(1)個別の指導計画とは
個別の指導計画は、個別の教育支援計画や教育課程に基づいて、一人ひとりの目標を設 定し、指導内容や指導形態、指導方法等を示した計画です。
書式については、例(P53〜P55)を参考にしながら、必要な項目や形式を各学校 で検討して作成してください。
項目などの検討を行う場合は、作成のしやすさだけではなく、個別の指導計画の内容を 充実させ、積極的に活用するという観点からの工夫が必要です。
「個別の指導計画(教科・領域等)」を通知票とリンクさせている学校もあります。
学校や学級種別による違いはありますが、基本的に含まれる項目は以下の通りです。
○ 本人の情報(氏名・学年など)
○ 長期目標
○ 短期の指導目標(学習面・生活面等)
○ 指導内容・手立て・指導形態等(学習面・生活面等)
○ 指導経過と評価・修正
○ 作成者・作成年月日・評価日
・本人の状況(障害や発達状況等)
・本人を取り巻く環境(家族や支援者の状況等)
・本人及び周辺の課題
・現在及び将来の生活についての希望
・支援資源の整理 等
(2)個別の指導計画の作成 ア 個別の指導計画作成の手順
イ 児童生徒の実態把握
(ア)情報の収集
以下のように、様々な側面から、児童生徒の実態を把握していきます。
教育的側面 心理学的側面 医学的側面 生活環境的側面
・基本的生活習慣
・興味・関心
・学力(教科の視点)
・学習上の配慮事項
・人や物とのかかわり
・コミュニケーションの 状態
・身体の動き
・心理的な状態 等
・知能の発達の状態
・社会性の発達の状態
・運動機能の発達の状態
・心理的な安定の状態
・心理検査の結果
・認知特性
等
・医療機関による診断名
・医学的検査の結果
・薬の服用や発作等の有 無など健康管理に関 する情報
・身体発達の状態
・生育例や教育歴
・家族構成や家族環境
・生活のリズム
・地域の様子
・保護者の悩みや学校へ の期待
・保護者の願いや将来の 希望
・余暇の過ごし方 等 (イ)実態把握の方法
①面接やアンケートによる実態把握
医学的な情報や保護者からの情報を得る場合、アンケートや面接等で情報を収集し ます。
②行動観察による実態把握
自然観察法やチェックリストを利用して教育的な情報を得ます。この時、主観的な 解釈にならないような配慮が必要です。
③検査による実態把握
その子どもの現在の発達の様子、性格や行動の特性などの心理学的な特性を客観的 にとらえるために、標準化された心理検査を行い、指導に役立てることもあります。
「何のために行うか」を明確にして、目的に合わせて検査を選ぶことが必要です。
検査を実施する場合は、保護者と確認を取りながら行う必要があります。
①
実態把握 ②
目標の設定 支援方法等︶ ︵指導内容・手だて・ ③指導計画の作成 ④
指導の展開 ⑤
指導の評価
保護者への 提示・説明
保護者への 報告・説明 学校教育目標
教育課程 ⑥
次年度の計画
改 善
● 実態把握のポイント
□ 児童生徒がつまずいている領域を発見します。
□ 児童生徒がつまずいている課題を発見します。
□ 児童生徒がどこまで習得しているかを把握します。
□ 児童生徒の得意なこと、好きなことを把握します。
□ 課題に取り組んでいるときの児童生徒の様子について把握します。
□ 児童生徒がつまずいている要因を推定します。
□ どの部分で支援を必要としているかを焦点化します。
□ 本人や家族のニーズについて把握します。
● 実態の記述について
□ 肯定的な書き方にします。どこまでできているかの視点で記述します。
(「〜できる。」「〜する」→○、「〜できない」→×)
□ 「こうすれば」という状況や条件をとらえて記述します。
(モデルがあれば、声をかければ、カードによる提示があれば 等)
□ 得意な面やその児童生徒の強みをとらえます。
ウ 目標の設定 (ア)長期目標
個別の指導計画では、収集した情報をもとに約1年間を期間とし、1年後を見通し た長期目標を設定します。
● 長期目標設定のポイント □ 目標の優先順位を決めます。
□ 達成可能な課題からアプローチします。
□ 次につながるような目標を設定します。
□ 日常生活や社会自立といったことを考慮します。
□ 本人や家族のニーズを考慮します。
