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介護職員が望むサポート

ドキュメント内 生活の場における終末期ケアの現状と課題 (ページ 116-141)

第 6 章 介護職員のターミナルケアに対する不安や負担と支援体制

3.6 介護職員が望むサポート

ターミナルケアに関する望むサポートは〈ターミナルケア時の職員増員〉、〈ターミナル ケア時の体制づくり〉、〈研修・学習会〉、〈リーダーの指導〉、〈グループ間の話し合い〉、〈看 護職の協力〉、〈夜間時の看護職の配置〉、〈静養室の充実〉があげられた。

Z法人は、年に1~2回の研修・学習会を行っているが、研修・学習会を望むサポートと しての記述も6回みられた。介護職員は終末期にある利用者の急変時の判断や対応につい て看護師への依存度が高く、看護師の協力や夜間時の配置を求める意見もみられた。

表 41 ターミナルケアに関する介護職員が望むサポート(n=42)

望むサポート 回答回数 望むサポート 回答回数 ターミナルケア時の

職員増員 8回 ターミナルケア時の

体制づくり 4回 研修・学習会 6回 リーダーの指導 2回 グループ間の話し合い 6回 看護職の協力 2回 夜間時の看護職の配置 5回 望むサポート特になし 3

静養室の充実 5回 その他 13

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まとめと考察

本章では、Y 社会福祉法人に勤務している介護職員が施設内でターミナルケアを行う上 で生じる不安や負担、不安や負担に対する介護職員が望むサポートなどを明らかにした。

以下、調査の結果を踏まえながら、不安や負担の減少につながるサポート体制について考 察する。

まず、Y社会福祉法人は、看取り介護加算制度が施行された2006年以前から、入所者や 家族の意向に寄り添って、ターミナルケアを行っており、加算制度が施行された当時から 加算要件を満たしていた。そのため、現在勤めている介護職員のほとんどは加算要件が満 たされた環境の中での看取り介護の経験がある。さらに、自主的にターミナルケアに関す る職員の小グループがあり、研修・事例検討会等を企画し、全職員に看取り介護の質の向 上や情報共有を図っている。

ところが、5 年以上の看取り介護の実践をしてきた施設にも関わらず、介護職員の大半 がターミナルケアに対する不安や負担をもっていることが確認された。

不安については、〈適切な判断・対応への不安〉や、〈夜勤時の適切な判断・対応への不 安〉、〈死又は死人への恐怖・緊張感〉、〈死又死人に直面することへの精神的な不安〉が確 認された。さらに、負担については、〈夜勤時の対応と過重負担〉、〈記録〉、〈家族対応〉、

〈死後ケア〉、〈業務増加〉、〈精神的緊張感〉が確認された。

一方、ターミナルケアの経験が重なるとともに、〈死又は死人への恐怖・緊張感〉は、〈死 や死人に対する恐怖が軽減し、受容するようになった〉。また、〈適切な判断・対応への不 安〉も、ターミナルケアの経験が重なるとともに、〈総合的な判断・対応が可能となった〉。

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この結果から、ターミナルケアの経験が浅い職員に、情緒的サポート、適切な判断・対応 ができるようなサポート体制が必要であることがうかがわれた。

さらに、このターミナルケアの経験の積み重ねを通じて、死の受容や死生観への関心の 増大、ケアについての内省が行われたことを勘案すると、ターミナルケアの経験がある職 員が、ターミナルケアを行った経験談や自身の変化について語る、事例検討会や勉強会を 設けることも有効であると考える。

さらに、回答から不安や負担は深く関連しあっていることが推測された。例えば、〈夜勤 時の適切な判断・対応への不安〉は、〈夜勤時の対応と過重負担〉と一緒に書かれているこ とが多かった。特に、夜間時の協力職員又は看護職の不在による業務の過重負担について 回答したのが有効回答数の8割を占めていることから、何より重要な課題であると考えら れる。具体的には、「一人で夜勤する際に大変」や「夜勤時の看護職が不在であるため、医 療的処置もしなければならない」、「一人での夜勤中に急変し、死亡した場合、死後ケアと 他の利用者へのいつものケアの両立に負担を感じる」などが確認された。

