①経済成長率の中長期展望
・長期化している景気拡大
日本経済は
2002
年1
月を景気の底として回復局面に入り、景気拡大を持 続している。2004
年9
~12
月にかけて景気調整の兆候が窺われたが、景気 後退には至らず拡大を続けており、景気拡大期間は戦後最長であったいざ なぎ景気(1965年10
月~1970年7
月の57
ヶ月間)を超える可能性があ る。景気回復下の経済成長率の推移をみると、
2003
年度2.3
%、2004
年度1.7
%と2
%前後で推移したが、2005
年度は3
%強となることが見込まれる。景気拡大が持続する中で、企業収益の増加が顕著となる一方、これまでの 懸念材料であった不良債権処理も進捗している。また、デフレ圧力も弱ま っており、2005年末~2006年始めにはほぼデフレから脱却した。
建設用ク
レーン = 477.6 + 0.066 ×非住宅建築着+ -7534 ×前期ストック/
実質着工額 + 0.388 ×中古車輸出
台数 + 470 ×ダミー
(4.92 ) -(4.32 ) (3.32 ) (3.85 )
R2 =0.995
D.W. =2.728 ダミー:2001~2003=1、他0
-1,000 -1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
実績値 推計値 誤差 台
年度
・外需と外需関連の設備投資が牽引力
景気回復のパターンをみると、今回の景気回復も、回復当初は
1990
年代 以降の2度の回復局面と同様に、輸出の伸びとそれに追随する形での設備 投資の伸びに支えられた。2004
年度に入って実質雇用所得の伸びが0.3
% 増とプラスに転じたこともあり、民間最終消費や民間住宅投資も伸びが高 まっている。このように民間部門全体の回復が強まった一方、財政悪化が 続く中、公的固定資本形成(公共投資)は引き続き縮減基調にある。もっ とも政府最終消費は社会保障費の増大などを要因として増加が続いており、公需全体としては
2003
年度2.2
%増、2004
年度1.4
%増と増加基調にある。・今後注目すべき3つのポイント
このように、日本経済はようやく本来の成長経路に戻りつつあると見ら れるが、今後を展望する上では以下の3つの点に注目する必要がある。第 一は世界経済の行方である。
1990
年代に入って以降、輸出とそれに関連す る設備投資の伸びが景気回復を牽引してきたが、米欧経済やBRICs
、とり わけ中国の経済拡大テンポが今後どの程度のものとなるか、原油や他の資 源の供給制約や価格がどう推移するか、ドルや人民元、ユーロなどの通貨 はどう動くかなどが注目される。第二は内需の動向で、所得の回復による 消費や民間住宅投資の回復力がどの程度高まるかである。とくに、少子高 齢化や団塊世代のリタイヤの影響などが注目される。予測上の注目ポイン トは、こうした民需の伸びと、上記の外需とにより、民間設備投資がどの 程度の伸びとなるかである。第三は、財政面からの制約である。消費税率 の引き上げが話題となっているが、その実施のタイミングと引き上げ幅が どうなるか、経済への影響はどうかなどが注目ポイントである。また、そ の他の税制改革や社会保障負担の動向も見逃せない点である。かかる面での将来動向については不透明な部分が多く、いろいろなシナ リオが想定し得るが、三菱総合研究所の中長期予測(
2005
年12
月)では 今後10
年間の経済成長率を年率1.9
%と予測している(図表107
日本経 済の中長期展望(三菱総合研究所、2005年12
月予測)参照)。図表 107 日本経済の中長期展望(三菱総合研究所、2005年
12
月予測)2.4.2.
