第 6 章 介護職員のターミナルケアに対する不安や負担と支援体制
3.3 介護職員のターミナルケアに対する負担
ターミナルケアに対する負担については、何らかの内容を回答してくれたのは 55 名で あった。この中で、「負担あり」としたのは48名で、「負担なし」が7名であった。負担の 内容としては、〈夜勤時の対応と過重負担〉、〈記録〉、〈家族対応〉、〈死後ケア〉、〈業務増加〉
が確認された。
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もっとも多く言及されていた〈夜勤時の対応と過重負担〉は、「一人で夜勤する際に大変」
や「夜勤時の看護職が不在であるため、医療的処置もしなければならない」、「一人での夜 勤中に急変し、死亡した場合、死後ケアと他の利用者へのいつものケアの両立に負担を感 じる」などの内容が確認された。
表 37 ターミナルケアに対する負担(n=71)
区分 カテゴリー 内容の例
負担あり
(48名)
夜勤時の対応と 過重負担(35回)
・一人での夜勤中に急変し、死亡した場合、死後ケアと他の利用 者へのいつものケアの両立に負担を感じる。
記録(11回) ・記録などを細かくチェックや入力を行うこと
家族対応(9回)
・家族へ状態報告等が正確に伝えられない。
・家族の要望と施設でできることに差があり負担を感じること がある。
・家族の対応面会時間が不定期的に増えてくるため、挨拶や説 明を行い、他の利用者の業務が後回しになってしまう。
死後ケア(3回) ・死後ケアは経験がないので不安である。
業務増加(2回) ・普段の業務でも大変なのに、気を張りすぎてつかれがたまる。
その他(5回) ・最後の瞬間には誰が付き添いをしてあげたいと思うし、人員 の問題で常時付き添うことができなく、改善していきたい 負担なし(7名)
無回答(8名)
3.4
「ターミナルケアの経験」による不安の変化
ターミナルケアの経験有無については、「ターミナルケアの経験無し」は14名、「5回未 満」は39名、「10回未満」は13名、「10回以上」は5名であった。
筆者は、ターミナルケアの経験を積むことによって、不安が変化する可能性があると考 え、「初めてターミナルケアを行った時と最近(現在)のターミナルケアを行った時の心構 えやノウハウに変化などありますか。」という質問項目を設けた。この回答を分析し、〈看 取り介護に対する不安〉についての再検討を行う。
3.4.1
初めてのターミナルケア時の心得と対応
「初めてターミナルケアを行った時と最近(現在)のターミナルケアを行った時の心構 えやノウハウに変化などありますか」という質問に対して、初めてターミナルケアを行っ た時の経験を回答してくれたのは25名であった。その中から、〈総合的判断・対応が不十 分であった〉、〈死や死への恐怖・緊張感を感じた〉というカテゴリーが生成された。
その中で、〈総合的判断・対応が不十分であった〉は、具体的に、「身体的不調に意識が いきすぎていた」、「最低限の業務を行うくらいだった」、「ただ決められたことを実施して いくことで精いっぱいであった」などであった。
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表 38 初めてのターミナルケアに対する心得と対応(n=25)
カテゴリー 内容
総合的判断・対応が 不十分であった(19回)
・身体的不調に意識がいきすぎていた。
・最低限の業務を行うくらいだった。
・ただ決められたことを実施していくことで精いっぱい。
死又は死人への恐怖・緊張感を 感じた(9回)
・死に対して怖いなどの感情の方が強かった。
・戸惑い、悲しくて向き合うことがあまりできなかった。
ある(2回) (「ある」だけ記入)
3.4.2
ターミナルケアの経験を積んでからの心得や対応
ターミナルケアの経験を積んでからの変化については、「変化あり」と答えたのは、27名、
「変化なし」は2名であった。さらに、「ターミナルケアを通じて得られたやりがいや成長 感がありますか」や「ターミナルケアについての意見や考えを自由にお書きください」と いう質問の回答の中に、ターミナルケアの経験を通じての変化について意見を書いてくれ た人が15名いた。したがって、計44名の回答を分析した。
ターミナルケアの経験を積んでからの心得や対応の変化があるとの回答から、〈総合的 な判断・対応が可能となった〉、〈死や死人に対する恐怖が軽減し、受容するようになった〉、
〈自分自身や家族の死と生を再考するようになった〉、〈看取りのやりがいを感じるように なった〉、〈ケアを振り返り、反省するようになった〉のカテゴリーを生成した。
もっとも多くあげられた〈総合的な判断・対応が可能となった〉は、「これまでの生活史 を踏まえて居室の環境や好きだった音楽を流すなど、少し余裕が出てきた。家族への心配 り等にも配慮できるようになった」などの内容が確認された。
さらに、〈死や死人に対する恐怖が軽減し、受容するようになった〉は、「死に直面する ことを自分なりに受け止め、利用者や家族への対応を考えるようになった」や「死に直面 する仕事、死を迎える時期が近い方をお世話させていただいていることを改めて実感し、
最後を迎える方にどうすれば不安なく、安らかにすごしていただけるのかを考えることが できるようになった」などの意見がみられた。
また、職員自身又は家族の死と生への再考による専門職以前の人間としての成長が見ら れる場合もあり、家族でもできない最期を共できたという達成感ややりがいを感じるなど、
ターミナルケアを通じての肯定的な学びがあることが確認された。
表 39 ターミナルケアの経験を積んでからの心得や対応の変化(n=44)
区分 カテゴリー 内容
変化あり
(42 名)
総合的な判断・
対応が可能となった
(32回)
・回数を重ねるたび、少しずるいろんなことを学べた。本人の 安楽を最後は願って、職員一同家族がここに預けてよかった と思ってくださるケアをしたい。
・これまでの生活史を踏まえて居室の環境やすきだった音楽 を流すなど少し余裕が出てきた。家族への心配り等にも配慮 できるようになった。
106 死や死人に対する
恐怖が軽減し、受容 するようになった
(11回)
・人の死に対する考え方が変わった。自分の役割、立場を理解 して不安はなくなった。
・死に直面することを自分なりに受け止め、利用者や家族への 対応を考える。死があるから命は重く尊いものだと考える。
そお命の重さをかみしめ、日々一瞬一瞬を大事に寄り添って いくことだと思う。
・死に直面する仕事、死を迎える時期が近い方をお世話させて いただいていることを改めて実感し、最後を迎える方にどう すれば不安なく、安らかにすごしていただけるのかを考える ことができるようになった。自分の死についても考えるよう になり、ひととしての成長を意識できるようになった。
自分自身や家族の 死と生を再考するよ うになった(7回)
・ターミナルケアをとおして、自分自身の命の尊さ等を感じさ せられた。命と向き合うことの大切さを学んでいる。
・死と向き合う仕事、死から学ぶものが多く、自分の家族や自 分の生き方等考える。
看取りのやりがいを 感じるようになった
(5回)
・最期のお手伝いができることはやりがいを感じる。
・最期を看取ることができたという達成感がある。
ケアを振り返り、反 省するようになった
(3回)
・もっとこうすればよかった等の気持ちになることも多い。
・亡くなられる度に反省し、毎回違う方法で利用者に合うケア を考えるようになった。
その他(6回)
・身内の看取りをする時も落ち着いてできた。
・終末期ケアの経験で成長することあるが、死に携わることは 悲しくて辞めたくなる。
変化なし
(2名) 変化なし
・常に全部不安、夜勤、人員不足で細かに観察できないこと、
常に疑問を感じる。不安だらけ、つきっきりになれないため 不安を感じる。
・回数が少ないため、変化なし