一人夜勤時の加重負担は、介護職員の知識を増やし、技能を高めることで、解消できる 部分ではない。Z法人には、看護職員との24時間連絡体制が整備されているが、夜勤時に は看護職は勤務しておらず、終末期にある人を見守り、記録し、急変に対応しながら、他 の利用者への介護もしなければならない。望むサポートの中にも、せめて終末期の入所者 をケアする期間だけでも、介護職員又は看護職員の増員を求めており、より現場の状況に 見合う人員配置やケア体制への検討が求められる。

終末期にある利用者や家族の意思や希望を尊重し、安らかなに最期を送ることができる ためには、毎日寄り添っている介護職員の死の受容や適切な対応が何より重要であると考 えられる。適切な対応ができるためには、十分な看護職の配置や終末期ケア体制(方針の 明確化、連絡体制、協力体制など)が先に整えなければならない。

加えて、終末期にある利用者はコミュニケーションが取れない場合が多いため、終末期 になってから最期をどこでどのようにむかえたいのかを確認しづらい。Y 社会福祉法人で は、利用者が望む最期について、入所時と、終末期になってから確認しているが、それ以 外の時期にも、利用者やその家族の意向について確認することが必要であろう。利用者や 家族も心構えができ、話し合うきっかけとなりうるし、介護職員にとっても、戸惑いや不 安の軽減につながると考えられる。なお、入所時から意思疎通ができない利用者も少なく ないが、ご家族とともに、利用者の人生史や、本人の好みを踏まえて、終末期への希望に ついて検討する必要があると考える。

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【参考資料】6 章の質問紙

Y法人の介護職員の皆様

新緑の候、貴法人ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。

私は九州大学大学院で「施設におけるターミナルケア」についての研究を行っている 孔 英珠(コン ヨンジュ)と申します。

皆様にはお忙しい毎日だと推察いたしますが、このたび是非現場で務めている方々の ご意見をきかせていただければと思っております。

何卒宜しくお願いいたします。

九州大学大学院人間環境学府人間共生システム専攻 共生社会学コース 博士後期課程 2年 孔 英珠

[email protected]

この調査では「ターミナルケア」を「入居者の方が、医師によって「ターミナル期(医 学的に回復の見込みがない)と診断されたときから、 (入居者と家族が施設で最期まで 暮らすことを希望する場合において)最期までおこなうケア」とにします。

1.これまで入居者の方の死に直面したことはありますか。

①ない ②1回~4回 ③5 回~9回 ④10 回以上

2.これまでターミナル期ケアを行ったことはありますか。

①ない ②1回~4回 ③5 回~9回 ④10 回以上

(ターミナルケアの経験をお持ちである方)

3.ターミナルケアを行う際に、どんなところに注意していますか。

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4.初めてターミナルを行った時と最近(現在)のターミナルケアを行った時の心構え やノウハウに変化などありますか。

5.ターミナルケアを行う際に、戸惑いや不安を感じたことがありますか。

6.ターミナルケアを行う際に、負担を感じるところはありますか?

(例)記録、死後ケア、家族対応、夜勤 など

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4.初めてターミナルを行った時と最近(現在)のターミナルケアを行った時の心構え やノウハウに変化などありますか。

5.ターミナルケアを行う際に、戸惑いや不安を感じたことがありますか。

6.ターミナルケアを行う際に、負担を感じるところはありますか?

(例)記録、死後ケア、家族対応、夜勤 など

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7.その戸惑いや不安はどのように解消しますか。

(例)同僚・先輩と相談、研修、仕事外の趣味活動 など

8.ターミナルケアを行う際の戸惑いや不安、負担の軽減のために施設内でどんなサポ ートを望みますか?

9.ターミナルケアを通じて得られたやりがいや成長感がありますか。

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10.施設(在宅)内の終末期ケア及び看取り介護を行う際の課題はなんであると思い ますか?

