第 3 章 高齢者サロン活動による社会的孤立防止の可能性と課題
4.4 インタビュー調査の分析結果
インタビュー調査から得られたデータを分析した結果、①サロンボランティアの活動の 理由、②「よかよか」サロン活動に対する肯定的な評価、③「よかよか」サロン活動に対 する負担感、④サロン活動による参加者の変化、⑤サロン活動による地域社会の変化とい う5つのカテゴリーが抽出された。
4.4.1 【「よかよか」サロンボランティアの活動の理由】
【「よかよか」サロンボランティアの活動の理由】とは、サロンボランティアがサロンを 支えていこうとする動機のことである。【「よかよか」サロンボランティアの活動の理由】
として、①[地域の先輩、リーダーへの協力・恩返しをしたい] ため、②[参加者たちがサ ロン活動を求めているため]、③[ボランティア活動が楽しいため]、④[自分も今後近隣住 民から助けてもらうと思うため]という意識があることが確認された。
表 16 【「よかよか」サロンボランティアの活動の理由】
カテゴリー サブカテゴリー データの一部
ボランティア の 活動の理由
地域の先輩、
リーダーへ協力・
恩返しをしたい
“育児や仕事で忙しかった時に地域の人々に長くお世話に なってきた。今私がお手伝いできることがあれば、したい。
“(D)“熱心だった前の会長から誘われた。だからやろうと 思った。(B)”
54 参加者たちが活動
を求めているため
“参加者が月1回のサロン活動を楽しみにしているから
(やる)”(B)
ボランティア活動 が楽しいため
“30 年以上この団地で暮らして児童会や祭り等をともにし てきた仲間とサロン活動ができて、かえって楽しい”(C)
自分も今後近隣 住民から助けて もらうと思うため
“自分も歳とったら世話になると思うので、今できることは したい。自分も動けなくなったらやってもらうことになるの で、自分が動ける間はできる範囲で見守っていきたい。(E)”
4.4.2
【 「よかよか」サロン活動に対する肯定的な評価】
【「よかよか」サロン活動に対する肯定的な評価】とは調査協力者が「よかよか」サロン 活動について参加者またはサロンボランティアとして抱く肯定的な評価のことである。 参 加者またサロンボランティアとして①[Y活動の回数とプログラムのレベルが適当] で、② [ボランティアが多数で運営が円滑]であり、③[ボランティア活動自体が楽しい]と評価し ていた。
A、C、D、E、Hは“30 年以上この団地で暮らして児童会や祭り等をともにしてきた仲間
で、今はサロン活動ができて、かえって楽しい(C)”という発言からも推察できるように、
サロンボランティア活動は退職後の良い交流の機会として考えられている。そして、“歩 いて行ける集会所でサロン活動をやるから、参加が苦にならない(D)”、“月1回で日に ちが決まっているから事前にスケジュールが調整できるから参加しやすい(A)”という意 見もあった。
表 17 【「よかよか」サロン活動に対する肯定的な評価】
カテゴリー サブカテゴリー データの一部
「よかよか」
サロン活動に 対する 肯定的な評価
「よかよか」サロン活 動の
回数とプログラムの レベルが適当
“月 1 回のサロン、1 回以上の事前準備も負担を感じな い。(D)”“リーダーが案を出してくれるし、皆話し合っ て従ってやるので大変でも難しくもない。自分たちの棟 の人が来た時には声をかけたり、こなかったら呼びに行 ったりするくらいで負担を感じない。(H)”
ボランティアが 多数で運営が円滑
“(活動への負担は)あまり感じない。調子がよくない時 には休むし、他のボランティアにお願いできる。(C)”
ボランティア活動 自体が楽しい
“活動への負担感はなくて、かえって気分転換になる
(F)”
4.4.3
【 「よかよか」サロンボランティアとしての負担感】
【「よかよか」サロンボランティアとしての負担感】とは、サロンボランティアとして抱 く活動に関する負担感・不満のことであり、 ①[地域社会の活動、家事等との両立]、②[限 られている予算でのプログラムの準備]、③[サロン活動を拒否する人や非参加者への関わ り]に対して負担感を感じていることが確認された。A、B、C、Dは町内の役員、棟の見守り 担当者等の他の活動も行っており、サロン活動に若干負担を感じていた。
そして、「よかよか」サロンでは福岡市社協から支給される月々3000 円の支援費を活動 の拡張やプログラムに必要な材料、お茶の購入で使っていた。しかし、専門的プログラム
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の提供のための依頼費や屋外プログラム等の費用としては不足しているため社協や地域包 括支援センター等の専門機関と連携して様々なプログラムをサロンの費用負担なしで取り 入れていた。サロン活動の参加を拒否する人に対しては“誘う・声をかけることが大事(A)”
であるとし、普段から頻繁にサロン活動への参加を呼びかけていた。“同じ住民同士であ るため話しやすい(H)”面もあるが、“プライバシーの侵害の問題や長く付き合う仲であ るためかえって現況の調べが難しい(A)”面もあった。孤立のリスクを感知した際には積 極的な対策案は持っていなかったが、町内会長に報告し、時にはCSWに介入や支援を求め ていた。
表 18 【「よかよか」サロンボランティアとしての負担感】
カテゴリー サブカテゴリー データの一部
「よかよ か」サロン ボランティ アとしての
負担感
