・家族と同 居・【事例⑦】と同 一人物)
カさん(事例⑦と同一人物)は、現在意思疎通できないが、カさんが元気だった 時に歌が好きだったと聞き、Kさんは、カさんの微細な表情の変化に注意を払いな がら、歌を歌ったり、楽器の演奏をしてたりしている。カさんの望みの確認はでき ないが、一緒にいる・かかわることを大事にしている(月1回を6ヶ月以上活動・
現在も継続して活動中)。
Lさん
【事例⑬】
ウさん
(90代・女性・心 筋梗塞・一人暮ら し・【事例③】【事 例 ⑤ 】と 同 一 人 物)
Lさんは、ウさんに見守りや交流を主に行っていた。ある日、ウさん(事例③、
事例⑤と同一人物)の足が浮腫んでいるのをみて、二ノ坂クリニックのMSWに報告 した。そして、マッサージをしたら浮腫みが少し軽くなるのではと問い合わせたと ころ、ウさんの病気(心筋梗塞)の状況を考えると、マッサージはしないほうが良 いとアドバイスを受けた。Lさんは、医療福祉専門職と一緒に支えているため、活 動するにあたって心強いと感じている(月2回を約6ヶ月間活動・ウさんの死亡に より活動終了)。