建設関連需要の展望(建設経済研究所予測ベース)建設機械の需要は住宅投資や建築着工床面積、土木や建築の着工額等の 動向に大きく影響される。これらについては、建設経済研究所が詳細な分 析を行い、将来を展望している。そこで、本予測では建設経済研究所の中 長期予測をベースケースとして用いることとする。
建設経済研究所の予測36は以下の4つのケースに分けて示されているが、
2006
~2015
年についてみると、いずれのケースでも2006
~2010
年度は年 率1.5
%の成長を前提としている。2011
~15
年度については、ケースごと に0.5
%ポイントずつ差をつけた成長率を設定している。最近のマクロ経済 の動向から見ると、2006
~2010
年度については成長率がやや低めに設定さ れていると判断されるが、本予測では、上記の予測と併せみて、ケース2 を基本ケースとして用いることとした。[建設経済研究所の予測前提としてのマクロフレーム]
[建設経済研究所の長期展望における建設関連指標の予測結果]
建設経済研究所の予測結果に示されている建設投資等の各種指標につい ての予測結果は以下の通りである。上記のように、当面
2006
~2015
年度 について低めの予測となっていることから、建設投資やその内訳の各項目
36 「建設投資等の中長期予測~2010年度及び2020年度の見通し~」
(財)建設経済研究所、2005年9月 実質経済成長率
2006-2010年度 2011-2015年度 ケース1 1.5% 2.5%
ケース2 1.5% 2.0% ケース3 1.5% 1.5% ケース4 1.5% 1.0%
5
年度ごとの経済成長率の推移と展望結果(年率)
経済成長率 内需の寄与度 外需の寄与度
計
民需 公需
実績
1996
-2000
年度1.0
%0.7
% (0.5
%)( 0.2
%)0.2
% 2001-2005年度 1.3% 1.0% (1.1%) (-0.1%) 0.3%予測
2006
-2010
年度1.9
%1.6
% (1.6
%)(
-0.1
%)0.3
%2011
-2015
年度1.9
%1.5
% (1.6
%)(
0.0
%)0.3
%についてもやや低めの予測となっている。例えば、全体を示す建設投資計 では
2001
~2005
年度から2006
~2010
年度にかけて年率-0.4
%と減少、2006
~2010
年度から2011
~2015
年度にかけて年率0.3
%と予測されてい る。なお、建設経済研究所の予測では、予測値を
2006
~2010
年度、2011
~2015
年度など5
年間の平均として示しており、2005
年度、2010
年度、2015
年度などの数値は得られない。このため、実際に建設機械の需要を予測す るに当たっては、2005
、2010
、2015
年度値を各期間の伸びより推定し用 いたが、このような調整をすると2006
~2010
年度、2011
~2015
年度はほ ぼゼロ成長となる(詳細は次ページの建設関連指標の予測フレーム表を参 照)。図表 108 建設経済研究所予測フレーム
(ケース1: 2006~2010年度 1.5%、 2011~2015年度 2.5%)
2001~05 年度
2006~10 年度
2011~15 年度
2016~20 年度
2001~05 - 2006~
10 年度
2006~10 - 2011~
15 年度
2011~15 - 2016~
20 年度 建設投資(計) 兆円 52.47 51.54 52.32 51.30 -0.4% 0.3% -0.4%
政府建設投資 兆円 19.70 18.50 18.50 18.50 -1.2% 0.0% 0.0%
民間建設投資 兆円 32.77 33.04 33.82 32.80 0.2% 0.5% -0.6%
民間住宅投資 兆円 18.57 17.94 16.62 14.40 -0.7% -1.5% -2.8%
民間非住宅投資 兆円 14.20 15.10 17.20 18.40 1.2% 2.6% 1.4%
民間非住宅(建築) 兆円 8.76 9.57 11.61 12.68 1.8% 3.9% 1.8%
民間非住宅(土木) 兆円 5.44 5.53 5.59 5.72 0.3% 0.2% 0.5%
民間非住宅建築着工床面積千㎡ 59,830 65,361 82,001 89,230 1.8% 4.6% 1.7%
民間非住宅建築着工額 兆円 7.18 7.81 9.53 10.41 1.7% 4.1% 1.8%
(ケース2: 2006~2010年度1.5%、 2011~2015年度 2.0%)
2001~05 年度
2006~10 年度
2011~15 年度
2016~20 年度
2001~05 - 2006~
10 年度
2006~10 - 2011~
15 年度
2011~15 - 2016~
20 年度 建設投資(計) 兆円 52.47 49.83 48.42 47.32 -1.0% -0.6% -0.5%
政府建設投資 兆円 19.70 17.50 17.50 17.50 -2.3% 0.0% 0.0%
民間建設投資 兆円 32.77 32.33 30.92 29.82 -0.3% -0.9% -0.7%
民間住宅投資 兆円 18.57 17.93 16.42 14.02 -0.7% -1.7% -3.1%
民間非住宅投資 兆円 14.20 14.40 14.50 15.80 0.3% 0.1% 1.7%
民間非住宅(建築) 兆円 8.76 9.13 9.55 10.69 0.8% 0.9% 2.3%
民間非住宅(土木) 兆円 5.44 5.27 4.95 5.11 -0.6% -1.2% 0.6%
民間非住宅建築着工床面積千㎡ 59,830 61,768 65,960 73,781 0.6% 1.3% 2.3%
民間非住宅建築着工額 兆円 7.18 7.44 7.80 8.72 0.7% 0.9% 2.3%
以上の建設経済研究所の予測をもとに、建設機械の需要予測で用いる指 標についての
2005
、2010
、2015
年度の予測値を整理すると以下の通りで ある。前述のように、建築と土木を合わせ建設需要全体としてみると、今 後10
年間ほぼゼロ成長となる。建築着工床面積は、非住宅は増加するもの の住宅関連の減少が大きく影響し、全体としては微減状態が続く。なお、建設受注額については、建築着工と総実質投資との関連をもとに別途推計 した結果、2006~2010年度は
0.5%、2011~2015
年度は年率0.9%の増と
予測された。建設機械需要はこれらの指標と深く関連しているため、建設 需要をゼロ成長ないし微減とみるか、緩やかな増加とみるかで将来需要の 動向が大きく影響されることになる。なお、中古車輸出の影響も大きいが、この点については、過去
5
年間の 中古車輸出の伸びと、世界市場における日米欧を除く地域での需要の伸び との相対関係を伸び率弾性値として捉え、将来の日米欧以外の世界市場の 伸びに乗じ予測した。ただし、2006
~2010
年度については弾性値が半減す るとみた。図表
109
建設関連指標の予測フレーム(
建設経済研究所ケース2ベース)
2.4.3.
