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第3節第2章第1部  安全で快適なネット社会の構築に向けた取組

図表2-3-1 子ども・青少年のネット利用に関して、保護者との間にルールが必要との意 識が高い

(備考)  1 .消費者庁「インターネット調査「消費生活に関する意識調査」」(2013年度)。

     2 .「携帯電話・スマートフォンの普及や、SNSやオンラインゲーム等のサービスの普及に伴い、子ども、

青少年がトラブルに遭うケースが増えています。この問題についてどう対応すべきだと考えますか。

例:ネット依存、高額課金、出会い系トラブル、誹謗中傷、いじめ等」との問に対する回答。(複 数回答可)

43.1 39.2 42.4

43.344.5 39.337.9

40.4 35.833.6

0 70

(N=3,000)

10 20 60 50 40 30

20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 27.224.9

39.3 32.3 43.2

27.7 37.9

43.5 44.5 46.5

58.7

46.7

34.4 26.8 39.8 43.5

43.3

33.1

19.3

12.7

8.8 56.6

39.0

29.7 48.4 59.9

44.5 40.4

35.833.6 31.3

23.0 37.3

30.431.8 33.2

0 70

〈女性〉

10 20 60 50 40 30

20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 事業者が商品・サービスの利用に何らかの制限を設ける必要がある 行政が法令や制度による制限を設ける必要がある

子ども・青少年本人が何らかの教育を受ける必要がある 保護者が何らかの教育を受ける必要がある

保護者と子ども・青少年の間で何らかの利用ルールを定めるべきである 特に対応をする必要はない

37.640.0 33.3

49.1 43.1

36.9 37.6

33.7 34.8

42.4

56.2

50.8

55.7 55.8 57.9

43.8

28.6 27.1

19.6 17.3

13.7 13.6 15.8

38.8

39.2 42.4 45.9 47.1

49.5

48.5 45.9

42.5 40.3

53.7 51.7 49.8

(%)

〈男性〉(%)

の内容に関する情報提供及び啓発を行っ ています。

 また、事業者等が保有する膨大な情報

(ビッグデータ)に関して、個人が特定 できないよう匿名化した上でマーケティ ング等に利活用するための研究が進んで います。ビッグデータは住所・氏名・電 話番号等の明らかに個人情報を特定でき る部分を削除しても、他の複数の項目を 結合することにより個人の特定が可能に なる場合もあり、事業者が個人情報保護 法上の義務を遵守していたとしても、プ ライバシーに関する社会的な批判を受け るケースも見られます。さらに、企業活 動のグローバル化や情報通信技術の進歩 により、クラウドサービス等を介して国 境を越えた情報流通が極めて容易になっ ており、制度の国際的な調和を図る必要

性も指摘されています。こうした状況を 踏まえ、政府は「パーソナルデータの利 活用に関する制度見直し方針」(2013年12 月20日高度情報通信ネットワーク社会推 進戦略本部決定)に基づき、個人情報保 護制度の見直しを行い、2015年通常国会 に法案提出を目指すこととなっています。

 個人情報の取扱いルールを決めるだけ でなく、不正アクセスから情報その他を 守ることも必要です。不正アクセス防止 の観点からは、不正アクセス行為の禁止 等に関する法律(平成7年法律第128号)

に基づき、フィッシング事犯の取締りや 注意喚起、フィッシング対策のためのガ イドライン等による啓発活動、電子メー ルの送信ドメイン認証技術等の技術的対 策の普及促進等を関係府省庁において実 施しています。

第3節第2章第1部  安全で快適なネット社会の構築に向けた取組

東京大学大学院法学政治学研究科 教授 宇賀 克也

 情報通信技術の急速な進展により、膨大なデータが集積され、容易に収集・分 析が可能になりました。このビッグデータの中でも、とりわけ、パーソナルデー タの利活用に対する産業界の期待は高まっています。しかし、そのためには、プ ライバシー保護が的確に行われることが前提になります。

 「個人情報の保護に関する法律」では、特定の個人が識別できなければ個人情 報ではなくなるので、同法の規制はかからなくなります。したがって、特定の個 人が識別されないように匿名化を行えば、同法に違反せずに当該情報を利活用で きることになります。もっとも、匿名化された状態とは何かは決して明確ではあ りません。なぜならば、個人情報から氏名、住所等のそれ自体で容易に個人を識 別できる情報を削除しても、他の情報と容易に照合することができ、それにより 特定の個人を識別できる場合には、当該情報は個人情報であるからです。そして、

情報の照合を考慮すると、個人情報の匿名化はビッグデータの時代には、困難に なることが多いのです。なぜならば、インターネット上には膨大な情報が存在す るため、照合の対象になる情報もきわめて多く、想定外の照合がなされてしまう 可能性が高くなっており、さらに、情報通信技術の飛躍的な発展のため、従前は 困難であった照合が容易に行える場合も増大しているからです。そのため、どの 程度の措置を講ずれば匿名化が行われたといえるのかが不明確になり、このこと は、パーソナルデータの利活用を企業に躊ちゅうち ょさせる原因になるとともに、パーソ ナルデータの利活用をしている企業としては匿名化したつもりであっても、実際 には匿名化が不十分でプライバシー侵害が生じてしまうケースを生じさせていま す。 したがって、企業にとっても、パーソナルデータの利活用ルールを明確化する ことが、その利活用を過度に躊躇する状態を解消し、主観的には十分であると考 えた匿名化が後に不十分と批判されるリスクを回避する観点から望まれることに なります。他方において、消費者にとっても、パーソナルデータの利活用ルール の明確化は、適切な匿名化措置を講じたパーソナルデータの利活用により、自ら の利便の向上につながることが期待されますし、不明確なルールの下で不十分な 匿名化のままパーソナルデータが利活用されることによるプライバシー侵害のリ スクの回避につながることになります。

 さらに、IPアドレスを利活用した行動ターゲティング広告のように、特定の個 人を識別できなくても、同一の人物であることを識別している場合、個人情報で ないという一事をもって、その利活用に対する法的規制が皆無であってよいわけ ではなく、他の情報と結合することにより、特定の個人が識別される蓋然性が高 い以上、プライバシー保護の観点からの規制が必要と思われます。

 このように、ビッグデータの時代に適合した個人情報保護法制の見直しは、喫 緊の課題といえます。