最後に職員さんにご自身について伺います。あてはまるところに○をしてください。

― あなたの性別はなんですか? (男 ・ 女)

― 年齢は次のどれですか?

(20代未満 ・ 20代 ・ 30代 ・ 40代 ・ 50代 ・ 60代)

― 職種は何ですか? (介護職 ・ 看護職 ・その他)

― 経歴(介護・看護職)は次のどれですか?(志摩会以外も含めて)

(1年未満・1年以上3年未満・3年以上5年未満・5年以上10年未満・10年以上)

― 保有資格は何ですか?(複数であれば、すべてに○をしてください)

(ヘルパー ・ 介護福祉士 ・ 看護師 ・ 看護助手 社会福祉士 ・ ケアマネージャ ・ その他)

誠にありがとうございました。^^ ♥

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終 章

現代の日本では、超高齢社会がもたらした多死化が進んでおり、人々の死に至るパター ンが多様化した。2018 年の人口動態統計をみると、昭和50年代後半から死亡数は増加傾 向となり、2018年の死亡数は136万2482人で、全死亡数の7割以上が75歳以上の高齢者 である。また、死因別にみると、死因順位の第1位は悪性新生物「腫瘍(がん)」(全死亡 者 136 万 2482 人に占める割合 27.4%)である。第 2 位は心疾患(高血圧性を除く・同 15.3%)、第3位は老衰(同8.0%)、第4位は脳血管疾患(同7.9%)、第5位が肺炎(同

6.9)となっている(厚生労働省 2019)。がんなどの場合には、一般に死亡の数週間前まで

認知機能や身体能力が保たれ、ある時点から急速に悪化し死に至る。一方、心臓、肺、肝 臓などの慢性疾患の場合は、2年から5 年にかけて増悪と緩解を繰り返し、数年かけてし だいに悪化する。認知症や老衰の場合には、5 年以上の長期間にわたり徐々に認知機能や 身体能力が低下する(樋口ほか 2010; 池上 2017)。

したがって、今日必要とされる死を迎える場所は病院のみならず、死に至る多様なパタ ーンに対応できるような、多様な終の棲家である。そして今後、自宅や介護施設などの生 活の場で最期を迎える人々が増加することが想定される。さらに、終末期医療のみならず、

病院死が大半であった時代には顕著でなかった、長期的な介護や生活支援、心理的ケア、

家族ケアを、誰がいかに担うかについて検討することは、今日の日本において喫緊の課題 となっている。

以上の現状を踏まえ、本研究では、生活の場で最期を迎える人やその家族に対する、地 域住民、ボランティア、介護職員による終末期ケアの現状と課題を明らかにしてきた。具 体的には、地域住民による見守り活動および高齢者サロン活動、在宅ホスピスボランティ ア活動、介護職員による介護施設での看取り介護およびターミナルケアをとりあげ、各々 の担い手によるケア内容、担い手が直面している困難や課題、困難や課題を乗り越えるた めの対応策を調べた。さらに、ケア場面にかかわる複数のアクター間の関係、担い手が所 属する組織や地域の特性、関連制度からの影響についても検討し、終末期ケアの担い手と しての可能性や限界、役割について考察してきた。本章では、これまで分析や考察してき た内容から担い手間の共通点や相違点を整理し、超高齢社会に求められる終末期ケア体制 のあり方について提言を行う。

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終末期ケアの担い手としての地域住民の可能性

死の文化が失われ、死を身近なこととして考えていない人が多いなか、多発する孤立死 は自身の最期の姿や死に方について考えさせられる出来事である。さらに、亡くなる瞬間 に独りであることを防ぐこと以上に、人生の最終段階にいかに孤立せずに過ごすことがで き、支えられるかに関心が高まった。このような状況のなかで、近年、孤立死や社会的孤 立を防ぎ、生活支援ニーズへの対応策として、地縁団体やボランティアによる生活支援活 動に関心が寄せられている。

本研究では、地域住民が主体となって行っている見守り活動(第2章)や高齢者サロン

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