国内建設機械需要の予測結果以上の予測フレームと前掲の需要関数に基づき、
2010
年度および2015
年度の建設機械需要を予測した結果は以下の通りである。各製品別の予測 結果の特徴は次ページ図表110
予測結果の概要の通りである。建物受注 土木受注 住宅 非住宅 居住+非
居住着工 土木着工 1996 19,941 12,744 7,198 258,361 157,014 101,347 74,649 44,610 30,038 1997 18,038 11,818 6,220 220,580 123,751 96,829 67,786 37,666 30,120 1998 16,648 10,264 6,384 193,353 110,978 82,375 68,073 34,097 33,976 1999 16,066 10,313 5,753 197,017 119,562 77,456 65,993 34,375 31,618 2000 14,969 9,725 5,244 194,481 117,523 76,958 66,503 32,977 33,526 2001 13,985 8,557 5,428 178,903 108,800 70,102 62,851 30,948 31,903 2002 12,875 8,725 4,150 171,030 103,438 67,592 58,721 30,160 28,561 2003 12,814 8,857 3,958 176,533 104,945 71,588 55,294 30,307 24,987 2004 13,726 9,533 4,193 182,774 105,531 77,243 53,558 30,363 23,195 2005 13,886 9,738 4,147 187,102 106,925 80,177 53,753 31,138 22,615 2010 14,201 10,276 3,925 186,294 102,028 84,267 53,545 31,917 21,628 2015 14,849 10,929 3,919 185,219 93,091 92,129 53,385 31,783 21,602
2004 7.1 7.6 5.9 3.5 0.6 7.9 -3.1 0.2 -7.2
2005 1.2 2.2 -1.1 2.4 1.3 3.8 0.4 2.6 -2.5
1996-2000 -6.9 -6.5 -7.6 -6.9 -7.0 -6.7 -2.8 -7.3 2.8
2001-2005 -1.5 0.0 -4.6 -0.8 -1.9 0.8 -4.2 -1.1 -7.6
2006-2010 0.5 1.1 -1.1 -0.1 -0.9 1.0 -0.1 0.5 -0.9
2011-2015 0.9 1.2 0.0 -0.1 -1.8 1.8 -0.1 -0.1 0.0
建築着工 床面積
(千m2)
着工額
(実質金額:
10億円)
実 績
予 測 年 率 の 伸 び
建設受注
(実質金額:
10億円)
図表 110 予測結果の概要
図表 111 国内の建設機械需要の予測結果(建設経済研究所ケース
2
ベース) ホイールローダ 2005年度は5.8%の伸びが見込まれるが、2001~2005年度では年率2.2%の伸びと見込まれる。2005年度以降も年1.5%程度の増加。
2015年度で1996~1997年度の水準を回復。
油圧ショベル 足許の回復は急速であるが、2001~2005年度では年率-2.8%の減 少。今後は緩やかな増加が見込まれ、2006~2010年度年率1.9%、
2011~2015年度年率2.0%の伸び。
ミニショベル ミニショベルを除く油圧ショベルと類似の変動パターンで推移し てきた。2001~2005年度では減少となったが、減少率は油圧ショ ベルよりもやや小幅となる見込み。今後については、油圧ショベ ルを上回る伸びと予測。
建設用クレーン 1996年度以降の落ち込みが大であったが、2003年度以降は急速に 回復。排ガス規制対応で当面需要の急増が見込まれる。2015年度 時点では反動減の可能性があるが、ここではその影響を見込んで いない。
(台、伸びは%)
油圧ショベル ミニショベル
1996 14,239 98,321 48,416 49,905 4,785
1997 11,300 76,621 37,520 39,101 3,593
1998 9,166 59,905 30,175 29,730 2,047
1999 8,925 62,282 32,592 29,690 1,758
2000 9,302 59,882 31,884 27,998 1,607
2001 9,327 44,696 21,719 22,977 1,321
2002 8,111 37,955 18,312 19,643 1,140
2003 8,272 44,240 22,615 21,625 1,261
2004 9,792 49,742 25,520 24,222 1,522
2005 10,363 53,839 27,692 26,147 1,792
2010 11,169 61,154 30,416 30,738 2,723
2015 12,042 71,276 33,570 37,706 3,367
2004 18.4 12.4 12.8 12.0 20.7
2005 5.8 8.2 8.5 7.9 17.7
1996-2000 -10.1 -11.7 -9.9 -13.5 -23.9
2001-2005 2.2 -2.1 -2.8 -1.4 2.2
2006-2010 1.5 2.6 1.9 3.3 8.7
2011-2015 1.5 3.1 2.0 4.2 4.3
建設用 クレーン
実 績 値
予 測
伸 び 率
年度
ホイール ローダ
油圧ショベル 計