第 2 章 AC 型および DC 型セルの一次元放電シミュレーション 16
2.6 モンテカルロシミュレーションによる局所場近似の妥当性の検討
AC型セルがDC型に比較して30%程度高くなったものと考えられる。
2.6 モンテカルロシミュレーションによる局所場近似の
θ
ξ
θ
図 2.12 確率密度関数f(θ)と乱数ξ[0∼1]の関係の例
であり, θ
0 f(θ)dθ =ξ (2.20)
として,乱数ξから事象の起こるθを求めることができる。
逆に,例えば確率0.1で起こる事象が実際に起こったか起こらなかったかを
0.1≥ξ (2.21)
によって判定することも多い。
このようにMCSは,[0,1]間に一様な分布を持つ乱数ξを用いることにより,衝 突の種類,散乱後の方向,飛行時間等を次々に決定し,電子の運動を追跡し,こ れを多くの電子について繰り返し,位置,速度空間における密度分布や,輸送量 の平均値すなわち輸送係数などを求めることができる [36]。
MCSはボルツマン方程式解析と比べ,
1 結果に統計的変動を伴う,
2 一般に長い計算時間を要する,
という欠点を持つが,一方利点として,
1 速度分布に,近似式を用いた仮定をしない,
2 複雑な衝突過程(非等方散乱)を厳密に考慮できる,
10-16
10-18 10-20
-50
0
0 0.1 0.2 Xe+
He+
He-Xe (10%)
Distance from cathode d (mm)
Electric field E (kV/cm)
αi/N (cm2)
MCS D LFA
図 2.13 局所場近似およびモンテカルロシミュレーションによる電離係数の比較
3 界面による反射,吸収,その近傍の非平衡領域での取り扱いが完全に行え,
また電離過程などを厳密に模擬するSST(Steady State Townsent)サンプ リングが簡単に行える。
このような利点を生かした電子輸送や電子衝断面積に関した研究が進められて いる [37]。ここで使用されているコードを基本として,扱うエネルギー準位を放 電シミュレーションに統一するなど,本目的に合わせて変更し,次に述べる電離 係数や励起係数の評価および第 4章の陰極近傍における二次電子の逆拡散の基礎 検討に用いた。
電離係数や励起係数の評価にあたっては,LFAで最も誤差が生じる陰極から陽 極間で電界分布の変化の大きい,DC型セルのパルス電圧印加後1μs時の電界分布 の下で,LFAとMCSによるそれら係数を比較する。
2.6.1 電離係数に関する評価
図 2.13に,DC型セルのパルス電圧印加後1μs時の電界分布におけるLFAおよ びMCSによる電離係数の陰極と陽極間の分布を比較して示す。図中に実線で示し たLFAの電離係数は電界分布Dに対する値である。一方,電界分布Dの下での
10-16
10-17
10-18
-50
0
0 0.1 0.2 He-Xe (10%)
Distance from cathode d (mm)
Electric field E (kV/cm)
α R/N (cm2)
(1) (2) (1)+(2)
MCS LFA
Xe*(1s4)
図 2.14 局所場近似およびモンテカルロシミュレーションによる励起係数の比較
MCSによる電離係数は,陰極からの位置xにおける電子衝突周波数ν s−1と電界 方向の移動速度vdから決定して点線で示した。
陰極近傍の高電界領域では,LFAとMCSの結果はほぼ一致している。しかし高 電界から低電界に急激に変化するx=0.1mm付近から陽極の領域で両者の差が大 きくなり空間的に遅れが生じている。
2.6.2 励起係数に関する評価
図 2.13と同様に励起係数の比較を図2.14に示す。この図の(1)は基底状態から Xe∗(1s4)への直接電離係数,(2)は間接電離係数でありXeの2p以上の励起準位へ の励起係数の和に0.4を掛けた値である。これはXeの2p以上の励起状態の40%が Xe∗(1s4)にカスケード遷移するためである [16]。したがって,(1)+(2)の直接励起 係数と間接励起係数の和がXe∗(1s4)の実効励起係数となる。
図 2.14の励起係数も電離係数と同様に,高電界領域ではLFAとMCSの結果は ほぼ一致しているが,低電界に変化する領域で空間的に遅れが生じている。この 相違は,He-Xe(10%),26.7kPaのガス組成であり,電界の変化の激しい場合であ る。パルス放電の1周期では,この例よりも電界の変化は空間的に緩やかであり,
ガス圧力も陰極のイオン衝撃によるスパッタリング低減のために高めることが多 いために定性的な解析には十分であると思われるが,PDPの一般的な放電条件を 外れる低ガス圧力領域など,適用範囲によってはこの誤差を考慮することも必要 であろう。