□ 立てた目標について保護者や関係機関等の意見を聞きます。
(イ)短期目標
長期目標の達成にむけて、より具体的に学期ごとや単元ごとに短期目標を設定しま す。
● 短期目標設定のポイント
□ 児童生徒主体の目標にします。(「〜する」「〜できる」→○「〜させる」→×)
□ 肯定的な目標にします。(「〜できる」→○、「〜しない」→×)
□ 一つの目標に対し複数の要素を盛り込まず、一つにします。
□ 条件を示します。
□ 基準を示します。
□ 観察や評価が可能な目標にします。
● 条件についての記述例
【言語的な要求や指示に関すること】「口頭でのルール説明で」「複数の指示が」
【視覚的に示された指示や教材に関すること】「作業手順を視覚的に提示して」
【デモンストレーションに関すること】「教員が手洗いのモデルを見せると」
【ツールや教材に関すること】「1年生相当の文章題に」「マス目のある用紙で」
【環境設定に関すること】「グループの活動において」「校外の活動で」
【支援の仕方に関すること】「隣で教員が読むのを聞いて」「教員の言葉かけで」
● 基準についての記述例
【どの程度できれば目標達成かを具体的に】
「○分間で○問の問題を正確に」「毎日○○する。」「算数の時間○○できる」
【しっかり、丁寧に、主体的に等の内容を具体的に】
「ハサミを上手に使う。」→「ハサミで線からずれずに切ることができる。」
「タオルをしっかりたたむ」→「タオルの端と端を合わせてたたむ。」
「着替えを素早く主体的にする。」
→「教員の言葉かけがなくても、一人で5分以内に着替える。」
エ 指導計画の作成
指導内容、指導の手立て、指導方法や指導体制、指導形態を設定します。
●手立ての設定にあたって
【言語的な要求や指示に関すること】
「短い言葉でいう」「一度に出す指示は一つにする」
【視覚的に示された指示や教材に関すること】
「算数の文章題の説明は視覚的に行う」
「学習開始時に黒板の定位置に授業の流れや目標を示す」
【デモンストレーションに関すること】
「活動前に手順を実演して見せる」
【ツールや教材に関すること】
「1マス○cm四方の原稿用紙を用意する」
「絵や写真を入れた手順表を活用する」
【環境設定に関すること】
「気が散らないように、座席は一番前にする」
「片付けができるように、教室内の置く場所に写真と言葉のカードをはっておく」
【支援の仕方に関すること】
「できたときはすぐにほめる」
「注意を喚起するため、名前を呼んでから指示をだす」
オ 指導の展開 計画を実施します。
カ 指導の評価
学期ごと、年間ごとに評価を行います。目標について、何がどの程度できるようにな ったかを具体的に記述しましょう。また、計画(目標、指導内容、手立て等)の妥当性 についての考察も行われるとよいでしょう。
指導の評価は、一連のサイクル(「実態把握」→「指導の計画」→「実際の指導」→「評 価」→「実態把握」・・)として機能していくことが重要です。個別の指導計画を作成す ることにより、作成者自身が自分の指導を振り返る機会が得られます。このような作成 者のモニタリングも指導者としてのスキルアップにもつながります。
● 評価の記述について
目標の視点 記述例
情意面 ・○○に意欲的に取り組めた。
・○○に大きな伸びがみられた。
行動・技能の獲得 ・○○が補助なしでできた。
・○○は確実だが、△△は不確実。
行動・技能の定着 ・○○は□回、△分でできた。
・指示がなくても○○ができた。
行動上の問題の改善 ・○○が大きく改善でした。
・○○が軽減した。
知識・理解 ・○○が確実にできた。
・○回中△回は正解した。
● 計画の妥当性についての記述例
視点 記述例
目標の妥当性
・○○の目標は難しすぎた。
・○○についてはより細かいステップに分ける必要があ る。
生活の充実と豊かさ ・○○の目標よりは△△について必要性を感じる。
・○○は△△に好影響を与えた。
指導の手だての 適切さ
・○○の方法は効果的であったが、△△は効果がなかった。
・○○は△△に有効であった。
連携や協力 ・○○は、△△と連携を取りやすく向上がみられた。
・○○は△△の協力が得られた。
キ 次年度の計画の作成
指導の評価をもとに、次年度の計画を作成します。