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今後の展望

ドキュメント内 村上 由紀夫 (ページ 142-145)

第 7 章 結言 126

7.3 今後の展望

最後に,残された課題と今後の展望について述べる。

将来の目標は,放電シミュレーションをCADに発展させることである。それに は,AC型およびDC型放電セルを解析する三次元シミュレーションコードの構築 が必要であり,さらには隣接セルの影響をも扱えるパネルシミュレーションのコー ドの開発が望まれる。

一方でシミュレーションの多次元化に加えて,過渡的,位置,時間依存電子エ ネルギー分布関数の解析手法も検討する必要を感じるが,計算の精度に対する要 請と計算に要する時間とを総合的に判断して,導入の是非について判断すること が必要である。同じように要求される計算精度や処理時間に対応して,一次元の コードで解析するのかあるいは多次元のコートで計算するかの選択も重要である。

このような課題は,本研究に取り組んだ時点では不可能に近かったが,昨今の めざましいCPUの高速化やメモリーの大容量化などの計算装置の高性能化から実 現に近づきつつあり,国際会議などで優れた研究成果も報告されていることなど から,近い将来に開発が期待できる。

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図 7.1 集積回路の密度(コンピュータの処理能力)の進展

7.3.1 コンピュータの性能

ここで,CADの開発に密接に関係するコンピュータの性能向上について述べる。

最小部品費用に関連する集積回路におけるトランジスタの集積密度は,1824箇 月ごとに倍になるという経験則がある。この法則はインテルの共同創始者である ゴードン・ムーアが提唱した。図 7.1にインテルのプロセッサ(点線)におけるト ランジスタ数の成長とムーアの法則を示す[2]。これは集積回路上のトランジスタ 数であるが,コンピューターの処理能力のおおよその目安になることが知られて いる。

これまで進めてきたシミュレーションでは,1周期4μsの一次元解析の計算時間 は,1997年当時にクロック周波数200 MHzのUltra SPARK CPUを用いたワーク ステーションで4分,二次元解析がおおよそ50倍の180分であった。その後8年 を経過した2005年に,同クラスのクロック周波数1.5 GHzのItanium2 CPUを用 いたワークステーションで,一次元解析が14倍,二次元解析が15倍高速になって いた。これはムーアの法則で24箇月で2倍になるとした場合の16倍に一致する。

この予想を当てはめると,2010年には1997年の計算速度のおおよそ100倍になる

ことから,二次元解析の一周期が2分弱で計算できることになる。

ここで三次元解析コードの計算時間を見積もるが,一次元解析を二次元に発展 させた時に計算時間が50倍増大したことを参考に,三次元化も同程度50100倍 と予想すると,2010年には1997年の二次元解析の解析時間で三次元解析ができる ようになると推測できる。

7.3.2 基礎データについて

放電シミュレーションなど理論計算を行うには,輸送係数や反応速度係数など 様々な基礎データが必要である。特にPDPの解析では混合ガス系の放電であるた めにまだ未知のものも残され同種のガスのデータからの近似に頼っているのが現 状である。今後,現在のAC型やDC型に属さない飛躍的に発光効率を向上できる 放電形態の探索には,測定されていない条件の基礎データも必要になると思われ る。また,陰極材料や電極保護膜材料についても,イオンや準安定原子および光 子の入射による二次電子放出係数など報告されていない基礎データも多い。

これらの要求に応えるために,周期表のありとあらゆる元素の機能を計算化学 により高速に予測する「コンビナトリアル計算化学」が提唱され精力的に進めら

れている[3, 4]。今後,衝突断面積の測定など基礎的な研究が下火になると思われ

る中,材料についてもシミュレーションで解析した基礎データの報告を期待する。

以上のように,本研究による系統的なシミュレーションのコード構築により,

CAD開発の基盤を確立したと言える。近い将来コンピュータ性能の向上に合わせ て多次元化解析が進み,コンピュータで完全に設計ができる現在のICのような CADが完成することを願いたい。

今後のディスプレイはさらなる高臨場感を目指して,大型化や高精細化が要求さ れる。また現在対角100インチクラスのPDPが製品化されるようになってきた。

それは対角30インチクラスのCRTの10倍以上の表示面積になるが,PDPの消 費電力は画面比率を下回っているとはいえ大型化のため消費電力は増大している。

このため抜本的な発光効率の向上を目指して研究を進める所存であるが,シミュ レーションは放電に関与するプラズマ諸量を明らかにすることができ,放電パラ メーターを変化したときの挙動を調べるなど,本研究で構築したコードはCADの 目標に加えて,今後の研究の指針を示すために威力を発揮すると確信している。

ドキュメント内 村上 由紀夫 (ページ 142-145)