地域の活動と 家事等との
両立
“町内会長になって大変なところは出事が多い。役員会 にでるし。会長が出なきゃいけないところが結構ある。
(A)” “1 年前まで仕事していたため、夜疲れて集いが あっても出たくなかった。(C)” “サロン以外は畑(朝 早く、夕方遅く)を少しやっていた。孫の面倒を観ている。
今のところは月1回なので、これ以上であったら、負担を 感じるかもしれない。(G)”
限られている 予算での プログラムの準備
“たまに苦痛だと思った時がある。買い物する時に値段 の制限もあるし、袋に分けられているのを選ばなければ ならないとかどれが良いかと。(G)”
サロン活動を 拒否する人や 非参加者への関わり
“皆サロンに誘うけど来ない人がいる。他の人から聞い たけど、人間関係などもあるらしく、掃除や顔みるたびに サロンへきてというが、あの人が来るからいかないとい うことを違う人から聞いたことがある。(D)”
4.4.4
【 「よかよか」サロン活動によるサロンボランティアの変化】
【「よかよか」サロン活動によるサロンボランティアの変化】とは、「よかよか」サロン 活動による調査協力者の変化、とりわけサロン活動が社会的孤立に対して及ぼした影響の ことである。
サロンボランティアとしてサロン活動を支えていることに ①[やりがい]を感じ、②[孤 立のリスクがある人への関心の拡大と見守りの実践]をするようになり、③[人間関係や交 流が拡大] することが確認された。
“担い手として参加者が喜ぶことはやりがいを感じ、ボランティア活動を持続したい(F)”、
“地域の役に立ちたい(D)”という地域活動への参加・持続意欲の向上につながっていた。
そして、“ボランティアになって、リーダーから「誘ってきて」「迎えに行ってきて」とか 言われるし、見守り活動をする人たちの会話も聞くので、以前より一人暮らしの高齢者に 気をつかうようになった。(H)”という発言からわかるように、サロンボランティアたち は周りの孤立のリスクがある人々に気を配るようになっていた。
さらに、“活動をしてからいろんな人の性格がわかり、自分に無い所がある他人との付 き合いで勉強になることもあるし、楽しい時もある。ボランティア仲間で、普段の生活の
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中でもサポートしあう。(H)”というように、日常生活でも交流が深まっていた。
表 19 【「よかよか」サロン活動によるサロンボランティアの変化】
カテゴリー サブカテゴリー データの一部
「よかよ か」サロン 活動による 参加者の変
化
やりがい “自分に無い所がある他人との付き合いで勉強になることがある、
楽しい時もある。(H)”“参加者達が喜ぶことが嬉しい。(A・D)”
孤立のリスクが ある人への 関心の拡大と 見守りの実践
“今の方が眼につく。今が気をつかう。サロンにおいでと声掛けす る。(A)”“道端で会ったら、挨拶するようになった。おはようござ います。どうなんですかと。前は挨拶で終わったけど、最近は声をか けると、相手から話がかえってくる。(E)”
人間関係や 交流が拡大
“以前は家族と団地外に住んでいる友人と連絡を取り合ってから外 に出るということだけがほとんどだったが、サロン活動すると月 2 回は会える。和気藹々であると思う。週にメール、電話で連絡取り合 っている。(F)”“ボランティア同士の縁を繋いでもらった。知り合 いが増えた。(D)”
4.4.5
【 「よかよか」サロン活動による地域社会の変化】
【「よかよか」サロン活動による地域の変化】とは「よかよか」サロン活動が実施されて からの地域の変化、とりわけサロン活動が社会的孤立に対して及ぼした影響のことである。
表 20 【「よかよか」サロン活動による地域社会の変化】
カテゴリー サブカテゴリー データの一部
サロン活動に よる地域社会
の変化
住民のニーズの発見
“サロンを誘うことで、来ないこともあるが、誘う時に声をか けることができて、返事の中で状況の把握ができることがあ る。サロンがあるから会話ができた。(F)”
地域の居場所の新設
“月 1 回少ないという方もいるが、ボランティアとしては 1 回がちょうど良い。それで、毎週金曜日に集会所を開けておい ているよ。誰でも来て良いし、たまに、ダーツしたり、おしゃ べりしたり、食べたいもの持ってきてもかまわない。(E)”
支え合い活動への展 開
“高齢者が多くて、家具の位置を変えるとか、電球を取り換え るなどのちょっとしたことに困っている人々がいる。それで、
呼ばれたら、少し助けるだけ。でも、あまり呼ばれない。これ から若い人もグループに入れてもっと活性化させようと思っ ている。(B)”
すなわち、①[住民のニーズの発見]が促され、②[地域の居場所の新設]が行われ、③[支 え合い活動への展開]をしたことが確認された。「よかよか」サロン活動は高齢者たちの居 場所として参加者同士の交流が深まり、互いに生活の困りごと、必要なことなどを話すよ うになった。例えば、サロン活動を月2回やりたいという声が上がったが、サロンボラン ティアたちはサロン活動が増えることに負担感を感じていた。そのため、毎週金曜日の朝 10時から午後5時まで集会所を開けて、自由に休憩でき、卓球・ダーツ・囲碁・ゲーム等 で遊ぶことができる居場所を設けた。さらに、“家具の位置を変えるとか、電球を取り換 えるなどのちょっとしたことに困っている人々がいる。それで、呼ばれたら、少し助ける